次の日、僕と吟は日野下先輩に連れられるがまま、付いて行くとそこには、一年生男子の中で何かと話題の乙宗梢先輩が居た。
「じゃーん!このすっごい美人の三年生が、乙宗梢センパイ!あたしと一緒に、スリーズブーケっていうユニットをやっているんだ!文武両道!容姿端麗!なんでもできちゃうんだよ!」
日野下先輩は自信満々にそう言っていた。
確かに、乙宗先輩なら分かるなうんうん
「は、初めまして!蓮ノ空学院一年生、百生吟子です!どうぞ、よろしくお願いします!」
「同じく一年生の堀川綾羽です」
乙宗先輩に二人でそう挨拶をして、頭を下げる。
「…少し、花帆が大げさに紹介してくれたけれど、乙宗梢よ、よろしくね。吟子さん。綾羽君」
乙宗先輩がそう言うと、日野下先輩が近づいてきて
「…どう?梢センパイと一緒なんだよ?吟子ちゃんも綾羽君も、スクールアイドルクラブ入りたくなってきたでしょ?」
「それはどうなんでしょうかね」
「ええ!?なんでっ!?」
僕の言葉に驚く日野下先輩。そんなに驚くような事なのかな。
「花帆さん」
「あっ、いえ、なんでもないです!」
うん…多分、何かあったなこれ
詳しくは聞かない事にしておくけど。
「それじゃあ、吟子さんの基礎練習についてだけれど、当面の指導は、花帆にお願いするわね」
どうやら吟の指導は、日野下先輩が就く様子だ。
「えっ?あっ、はい!わかりました!」
「二年生らしいところを見せてあげてちょうだい、ね?」
「~~っ、はい!いこっ、吟子ちゃん」
「は、はい」
吟は日野下先輩に付いて行った。
「それじゃあ、マネージャー志望の綾羽君の指導は私がするわね」
「はいっ!お願いします乙宗先輩」
「ふふっ、梢でいいわよ」
「え、下の名前呼びでも構わないんですか?」
「ええ、その方が良いからかしら」
「分かりました。では、梢先輩。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」
「ふふっ、頼もしいわね。それじゃあ、移動しましょうか」
僕は、梢先輩と共に、吟と日野下先輩の後を追った。
「それじゃあ、まずは基礎練習だよ、吟子ちゃん!最初から楽しい応用編をやりたいのはわかるけど、なんでも大事なのは基礎なんだからね!」
「いえ、基礎の大切は、わかってますけど……」
「あ、そ、そう?そうだよね。じゃあね。最初は柔軟から!」
日野下先輩と吟の練習が始まるの同時に、僕は梢先輩に声をかけられていた。
「綾羽君、もし間違いだったら申し訳ないのだけれど…あなたって動画サイトに曲を出してます。」
「ええ、趣味の範囲でやってたんですけど、気づいたらこんな事に…」
「そうなのね。私たちのクラスでも話題なのよ」
「そうなんですね。どんな風に話題になってるんですか?」
僕は、梢先輩にそう聞き返すと、先輩は『なんで僕が蓮ノ空なんかに』だとか『一番の話題の男の子。つまり僕に彼女が居るとかなんとか』って話を聞いた。いや、後者の話ってなんなの
「つまりね…みんな、あなたと吟子さんが…その、付き合ってるんじゃないかって噂でいっぱいなのよ…」
「初日からずっと一緒に居ましたし…そういう噂が立っても仕方ないですよね。先に言っておきますけど、付き合ってはないですからね僕達。幼馴染の関係なので距離は近いですけど…」
「分かったわ。私からもそう言っておくわ。それともう一ついいかしら?」
「はい?」
「その…ね、私も、綾羽君のファンなの…!だから」
梢先輩は、そう言ってどこから出してきたのが分からない色紙を出してきた。
「これにサインを貰えないかしら!」
「サイン…ですか」
「もちろん、嫌なら断ってくれてもいいわ」
「いやいや、サインを求められて僕はとっても嬉しいので、書かせてもらいますよ。ペン持ってます?」
「ここに!」
梢先輩からペンを貰って、色紙にサインを書いていく。
顔出ししてるとはいえ、イベントをした事は無いから何げに初めて書いたサインだ。
「ありがと!一生の宝物にするわ」
「そこまで言ってもらえるなんて思ってなかったです…」
梢先輩の喜びようにこっちまで嬉しくなってしまう。
なんて思っていると、吟と日野下先輩が近くまでやってきた。
「ちょっと梢先輩!?綾羽君ばっかり構うのはずるいですって!あたしたちも見てくださいよ!」
「綾羽もデレデレしないの!」
二人とも怒っていた。
「ごめんなさい。綾羽君は私の好きな配信者なの」
「綾羽君!配信者だったの!?」
今度はこっちに近寄ってきて、笑顔をパッとさせて聞いてきた。
「先輩!近すぎ」
すぐさま吟が、僕と日野下先輩の間に入ってきた。
「えっと…そうですね。趣味の範囲でやってたんですけど…」
僕はそう言って、自身のスマホを操作して、アカウントを先輩に見せた。
「えっと…1,10_」
「日野下先輩…?」
恐らく、チャンネル登録者を数えているとは思うけど、日野下先輩が10まで数えると固まってしまった。
「100万人!?」
「はい…色んな人のおかげで…」
すると、日野下先輩は吟を押しのけて、僕の腕を取って
「綾羽君!あたしね!100万人でライブするの!それが、あたしたちの目標なの!」
「はい?」
「だからね!綾羽君、あたしたちに協力してくれないかな?」
「…もちろん、スクールアイドルクラブに入るのなら、皆さんの事を支える限りですよ」
乙宗梢
103期~104期クラブの部長を務める先輩。
配信者綾羽の大ファンである。
マネージャー志望って聞いた時は物凄い喜んでいた姿を同級生に見られていたとかなんとか。