バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる   作:冰藍雷夏

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第5話 打ち砕け、龍双曲(ドラゴンエッジ)

 私の名前は薙野(なぎの)凪咲(なぎさ)

 

 ダンジョン管理局の公務員。

 

 現在、後輩と休憩室で談話をしているのだけど、質問し過ぎじゃないかしら?

 

「そういえば、なんでチームは解散になったんですか? 元カレさんの浮気?」

 

「元カレじゃないし、浮気じゃないし、チームも解散してないわよ。抜けたのは私と真也くんだけよ」

 

「なるほど、同じチームの仲間たちを裏切り愛の逃避行を企てたわけですね。流石、凪咲先輩です」

 

 なにが流石よ。さっきからなにを期待しているのよ。クルミは。

 

「違うわよ! 理由は3年前、ダンジョンで彼がチームのリーダーや仲間を庇って、右肩に重傷を受けて引退したの。彼は探索者の中では有名で、そんな彼に怪我をさせた責任の全てをチームの皆は押しつけて私は追放……後は分かるでしょう?」

 

「あ~、なるほど。それで探索者を取り締まれる立場である管理局の受付嬢になったんですね。分かります、分かります」

 

 ……この子はいったい何を勘違いしているのかしら?

 

「だから違うわよ! 受付嬢は所長にどうしてもって頼まれたからなったのよ! それに管理局の関係者になれば真也くんがまた危険な目に遭うのを止められると思っただけよ」

 

「そ、そこまで聞いてませんけど……凪咲先輩が元カレさんを超気にかけているのは察しました。好きなんですね」

 

「だからさっきから違うって言ってるじゃない!」

 

 本当に私の話を聞かない後輩なんだから。

 

 ……真也くん。

 

 数年振りに現れたのには驚いたけど。

 右肩は上がるようになったのかしら? それを聞こうとしたら龍人族の女の子が現れるし。

 

「その後は勢いに任せて殴っちゃったのよね。所長は龍人の姫が居るなら初心者ダンジョンだし大丈夫とか言っていたけど」

 

「何がですか? 凪咲先輩」

 

「……なんでもないわ。さぁ、そろそろ閉館だし帰る用意していきましょう。残業はしたくないもの」

 

「は~いです!」

 

 ――――本当に大丈夫なのかしら?

 

 昔から真也くんって、ここぞって所で運がないのよね。

 

 

 

 

(いいかね。真也、古代地球表層には現代動物とは違う種類の生物の化石があったと言われている)

 

(はい、お爺様。俺はお爺様のような立派な”秘匿学者”になりたいと思います)

 

(おぉ、それは嬉しいことを言ってくれるものだ。数日後には私を書いた論文『水晶虎』で世の中の生物理論の常識はひっくり返る。これは約5000年前の地層から私が見つけたものでね。真也)

 

(お爺様、その話を詳しく教えて下さい。俺はもっとお爺様のお話を聞きたいです!)

 

(ハハハ、嬉しいことを言ってくれるね

。いいとも、息子たちは私の話など聞きもしないしな。私の話を聞いてくれるのはいつもお前だけだよ。可愛い孫よ)

 

 

 『水晶虎』の論文が世の中に発表された数日後、お爺様は殺された。

 

 お爺様は俺に優しい方だった。

 色々なことを教えてくれた大恩人。

 

 ………竜籠家は昔、”忍者”と”地層学者”の家系であり、昔から政府を裏で支える優秀な人材を多く輩出しなくてはいけないとお爺様は言っていた。

 

 危険な神域とされる場所へと忍び、異常な地殻断層を調べる特殊な家系。

 

 裏から日本を護る役目があり。けして目立っては駄目だったんだ。

 

 だからお爺様は「何か」に殺されたんだろう。

 

 そして俺も自身の名前が有名になってきたタイミングで右肩に深傷を負い、探索者を途中でやめた。

 

 竜籠一族は目立ってはいけない存在なのだと思い知らされた。

 

 

【グルルルッ!!】

 

「ごぎゃあ、大ピンチなのじゃご主人様よ! わらわは美味しくないのだ。食べるならご主人様を先に食すがよいぞ」

 

 ……このドラゴン娘、自己保身しか考えてないぞ。こんな状態になったのもお前のせいなんだが?

