伝統を愛する君となら   作:桜紅月音

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4話 先輩のあだ名

 

-次の日の放課後-

 

「昨日までの練習メニューは……こう、だから……ちゃんとしっかり、復習、を……」

 

「おーぎっしりと書き込んでる」

 

中庭にあるベンチに二人で座って、吟の手帳を覗き込むとそこには、昨日、日野下先輩に教えてもらった事を全てとまでは言わないけど、しっかりと書き込んでいた。流石吟である。

 

「それはそうでしょ。というか、綾羽はなんでここにおるの」

 

「いやいや…目で付いて来てってテレパシーを送ってきたでしょうに」

 

え~教室から出る時に、僕の事をジッと見てきたですやん。

 

「私、そんなんできひんって」

 

周りに誰かが居たら意味が分からない会話を繰り広げていると、僕達に声をかけてくる勇気のある人が

 

「ぎーんこちゃんっと綾羽君!」

 

「うわあああ!!」

 

「びっくりした…って日野下先輩じゃないですかー驚かないでくださいよーもう」

 

いきなり過ぎて、驚く吟と僕。心臓が止まるかと思ったわ

 

「か、花帆先輩!? なにしとらん!?」

 

「しとらん?」

 

「な……なんでもない、です。…………ていうか、な、なに?部室には、今から行きます。けど」

 

「それより!今の手帳すごかったね!あたしの言ったこと、ぜんぶメモってくれてたの!?」

 

「〜〜っ! そ、それは!」

 

吟…僕以外に見られたくなかったのか、恥ずかしかっているな

 

「そりゃ、スクールアイドルの先輩からの、お言葉、だし……」

 

「吟子ちゃん……かわいい!」

 

「日野下先輩も分かってくれる…!そうなんですよ吟って可愛いんですよ!」

 

いやぁ~吟の可愛い所を分かってくれる先輩が居て良かった。

 

「は、はあ!? 可愛いなんて// て、ていうか!なんなの!なんなんですか!いっつも距離が近い、ですけど!」

 

「ええー?そんなことないよ。ふつーだよー」

 

「そういうの、困る……」

 

「えっ、嫌だった!?ごめんね!」

 

吟が嫌そうな表情を浮かべたから、日野下先輩が謝ってきた。

 

「〜〜っ、そうじゃなくて……。その………。私………。今まで、綾羽以外の年の近い人と、あんまり仲良かったことなくて……」

 

「そうなの?」

 

「地元でも、じいじ、ばあば……年配の方とは、楽しくお喋りできるんだけど。同年代の友達とか、いないし……作り方も、わかんないし………」

 

「そっかぁ。だったら……うん、決めた! あたしが吟子ちゃんのお友達になるよ!」

 

「え?……は?」

 

日野下先輩の言葉に、吟から戸惑いの声が漏れていた。

 

「いいじゃん。吟、友達作るの」

 

「綾羽まで…」

 

「友達みたいに接してもらえばいいからさ。そうしたら、吟子ちゃんとも、もっと仲良くなれるでしょ? あたし、吟子ちゃんのこともっと知りたいんだ!」

 

「ほら、まずはやってみて!」

 

日野下先輩に急かさせる吟。

 

「そう言われても……………」

 

「じゃあじゃあ、試しに『花帆ちゃん』って呼んでみるのは? あ、敬語もなくて大丈夫だよ!」

 

それは_僕でも出来ないです。

日野下先輩は優しいから言っても問題はないとは思うけど

 

「先輩……それは、さすがに……………」

 

「もう一声!」

 

「……………か、花帆先輩」

 

「うんうん」

 

「もう、なんなんですかこれ!芸の世界において「上下関係は絶対」っていうのが、伝統なのに!」

 

「あたし、そういうの知らないし! あ、でも、吟子ちゃんが嫌だったら、無理矢理とは言わないからね?吟子ちゃんの気に入るやり方でいこうね。あたし、吟子ちゃんのことをしっかり考えるから!」

 

「あーもう! ぐいぐい来すぎ! わかった、わかりましたから! でも、花帆先輩呼びまで!それでいいですよね!?」

 

「うん、わかった!ありがと!」

 

「ヘンな人……なんでそっちがお礼言うんですか……」

 

日野下先輩の対応に、吟は困惑していた。

 

「ほら、部活いきますよ!部活!」

 

「えへへ」

 

「…………今度は、なんですかー」

 

「なんだか、吟子ちゃんとちょっと仲良くなれた気がして、嬉しいなーって」

 

「む、むう……………」

 

「これからも吟子ちゃんのこと、ずーっと見てるからね!」

 

そして、僕達は部室に向かおうとした。

 

「そうだ!綾羽君もさ、あたしの事花帆って呼んでくれていいからね」

 

「そうですね~吟も呼ぶようになりましたし…でも、ただ花帆先輩って言うのも…」

 

「なんか良い名前ってある感じかな?」

 

「う~ん…そうだっ!」

 

僕は咄嗟に思いついた。

 

「花ちゃん先輩とかどうです?」

 

「おー!それとってもいい!」

 

「じゃあ、今から花帆先輩の事、花ちゃん先輩って呼びますね」

 

「うんうん!」

 

「なんなんこれ…」

 

僕と花帆先輩のやり取りに困惑の表情を浮かべる吟なのであった。

 





日野下花帆

吟子と綾羽と一つ上の先輩。

誰にでも明るく接する性格で、吟子と綾羽をスクールアイドルクラブに引き込む。
そして、綾羽と意気投合する事に成功し、距離が近い為。吟子の嫉妬深さを上げる原因の1人になる。
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