今日は、ライブで使うステージ制作をして、部室に戻ってきた。
「ふいーおつかれさま~~~」
「お疲れ様です。きょうは、ステージ制作も、ずいぶん進んだね」
「ステージ制作ってこんな感じでやっていくんですね」
「うん!あともう一息って感じ!ふふっ、吟子ちゃんは楽しそうだったね。ペンキ塗りながら、鼻歌歌ってたよ」
「…歌ってないけど」
「え~足場の上に居たけど、吟の歌聞こえてきたけど?」
「綾羽の気のせいなんじゃないの」
相変わらず当たりが強い…
「綾羽君の言う通り、歌ってたよー物作りって、楽しいよね!」
「楽しいですね、歌ってませんけど」
そこまでして言い張りたいのかよ…
「あたしもね、スクールアイドルクラブに入って初めてのことばっかりだったけど、ひとつひとつ丁寧に梢センパイが教えてくれたから!なんとかやってこれたんだ!」
「そうですか」
「だからね、吟子ちゃんも、なんでもあたしに頼ってくれてもいいからね!」
「そこまで言って貰えると、頼りがいがありますよ花ちゃん先輩」
「えへへ~綾羽君ももっと頼ってくれていいんだからね!あたし、先輩だから!」
段々と花ちゃん先輩の事が分かってきたような気がする。
「…確かに、梢先輩は、すごく雰囲気ありますよね、二年生の頃から、あんなに雅やかな方だったんですか?」
「みやびやか?」
「…上品で優雅、という意味です」
「それはもう!すごいんだよ梢センパイは!なんでもできちゃうし、なにやっても大人っぽくて美しいの!あたしが去年の梢センパイと同じ年だなんて、信じられないぐらい!」
「わかった、わかりましたから、もう、梢先輩の話になると、すぐ熱が入るんだから…」
「えへへ。吟子ちゃんにも、センパイのすごさをわかってほしくて。あたしとはほんとに、ぜーんぜん違うんだから」
花ちゃん先輩、本当に梢先輩の事、尊敬してるんだって事がよく伝わってくる。
でも_
「花ちゃん先輩も僕から見たらちゃんとしてますよ」
「そんな事ないよ~梢先輩に比べたら…あたしなんて…まだまだ…だよ」
「梢先輩は偉大過ぎますって…」
花ちゃん先輩の言う通りなんだけど、あの先輩は偉大的な存在だよ本当に
「あーそうだった!忘れてた!そろそろライブの曲決めなきゃ、練習時間なくなっちゃう!昨日、梢センパイに言われたのにー!」
うん…ちゃんとしてるのかしてないのか分からなくなってしまった…
「ねえねえ、吟子ちゃんはどんな歌がいい?」
「えっ…?花帆先輩、作曲もできるの?」
「ええっ!? で、できないよぉ!お、お手伝いしたことは、あるんだけど……。梢センパイに、キーボードをね、少しずつ教わってて…」
「楽器弾けるんだ…花帆先輩、すごい…」
花ちゃん先輩の言葉に目を輝かせている吟。
吟も、ちょっとだけならピアノ弾けるのにね。
「ぜんぜん!まだ、ぜんぜんへたっぴだから!あ、だからね!今回は、今ある曲の中から選ぼうね!」
花ちゃん先輩は、そう言ってリストを手に持っていた。
「今ある、蓮ノ空の曲…!あ、あの!リストを見せてもらっても、いい!?」
吟は、花ちゃん先輩にそう聞く。
「え?うん、大丈夫だよ、そんなに焦らなくても、曲は逃げないからーー」
花ちゃん先輩から貰った曲のリストを吟と二人で見ていく。
「今ある曲…今ある曲…あれ…」
「吟子ちゃん?」
「あの、これって、スリーズブーケのリストだよね?DOLLCHESTRAと、みらくらぱーく!のも、見せてもらってもいい? いいですか?」
吟はそう言って、花ちゃん先輩から他の2つのユニットの曲リストを貰う。
「吟…ないよね…あの曲…」
「…ない。あの歌も、あの歌もどこにも…」
吟は、僕の言葉に合わせて言い、呆然状態に…
「吟子ちゃん?綾羽君?えと、タイトルで気になる物があったら、曲を流すこともできるけど…」
花ちゃん先輩がそう声をかけてくれたけど、吟も含めて僕も固まってしまった。
「え、えっと…?」
「あ。ごめんなさい、花帆先輩。きょうは、帰ります…お疲れさまでした…」
「えっ、う、うん」
吟はそう言って、席を立ち、部室を後にする。
「う、うん……。えと、また明日ね!」
吟が部室から去っていくのを確認して
「花ちゃん先輩…あのリスト以外に曲はないんですよね…」
「えっ、う、うん、あたしが知ってる限りだとね」
「ですよね…」
「えっと…吟子ちゃんに何かあったの…?」
「無かったんですよ…」
「えっ?」
「吟が探していた曲が_『逆さまの歌』が_」
「逆さまの歌…?」
その時、下校のチャイムが鳴った。
「あっ…下校しないとですね…花ちゃん先輩…お疲れ様です」
「えっ、あっ、うん…お疲れ様…」
僕は花ちゃん先輩に頭を下げて、吟の事を追いかけた。
「綾羽君…吟子ちゃん………逆さまの歌………」