 

「初心者ダンジョンの隠しフロアに水晶虎だぁ? 昔、お爺様が書いて読ませてくれた地層論文にあった水晶虎(クリスタルベルガー)の容姿と酷似しすぎじゃないか?」

 

 大きさは、昔動物園で見たホワイトタイガーの成体と変わらないくらいか?

 

 全身がクリスタルのような半透明で濁った光を輝かせている。

 

 身体内部が透き通っているわけじゃない。

 

 おそらくはあいつの皮膚か体毛の体の表層が、ダンジョン内部の光の反射屈折により水晶のように見えるんだろう。

 

 なので奴の体内は普通の四足歩行型モンスターと遜色がない肉厚のはずだ。

 

「まぁ、これも全てお爺様の論文に書いてあったことだけどな! 下がってろ、アル。俺がやる」

 

「のじゃあ!? ま、待つのじゃ、ご主人様よ! ご主人様は生身の人間じゃぞ! あんな化物に貧弱なご主人様が敵うわけなかろう。ここは一旦、わらわを逃がしてから逃げるのじゃ、ご主人様よう」

 

 ……こいつはまた。

 

「おまっ! どんだけ俺を餌にしたいんだ? 元はといえば、お前がアホな龍化をして地底深くに落ちて……」

 

「来てるぞよ。モンスター」

 

 俺の背後へと指を差すアル。

 

「何?」

 

【グルオオオオオ!!】

 

 たしかに大声を張り上げた俺の方へと向かって来る。言うのが遅いんだよ、アホ。

 

 俺は反射的に道中で拾った骨を、襲いかかってくる水晶虎の肉薄そうな首元目掛けて左手で投げた。

 

 バキンッ!

 

 俺が放った思わぬ反撃に、水晶虎は思わず動きを止めてたじろいだ。

 

【グルァ?】

 

「は? 投げた骨の方が粉々に砕け散った? どんだけ硬い皮膚なんだよ、こいつ」

 

 思った以上の強度に驚愕。

 弱い部位さえ貫通させればダメージを負わせられると思ったが、そうでもないのか。

 

 戦うやり方の角度を変えて挑むしかないか?

 

 たぶん、あの皮膚の硬さじゃ火口龍炎(ドラゴンブレス)は効かないだろうし、昔みたいな体術や魔法は……ブランクがあるから錆び付いてて右肩が上がらんから、攻撃が上段で放てない。

 

「わらわの龍鱗くらいではないか? おっと、今のわらわはピチピチの金髪ギャル娘じゃったわ。すまぬすまぬ。一晩寝れば再び金髪ドラゴンギャル娘に戻るからのう。待ってておくれのう、ご主人様」

 

「そうかい。それは嬉しいご報告をありがとう。それで? この大ピンチをクリアする方法は何か思いつかないか? ポンコツドラゴン娘」

 

「ふむ。今日、全力をつくしたわらわは最早戦えぬからのう」

 

 自業自得じゃねえか、胸を張って言うな。ぶるんっと震わせやがって。

 

「……聞いた俺が馬鹿だったか。仕方ない、ここは別の出口を見つけて」

 

「仕方ないのう。こうなればわらわが教えてしんぜようぞ。龍属性魔法を使いこなすのじゃ、ご主人様よう! ご主人様はわらわの血肉たる尻尾(ドラゴンテール)を何度も食べておる。そのせいで少しずつじゃが、ご主人様は半龍人化しつつあるのが分かるからのう。本当に微々たる変化じゃがな」

 

「……あん? お前マジでなんて言った? あん?」

 

「ごぎゃあ!? な、何をするのじゃあ? なんでわらわの頭を掴むのじゃ、ご主人様よ! 爪、ご主人様の爪がわらわの脳天に深爪しておるのじゃ~!」

 

 アホドラゴン娘の顔面を左手で掴む。なるべくおもいっきり。なるべく深……爪?

