バイトをクビになった貧乏大学生の俺、ゴミ置場で口癖が(のじゃ)な巨乳金髪美少女龍を拾って育てられる 作:冰藍雷夏
俺のプライベート空間にまたしても居候が増えた。
「愛してるー、ダーリーン」
全身青タイツと魔女帽子をまとったコスプレイヤー、ブルー。
「うるさい、棒読みで何言ってんだ」
「私の住み家は押し入れの下を貰うから。ありがとうダーリン。お休みなさい」
そう言うと、逃げる様に押し入れの扉を開けて中へと入って行く自称俺の嫁。
「ちょっと待て、お前は無敵の人か? いや、無敵な魔女か? 人の話を…あ! こら、押し入れに逃げ込むなフルー!」
「来ないで、私今は失業者で傷心中なの。追って来ないでお休みダーリン」
ピシャッ!
「……あいつ人の話も聞かないで好き勝手自分の寝床《ねどこ》をゲットしやがって。明日の朝は覚えてろよ」
「おー、ご主人様は大変じゅのう。わらわとテレビでも見て癒されよ」
『違法就労に違法滞在及び、コンビニ、ダンジョン管理局放火の疑いで逃走中の店長一味ですが、一度は警察に捕まりましたが、容疑者護送中に警察の隙を突き都内に逃亡したとのことです。また管理局全焼の共犯とされる黒崎容疑者の行方も警察内では――――』
「……お前もお前でなんで呑気にテレビ見てるんだよ。もう夜なんだから近所迷惑だろう。音量下げなさい」
そんで何やってんだ? 店長。
「お~! すまぬ、すまぬ。そろそろ寝るのかのう?」
「そうだよ。布団は畳んであるアル専用のを使えよ。お休み」
「うむ。お休みなのじゃあ~!」
「今日も夜は暑いので寝る時は人間モードで全裸になるのじゃ」
家族が増えた。金がいる。
大食らいのドラゴン娘とスイーツ大好きアホ魔女さんだ。金が入る。
「ご主人様の布団の中に入るのじゃ。モゾモゾ……」
おそらく初心者ダンジョンで、新エリア発見、新素材、フロア踏破はかなりの実績になるため探索者ランクは1つくらいは上がる。よりランクが高いダンジョンに入れれば=より金が手に入る。
「背中に張り付いて眠るのじゃ。お休みなさいじゃ、わらわのご主人様よ…ごぎゃああああ、ぐおおおおお!!」
それにしても殺気から背中にフニュ、プニュと柔らかい何かが当たって騒音があるが、何なんだ?……いや、今日は体はともかく脳が疲れた。寝よう。
「ぐおおおおおおおお!!!!」
「それと強くもならないと、そうじゃないとこいつらを養《やし》う金すら作れない……うるさっ!」
ポヨン。
朝。
起きたらアルビオンは裸だった。
「おはようございますなのじゃ、ご主人様よう」
「お前……毎回毎回何してんの? なんで裸で俺に抱きついて寝てんのよ? 大好きか?」
「ふわぁ~! 眠いのう……うむ。わらわはご主人様の家は大好きじゃぞ、家出先としてここは最高の隠れ家じゃ」
大きな欠伸しながら言うな。
つうかお乳を揺らすな。
「……お前。とうとう家出したこと隠す気もなくなったのか? つうか寝ぼけた状態で言うなよ」
「ご主人様の抱き心地が良かったから良く眠れたのじゃ。それよりもご主人様は強くなりたいんじゃな。よかろう、わらわが龍人へと魔改造中のご主人様に強くなる術を教えてやるのじゃぞ」
「……先に服を着ろよ」
「のじゃ?」
「ふわぁ~! おはようダーリン」
たぷんっ!
「おい……なんでお前も裸なんだよ。服着ろよ」
「魔女?」
ちなみにこの日の早朝は謎の窓からの射光の煌びやかな光により、居候ズの裸体は肉眼で見ることはできなかった。
なぜだろうか?
どんな魔法なんだろうか?
「私がダーリンに「女の子の裸を見れない」魔法をかけたからだよ。朝からエッチは駄目だよ。ダーリン」
「……フルー、今日のお前の朝飯前抜きな」
「なんで? ダーリン。嫌だっちゃ♡」
「……………………ラムちゃんかよ。古、フルーお前歳って…んもぉ!?」
口元を押さえつけられた。止めろ、胸が当たったてんだろう!
「な、な、内緒だけど?」
そしてなぜにそんな慌ててんだ?
朝から変な魔法をかけやがって、こんちくしょう。
◇
「ひいぃぃ、アハハハ!! それで朝から3…ふきゃぁ!?」
ごちんっ! ごちんっ! ごちんっ!
