Sword Art Online Brave Spirits 作:暁司令官
最後 あの人が出てきます
ニューヨーク 国連ビル
「タキさん見た見た⁉︎」
一連の吸血鬼事件からまだそう日は経っていない時期、ニューヨーク紙の一面を飾っていたのは仮面ライダー1号だった。
「お……でか」
ブリジットから渡された新聞の見出しにはサイクロンに乗って街中を疾走する1号、天に向かって銃撃するクウガとWの姿を撮った写真がデカデカと記載されていた。
(和人の事は……載ってないか)
記事を目で読んでキリトの事が描かれていない事に滝は何処か安心しながらブリジットお手製の味噌汁を飲んだ。あの日以降キリト達は本郷、五代と行動を共にし、翔太郎とフィリップは日本に帰国していた。
「派手にやったからのぉ……」
「ねぇ〜〜タキさん‼︎
「なんだよブリジット!前は全然信用しなかったクセに。ヤツは仮面ライダー1号。俺のダチ公さ」
「え?1号……ってことは他にもライダーがいるの?」
「まあね」
「ウソーーーン♡教えて教えて何もかも‼︎」
「あぁ……いるさ、もう一人かけがえのないダチがもう一人……」
彼が徐に立ち上げたパソコンの画面には本郷からのメッセージが入っていた。
【滝 一文字の居場所が分かった。本郷猛】
東南アジア「ガモン共和国」
軍事クーデター勃発後ー国連軍の介入の為反乱軍はジャングルの中に敗走し争乱は治ったかに見えたが……
ゲリラ活動は意外なほど内戦状態を長引かせている。
ジャーナリズムはこの戦いをもう一つのベトナム戦争と呼ぶ。
ガモン共和国 リアング国際空港
この地に一文字が居ると聞いた滝は単身現地へと渡っていた。
空港から出てきた彼の元に地元民らしき一団が物売りやガイドはどうかという感じで群がってきた。
「アレ?この写真
一人の男が滝の持っていた新聞の一面に写る1号の姿を見てそう言う。
「ディアブロ……っね悪魔ぁ?悪魔って……なんでライダーが……!」
ちょうどその時彼らのいる空港の目の前を国連軍の装甲車と思しき車列が差し掛かってきた。
「なんだ?あの物騒な車列は」
「グィン将軍の護送だよ」
「こないだ捕まったっていうクーデターの首謀者…?」
「そう。今から俺達に奪還されるんだがな」
「へ?」
滝と話していたガイドが持っていた包みを払うと中からAK-47が姿を見せ、それを皮切りに出店をやっていた周りの人達も隠していたAKを取り出し、護送車列に銃撃を浴びせる。
「ゲリラだー‼︎」
「応戦しろ‼︎グィンを渡すな‼︎」
空港前は長閑な東南アジアの街から忽ち軍とゲリラ達の銃撃戦へと発展した。
「おいおい…こんな町で銃撃戦かよ〜〜」
着いて早々運が無いと思っていた滝の頭に硬い金属が押し当てられる感覚がした。
「将軍の奪還。そして我々正当なガモンの民の存在を世界にしらしめる為、被害は大きい程いいからな。キサマも尊い犠牲になる事を感謝するんだな」
「やなこってす」
滝は護身用に持っていたベレッタM9の銃口を男に向けると、男は迷う事なくAKの引き金を引いた。
しかし弾が当たるより早く、FBIやICPOにいた滝の身のこなしの方が早く素早く躱して男の背後に回るとそのまま拘束する。
「グ…⁉︎キ……キサマ…!」
「おい…お前さっき悪魔とかぬかしてたな……ありゃ一体どーいう事だよ?」
「チィ…知るか!」
「あそ」
「ヒィ…‼︎話す‼︎話すから待ってくれ‼︎」
滝は男を銃撃戦の激しい方に向けて盾のようにすると観念したのか口を割った。
「さ…最近戦場に現れては敵・味方おかまいなしに大量殺戮をしてる化け物がいるんだってよ……」
