バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる 作:冰藍雷夏
あー、めんどくさい奴と再会しちまった。
早くうちに帰りたいのによう。
「いいか、よく聞け竜籠。このおっさんはなんとつい先日まで会社経営をしていた敏腕社長の
「何じゃお主は? 体臭が臭いぞよ! どこかに消えよ、邪魔なのじゃ!」
「へぶぁ!? こぱぎゃあああ!!?」
アルにおもいっきり体当たりされた黒崎は、高難易度と書かれたダンジョン転移門へと吸い込まれるように入って行った。
たしかダンジョンの転移門は1度潜ると、1フロアクリアするまで戻って来れないんだよな。対して黒崎の実力は仲間を応援する支援職でチームのお荷物だったよな?
「……戻って来れないんじゃないか? 黒崎の奴」
「ご主人様よ~! お腹が減ったのじゃ。帰りにボロアパート近くのコンビニ行こうぞ~!」
「全焼したわアホ。俺たちが持って帰ってきた新素材の鑑定もまだまだ時間かかるらしいし牛丼食って帰るか」
「ま、待ちなさい! 真也くん!」
俺が黒崎の行く末を見届けて帰ろうとすると、疲労困憊の社畜顔で俺を呼び止める
「なんだよ凪咲。今日のもろもろのことは済ませたし、腹減ってるんだから帰らせろよ」
つうかまだ働いてたのかこいつ、ダンジョン管理局どんだけブラックよ。
「お、お腹空いてないかしら? よかったら私が最近よく行ってるBARに行かない? 久しぶりに会えたのだし飲みに行きましょう。私明日はお休みなの! だから、その後は私の家で飲みなおしましょうよ」
「いや、俺は未成年なんだけど。飲めるとしたら後10ヶ月先だぞ」
今日はいろいろと動き回ったせいで身体が疲れて……ないな。眠気も……ほとんどなし? なぜだろうか?
「……そ、そうだったわね。私二十歳になっちゃったから。そうね、そうだったわね」
「凪咲?」
深夜近くまで働いて疲れ切っているのだろう。凪咲の目は死んでいた。
「あー、それなら俺たちこれからも牛丼食いに行くけど、凪咲も来るか? 久しぶりに2人で話して……」
「ぎゅ、牛丼いいじゃない! じゃあ早速……どうしたのよ?」
一瞬だけニパッと喜んだ凪咲は俺の驚いた顔を見ると真顔に戻った。
「いや、あれ……休憩所の机で店長たちがキャンプファイヤーし始めてるけど止めなくていいのか?」
「……はい? なにをお馬鹿なことを言ってるのよ?」
凪咲も俺が指差す方へと目を向ける。
「何してんだ? お前等~!」
「ヤベーニャア、新しい家を手に入れたニャア~! 嬉しいニャア~!」
「「嬉しいニャア~! 煙草が旨いニャア~!」」
「いや、室内で物を燃やすな火事になるだろう!」
……そういえば店長、天・長って名前だったのか。俺には田中
それに獣人たちは煙草と酒で宴会始めてるけど大丈夫なのか?
「あ、あ、あなたたち何をやってるの? 止めなさい! ダンジョン管理局は木造建築なのよ~!」
凪咲が疲労困憊な身体に鞭打ち働き始める。
社会人ご苦労様です。
俺は敬礼した。
「牛丼食って帰るか」
「のじゃあ~!」
突然黒崎が登場したり、店長たちがダンジョン管理局内に野宿用テントを張り始め、室内に火を灯したのが一番衝撃的だったが、俺たちはダンジョン管理局の部外者のため、邪魔にならないようにその場を後にした。
つうか、ダンジョン管理局全体が燃えてるんだから避難するに決まっているよな。
何してんだよ店長。
◇
牛丼でお馴染み吉川屋に来た。
「いただきますなのじゃ~!」
「頂きます……持ち帰った新素材は値段は付けられなくて、適当に拾ってきた水晶やら骨が換金できて、管理局にもろもろ引かれて31238円。はぁ~! あんだけ命張ったのに探索者ってブラック過ぎないか? その分払いなのはいいけどよぅ」
今日稼いだ分が入った茶封筒を見ながら牛丼を口の中へと頬張る。
「ご主人様よ、紅しょうが丼が旨いのじゃ」
「無料の紅しょうが山盛りでトッピングするなよ。店員さんに迷惑だろう」
ガツガツ食ってやがる。普通に食えばシスター服のコスプレイヤー金髪美少女が牛丼食ってるだけの光景なんだけどな。
アルってドラゴン娘なんだよな……つうかドラゴンも牛肉食えるんだな。
「……頬っぺたにご飯粒が付いてるぞ。ほれ」
「ほえ?」
俺はアルの口元に付いていたご飯粒を取ってそのまま自分の口に放り込んだ。
「ふぇ? ふえええぇ!? な、な、何しとんじゃあ! ご主人様よ!」
そして、いきなり紅しょうがの色のように赤面し始めるアル。
「ん? なんだよ。牛丼お代わりするなら後2杯くらいにしてくれよ。俺たちの全財産、今のところ25000円以下になる予定なんだからな」
「つっ!! わ、分かったのじゃ、分かったから、その顔を近づけるななのじゃ、恥ずかしいのじゃ!」
「?……だから、さっきからなんだってんだ?」
相変わらず変な奴だ。
牛丼食っただけで赤面するドラゴン娘なんて聞いたことないんだが?
