いじめられっ子にとりついたのは、異世界帰りの経済ヤクザ。理想の未来はヒラ公務員だったのに、裏社会での成り上がりが止まらない―蝉原勇吾は怖すぎる― 作:閃幽零
35話 カツアゲ。
「あらら……えっと、この中学生たち、君とはどういう関係の子たちなの?」
「この茶髪、ウチの下部組織にいるやつの弟らしいんです……それで、話を聞いて……もう、真っ青になって、ゲロ吐いて……」
「ああ、その辺の詳細はいいや。てか、殴りすぎだろ……顔、変形しているじゃないか?」
そこで、夜間が部下に向き直り、
「こいつら、何をした」
「総長にカツアゲして、暴行して……土下座させて……頭を踏んだ……らしいです」
「……」
夜間の顔から、一度、血の気が引いた。
後ろに立っている凪も、最初、呆然としていた。
そして次の瞬間、二人とも、みるみる顔を真っ赤にして、
「俺の総長に……かつ……こ……こ……殺す……」
「ボクの総長に……ど、どげ……ぐぎぎ……」
(夜間さん、凪さん、やっておしまいなさい)
僕が心の中で討伐命令を出していると、
わなわなと震えだした夜間と凪に、
蝉原が静かに、
「二人とも、中学生相手にイキっちゃダメだよ」
「「し、しかし、総長!」」
「ある意味で、こいつらは俺の役に立ってくれた。カタギに舐められるのは問題だが、ガキの場合はちょっと勝手が違う……こんなカスにまでケジメをつけさせると、逆にこっちの格が下がる。面倒な話だ」
そう言いながら、蝉原は、震えながら土下座している茶髪の元まで歩いていく。
「現状だと同格の高校生ならともかく……中学生が相手だとなぁ。まだナメられているなら、もちろん話が別だけど……もう十分、俺を恐れてくれているようだし……」
そう言いながら、茶髪の顎をぐいっと上げて、目を覗き込む。
茶髪は、ぼろぼろと涙を流しながら、
「ご、ごめんなさぁい……ぃい……知らなかったんですぅ……ほんとに……ほんとにごめんなさぁいぃ……」
「謝罪に意味はない……が、まあ、いいだろう」
そう言うと、夜間の方へ顔を向けて、
「こいつらが万引きしたもの、全部返させろ。あと、親も一緒に詫びを入れさせるんだ。店にもこっちにも。……こっちには、五万と……あと、親の頬を2、3発張り飛ばしておけ。もし、一言でも文句を言ったなら、俺の前につれてこい」
「それで終わりですか? 総長、それは流石に甘すぎます。道理が通らない」
「ボクも同意です。せめて片足ぐらいは落とさせないと」
(そうだ、そうだ!)
心の中ではやし立てる僕の声を完全にシカトして、蝉原は続ける。
「こいつらが高校生だったらなぁ……臓器をとって海に沈める可能性も検討したんだが。厄介なことに、大人ってのは、ガキを慮らないといけないんだ……本当に厄介な話だよ」
「せめて、骨ぐらいは……」
(そうそう、骨ぐらいは――)
「夜間」
「……御意」
(……はいはい)
そこで蝉原は、もう一度、茶髪の目を見た。
「一つ頼みがある」
「ひゃ……ひゃい……なんでしょう……蝉原総長……」
「高校生になったら、また俺をカツアゲしてくれ」
「……ぇ」
「約束だぞ。必ずカツアゲしてくれ。色々と準備をしておくから」
真っ青になっていく茶髪を見ながら、蝉原は最後にひとこと、
「冗談さ。……多分な」
そう言って、ニコリと微笑んだ。
(ぺっ、カスどもが! 蝉原様をナメんじゃねぇぞ!)
(……)
(はい……すいません)