「なに…?」
「ただ…俺たちの知ってる
「紅い…拳だと……?」
男の言葉に滝の脳裏には
「そ…それだけじゃねえ‼︎
「妙な現象だ…?一体なんだ⁉︎」
「敵味方が死なないように氷漬けにされてたり……戦車や装甲車が真っ二つに斬られてたり…挙句には戦いで荒廃した野原が森に戻ってるなんて話だ……‼︎」
「なん……だと……?そんな魔法みてえな……」
そのとき装甲車の一台からグィンと思しき男がゲリラに連れられて出てくるが護送部隊の兵士が彼らに向かってM16を発砲、将軍とゲリラは銃弾に倒れた。
「あ……あぁ…将軍‼︎…グィン将軍が…!俺達の聖戦がぁ……」
「ッ‼︎」
頭にきた滝は男をそのまま力任せに殴り倒す。
「テメェ…ら……何が聖戦だ……何が治安維持だ……どいつもこいつもバッカヤロウどもが…‼︎」
銃撃戦の後、滝は負傷者を連れて近くの診療所をやってるという場所に向かった。
「寺……診療所として使ってるのか……なるほどまさに駆け込み寺ってところだな」
見渡せばゲリラの戦いに巻き込まれたのかあちこち怪我人で溢れていた。
「なぁ…医者はどこに…」
近くにいた子供達に医者の居場所を尋ねようとしたが、子供達は何も言わず逃げるように走って行った。
「おい…何も逃げるこたぁ…」
「そこの人!お医者さんならこっちですよ‼︎」
滝の元にやってきたのはエスニックな服装を着た日本人の青年だった。
「おぉ悪い。このまま奥まで運ぼうか?」
「お願いします。何しろ人手が足りないので」
青年の案内で滝は真美という日本人の女医の元に怪我人を運んだ。ただ彼女は何処か苛立っている様子だった。
「もう‼︎ただでさえ人手が足りないってのに
「おい!今
「言ったけど…?隼人……一文字隼人ってね」
負傷者を運んだ滝は一旦その場を離れて診療所内を歩いて一文字隼人を探し回った。
「ほら……笑ってみな?ほらいい顔して!ダメか?ダメ?」
レンズの先の子供達の目には光が無く、周りの者が信頼できない不安に駆られた目をしていた。
「なら……この顔はどうだ‼︎面白いだろー‼︎」
「一文字…」
そこへやっとの思いで彼を見つけた滝が声をかける。
しかし振り返った彼の顔は変顔のままであり、二人の間になんともいえない空気が流れその間に子供達も何処かに行ってしまった。
「滝‼︎滝和也か‼︎久しぶりだなあオイ‼︎」
「そりゃあ‼︎こっちのセリフだぜ‼︎……バッカヤロ」
再会がてら滝はアメリカで起きた一連の出来事と本郷からの伝言を一文字に話した。
「そうか…本郷がね…」
ーまた……戦いが始まるかもしれんー
「あそ…新しい敵ね。そっちの方はヨロシク頼むって伝えててくれ」
「な…⁉︎おい…なんだよそれ‼︎」
あまりにも他責的な発言に滝は声を荒げて一文字を問いただす。
「あの写真を見たゲリラが言ってたぜ。
「……」
「そのバケモンは紅い拳をしてるってよ。一文字……お前何かあったんじゃねえのか?」
「バ〜〜〜レ〜〜〜タ〜〜〜カ〜〜〜」
一文字がふざけて返事をしたのが頭にきた滝はそのまま彼の頭に一発入れ、そのまま喧嘩に発展しそうになった。
「隼人さん‼︎何やってるんですか‼︎」
声のする方には以前出会ったキリトと同じ歳くらいのおかっぱの少女が腰に手を当てて立っていた。
「あ!ワリィワリィ!直葉ちゃん‼︎」
「ハヤトさんは目を離したらホイホイ何処かに行くんですから、ちゃんと手伝ってくださいよ?」
「小官達だけでは人手が足りないんです!マミ殿にまた言いつけますよ?」
「すまんってドロシー!あーユージオくんも‼︎」
