伝統を愛する君となら   作:桜紅月音

8 / 13
8話 過去と今

 

今日は、ライブで使うステージ制作をして、部室に戻ってきた。

 

「ふいーおつかれさま~~~」

 

「お疲れ様です。きょうは、ステージ制作も、ずいぶん進んだね」

 

「ステージ制作ってこんな感じでやっていくんですね」

 

「うん!あともう一息って感じ!ふふっ、吟子ちゃんは楽しそうだったね。ペンキ塗りながら、鼻歌歌ってたよ」

 

「…歌ってないけど」

 

「え~足場の上に居たけど、吟の歌聞こえてきたけど?」

 

「綾羽の気のせいなんじゃないの」

 

相変わらず当たりが強い…

 

「綾羽君の言う通り、歌ってたよー物作りって、楽しいよね!」

 

「楽しいですね、歌ってませんけど」

 

そこまでして言い張りたいのかよ…

 

「あたしもね、スクールアイドルクラブに入って初めてのことばっかりだったけど、ひとつひとつ丁寧に梢センパイが教えてくれたから!なんとかやってこれたんだ!」

 

「そうですか」

 

「だからね、吟子ちゃんも、なんでもあたしに頼ってくれてもいいからね!」

 

「そこまで言って貰えると、頼りがいがありますよ花ちゃん先輩」

 

「えへへ~綾羽君ももっと頼ってくれていいんだからね!あたし、先輩だから!」

 

段々と花ちゃん先輩の事が分かってきたような気がする。

 

「…確かに、梢先輩は、すごく雰囲気ありますよね、二年生の頃から、あんなに雅やかな方だったんですか?」

 

「みやびやか?」

 

「…上品で優雅、という意味です」

 

「それはもう!すごいんだよ梢センパイは!なんでもできちゃうし、なにやっても大人っぽくて美しいの!あたしが去年の梢センパイと同じ年だなんて、信じられないぐらい!」

 

「わかった、わかりましたから、もう、梢先輩の話になると、すぐ熱が入るんだから…」

 

「えへへ。吟子ちゃんにも、センパイのすごさをわかってほしくて。あたしとはほんとに、ぜーんぜん違うんだから」

 

花ちゃん先輩、本当に梢先輩の事、尊敬してるんだって事がよく伝わってくる。

でも_

 

「花ちゃん先輩も僕から見たらちゃんとしてますよ」

 

「そんな事ないよ~梢先輩に比べたら…あたしなんて…まだまだ…だよ」

 

「梢先輩は偉大過ぎますって…」

 

花ちゃん先輩の言う通りなんだけど、あの先輩は偉大的な存在だよ本当に

 

「あーそうだった!忘れてた!そろそろライブの曲決めなきゃ、練習時間なくなっちゃう!昨日、梢センパイに言われたのにー!」

 

うん…ちゃんとしてるのかしてないのか分からなくなってしまった…

 

「ねえねえ、吟子ちゃんはどんな歌がいい?」

 

「えっ…?花帆先輩、作曲もできるの?」

 

「ええっ!? で、できないよぉ!お、お手伝いしたことは、あるんだけど……。梢センパイに、キーボードをね、少しずつ教わってて…」

 

「楽器弾けるんだ…花帆先輩、すごい…」

 

花ちゃん先輩の言葉に目を輝かせている吟。

吟も、ちょっとだけならピアノ弾けるのにね。

 

「ぜんぜん!まだ、ぜんぜんへたっぴだから!あ、だからね!今回は、今ある曲の中から選ぼうね!」

 

花ちゃん先輩は、そう言ってリストを手に持っていた。

 

「今ある、蓮ノ空の曲…!あ、あの!リストを見せてもらっても、いい!?」

 

吟は、花ちゃん先輩にそう聞く。

 

「え?うん、大丈夫だよ、そんなに焦らなくても、曲は逃げないからーー」

 

花ちゃん先輩から貰った曲のリストを吟と二人で見ていく。

 

「今ある曲…今ある曲…あれ…」

 

「吟子ちゃん?」

 

「あの、これって、スリーズブーケのリストだよね?DOLLCHESTRAと、みらくらぱーく!のも、見せてもらってもいい? いいですか?」

 

吟はそう言って、花ちゃん先輩から他の2つのユニットの曲リストを貰う。

 

「吟…ないよね…あの曲…」

 

「…ない。あの歌も、あの歌もどこにも…」

 

吟は、僕の言葉に合わせて言い、呆然状態に…

 

「吟子ちゃん?綾羽君?えと、タイトルで気になる物があったら、曲を流すこともできるけど…」

 

花ちゃん先輩がそう声をかけてくれたけど、吟も含めて僕も固まってしまった。

 

「え、えっと…?」

 

「あ。ごめんなさい、花帆先輩。きょうは、帰ります…お疲れさまでした…」

 

「えっ、う、うん」

 

吟はそう言って、席を立ち、部室を後にする。

 

「う、うん……。えと、また明日ね!」

 

吟が部室から去っていくのを確認して

 

「花ちゃん先輩…あのリスト以外に曲はないんですよね…」

 

「えっ、う、うん、あたしが知ってる限りだとね」

 

「ですよね…」

 

「えっと…吟子ちゃんに何かあったの…?」

 

「無かったんですよ…」

 

「えっ?」

 

「吟が探していた曲が_『逆さまの歌』が_」

 

「逆さまの歌…?」

 

その時、下校のチャイムが鳴った。

 

「あっ…下校しないとですね…花ちゃん先輩…お疲れ様です」

 

「えっ、あっ、うん…お疲れ様…」

 

僕は花ちゃん先輩に頭を下げて、吟の事を追いかけた。

 

「綾羽君…吟子ちゃん………逆さまの歌………」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。