床に寝転がっていた所を見られてしまい、冷静さを失っていた吟をなんとか先輩と落ち着かせて席に座らせて_
「お見苦しい所を…」
「えーと、さっきのは…」
先輩は、困惑の表情を浮かべながら吟に向かってそう聞いた。
「…蓮ノ空の、伝統を、感じたくて…」
「伝統…?」
先輩がそう聞くと、吟はさっきのが恥ずかしかったのが、身体をプルプルと振るわせていた。
「あ、あの、あたし、そうだ!紅茶いれてあげるね!」
先輩はそう言って、席を立って紅茶を淹れてくれる。
なんと気遣いの出来る先輩なのだろうか
「あっ、ポットにお水入ってない!えーと、えーと、茶葉はどれがいんだっけ…」
……大丈夫かな…この先輩。
「確か、ティーポットにこれぐらいの量を入れて、いたような…!いや、でもちょっとだけお湯の注いで、蒸らす…!?」
慌てだす先輩。
「吟…この先輩、ちょっとあれだね…」
「思ってても言わないの」
先輩には聞こえない声で耳元で話し合う僕と吟。
「ご、ごめん!ティーバックでもいいかな!?」
「あの、お構いなく……」
「はい、問題ないです」
そして、色々あったけど、僕達の前にはカップが置かれていた。
「あはは……えーと、一年生の子、だよね?もしかして、入部希望……だったりする?」
「…はい。…不法侵入者が、許されるのなら」
自覚あったんかい。
「だ、大丈夫だよ!鍵かかってなかったんだし、つい入っちゃうときってあるよね!」
あ~やっぱりこの先輩、良い人だわ。
手のひらくるくるしてるけど。
「で、キミも入部希望?」
「いえ…僕は付き添い_」
僕がそう言うと、僕の足に痛みを感じた。
足元を見ると。吟がしっかりと踏んできていた。
本当に入れって言ってんのか
「いえ、そうです。マネージャーを募集してるなら…ですけど…」
「あー助かるよ!ライブする時に人手が足りない時があってねーえへへ」
この先輩、笑顔まで素敵なんて思っていると、隣の吟がもの凄い形相で睨んできていた。
吟さ、そんなに睨んでこなくていいじゃん…
「名前教えてもらっていいかな?」
「あっ、すみません、百生吟子、です。吟ずるに子と書いて、吟子です」
「僕は、堀川綾羽です。吟子とは幼馴染です」
「吟子ちゃんに綾羽君!そして幼馴染なんだね!あたしは二年生の日野下花帆だよ。よろしくね!」
「…はい」
「こちらこそよろしくお願いします。日野下先輩」
「うん!」
お互いに挨拶を交わして、次に声を出したのは吟だった。
「…あの、入部テストとか、あるの?あっ…ある、んですか?」
タジタジな吟を見て、内心笑ってしまった。
「えーそんなのないよーあ、だったら、志望動機とか聞いてみたいな!」
「志望動機…」
「うん、二人はどうしてスクールアイドルクラブを志望したんですか?ってやつ!なんでもいいよ!」
日野下先輩にそう言われた吟は、自分の中から手帳を取り出してきた。
あっ、あれか。色々と書いてたもんね
『…手帳?『目指せ、№1スクールアイドル!』…?」
その時、吟の持っていた手帳から挟んでいた紙が机の上に散らばってしまった。
「す、すみません、挟んでいた紙が散らばって、すみません」
「これって…もしかして、衣装デザイン?こんなに、いっぱい!?」
先輩は、一つの紙を手に取ってそう言った。
「その…二人で作った力作を集めてきました。すべてが会心の出来、というわけでは…ありませんが…」
「吟、そこはもっと自信持ったらいいのに」
「無理やって…!」
「あはは、二人って本当に仲が良いんだね」
「そういう訳じゃ……こほんっ、私は、この蓮ノ空学院に入学することが、夢でした。この学校で、立派なスクールアイドルになりたいです」
「ーー!」
「若輩者ですがーー目標は、ラブライブ!優勝です。この学校なら、それが叶えられると信じています」
吟はそう言い切った。
「ね」
「ねっ?」
「熱意っ!」
おや…先輩の雰囲気が変わったような…
「ね!吟子ちゃん!綾羽君!あたしたちと一緒にーー!スクールアイドルやろうよ!」
『……え?』
******
あの後、先輩には『考えさせてください』とだけ伝えて、二人で寮に向けて歩いていた。
どうやら、吟はさっきの事で相談したいとの事だった。
「良かったん?そのまま入ります!って言っても問題無かったと思うけど」
「うん…ちょっと先輩の勢いが…」
「まーあんな勢いでこられたらびっくりしちゃうか、ほれ」
「ありがと」
自販機で買った缶コーヒーを吟に渡す。
「後悔のない選択をすればいいと思うよ。僕は」
「うん…ありがとね。相談に乗ってくれて」
「いいって、ついでだし、女子寮の入り口まで送って行くよ」
「そんな事したら、綾羽の印象悪くならない?」
「大丈夫だと思うよ。女子寮の中に入る訳じゃないし」
何を心配してるんだが…どっちかというと、僕とどんな関係なんですかと吟が聞かれる羽目になりそうだけど。
「綾羽がいいならいいけど」
なんて会話をしていたら、女子寮の入り口まで来ていた。
「それじゃあ。また明日。教室で」
「うん、明日じゃないけどね。後で電話するから」
「寝かせてくれないのかよ…」
「うん、私の話にずっと付き合ってもらうから」
「えぇ…」
この後、自分の部屋に戻って、後は寝るだけのタイミングで電話がかかってきて。寝たのは0時近くだった。
百生吟子
この作品のヒロイン候補の一人
主人公である綾羽と幼馴染。
綾羽に不本意に強く当たってしまう事もしばしば…しかし、それでもずっと優しく接してくれる綾羽の事を好意に思っている。
また、綾羽が違う女の子と話しているのを見ると、すぐ嫉妬してしまう。
付けている髪飾りは、綾羽が作ってくれたものなので一番大事に使っている。↑(公式設定では、祖母から教えてもらって吟子が自作している)