直葉の横に立っていた金髪の少年ーユージオーと淡い紫色の入った銀髪の少女ードロシーーにも注意されて頭の低い一文字。
「おー…ダレ?この子達?」
「後で話す…!」
3人に檄を飛ばされた一文字はそのまま診療所の手伝いをして炊き出しをやったりとしているうちにあっという間に数時間が経った。
「ムーー……何やってんだ俺はーーー‼︎」
「手が止まってますよ、タキ殿」
ドロシーと二人して洗濯をしていた滝はこの数時間で溜まったフラストレーションを放出した。
「ったくよ…あいつは……一文字は世界を救える男だぜ…?こんな所でメシの炊き出しなんてやってるヤツじゃねーーーだろが……」
「タキ殿……
いつのまにかドロシーが凄い形相で彼を睨んでおり、その年頃の少女とは思えない表情に滝は一瞬身をすくめる。
「悪かったですね…こんな所で」
「と……」
振り返るとユージオと先程見た《火野》という青年とは別の日本人の青年がいた。
「ドロシーを怒らせない方がいいですよ、タキさん。僕も手伝います」
「ユージオにショウイチ殿…!」
「お…おう」
滝の横にしゃがんだ青年が語りかける。
「自己紹介がまだでしたね。俺《津上翔一》って言います」
「滝和也…だ。アンタさっき炊き出しやってた…」
「はい。滝さん、貴方はさっき一文字さんが世界を救えるって言ってましたよね?あの人の過去をよく知ってるわけじゃありません。俺も…ユージオ君やドロシーちゃんも」
「……」
「でもあの人はあの人なりのやり方や信念があってここにいるんです。放っておいてやれませんか?」
ひとしきり洗濯物を洗い干し終えると、翔一が写真の束を渡してきた。
「これは?」
「一文字さんがここに来て撮った写真です。あの人が戦場カメラマンとして来たのは聞いてますよね?」
「子供達の写真……か」
一枚一枚見ていく内に滝はあることに気づいた。
「笑ってる写真……一枚もないでしょ」
そう言ったのはいつの間にやって来ていた真美という女医だった。
「あの子達は皆 この内戦で家を焼かれ……親を殺されたわ……目の前でね…」
「そして信じる事ができなくなったんです……」
「殺し合いを続けるような大人たちをね……」
「体を触らせてもくれないのよ……ケガをしているのに……たまらないわ……たまらない……」
話を聞いた滝もさっきの自分の発言を悔やみ、いたたまれない気持ちになった。
「私はね……ここに来てもう4年になるわ。家族にも医大の仲間にも早く帰れって言われるけど……帰れないわよ……4年もいるくせに私はまだ何もできてない…………あの子達のために……まだ何も」
そう悔しさを吐いた真美は滝にある事を聞く。
「ねぇ戦場に出る《赤い拳の悪魔》の話って知ってる?」
「ッ……ちょ……ちょっとはな…」
突然の話題に滝は一瞬ギクリとするが真美はそれに気づかず話を進める。
「れ一体何者かしら…敵も味方もおかまいなしに……まるで憎しみをあおりたてて内戦を長引かせてたいとしか思えない……誰かが何らかの得があってどこか見えない所で……だとしたらそいつは本当の悪魔よ」
『本日、銃弾を受けて重症となったグィン将軍ですが運ばれたハズの救急車ごと行方不明になっています』
日もすっかり落ちた頃、怪我人や子供達は寝静まり診療所も起きている者はほんの少しとなった。
翔一と映司は街へと買い出しに向かっていた。
「お疲れ様です。滝さん今日は泊まるとこあります?」
「おぉ直葉かサンキュー。うんにゃ生憎無くてな…」
直葉の淹れたお茶を啜りながらこれからどうしたものかと考えていた。
「だったら泊まって行っていいですよ。真美さんには私から言っておきます」