 

「…………爪?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()右手の爪先をよく観察する。

 

 本当に微細だった。

 

 爪の先端が綺麗に輝いていた。

 

 普段のアルの爪の様に。

 

「……これってまさか龍の爪か? それになんで右腕の可動域が昔みたいに戻って……」

 

【ルオオオオオオッ!!】

 

 長らく俺たちの様子を見ていた水晶虎が襲いかかって来た。

 

 元の性格は臆病だったんだろう。初めて見る観察対象が自分よりも確実に弱いと判断し終えて、ようやく俺たちへの攻撃を再開したとみえる。

 

「ご、ご主人様よ! 大口を開けて奴がくるのじゃあ!! わらわを逃がしてから戦うのじゃあ!」

 

「そうか。なら少し離れてろ! 自己保身ドラゴン娘!!」

 

 左手に掴んだアルビオンをアンダースローで安全な場所へと飛ばした。

 

「のじゃあああ!! 何するのじゃ、ご主人様~!」

 

 どうやら俺の体内筋力も確実に変化しているようだ。覚えてろよ、アホドラゴン娘。

 

「お前が「ドラゴンテール」なんてゲテモノ料理を俺に喰わせるから、昔みたいに多少は戦える身体に戻ってるじゃねえか! 喰らえや、野良猫!――――龍右腕(ドラゴンクロウ)

 

 

 右腕が上がる。動く、動かせる。

 

 アホみたいに大口を開けて俺へと噛み付こうとする水晶虎の鋭そうな牙に向かって、右手を鷲の嘴状にして衝突させる。

 

 バキッ!

 

【ゴラアアアアア!?】

 

 先に折れたのは奴の牙だった。

 

 水晶虎は自分の牙が折れたことに驚いたのか、一瞬だけ怯む。

 

 そして俺はそれをけして見逃さない。

 

「大口開けて宣うのか? それは悪手だろう、獣」

 

 落下しようとしていた水晶のような牙を左手で掴み、水晶虎の口の中へと上向きで突き刺した。

 

【グルオオオ!!?】

 

 大きな咆哮を上がる。

 

 俺はそんなことお構い無しに、次々と右手の龍爪で水晶虎の牙や歯をへし折り、折った物から左手で掴んでこいつの柔らかそうな口内へと突き刺していく。

 

【ゴォ……ルォ……グロァ……】

 

 口の内側から突き刺された牙により、顔の回りが内部から突き抜けた刺傷だらけになる水晶虎。

 

「お前、このフロアの頂点捕食者なんだろう? そんで、これ生までは単調な正面攻撃で最後まで勝ってきたんだな? こんな初心者ダンジョンの小さいフロアで起きる食物連鎖に……考えが甘かったな。駄目だぜ、もっと戦いは深慮深くなくちゃな。取って喰われちまう。こんな風に――――龍双曲(ドラゴンエッジ)

 

【グギャアアアアアア!!!】

 

 微小な龍爪と化した両爪を、水晶虎の口内から尻の穴に向かって走らせる。

 

 こいつの内部はやはり柔らかかった。

 煮込んだ叉焼(チャーシュー)を研いだばかりの包丁で切るように簡単に切れてしまい、血肉は宙へと撒き散らされ、俺の頭上には血の雨が降る。

 

「ぐぎゃあああ! グロテスクな光景なのじゃ~!」

 

「討伐完了。珍しい水晶外皮素材をゲットだぜ」

 

 

 こうして俺とアルは初心者ダンジョンの未踏破領域をクリアし、未知なる素材を持ち帰ることに成功した。

 

 

 

 

 …………までは良かった。

 

 こんな大事件は大金が動く。

 

 秩序の守られた場所でも、難癖をつけてくる奴等もわらわらと湧いてくるわけで。

 

 

「おいおい、久しぶりだな。竜籠~! 探索者に復帰したんだって? なんで俺様に挨拶してこなかったんだよ? 常識だろう?」

 

「……お前は黒崎」

 

「おう、さてと……さっそく寄越しな! お前が手に入れた未知の新素材をよう。俺様がそれを上手く使って、ウチのチームに入った可愛い新入りたちの防具に使わせてもらうからよう」

 

「楽しみニャア~!」

「……なんでおれは夜こんなところにいるんだ?」

 

 獣人と…………煤だらけの店長? 

 

 元チームメイトで、現在はS級探索者チームを率いるリーダー黒崎に絡まれてしまったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

◎ここまでお読み頂きありがとうございます!

 

「ダンジョン飯屋が閉まってるのじゃ!」

 

「何してるの? 当たり前でしょう。もう夜の12時近くよ……(結局残業しちゃったわ)」

 

「お腹減ったのじゃ~!」

 

「……ガムでも食べる?」

 

「ありがとなのじゃ」

 

 

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