伝統を愛する君となら   作:桜紅月音

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10話 Reflection in the mirror(リフレクションインザミラー)

 

花ちゃん先輩に『逆さまの歌』を探して欲しいと頼んでから、僕はなるべく吟と一緒に行動していた。

 

「はぁ…」

 

吟はあの日から、ずっとため息を吐く日を過ごしていた。

 

「吟」

 

「…綾羽…何か用…?」

 

「おお…随分とやつれてるなぁ…」

 

明らかに元気がないのが分かった。

 

「だって…逆さまの歌が無かった…だから、私があそこに居る意味なんてない…はぁ…」

 

花ちゃん先輩…本当にお願いしますよ…今の吟をなんとか出来るのは花ちゃん先輩だけ…だと思うから…

 

それから数日後。花ちゃん先輩から連絡が入った。

 

『逆さまの歌』を見つけたという物だった。

そして、吟を連れて部室に来て欲しいというメッセージも付けて。

 

「吟」

 

「今日は何…」

 

「花ちゃん先輩が吟と話がしたいって」

 

僕はそう言って、吟に花ちゃん先輩とのメッセージを見せる。

 

「分かった」

 

そして、吟を引き連れて部室までやってきた。

吟が先に部室に入り、続けて僕も入った。

 

「吟子ちゃん!来てくれたんだ」

 

「…話がしたいと言われたら、私も、いろいろと迷惑をかけたし」

 

「迷惑なんて、そんなことないよ、でも、ありがとうね」

 

「…それで、なんの話?スクールアイドルのことなら、もうきっぱり言ったはずだけど」

 

「あのね、見つかったんだ。吟子ちゃんのおばあちゃんが……吟子ちゃんが、大好きだった曲が」

 

花ちゃん先輩がそう言うと、吟は驚きの表情を浮かべた。

 

「吟子ちゃんのおばあちゃんが…吟子ちゃんが、大好きだった曲が」

 

やっぱりあったんだ。50年経っている今でも

 

「『逆さまの歌』、今に伝わってる名前は、こう。あたしが、スリーズブーケになれた後、初めて歌った曲。あたしの大好きな歌。50年の月日の中で、歌詞やメロディ、タイトルを少しずつ変えながら、でも、たしかに今に続いてた。そのタイトルは――『Reflection in the mirror(リフレクションインザミラー)」

 

花ちゃん先輩はそう言って、先輩本人も言っていたが、キーボードで慣れない手つきながらもその曲を演奏してくれた。そして、花ちゃん先輩が歌い終わると。

 

でも、その曲は僕や吟が知ってる曲とは全然違うものだった。

 

「そんな…そんなの…ぜんぜん違う!歌詞も違う、メロディも違う、タイトルも違う。おばあちゃんの愛した曲じゃない!別物だよ!」

 

「……そうかもね」

 

花ちゃん先輩がそう言うと、吟は戸惑いを隠せなかった。

 

「最初にあった曲が、長い年月をかけて、少しずつ変わっていって、今じゃタイトルも違う。残ってる部分のほうが少ないかも。あたしは同じ曲だと思うけど…吟子ちゃん、綾羽君にとっては、違うかもしれない」

 

「だったら……」

 

「でも、思うんだ。それでもこの曲が今も伝わってるのは、みんな、この曲が大好きだったからだ、って」

 

花ちゃん先輩がそう言うと、吟はハッとした。

 

「最初に逆さまの歌を変えた子は、この曲をもっと素敵な歌にしようと。がんばったんだよ。頭を悩ませて、一生懸命。次の子も、その次の子も、ずっとずっと、この曲は、ただ変わったんじゃない。スクールアイドルの、積み重なった想いで、姿と形を変えていったんだ!」

 

花ちゃん先輩は、吟の目をまっすぐ見てそう言った。

 

「吟子ちゃんのおばあちゃんが愛した曲は、誰も忘れてなんかいない。こんなにもたくさんの人に愛されて、今に繋がってるんだよ」

 

「おばあちゃん……」

 

花ちゃん先輩の言葉を聞いて、吟もだと思うが。吟のおばあちゃんが話してくれた当時の話を思い出した。

 

「スクールアイドルだって、おんなじ。あたしはそう思う。時代が変わっても、人が変わってもね。蓮ノ空で過ごすみんなの気持ちは、一緒だよ。あたしがセンパイから教わって、センパイがそのまたセンパイから教わって………。泣いたり笑ったりを繰り返して、みんな、今を駆け抜けてきたんだ!」

 

「それが、芸楽部の魂ってことじゃないかな!」

 

「…なんで、なんでですか、先輩…どうして私に、ここまでしてくれるんですか…ただの、知り合ったばかりの後輩のために、こんなに……」

 

吟は花ちゃん先輩にそう聞いた。

 

「ある人にお願いされたんだ、『逆さまの歌』を探して欲しいって、それに、あたし、先輩だもん!」

 

花ちゃん先輩は僕の事を見てそう言った。

先輩…こっち見ながら言われるとバレちゃうよ…

 

「それに、吟子ちゃんみたいな子を笑顔にしたくて、あたしはスクールアイドルをしてるんだよ。それがあたしにとっての。花咲くってことだから。……ね、吟子ちゃん。ここは、ちゃんと吟子ちゃんの知ってる芸楽部だよ。だからもう、大丈夫。心配いらないよ。なんだって、できるんだよ! だから……その上で、もし吟子ちゃんがスクールアイドルをしたいんだったら、一緒にやろうよ! スリーズブーケ!ぜったい、楽しませてみせるから!」

 

花ちゃん先輩はそう言って、吟に手を差し伸べてくれた。

 

「一緒に、想いを未来に届けよう!吟子ちゃん!」

 

そして、吟は花ちゃん先輩の手を取った。

 

「はい。よろしくお願いします…………私の、先輩」

 

吟はそのまま花ちゃん先輩に抱き着いた。

 

 




-幕間-

「めぐちゃん居るのか…」

「あれっ?嬉しくないの?」

「ルリちゃん先輩…そういう訳じゃないんですけど…昔、作曲を頼まれた事があって…色々とあって断った事が_」

「あーなるほど。めぐちゃん多分気にしてないよ」

「だと良いんですけど…」

翌日

「綾羽!!あの時はよくも、めぐちゃんのお願いを断りやがって!!」

「やっぱり根に持ってた!!」

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