「わりぃ。じゃあ遠慮なくお世話になるわ」
寝床を確保できた滝もようやく休めるときが来た。
ーーしかしその安息も長くは続かなかった。
真夜中、診療所からそう遠く離れていない場所から銃声が鳴り響き、寝静まっていた者達を容赦なく叩き起こした。
「戦闘…⁉︎こんな避難地区のスグそばで……‼︎」
「やめてよ‼︎バカーー‼︎」
「おい!あぶねぇ‼︎」
「あんたたち互いに正義だの悪だの言って人を傷つけて…あんたたちはただ酔っ払って弱者を虐めてるだけじゃない‼︎子供達にとったら殺し合う人はみんな悪魔だわ‼︎」
「タキさん!マミさん‼︎早く避難を‼︎」
「お前ら‼︎ほら行くぞ‼︎」
呼びに来たユージオと共に真美を退避させた滝は怪我人の避難を始めた。
一方、一文字は単身診療所を飛び出して戦場へと向かった。
「これは……この死に方は…⁉︎」
兵士達の亡骸を前に一文字はその状態に見覚えがあった。
銃弾や砲撃ではない、まるで力任せに引きちぎられたようなその死に方……
「ぅ……ぉ……ぉ」
「おい!しっかりしろ‼︎」
「ゴブ!ゴホ……悪魔だ……ヤツら……みんな…」
「ヤツら……だと⁉︎マズイ‼︎診療所が……‼︎」
一文字が危惧した診療所はある程度の怪我人の避難はできたが子供と軽傷者の避難がまだ済んでおらず、滝と真美が取り残されていた。
そこへゲリラの一派が戦車を引き連れて診療所へと襲いかかって来た。
「おいおい……ここにはケガ人とガキしかいないぜ?それが人間のやる事かよ……⁈」
「フム…まさに人道に反する行為だ。故にそのインパクトは実にいい宣伝になる。我々の戦闘力を見て…大国もついに契約を結んでくれたよ……」
そう言って戦車のキューポラから姿を見せたのは滝が今朝巻き込まれた銃撃戦、そしてこの国の内戦の黒幕とも言うべきグィン将軍だった。
「グィン将軍…⁉︎射殺されたハズじゃあ」
死んだ筈の人間を前に滝は身構えるとゲリラから銃を向けられる。しかしその装備に滝は違和感を感じる。
「そのライフル……そしてその戦車…最新型か?ゲリラにしちゃあ過ぎた武装だぜ。テメエら一体……」
「一人残らず死ぬのだ。聞いても何の意味もない。なぁ……そうだろう?神に見放された人々よ…」
「お前‼︎」
滝は将軍の目に以前会ったペトレスク神父と同じ気配を感じ取った。
刹那彼の目の前にいたゲリラがライフルを彼に向けて撃つが滝は瞬時に交わし、すかさず懐から取り出した拳銃を2発撃ち込むが様子がおかしい。
確かに当たった筈なのに死なない、それにそのゲリラの顔に滝は見覚えがあった。
「‼︎お前…空港の…」
「ダン…ナ……ロシ……テ……くれ」
銃弾を受けてしない身体、途切れ途切れに殺すよう求める声、そこから滝は彼の身に何があったのか大体を察した。
「………オッケー…」
ベルトに隠していた改造メリケンサックを拳に装着して男の顔面を殴って炸裂させる。
「ッ……⁉︎」
しかしその顔の下からは人間のものとは思えない……まるで飛蝗のような茶色い異形の顔が覗かせていた。
「こ……こいつら……そうか貴様らが戦争の虐殺を‼︎」
滝が言い切るより前にグィン将軍は戦車の照準を彼らに向けた。
滝は分かっていながら前に出ようとする。
「やめろぉぉぉ‼︎」
放たれた砲弾はすんでの所で赤い拳によって食い止められ爆発した。
「赤い…拳……⁉︎」
煙の中から見えたその手に真美は噂を思い出す。
そして煙が徐々に晴れた先に、彼は佇んでいた。
「一文字‼︎」
「え⁉︎」
「ギギギギ‼︎」
「ライダァァ‼︎パァァンチ‼︎」
