いじめられっ子にとりついたのは、異世界帰りの経済ヤクザ。理想の未来はヒラ公務員だったのに、裏社会での成り上がりが止まらない―蝉原勇吾は怖すぎる―   作:閃幽零

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34話 ブチギレ。

 

 34話 ブチギレ。

 

「おい、モヤシ。まずは俺らにイキったことを謝罪しろ」

 

「えぇ……」

 

「はやくしろ」

 

「……はい」

 

 そこで僕は土下座する。

 マジか……僕、何も悪くないのに……

 

 僕の頭を踏んでくる茶髪。

 普通に痛いって……

 

「よし、もういいや。立って、金出せ。はやくしろよ」

 

 そう言いながら、僕にビンタしてきた。

 あの日々を思い出す痛み。

 

「わ、わかった、わかった……わかったから」

 

 財布を取り出す。

 中には8万ほど入っていた。

 蝉原はいつも10万前後を財布に入れておく。

 

 茶髪が覗き込んできて、

 

「おっ、まじ?! らっきぃ!」

 

 そう言いながら、財布から8万をぶんどって、

 

「よっしゃ! これで十分だ。らっきぃ、らっきぃ。耐えたぁ!」

 

 一通り喜んでから、

 

「あ、お前、消えていいよ。お疲れぇ!」

 

 そう言って、感謝のローキックを入れてきた。

 バシン、と強い衝撃が走る。

 どういう教育を受けたら、こういう人間が完成するんだろう。

 違う惑星の人間なのだろうか……

 

「よっしゃ、お前ら、行こうぜ」

 

 帰ろうとする背中を、ただ見つめるだけの僕。

 

 ――その時だった。

 

(あれは俺の金だ。奪われたままにしたら、俺は君のことを嫌いになるだろうね)

 

「え……いや、でも……ってか、じゃあ、代わりに――」

 

(……)

 

「……えぇ、無視ぃ……」

 

(一つだけ質問しようか)

 

「……え、なに?」

 

(俺とあのガキども……どっちが怖い?)

 

「……」

 

 そんなもの、比べるまでもなかった。

 蝉原と比べたら、あいつらなんか虫けら以下だ。

 

 気づいた時には走っていた。

 頭の中真っ白で、とにかく全速前進。

 

 そのまま、茶髪の背中に向かって、勢いよくドロップキックを入れる。

 

「どわぁあ!」

 

 倒れ込んで、金をまき散らす茶髪。

 僕は必死に万札をかき集めて、

 

「できれば、恨まないでほしいなぁ……」

 

 と一言だけ残して、そのままダッシュで逃げた。

 必死で。

 途中、ポケットに突っ込んだ万札が風でバラけそうになって、

 半泣きになりながら片手で押さえ込む。

 

 他の何を失っても、今はこの金だけは手放せない。

 

「こ、このやろぉ!!」

 

 茶髪とその愉快な仲間たちが、ダッシュで追いかけてくる。

 僕は走った。

 必死で。

 

 幸い、蝉原が毎朝走ってくれているおかげで、この体はそれなりに持久力がある。

 中学生たちとの距離はどんどん離れていく。

 そのまま、どうにか逃げ切ることに成功した。

 

 ★

 

「はぁ……はぁ……」

 

 河川敷の土手に座り込んで、夕日を見ながら呼吸を整える。

 

「もう、あの本屋いけないかなぁ……」

 

 ボソっとそうつぶやくと、蝉原が、

 

(よく頑張ったね。エクセレント)

 

「……」

 

(ずいぶん成長したじゃないか)

 

「してる……かなぁ……」

 

 

 ★

 

 

 ――その日の夜。

 夜間のクラブで、上納金の話をしていた時だった。

 

「失礼します、総長!!」

 

 ドアが勢いよく開いて、夜間の部下が飛び込んできた。

 その後ろに、ぞろぞろとついてくる中学生が十人。

 全員、ボコボコの状態だった。

 鼻血を出している者、目の周りが腫れている者。

 

 彼らは蝉原の前まで連れてこられると、揃って額を床に押しつけた。

 

「申し訳ありません、総長! このゴミ共が、とんでもない粗相をしでかしまして!!」

 

 

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