バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる 作:冰藍雷夏
高校生の頃、俺は探索者ランカーだった。
そう皆からスター扱いだった。
そして今は―――
「A級から探索者復帰? 馬鹿言わないで、3年も音沙汰なしに免許も更新してないんだからとっくの昔に貴方の探索者資格なんて終わってるわよ。竜籠くん」
「……なに〜?」
ただの金無し貧乏大学生に成り下がっている。
「何だとじゃないわよ。数年振りにダンジョン管理局に顔を出したと思ったら、ダンジョンに潜らせてくれ? それよりも、新規で探索者登録するのが先なんじゃないかしら?」
「お、おい。元仲間に向かって凪咲」
今、俺の窓口対応してくれている受付嬢の名前は、
昔一緒のチームを組んでいて今は公務員として管理局で働いている。会うのは何年振りだったか? ちなみに公務員は人間しか採用されない。
「触らないでくれるかしら? 職務中のセクハラとして報告するわよ。所長ー!」
「お、おい! 止めろ! ゴリラを呼ぶな! 俺が殺される」
「あら? 殺されても文句は言えない立場じゃないの? なんで今まで連絡してこなかったのかしら? 同じチームだった私に相談も無しに?」
「そ、それは……気まずいというか」
なんで怒ってんだよ。
「何じゃ? 何じゃ? 雰囲気悪いのう。この茶髪娘はご主人様の昔の女か? さっきのシルフィーとか言う強者といい、ご主人様の周りにはわらわも含め可愛い女が多いのう」
「………お前なに食ってんだ?」
「日替わり夕食1560円のダンジョン飯の「ニワナリの棒々鶏」じゃ、旨いぞよ。ご主人様も食べるのじゃ?」
「金欠だって言ってんのになに勝手に食ってんだ! ここには稼ぎに来てんのになんで利益マイナスからのスタートにしてんだよ!」
このアホドラゴン娘。
俺には自分の血肉なる尻尾を食べさせておいて、わざわざ仲介御者がばりばりに入って無駄に高い管理局飯なんて食いやがって。許さん!
「ねぇ、ちょっと」
「ん? なんだよ凪咲、今立て込んで…」
「ずっと私の連絡無視してたくせにいきなり現れるんじゃないわよ! 死ね、ばかっ!!!」
「ごはぁ!?」
わざわざ受付カウンターから出てきて俺に腹パンする元チームメイト凪咲。
そして床へと倒れ込む俺。
「お客様。新規の探索者登録はあちらのカウンターになりますので、そこの馬鹿と共に移動をお願い致します」
「うむ。分かったのじゃ~! 行くぞ、ご主人様」
「……………」
俺はアルに引きずられながら新規探索者登録カウンターへと移動した。
「はい! 新規探索者の登録2名様完了しました。こちらが証明書になります」
「うむ! ありがとうなのじゃ」
登録完了。
受付は今年入った新人さんなのだろう。
ニコニコと明るく元気に受付対応してくれた。
どこかの元チームメイトとは大違いに優しいな。
「……A級からいきなりE級探索者リスタート? マジかよ。こんなんだったら更新サボらずにやっとけば良かったぜ」
「わらわとお揃いじゃな、ご主人様よ。嬉しいのう」
「嬉しくねえは悲しいんだわ……くそ~!」
ダンジョン探索者は常に人手不足。
常に死と隣合わせな仕事。
すきま時間に小遣い稼ぎで副業でやる人もたまにはいるが成り手は少ない。
なので管理局に来れば、入り口にある身体検査キットで魔法や戦闘技術がありと判断されればその日のうちにダンジョン探索者デビューはできる。
ダンジョン内部で怪我や死んでも一切の保険も効かないので注意。
結論、探索者は止めとけ。
それを探索者初心者であるアルに叩き込んだ。
「なんだか切ないのじゃ」
「……とはいえ一攫千金狙って稼ぐのはありなんだよな。右腕上がるといいがな」
「右腕がどうかしたのじゃ? ご主人様」
「ん? あぁ、昔、ダンジョンで深手を負って肩まで上がらなくなったんだよ。それで半分引退って感じてダンジョンには潜らなくなった」
「ほう。女難のご主人様に歴史ありかのう。悲しいのう」
こいつ、俺に話を振っといてまったく興味無さそうに聞いてやがる。それになんだ女難って?