「なんで、愛莉ちゃんの頭を3回も叩くの? 可哀想でしょう?」
「いや、卑猥なこと言いそうになれば叩くだろう。ここ食堂で皆の目もあるし」
「そんなの酷いよ~! ボクってこんなに可愛いのに」
「……うわぁ、うざぁ」
なんだこの完璧な角度での「ボクって、世界一可愛いでしょう?」みたいな目は。
「酷くなぁい? ねえ? シルフィーちゃん」
「うん、すごいよ。これで男の子の女装じゃなかったら完璧だったね」
「え~! それってボクが今日も可愛いってこと? 照れちゃうな~!」
現在、昼過ぎ。
俺はシルフィーと愛莉(男だ)たちと大学の食堂で飯を食べていた。
シルフィーとは最近色々とあって俺のことについて話せていなかったため、事情を説明した。
アルとフルーが家で居候していることには、なぜかめちゃくちゃ怒っていたが。その後今度の休みの日に一緒に出かけることを条件に許してもらえた。
勿論2人で出かけるということは金が必要になる。シルフィーにお金を出させるわけにもいかんのよ。
「ともかく早急に金がいるか。今日にでもダンジョン管理局に行って、探索者ランクアップの申請を……」
「無理じゃない? 竜籠君がいつも使ってた新宿のダンジョン管理局全焼したらしいから、転移門も全封鎖」
「……なにぃ?」
おいおいおいおい、待て待て待て待て。
「うん。ニュースにもなってたよ。ほら~」
「あ、シルフィーもそのニュース見たよ。ほら」
俺に向かってスマホを向けて来る学友2人、マジだった。
「いやいや、管理局が全焼したのは知っているが、ダンジョンの転移門は別だ。あそこは人知を越えた不思議パワーで結界が張られているから、あそこの出入りは自由だったはずだぞ」
ダンジョン管理局を出入りする奴らは荒くれ者が多いため、管理局の施設内は月一で全焼する。
探索者の中ではありふれた日常だ。
「ダンジョンに潜って金策ができない? それじゃどうやって貧乏学生の俺が、あんな大喰らいドラゴン娘とブランド力の塊娘の金を賄うってんだ? 自己破産するしかない…だと!?」
アルバイトでもさせるか?
いやいや、現代社会の常識もろくに守れない奴らだぞ?
建物を平気で放火して捕まるだけだ。
あいつ等にアルバイトなんて絶対無理だ!
大事件でも起こされてどのみち俺に全ての責任がのし掛かってくる未来しか見えんわ。
「……あ~でもダンジョン管理局の新しい建物が建つまでの間は、仮管理局としてこの大学に拠点を置くんだって」
「…………なにぃ?」
そんな話初耳だ。
普通、管理局が置かれる場所はダンジョンの転移門がある場所で――――
「まさかあるのか? この大学にも? ダンジョン」
「そうそう、あるよ。知らなかった? 陽子教授って人が昔から管理してる歴史あるダンジョンなんだって」
大学内地図アプリを俺に見せながら、ダンジョン位置を教えてくれる愛莉。
マ、マジだ。たしかにダンジョンマークが表示されてる。
「いや、そんな話ぜんぜん。シルフィー知ってたか?」
「ぜんぜん知らないよ~! シルフィーが大学通うのは真也くんが居るからだし、他のことなんて興味ないもん。行くの? ダンジョン、駄目だよ危険だよ。シルフィー、真也くんに新しい女の子との出会いなんて許さないもん」
目の中のハイライトが消えた病んだシルフィーが俺を逃がすまいと手首に何かをかけ始める。
「おい! シルフィーこれ外せ。手錠だろう?」
「だーめー、シルフィー、真也くんのこれ以上の浮気は許さない、真也くんはシルフィーが管理するの~」
目が笑ってねえんだわ。怖いんだわシルフィー。
「アハハハ!! それなら3人で行ってみる?亲切一応ボクとシルフィーちゃんも探索者登録はしてるし、初心者ダンジョンなら行けるでしょう」
「……だな。おい、首輪まで俺に装着しようとするな。怖いわ…止め、止めろ………ん? 電話?」
俺のスマホがバイブレーションし、シルフィーの病んだ奇行が幕を下ろした。
『あ~! もしもし魔道具開発局……つうか大学内にあるダンジョン研究会なんですけど。君から預かった「結晶虎」の素材で新しい魔道具が完成したから取りに来てね。真也っち―――ピッ』
「は? 何だって? はずき」
魔道具研究の第一人者で友達のはずきから連絡が来た。
……が、俺はそれを無視して大学キャンパス内にあるダンジョン管理局(仮)へと急ぐのだった。
「うんなぁ、謎素材でできた魔道具よりも、目先の金優先よ」
「うわ~! 守銭奴。相変わらず性格アレだね。竜籠君は」
「そ、そんなにお金に困ってるなら、シルフィーが真也くんの財布の紐になってあるげるのに、結婚する?」
「いや、シルフィーの目が怖いからいいわ。あ、やっぱり居た。
「「その女だれ?」」
シルフィーと凪咲の声がハモる。
こいつら初対面なのに仲良いな。
とういうわけで、俺は大学ダンジョンへと挑むことにした。
◎ここまでお読み頂きありがとうございます!
「ていうか、何で食事中ずっと空気椅子してるの?」
「龍魔法の師匠(アル)から日常修行しろって言われてな」
「……それで修行になるの?」
「ねぇ、電話から女の子の声がしたけど誰なの? 真也くん? 浮気は駄目だよ。ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?」