改造兵士が晴れた煙の中から飛び掛かるが、逆にその懐に強烈なパンチを喰らった。
「ギ…ギギ……ギギギ……コレデ……シネ…ル」
改造兵士は地獄からの解放を喜んでか最後に涙を流しながら爆散した。
「ウソ……アレが……隼人さん…」
「‼︎」
信じていた彼が噂の悪魔だと知り真美はショックを受け、子供達は身を震わせていた。
「一文…字……お前…!」
滝には分かった。彼女達がそうなる事を承知で、あの姿でここにやって来たのだと。
「ほほぉ……いい性能だ‼︎キサマの作戦目的とIDは⁉︎」
一文字ー仮面ライダー2号ーのその卓越した能力にグィン将軍は関心し、それに応えるように2号は吠えた。
「正義 仮面ライダー2号 」
「一文字さん達…大丈夫かな……?」
怪我人を避難させた直葉達3人は残りの人達を避難させるべく急いで診療所へと走っていた。
「着いた……⁉︎」
森を抜けた先に広がっていた光景に3人は言葉を失った。
診療所の置かれていたお寺の石の塔は崩れ、目の前には逃げ遅れた人たちが変わり果てた姿でそこにあった。
「そ……そんな……」
「あ…滝さん‼︎」
直葉は蹲るようにして倒れる滝に駆け寄り彼を起こした。
「滝さん……しっかりしてください‼︎滝さん‼︎」
「ヴグ……直…葉……か…お前らは……無事だったんだな…」
「タキ殿…ハヤト殿は…マミ殿や他の方達は…⁉︎」
「はぁ…多分…連れ去られちまった…」
「一体何処へ…」
「とにかく…治療を!」
「他の……他の人達は…」
「フン…破産した素材など使う気はない」
「‼︎……この子たちに……なにを……する……気」
森の奥地にある廃寺院に連れてこられた真美と子供達。
彼女を操るグィン将軍はもはや人の原型を留めておらず、まるで蜘蛛のような怪物へと姿を変えていた。
「わ………私………に………なにを……させる気?」
操られた彼女の手には指先が手術器具のような器具に改造された小手を付けさせられ、蜘蛛の巣に磔にされた子供の前に立っていた。
「ク……クククこれまで労わって来たのだろう。その子供達を……ならば最後はお前の手で幸せにしてやればいい……」
蜘蛛怪人は彼女が何も反抗できないのを良いことに話し続ける。
「地雷というものを知っているだろう?その威力は完全に人を殺さず、その介護の為にさらに兵力を削らせる。しかも容易く作れる上にその撤去に莫大な犠牲を費やす……スバラシイ発明だと思わないか‼︎今や世界中の戦場の大地で息を潜めているのだ‼︎」
「そして我々はこの兵士ども同様。今宵極上の兵器を作り出すのだ…ククク……子供とはかわいいものだなぁ……弱く…愛らしく…助けを求める。どんなに訓練された軍人でも油断させる程に……な……そして受け入れた途端…………ククク……ククククククククク」
そこまで言えば怪人が彼女になにをさせようとしているのかなど容易に想像が着いた。
「生きた子供の誘導爆雷‼︎これは地雷に次ぐ革命になるぞ‼︎子供などどこででもいくらでも増え続けるのだからなぁ‼︎」
操られた真美はその手をされるがまま磔にされた子供の方へと近づけていく。
「や……やめて……やめてぇぇぇ‼︎」
「舌を噛み切ろうとしてもムダだ。お前はそいつらを全て爆雷にするまで死ねん」
残された意識で舌を噛み切ろうとするがそれも無駄だと知らされ彼女はさらなる絶望へと突き落とされる。
「たす……け………たす……」
「助け?…助けになど来ない…誰もな。大人しく弱者は強者の糧となれ…」
その瞬間、突然怪人の頭に衝撃が伝わり彼女の操作が一瞬止まる。
「やなこったこの六角形が‼︎腕ずくなんてよ、テメェこそよっぽど弱者だぜ‼︎」
