バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる 作:冰藍雷夏
「違う! 私はコスプレイヤーの不審者じゃない! あの変な匂いがする男の子を半殺しにしようとしただけの一般人。離して!」
「あ~、そうなの? つまり殺人未遂ね。こりゃあ、罪が重くなっちゃうね? 何? 元カレさんだったの? 署で詳しく話してね。コスプレイヤーさん」
「だから違う! 私の話をちゃんと聞いて!」
警察に通報した。
当たり前だ。俺は自分を殺そうとした奴をみすみす放っておくわけがない。
しっかりと有罪率99.9%の法治国家で裁かれてくれ、魔女っ子コスプレイヤーよ。
やったぜ、これで就職面接で有利になるぞ。
俺への事情聴取も終わったことだし、新しいバイト探しに街にでもいくか。
そんなわけで近くにいた警察官に話しかけて、解放してもらわねば。
「まったく、最近こういう事件が本当に多いね」
「あのー、そろそろ帰ってもいいですか? 用事があるんで」
「ん? あぁ、君、魔女っ子さんの彼氏さん? 駄目だよ浮気は、あんなに可愛い女の子がいるのにさ」
「
はい?」
ん? 浮気?
「彼女さんから聞いたよ。恋愛関係の縺れなんだって? 詳しく聞いたら帰る家もないって言ってたよ。本当に駄目だよ彼女は大切にしないと、明日には釈放になると思うから迎えにきてあげてね。それじゃ」
「はい?」
彼女? 浮気? 迎え? いったい何のこっちゃ。
「……帰るか。新しいバイト探さないと生活できん」
とりあえずよく分からない事を言っていた警察官の話は忘れて、俺は大学を後にした。
◇
「くそ、最近の都内はほとんど異種族の若いアルバイトしか雇わねえとか。どうなってるんだよ。今の日本は貧乏大学生に厳しすぎませんかね?」
大学側からの斡旋アルバイトや将来を見据えてハローワークなんかのアルバイト求人でも試してみようかとも思ったが。
「人生は楽が吉、ゆえにボロアパートからの近場が良いな」
「何が近場がいいの? 真也くん」
「いや、だから新しいアルバイトをだな……ん? この声はシルフ……ィー!?」
頭を鷲掴みにされた? う、動けねえ。すげえ馬鹿力だ。
「うん。そうそう、真也くんの幼馴染みのシルフィーちゃんだよ。やっと会えたね?」
「シルフィー……脳、脳が震えそうなほどに痛い。脳が震えるるるるる」
「そうなんだね、それは大変だね。真也くん」
武道派美少女幼馴染みエルフのシルフィーちゃんだった。
ものすごい笑顔で怒っているぞ。
なんでかって? そんなの俺がシルフィーの電話をめんどくさがって全て無視して逃げ回っていたからさ。
「それで? 服に女の子の匂いを2人分もベッタリとくっ付けて浮気? 何? シルフィーという可愛い幼馴染みのエルフが居ながら浮気しちゃったのかな? なんでしちゃったの? そんなにシルフィーのことが真也くんは嫌いなの? なんでさっきから答えてくれないの? 真也くん、ねえ? ねえ? ねえ?」
「脳にやばい信号が送られてきてる! 脳が震えるるるるる!!」
夏のホラーか!
口ごと顔面を手で抑えられてたら話せるわけないだろう。
俺はこのまま目のハイライトが死んでいる幼馴染みエルフに顔面を握り潰されて死ぬのか?
そんなの嫌なんだが。
いや、実際は余裕で抜け出せるけどよう。
シルフィーを怒らせたのは俺だし、幼馴染みに手出しなんかできるわけがない。
などとこれまでの人生の走馬灯を振り返っていると、空から修道女姿のドラゴン娘が口を開けて落ちてくるのがチラッと見える。
「そこの貴様! わらわのご主人様と街のど真ん中で何をイチャイチャしておるのじゃあ! 塵芥と成れ――――龍伊吹《ドラゴンフレア》」
「ねえ? ねえ?……殺気? 真也くん、危ない!上から!――――風壁・守角」
バキンンンンンンッ!
