いじめられっ子にとりついたのは、異世界帰りの経済ヤクザ。理想の未来はヒラ公務員だったのに、裏社会での成り上がりが止まらない―蝉原勇吾は怖すぎる―   作:閃幽零

18 / 32
17話 悪魔の成長日記。

 

 17話 悪魔の成長日記。

 

 その夜、自室のベッドに寝転がっていると、不意に蝉原が身体を奪った。

 

 といっても、何か特別なことをしたわけじゃない。

 ただ、天井を見上げたまま、静かに言った。

 

「魂魄処理機構へのアクセスに成功……」

 

(……何言ってんの?)

 

「理解しなくていいよ。俺も別に詳しいわけじゃないからね。スマホの仕組みは知らなくても、みんなアプリを使えるだろう? それと一緒さ」

 

 蝉原はそう言いながら、右手をゆっくりと持ち上げた。

 

「とにかく、これでレベルを上げられるようになった。……ただし、人を殺して命を回収しないと経験値は稼げないけどね」

 

(……うわぁ)

 

 あまりにも物騒すぎる発言。

 まさか、ここから人狩りを始めたりしないよね……

 

 いや、流石にそんなことしないか……

 仮にしそうになったらストップをかければいいだけだし。

 

(しかし、レベルってリアルで普通にあるんだね。ゲームの中だけの概念だと思ってた。……ちなみに、僕って何レベル?)

 

「もちろん1だよ。凄まじい弱さだ。初めて会った時も言ったけど……敬服に値する脆弱さ」

 

(……褒めてもらえて、とてもうれしいよ)

 

「いい感じの嫌味が言えるようになってきたね」

 

(ずっと蝉原の側にいたから)

 

 僕の言葉に、蝉原は笑った。

 楽しんでもらえてうれしいよ。

 

 蝉原はおもむろに起き上がり、机の前に座った。

 夜の静けさの中で、右手をゆっくりと開く。

 

「……カンファレンスコール」

 

 そうつぶやいた次の瞬間、手のひらの上に、小さな黒い球が一つ、ぽつんと現れた。

 

(え……なに、それ)

 

「魔法だよ。神秘的だろう?」

 

(神秘的っていうか……邪悪な感じかな)

 

 蝉原は球を眺めながら、

 

「本来は無数の黒い球を出現させて、その一つ一つから不規則な高火力レーザーを放つ魔法なんだけどね。……今の俺には、これが限界らしい」

 

 そう言いながら、球に意識を集中させる。

 しばらくして、細い光の線が、球の表面からぴっと伸びた。

 

 壁に当たる。

 

 レーザーポインターくらいの、頼りない赤い線。

 当たった箇所だけが、じわりと黒く焦げた。

 煙も出ない。

 音もない。

 壁に、小さな黒いシミが残るだけ。

 

「……ふふ」

 

 蝉原は笑った。

 いつものニヤリとした笑みじゃなく、もう少し力の抜けた、自嘲に近い笑い方だった。

 

「泣けてくるね」

 

(ハンカチ貸そうか?)

 

「いい嫌味だ。グっとくるね」

 

 黒い球は、しばらくして静かに消えた。

 蝉原は右手をぱたりと膝に下ろす。

 部屋の中が、また、ただの夜に戻る。

 

(でも、これって……すごいことだよね。魔法が使えるって)

 

「こんなカスみたいな魔法じゃ、虫も殺せないよ」

 

(それでも、ゼロよりはましじゃない?)

 

「……ゼロの方がマシなことだってあるさ」

 

 

【自己鑑定結果】

 

 名前:蝉原勇吾

 種族:人間(ヤクザ)

 レベル:1

 

 HP:27/27

 MP:0/9

 

 筋力:5

 耐久:5

 敏捷:7

 魔力:7

 知性:D(A)

 悪意:E(S)

 根性:F(SS)

 IT:F(A)

 商才:F(A)

 戦力:F(極SS)

 心理:E(A)

 話術:E(A)

 人望:D(B)

 謀略:G(極SS)

 悪運:超SS(C)

 

 称号:『元いじめられっ子』『宇宙一のヤクザ』

 魔法:『自己鑑定』『カンファレンスコール』『霊体回収』

 スペシャル:『皇気』

       『威圧覇気』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。