いじめられっ子にとりついたのは、異世界帰りの経済ヤクザ。理想の未来はヒラ公務員だったのに、裏社会での成り上がりが止まらない―蝉原勇吾は怖すぎる―   作:閃幽零

12 / 32
12話 『ぼく』は……

 

 12話 『ぼく』は……

 

 蝉原は、ニコリと微笑んだ。

 

「俺……いや……」

 

 一度だけ言葉を止める。

 そして、ほんの少しだけ表情を幼く、脆くして、

 

「――『ぼく』は、ケンカが苦手でね……たまにやりすぎて殺してしまうから。そして、ぼくは弱い者いじめがきらいだ。だから、自分の中にルールを一つ刻んだ」

 

 そう言いながら、蝉原はゆっくりと歩き出す。

 誰も動けない。

 誰も声を出せない。

 

 ただ一人、蝉原だけが悠然とヤンキーたちの中心へ向かって進んでいく。

 やがて、リーダー格の男の目の前で立ち止まった。

 

「基本的に、やられるまではやり返さない。ただし――やられた分は、極倍にして返す」

 

 次の瞬間だった。

 蝉原の手が男の顔面を掴む。

 アイアンクロー。

 指が顔面にギチリと食い込む。

 

「がっ――!?」

 

 悲鳴を上げる暇すらない。

 そのまま頭を地面へ叩きつけた。

 

 鈍い音が響く。

 グシャリ! 

 と、アスファルトが砕け、男の身体が跳ねた。

 後頭部を強打した男は、そのまま白目を剥いて動かなくなる。

 

 蝉原はしゃがみ込み、男の顔を覗き込んだ。

 

「……ああ、良かった。死んではいないね」

 

 そして立ち上がる。

 

「殺さずにアリを踏むのは……本当に難しい」

 

 その言葉に、周囲のヤンキーたちは一歩後退った。

 さっきまでの威勢はどこにもない。

 

「て、てめぇ……」

 

 震える声。

 蝉原は首を傾げる。

 

「態度、大丈夫かい? ぼくはもう、自分にストッパーをかけていないよ」

 

 その一言で場の温度がさらに下がった。

 誰も動けない。

 誰も近づけない。

 

 圧倒的な恐怖だけが、その場を支配していた。

 

 蝉原は、肩をすくめて、

 

「ハッタリだけで騙される極道なんているわけないだろう。ヤクザをナメちゃいけない」

 

 薄く笑い、

 

「世のなかは、もっと理不尽に、冷徹に、厳密にできている」

 

 言い終わると同時に動いた。

 

 綺麗な水面蹴りで男の足を払う。

 フワリと、男の身体が宙に浮いた。

 

「死なないでね」

 

 落下してくる頭部。

 

 蝉原は下から上へ、拳を振り抜いた。

 すさまじい切れ味のアッパーカット。

 

「ばぎゃぁああああ!」

 

 うるさい叫び。

 けど、砕ける顎の音が少しだけ心地いい。

 

 歯が何本も宙を舞った。

 男は血を撒き散らしながら地面を転がる。

 

 まともな悲鳴すら上げられない。

 

「しばらく喋れないし、流動食生活になるけど……仕方ないよね」

 

 蝉原は心底申し訳なさそうに言ったけど、本心ではなんとも思っちゃいないだろう。

 蝉原にとって、ヤンキー連中はそこらを這いつくばる虫けらと同じ。

 

 残ったヤンキーたちは完全に硬直していた。

 逃げたいと思っていることだろう。

 だが足が動かない。

 

 蝉原に対する恐怖心で一杯になっている。

 

 蝉原は彼らへ向き直り、

 そして、いつも通りの爽やかな笑顔を浮かべた。

 

「明日までに詫び料、百万円持ってきて」

 

 誰も返事をしない。

 いや、しないのではなく、出来ない。

 

「持ってこなくてもいいけど……これは、それで手打ちにしようという、ぼくの心意気だよ」

 

 優しい口調だった。

 だからこそ恐怖心をあおる。

 

「足蹴にしない方がいいと思うけどな。……返事は?」

 

 全員が壊れたように首を縦に振った。

 蝉原は満足そうに微笑む。

 

「うん。物分かりが良くて助かるよ」

 

 そして興味を失ったように彼らから視線を外した。

 そのまま滝本の前まで歩いていく。

 滝本は黙ったまま蝉原を見上げていた。

 

 蝉原は自然な仕草で手を差し出す。

 

「さあ、行こうか」

 

 一瞬だけ迷った後、

 滝本はその手を取った。

 

「……ありがと」

 

 顔を少し赤くしながら、小さく呟く。

 だが蝉原は首を横に振った。

 

「感謝は必要ないよ。君を助ける気は一ミリもなかった」

 

 蝉原は一瞬だけ目を細め、

 フっと、楽しそうに笑った。

 

 ――ちなみに言うまでもないけど、セフィアさんは、遠くからじっと蝉原を見ていた。

 

 ……蝉原はすごいよね。

 じっと見つめてしまう気持ち、わかるよ。

 僕も、見とれていたから。

 

 赤みがかった夕暮れ時、

 しなやかな風が僕たちの頬をそっと撫でた。

 

 

 

【自己鑑定結果】

 

 名前:蝉原勇吾

 種族:人間(ヤクザ)

 レベル:1

 

 HP:21/21

 MP:5/7

 

 筋力:3

 耐久:5

 敏捷:6

 魔力:5

 知性:E(A)

 悪意:F(S)

 根性:F(SS)

 IT:F(A)

 商才:F(A)

 戦力:F(極SS)

 心理:F(A)

 話術:F(A)

 人望:D(B)

 謀略:G(極SS)

 悪運:超SS(C)

 

 称号:『元いじめられっ子』『宇宙一のヤクザ』

 魔法:『自己鑑定』

 スペシャル:『皇気』

       『威圧覇気』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。