蜘蛛怪人の頭をを背後から踏み付けていたのは先の戦いで塔の下敷きになった筈の一文字であった。
「隼人……さん」
彼女の首元に刺さっていた針も抜き取られた。
「滝さん…‼︎」
「来たぜ…!ったく隼人の奴…大怪我してるくせに…大丈夫かよ…?」
「え…」
「キサマァ‼︎」
怪人の攻撃を躱して着地した一文字、しかし滝の言う通り怪我の状態がよくないのか着地と同時に血がボタボタと地面に垂れる。
しかしそれもお構いなしに彼は蜘蛛の巣を破り、子供達を自由の身にする。
「なぁ……聞いてくれるか?」
彼の顔には血が流れてただけでなく、感情が昂った時にのみ現れる改造手術の跡が浮かび上がっていた。だが一文字の顔は優しさに満ちた笑顔を浮かべていた。
「お・れ・た・ち・は・み・か・た・だ」
「俺……達……?」
一文字はそう言うと慣れた手つきで変身の動作を取ってその場を飛び上がる。
すると先程見たあの異形の戦士がそこに居た。
「チィ!殺せ‼︎」
辺りを囲んでいた改造兵士達がライフルを構える。
しかし突然背後から強烈な光が差し込み兵士達は振り返る。
逆光で素顔はよく見えないが腰の部分から光を放ちながら誰かがこちらへとゆっくり歩み寄ってくる。
「ギ…ギギ‼︎」
数人の改造兵士が飛びかかるがそれをヒラリを交わして蹴りを入れ、残りの敵も軽くいなす。
「あの人…は……」
「津上…⁉︎」
兵士達がライフルを発砲するが彼はそれを飛んで交わすと腰部の光が低い音を立てながら発光を強める。
2号の前に着地したその姿は人間のものではなかった。
雰囲気だけ見れば確かに2号によく似ていた。
しかし角や胸、腕の装飾など各部は金色をしているがはっきりとそれが"仮面ライダー"であると分かる姿をしていた。
「お前……‼︎」
「津上…なのか……」
「はい一文字さん。俺はアギト…"仮面ライダーアギト"です」
目の前に立つアギトと名乗る仮面ライダー。
その姿を前に一文字はどこか納得したように静かに、ゆっくりと頷く。
「滝さん‼︎みんな‼︎」
「……火野…それにお前らまで…‼︎」
映司と直葉達もようやく駆けつけたといった感じで走って出て来た。
「何とか間に合……ってアレは…⁉︎」
「あぁ…一文字と津上のヤツだ…」
「アレが…ショウイチ殿と……ハヤト殿……⁉︎」
信じられないといった様子で見る3人とは別に映司は何故か笑みを浮かべて待ってましたというような感じだった。
「滝さん…3人と一緒に逃げてください…」
「映司さん⁉︎」
「火野なにを……まさか……⁉︎」
「えぇ…そのまさかです」
映司は取り出したバックルを腰に当ててベルトが腰に巻き付くのを確認すると赤と黄色と緑のメダルを取り出してスロットに差し込む。
「アンク……見ててくれよ…」
ドライバーを傾け、右腰に付いていた円形の装置を外すと待機音のようなものが辺りに響き渡る。
「変身……‼︎」
装置をベルトに滑るように当たるとスロットの部分から一瞬だけそれぞれの色の光が浮かび、右手を胸の前にかざすと今度はそのメダルが音と共に浮かび上がる。
「タカ‼︎トラ‼︎バッタ‼︎タ・ト・バ‼︎タトバ‼︎タ・ト・バ‼︎」
変身を終えたそこに立っていたのは緑の複眼に赤い頭部、ボディにはタカ・トラ・バッタをモチーフにした円形のレリーフ、黄色の腕には折り畳まれた爪ようなパーツ、そして緑のバッタの足を合わせる装飾の入った足。
「オーズ……俺は仮面ライダーオーズだ‼︎」
「火野……お前もだったのか…」
「隠しててすみません、一文字さん。終わったら翔一君と一緒に話すので……ね?」