赤い炎のブレスと緑色の風撃が街中でぶつかり合う。
「何者じゃ! 貴様! わらわのご主人様に何しとるのじゃ!」
「貴女こそ何者よ! シルフィーの真也くんに何のご用かしら?」
ドラゴン娘と美少女エルフの戦闘が始まる。
そして、俺はその隙をついて逃げることに成功した。
◇
「おー、痛。シルフィーの奴、おもいっきり顔面握りやがってよう。マジで死ぬかと思ったわ」
いったん住処であるボロアパート付近まで来た。
俺をクビにしたコンビニの前を通る。
「やべーニャ。とんでもないことになっちまったニャア。燃え広がってるニャア」
「おい! なんで揚げ物と一緒に煙草を燃やしたんだ? 燃えてんだろうが!」
「ま、任せろニャア、水撒くニャア〜♪」
「こんな時に煙草を吸うな。つうかそれ、水じゃなくてガソリンじゃねえか! 燃え広がってんじゃねえかああ!!」
炎上していた。
「あのアホ店長、何したんだ?」
「あら? お帰りなさい。真也さん、大学の授業はもう終わり?」
「……大家さん。こんにちわ」
「はい、こんにちわ」
アパートの階段前で大家さんと出くわした。
黒髪ロングの巨乳で美少女、
たしか俺よりも年下で高校卒業したばかりの自称未亡人。
薄着の白いワンピースとは、相変わらず大胆な服装で過ごしてるなこの人。
このボロアパートの住民は空き家を除いて女の子しか住んでないからって油断し過ぎではないかと心配になる。
「あらあら? どうしたの? そんなにアタシのことを見つめて」
「へ? あ、いえ、今日も大家さんは美少女だなと思っただけですよ。素敵です! 美しいです」
「まあまあ、ありがとう~! それで? 昨日の夜から真也さんが部屋に連れ込んだ可愛い女の子は誰なのかしら? 教えてくれないかしら? アタシ、ここのアパートの大家だから把握する義務があるの、ね?」
「え?」
昨日、アルを拾ったことがバレてる?
嘘だろう?
昨日は音も立てずに窓から部屋に入らせたんだぞ。バレるはずが……
「……そう。今は言いたくないのね。分かったわ」
「へ?いや、違いますけど」
「来週は町内会のごみ拾いがあるから、真也さんは私と一緒に参加してね。そうじゃないと滞納してる家賃払ってもらうから」
「家賃!? それは困ります! バイトクビになったばかりで…持ち金は」
つうかなんでこんなに怒ってんだこの人は?
「そんなの知らないわよ、お馬鹿さん。家賃延期してほしかったら町内会のごみ拾い終わりに私の部屋に来なさい。話し合いましょう! それじゃあね」
「あ! ちょっと! 待っ!……大家さん、怒って行っちまった……家賃どうすっか」
今日は女の子に怒られてばっかりの一日だ。
なんて日だ。
滞納してる家賃も払わないといけないとなると――――
「危険はあるが久しぶりにダンジョン潜るか〜? 肉体労働でうまみが1つもないんだがな。ダンジョンなんてよう」
「ご主人様~! 勝ってきたのじゃ~! 勝利の証しにエルフ娘のパンツを奪ってもぎ取ってきたのじゃ~!」
炎上しているコンビニの方からアルが緑色のパンツを棒に結びつけて振りながらやって来る。
「……いや、今家にはあらゆる意味で規格外のアルがいるのか。いける可能性が微レ存。久しぶりに行くか、一攫千金の夢を求めて」
こうして俺は、家賃代と生活費を稼ぐため、龍人族のアルビオンを連れてダンジョン管理局へと向かった。