結局アルビオンは牛丼のお代わりを10杯頼み、こいつは食費がかかる燃費の悪いドラゴン娘だと発覚した。
◇
次の日の朝。
「ごぎゃああああああああ!! ぐおおおおおお!!」
ボロアパートの六畳一間。
「……もう起きれた? 嘘だろう? 昨日はあんなに色々あって寝たの深夜3時だぞ? 5時間寝たくらいで身体が全快に……なってる?」
昨日まで一生上がらないと思っていた右腕もぐるぐる回る。
「牛丼たくさん食べてごめんなさいなのじゃ、ご主人様よ~!」
そして、俺が眠っている布団の中には裸のドラゴン娘が俺の身体に密着していた。
「な、何やってんだ? お前~! 牛丼食った帰り、わざわざトンキでお前用の新しい布団買ってやっただろうがぁぁ!!」
「……のじゃ?」
まったく朝から心臓に悪い。
なんで俺はこんなに可愛い金髪ドラゴン娘と同棲生活しないといけないんだか。
「……いや、それは喜ぶべきなのか?」
「お待たせなのじゃ~! 朝はドラゴンテールのサンドイッチなのじゃ。さっき、わらわの尻尾から切断したばかりの新鮮ピチピチな料理じゃぞ」
「いや、いらね。そんなの聞いたら食えるわけ……」
「いいからさっさと食べるのじゃ! モキュッとのう」
「がぼぁ!?……」
こ、こいつ、また無理やり俺の口の中に……なんだこれ? ほのかに香る香辛料と新鮮なお肉がほどよく焼けてジューシーさがある出来立てサンドイッチは?
「わらわの
「うるせぇ! 食っちまったじゃねえか。大学行ってくる!」
「いってらっしゃいなのじゃ~! わらわは昨日テイクアウトした牛カレーを朝から食うのじゃ、流石に自身の肉を食らうのは嫌じゃからな」
「人に自傷料理食わせといてよく言うわ。アホ!」
呑気にテレビを見始めたアルに悪態をつきながら、俺は部屋から飛び出した。
『プルルルル……もしもし? 新宿警察ですが――――』
そして、それと同時に警察から電話がかかってきた。
大学終わりの夕方。
「待ってたダーリン」
「いきなり距離感詰めるな。離れろ」
俺を殺そうとしたはずの蒼い魔女が面会室から飛び出して来た。
「君ねえ、こんな可愛い彼女さんが勾留されているのに一度も連絡いれてあげないってどういうことなの?」
「寂しかった~!」
いきなり現れて抱きつくな。魔女の帽子が俺の顔面に当たってんだよ。
「いや、あの……そんな人知りません。俺、年齢=彼女居ない歴なので彼女できたことすらありません」
「嘘は駄目だよ、嘘は。彼女さん獄中でずっと「ダーリン、ダーリン」って君の名前を呼んでたんだよ? なんで夫婦喧嘩したのかは分からないけどさあ。仲良くしないと、こんな可愛い女の子そうそう掴まらないんだから」
面会の立会人も女性警官で、すでにアホ魔女のアホ過ぎる演技に感情移入しているため、俺の言葉は届かなかった。
つうかダーリン、ダーリンって、そもそもそこのアホ魔女は俺の名前すらろくに知らないだろう絶対に。
「ダーリン、私は住む家もないしお金もないの。今回の作戦…仕事で失敗して組織からのお給料も無くなってクビにされちゃったから、今後はダーリンが私の面倒見て、ダーリン♡」
「あっ!?」
おっと、イラッとくる言い方だったので、つい怒気を含んだ声を……
「こら! 彼女さんを怒るんじゃないわよ! それとさっさと2人で帰りなさい! 何かあったのか知らないけど仲良くね。わたしみたいに相方に浮気されて別れたら承知しないわよ。お幸せに」
……この婦警さん。彼氏と別れたばかりだったのか。そりゃあ、このアホ魔女のど下手くそな演技にも感情移入するか。
「帰ろうダーリン! 私たちの家に」
「あん!?」
「こら! 彼女さんをいじめないの! 駄目よ!」
こうして俺は、俺を半殺しにしようとした魔女っ子コスプレイヤーを警察から身元引き渡し人として引き取ってきたのだった。
◎ここまでお読み頂きありがとうございます!
「嘘? 一夜にしてダンジョン管理局が消し炭に?」
「燃えたのニャア? どうしてニャア? 誰がこんな酷いことをしたのニャア~?」
「「したのニャア〜?」」
「お前たちだよ。あ、警察が来たぞ……ま、待て、俺は悪くない! 室内でキャンプファイヤーなんてやってねえぞおおぉぉ!!」