いじめられっ子にとりついたのは、異世界帰りの経済ヤクザ。理想の未来はヒラ公務員だったのに、裏社会での成り上がりが止まらない―蝉原勇吾は怖すぎる― 作:閃幽零
3話 蒔いた種。
月に一度、蝉原は、いくつかの孤児院や支援施設に、まとまった金額を寄付している。
今日もその一環で、僕たちは、とある児童養護施設を訪れていた。
職員に深々と頭を下げられながら、寄付金の入った封筒を渡す蝉原。
子供たちが、遠巻きに、興味津々な目でこちらを見ている。
蝉原は、その中の一人……小さな女の子を抱き上げると、
「写真とってくれます?」
と、施設の人にスマホをわたした。
笑顔でパシャリ。
確認すると、写真の隅にセフィアさんが映りこんでいた。
やるねぇ、セフィアさん。
やっぱプロだね。
★
施設を出たあと、僕は、ずっと気になっていたことを尋ねた。
(君って、そういう慈善事業みたいなこともするんだね。なんで?)
「種まきだよ」
(?)
「ただ暴れるだけのバカに、人は恐怖を感じない」
(……)
「知らんガキが飢えようと死のうとどうでもいい。しかし、道具としては優秀だ。俺のような危ない人間が、実は裏で子供を助けていた……となると、バカな民衆はどう思う?」
(実はいい人なのかな……と誤解する?)
「そういうこと。そして、なんでもかんでもいいように解釈してくれるようになる。もちろん、『何があろうと俺を嫌悪し続ける人間』もいるだろうが、全員を騙す必要はない。……あとで、さっき撮った写真を秘密裏に流す。手違いで流出したという形でね」
いつも通りの、打算まみれの理屈。
でも、その理屈の通りに、世間の見る目は、少しずつ変わってきている気がした。
ディアブロコミュニティは、今日も、もちろん、『スーパー反社チーム』だけど、
裏では慈善事業もしている実はいい人たち……というウワサも流れてきている。
民衆、大丈夫かな……と、少し世界が心配になった。
★
後日、
ニュースサイトの片隅に、小さな記事が出た。
『○○児童養護施設に複数の男が侵入、職員ら軽傷』
幸い、死者は出ていない。
数人の職員が怪我をした程度で済んだという。
けれど、その施設は、つい先日、蝉原が寄付をしたばかりの場所だった。
記事を読んだ蝉原の顔から、表情が消えた。
(蝉原……大丈夫?)
「流石にタイミングがよすぎる。……仮にただの押し込み強盗ではないとするなら……死人が出ていないことから……これは警告とみるべきだろうね」
(えっと……どういうこと?)
「俺のことをよく思っていないどこかの誰かがアタックを仕掛けてきている……と考えた方が自然って予想」
(……ああ、そうなんだ……よくわかんないけど)
「今回の件、もしかしたら、牽制のつもりかもしれないが、俺は宣戦布告と受け取る」
(……)
「教えてあげよう。俺を敵に回すというのがどういうことなのか」