「……あぁ……いいぜ‼︎今晩は俺達3人でトリプルライダーと行こうじゃないか‼︎」
「「はい‼︎」」
「2号……アギト……オーズ……」
やり取りを見ていた滝は言い知れぬ高揚感を胸に感じながら3人のライダーの名前を呟いた。
「なぁ……信じてみねえか……?例え神も仏もいなかったとしても……仮面ライダーはいるってよ……」
「行くぞ‼︎」
「「はい‼︎」」
「ギギィィィ‼︎」
3人の仮面ライダーは一才の迷いを持たずに改造兵士の群れに飛び込んだ。
一撃が強力な2号のパンチやアギトのキックを受けて吹き飛ばし、オーズのメダジャリバーは斬り伏せる。
「おい!お前ら早く安全なところに…!」
「いえ……小官達も行きます…」
「え…」
ドロシーからのまさかの発言に滝と真美は一瞬立ち止まってしまう。
「行くったって……お前らは人間だろ⁉︎それに武器も何も……」
「ありますよ……僕たちには」
3人はそれぞれ手元でSの字を書くように空中で指を動かすとメニューウィンドウのようなものが空間に浮かび上がる。
「⁉︎」
「あ……あれは……⁉︎」
「隠しててごめんなさい……でも私達は隼人さん達とは違うんです。それでも……」
「もう……命が目の前で散るのは見たくはありません…‼︎」
光の輪が足元から頭上にかけて一瞬で昇ると3人の容姿はまるで別物になった。
ユージオの格好はそれほど大きな変化はないように見えるがコートは足元まである青色のロングコートになり、ドロシーは首から下を西洋風な紫色の鎧を身に纏っている。
最も変化が激しい直葉はドレスと甲冑の合わさったような格好に神は黄色のポニーテールになり、瞳は緑色に変わっていた。
「あ……貴方達……一体……?」
「申し訳ありません…マミ殿…ですが終わったらちゃんと説明するつもりです…!」
「行こう!ドロシー、リーファ‼︎」
「はい!」
「うん…!」
直葉ーリーファーはふと姿の変わった自分達に釘付けになっていた子供達に優しく微笑みながら歩みよると、優しく抱きしめて言った。
「大丈夫……私達が守ってあげるからね…!」
子供達の頭を優しく撫でて戦う2号達の方に向き直ると手にしていた剣(ドロシーは鎌)を構えてトリプルライダーの元に加勢する。
「ッ‼︎」
改造兵士を相手取っていた2号は背後から戦車が狙っているのに気がつき向きを変えようとしたが、その瞬間戦車の砲身がすっぱりと切られ次いで一瞬でバラバラにされた。
「隼人さん!」
「その声、直hって誰⁉︎お前直葉か⁉︎」
「はい‼︎そうだけどそうじゃないというか……とにかく私です‼︎今はリーファです‼︎」
「どっちだっていいさ!とにかく味方なんだな⁈」
「はい‼︎」
リーファは背中合わせで2号の後ろを固める。
「ショウイチさん‼︎」
「え?ユージオ君???どしたのその格好…」
3人の変身(?)を見てないのもあってか一瞬どうしたのかと戸惑うアギトだったが瞬時に彼だと判断した。
「とにかく僕達も戦います‼︎」
「あ…あぁ分かった。でも無理しないでよ!」
「はい!」
「エイジ殿‼︎はぁ‼︎」
「え…ドロシーちゃん⁉︎」
自分の知る姿と打って変わって鎧姿になって現れたドロシーにオーズはあたふたしてしまう。
「えぇドロシーちゃんだよね???でもその鎌まるで死神みたいな……」
「説明は後でします‼︎とにかく今は敵を!」
「あ…うん。そうだね」
3人のライダーと3人の剣士達の奮闘によって改造兵士達と戦車は一つ残らず破壊され、気がつけば朝日が登り始めていた。
満身創痍の6人と五体満足の蜘蛛怪人が瓦礫の上で睨み合いを続けていた。
