どうやら文香から逃げられないことを悟り、とりあえずお腹のことについて聞いてみようと思い服をめくった。
「んで、何コレ?」
お腹に浮かび上がっている紋様を見せると文香はきゃっと頰を赤らめて視線を逸らした。…………いや、チラッチラッと見てるなコイツ。
「そういうのいいから説明」
「あぁ、しーちゃんのお腹がぁ……」
お腹が隠れただけでそこまでがっかりするものか? いや、いいお腹はずっと見ていたいな私も。なら納得は出来る……けど、その対象が私か。
うん、悪い気はしないな。
「えっとね、一から説明するとめんどくさいから簡単に事実だけを伝えると、しーちゃんの命を助けるためにしーちゃんを私の契約獣にしたの」
……何を言っているんだこの女。
「頭大丈夫?」
「ひどいね。もっと言ってほしいな」
本当になにを言っているんだこの女は。
「でもそうだよね。普通はそういう反応になるよね」
「誰だってそうなるでしょ」
「実は私ね、魔術師になったの」
だから本当になにを言い出すんだこの女!
「脈絡というものを知らないのかアンタは! 契約獣だの魔術師だの言われて処理できるわけないでしょ!」
「でもしーちゃんなら大丈夫かなって」
「大丈夫なわけあるか! ちゃんと! 一から! ゆっくりと! 説明して!」
昔はちゃんとしてたのにどうしてこうなった……。
「とりあえずしーちゃんが私から逃げた時から話すんだけど、私しーちゃんがいなくなって一人になって絶望してたの」
「ああそう」
「寂しくて苦しくて切なくて……」
「ふーん」
「でも体の火照りは治まらなくて」
「……うん?」
「いろいろ試したんだけどやっぱりこの火照りはしーちゃんじゃないと解消できないなって思って……」
「…………はい?」
「だったらしーちゃんを探し出して一生一緒にいてもらおうと思ったの」
「どうしてそうなる……?」
「でも親はあんな女にかかわるのはやめなさいって言ってくるし」
「当然だな」
「クラスメイトはかわいそうとか同情してくるし」
「普通の人の反応だな」
「しーちゃんの浮気相手からはいじめられるし」
「ふーん」
「うざったいから家出したの」
「なんで?」
「でも当時の私の力じゃしーちゃんを探すことが出来なくて」
「そりゃまあ、子供だしね」
「だからしーちゃんを探し出すための力をつけようと魔術師になったの」
「一気に話が飛んだな」
「ちなみにそれがしーちゃんが逃げてから半年後の事ね」
「たった半年で空想上の職業に就いたアンタの能力に私は今とっても驚いてるよ」
「やった! しーちゃんに褒められた!」
「……褒めてないんだよなぁ」
掻い摘んで聞いただけでこれか。私が学校を退学した後なにがあったのかとかの詳細は聞きたくないな。
「それでしーちゃんを探し出すための力を手に入れたからしーちゃんに会いに行ったら」
「刺されてたってか?」
「うん、びっくりしちゃった」
私としてはあのまま死んでおきたかったんだけどな。
まぁ、生きてるんだったら生きてるでいろんな女性を抱いて楽しむとするか。
「つまり魔術の力で私の傷を治したってわけね」
「んーとねー。ちょっと違うかなー。魔術師って言っても他人を治せるような力とかはないの」
「ん? じゃあどうして私は生きているんだ?」
「それは私がしーちゃんに契約魔術をかけたからだね」
「契約魔術?」
「うん。これによってしーちゃんは私の契約獣になったの」
「まって、それがどうして傷が治ることにつながるの?」
「それはね、契約獣になったら不老不死になるから」
不老不死ねぇ…………不老不死!?