「何じゃ? 気になるのか? 右目下の泣きほくろ、癖の強いめんどくさい女がどんどん集まる
「癖の強いめんどくさい女?……お前のことじゃないのか? ドラゴン娘」
「のじゃ?」
というわけで俺たちは管理局の転移門から初心者ダンジョンへと向かった。
◇
「…………おい、アホドラゴン娘」
「ごぎゃああああああああああ!! 死ぬがよい! 雑魚モンスター共―――
【【【ビギャアアアアアア】】】
巨大龍が地上で放てば地形を変えかねないほどの攻撃で、スライムやゴブリンを丸焦げにして殺戮していく。
そして、そんなことをすれば初心者ダンジョンの脆い地盤などすぐに崩壊するわけで――――
「崩落して落ちてんじゃねえか! 何してんだ! アル、お前~!」
「ご、ごめんなのじゃ~! つい張り切り過ぎちゃったのじゃあ~!」
俺たちは初心者ダンジョンの最下層まで一気に急落下した。
「ごぎゃ……大丈夫かのう? ご主人様よ、いきなり落ちたから全身打撲でボロボロなのじゃ、しかもか弱いご主人様を抱きかかえて救出したいから自身では受け身が取れなかったのじゃ。痛いのじゃ」
「……………なんだここは? 初心者ダンジョンにこんな場所あるのか?」
「無視するなのじゃ~!」
落ちた場所。
それはダンジョン全体が水晶で覆われた不思議な場所だった。
「まだ管理局にも知られてない未踏破領域か? マジかよ。なんでこんなタイミングで……今は貧乏大学生なんだぞ俺は」
ダンジョン未踏破領域。
発見して踏破できれば、そこで得たダンジョン資源の9割は報酬として持って帰ることができる。
普通、管理局が管理するダンジョンに潜って利益が出ても5割は管理局の分け前として没収されるから、こんな場所を見つけられて喜んでいい場面なのだが。
「こんなのソシャゲの周回プレイしてたら、なんの対策もせずに希少モンスターと出会っていきなり挑むようなものだろうに……踏破するしかないか」
「進むのかのう?」
「あぁ、頼りにしてるぜ。アル、お前のその世界も滅ぼせそうな龍体型で……おい、なんで人間のコスプレしたんだ? さっきまでのカッコいいフォルムはどうした?」
「ごぎゃあ」、とか鳴きながら殺戮の限りを尽くしていたアルビオン。
いつの間に人型に戻っており。
角がない。
両翼もない。
一番のこいつのチャームポイントとか言っている
アルビオンはただの金髪美少女ギャルになっていた。
「ち、力を使い果たすとわらわは人間の姿になってしまうのじゃ。すまぬのう、ご主人様よ。テヘペロなのじゃ」
「何!!!!!?」
ゴチンッ!
「ごぎゃ!?」
俺たちのチーム「ドラゴンバスターズ」の最高戦力の終了のお知らせだった。
◇
「と、とにかくゴール地点である転移門を探すぞ。そうすれば、恐らく地上に戻れる」
「ううぅ! 人間状態での脳天チョップは痛いのじゃ。痛すぎるのじゃ」
お仕置きに脳天チョップをお見舞いしてしまった。
さんざんダンジョンに入る前は力を温存しながら進むぞって言っていたのによう。案の定じゃねえか。
うちのおバカドラゴン娘は、たくぅ。
「……まぁ、それにしては人間状態の姿は見惚れるんだよな」
「のじゃ? どうしたのじゃ? ご主人様。そのような邪な目でわらわを見て、いやらしいの…ごぎゃ!?」
「うるせぇ、見てねえわ……それにしては、この未踏破領域静か過ぎないか? まるで狩り尽くされたみたいにモンスターの骨は落ちてるけどよう」
進めど進めどそんな景色ばかり。
まぁ、骨やら水晶の塊なんかは軽いやつは回収していこう。未踏破領域の素材にはどんな付加価値があるか分からないからな。
「お! おぉ、あそこを見よ! ご主人様よぅ!
出口じゃ、管理局にあった転移門と同じ形の物が見えるぞよ。さっさとあそこまで走って行こうぞ」
「何? そんな簡単に見つかるわけ……あぶねぇ! アル!」
【ウオオオオオオオォ!!!】
「ごぎゃあ!?」
転移門まで走っていこうとするアルの首根っこを掴んで引き寄せる。
「……そうか、そりゃあ居るよな。フロアボスは、未確認ボスモンスターの発見だ」
【ガルル……ルオオオオオオオォ!!】
全身が水晶でできた虎。
◎ここまでお読み頂きありがとうございます!
「凪咲先輩。なんで元カレを公然と殴ったんですか?」
「も、元カレじゃないわよ! 元チームメイト! ただ……それだけよ!」
「殴ったことは否定しないんですね。顔赤くなってません?」
「なってない! うっさいわよ、真也くんとはただの元チームメイトよ!」