「……」
「……!」
3人ライダーが一瞬態勢を崩したのを見逃さず蜘蛛怪人は鎌を飛ばして攻撃するがライダーはそれを見越していたのかその場でジャンプする。
「行くぞ‼︎津上‼︎火野‼︎」
「はい‼︎」
「行きます‼︎」
「フ…無駄な事…を…⁉︎」
キックをしようとすると分かって逃げようとするが動けない、足元を見れば自分の足がいつのまにか氷漬けにされて身動きができなくなっていた。
「な…何故氷が…⁉︎」
冷気の来た道を辿るとユージオが手にしていた青薔薇の剣を地面に突き刺しそこから氷が地面を伝って伸びているのに気がついた。
「エンハンス・アーマメント……僕の氷でお前を動けなくした!」
「お…のれぇ‼︎」
「二人共‼︎」
ユージオの合図と共に彼の背後から飛び出したリーファとドロシーが蜘蛛怪人に肉薄する。
「地神テラリアの意志の元に、この大地に守護を! 鉄壁の守りを!」
「厄災の神は笑わない!この身は常に勝利する‼︎」
2人はそれぞれの心意を発揮する為、それを高める詠唱を唱える。
「ファータイル・アフィクション‼︎」
「リリース・リコレクション‼︎」
2人の心意を纏った斬撃が怪人の両腕と背中に生えた脚を一つ残らず斬り落とす。
「いってぇぇ‼︎隼人さぁぁぁぁん‼︎」
「おう‼︎任せろ直葉‼︎」
空中で待機していた3人はトドメのチャンスを逃すまいと決め技を放った。
「ライダァァァァ‼︎
《SCANNING CHARGE‼︎》
「セイヤァァァァァ‼︎」
「ハァァァァァ‼︎」
蜘蛛怪人は最後の足掻きに蜘蛛糸を吐き出すが2号の卍キックに糸をこじ開けられる形で無効化、さらにそこにオーズのタトバキック、アギトのライダーキックまでもが加わる形で破壊力を倍増し、最期の足掻きすらも無に返し蜘蛛怪人の身体を真っ二つにした。
「ギ…ギギ……スバラシイ……性能……だ……!それだけの力をもって……キサマは……ナ……ゼ………ナンノ……タメ……ニ……理解……デキ……ン」
最後の最後にライダーの力に感嘆を漏らした蜘蛛怪人はそう言い残すと爆散した。
「よぉ……やっと笑ったな……‼︎」
一文字達に駆け寄った子供達の顔には再び笑顔が戻っていた。
《依然グィン将軍は行方不明のままですが、ゲリラに不穏な動きは見られなくなっています。このまま内戦も鎮火へと向かえばこの国にも平和の兆しが……》
場所を移して真美はあの出来事以降、献身的に医療活動を続けていた。
だが前と明らかに変わったのは……
「「わー‼︎」」
「ハイハイ分かった分かった!真美〜アンタのメールと違ってさ、みんな元気いっぱいじゃん!」
「ちょっと元気すぎるケドね!」
大人を信じる事ができるようになった子供達はあるべき明るさを取り戻して無邪気に笑い走り回っていた。
「ところでさ……前に話してたカメラマンの人は?」
「………うん」
真美はそう言いながら首元に巻いた赤いスカーフを触り、壁に貼ってある一枚の写真を目にする。
「行っちゃったわ。行かなきゃなんない所がたくさんある人だから……」
「ふーん……そーねカメラマンだもんね」
「マミセンセー!お客さん‼︎」
「はーい!」
子供達に呼ばれて二人は玄関に向かうとそこにはミルク缶を担いだガタイの良い日本人の男性が1人立っていた。
「よっす。火野のやつにここを紹介してもらったもんだ」
「火野……映司君の知り合いの方ですか?」
「あぁ」
男は懐から何やら取り出してそれを見せるとそれが医療免許証だった。
「貴方…医者……?」
「そう!俺は"戦う医者"伊達明だ。話は火野から聞いてるぜ、よろしく真美ちゃん!」