「その代わり契約獣は契約主である魔術師には一切逆らえず裏切れない。生涯を契約主に捧げることになるの。しーちゃんのそのお腹の紋様、契約紋はその証ってわけ」
つまり私は不老不死を手に入れたかわりに一生文香に逆らえないってことか。メリットとデメリットとしては……メリットの方が大きくない? いや、でも一生文香の奴隷か。それはさすがにきついな。
「なるほどね、だから私は死なずに済んだと」
「そういうこと。そしてこれはね、魔術師が一生に一度しか使うことのできない魔術なの」
「一生に一度って……そんな大事なもの使ってよかったの?」
「いいの。だってもともとしーちゃんに使う予定だったんだから」
「契約獣になるのは確定だったってことか。拒否とかって出来たの?」
「出来るよ?」
「出来るの!?」
「そもそも本来は双方の合意が必要だからね。まぁ相手の意識がない場合強制的に契約を結ぶことも出来るけど」
「悪質な詐欺じゃんか」
「でもそのおかげしーちゃんは助かったんだよ」
面倒なことになった。とはいえ不老不死というのはなかなかいいものだな。特に不老の部分。一生この見た目のままならずっと遊んで生きていけそうだ。
……いや待て。一生逆らえない?
「それじゃあさっき私の動きを止めたのもそう言う事?」
「うん! しーちゃんは私の命令に絶対逆らえません!」
最悪だ。文香は嫉妬深かった。
「つまりこれからはほかの女性を抱けなくなるのか……まいったな」
これは死活問題だ。私にとって女性を抱くというのは趣味であり生きがいだ。それが封じられるとは……。
それに男に体を売ることもできなくなってしまった。これでは不老不死になった意味がない。
「別にいいよ。浮気しても」
「……は?」
何をいっているんだこの女は。浮気OK? 罠か?
「そう警戒しなくていいよ。本当に」
「ってもねぇ、疑うなって方が無理あるでしょ」
「確かにね。それじゃあ条件をつけるよ」
条件つけたらいいってわけじゃないと思うけど。
「ちゃーんと、私の元に帰ってくること」
「なにそれ?」
「言葉通りの意味だよ。しーちゃんはもう私をおいてどっか行くことを許しません」
「あー、つまりなんだ。これから私の人生はアンタと一緒というわけね」
「そういうこと」
私とずっと一緒にいられれば浮気だのなんだのしてもかまわないって。重いんだか重くないんだかわからないな。……いや、確実に重いか。倫理観がイっちゃってるだけで。
とりあえず浮気オーケーならありがたいんだけど……。
「とはいえこれがあるとな……というかこれ消せないの?」
もう一回服をめくってお腹を見れば、相変わらず妙な紋様、契約紋が浮かび上がっている。それに私の肌は白く輝く綺麗な肌だからこの契約紋がより一層目立ってしまっていた。こんなものがあっては服を脱ぐことが出来ず、誰かとベッドインすることが出来ない。
「んー、消さなくていいんじゃない。だってほら、淫紋みたいで男の人は喜ぶと思うよ?」
「……否定できない」
そういえば過去にそういったものを要求してきた男もいたっけ。金は出すから彫ってきてくれと土下座してきたアホが。
「でも、女性はそうじゃないでしょ」
「私はいいと思うよ」
「そりゃこれはアンタのものだっていうマーキングみたいなものなんだし」
「しーちゃんが私のもの? なにをいっているの? しーちゃんは私のご主人様だよ?」
「????」
「さてと、とりあえず話すことも話したし、久しぶりにデートしよっか」
そういって文香は自身の首にリード付きの首輪をつけ、私に手綱を差し出してきた。…………なんで?
「どうしたのしーちゃん?」
「どうしたのはこっちのセリフだよ!? なんで!? どうして首輪つけてんの!? 夜ならまだしもこんな真っ昼間からこんなもん持って歩きたくないよ!?」
「―― あっ❤ 急にそんな❤ もうっ❤」
くそっ! リードをつかんで引っ張り寄せただけで発情すんのかよ! 誰だよ文香をこんな風に調教したの! 過去の私だよくそっ!
「というか普通立場逆でしょ!? 文香の言う通りなら私は今文香の奴隷みたいなもんなんだから!」
「え、しーちゃんが私の奴隷? ちょっとそれは解釈違いっていうか、しーちゃんはしーちゃんらしくいて欲しい、かな」
「くそ! なんなんだこの女!」
昔はここまで手に負えない女じゃなかったはずなのに!
「ほらしーちゃん! 早く
誰か助けてくれ!
よかった、何とか続いた。
この調子でちゃんと次回も更新しなくては。
次回、衆目の面前でお散歩プレイをする二人に魔の手が!?
…………伸びてこないかもしれない。