「東方二次創作」レミフラのお姉ちゃんは幻想郷に帰って来たんだって 作:ゆっくり那由多豊苑
その名は、ルミノア・スカーレット
レミフラのお姉ちゃんだ。
幻想郷の空は、今日も穏やかだった。
博麗神社では、博麗霊夢が縁側でお茶を飲みながらため息をつく。
「平和ねぇ……退屈なくらい」
魔理沙も隣で笑う。
「異変がないのはいいことだろ」
その時だった。
──ビリッ。
空が紙のように裂けた。
「……!」
空間そのものが縦に切れ、黒い裂け目が幻想郷の上空へ現れる。
霊夢は立ち上がる。
「何よ、これ……」
魔理沙も八卦炉を構える。
「異変か!」
裂け目の中から、一人の少女が静かに歩いてくる。
薄青色の髪。
光の当たり方によって淡い緑にも見える髪が風になびく。
深紅の瞳。
少し吊り目だが、その目はどこか優しい。
地雷系を思わせる黒を基調とした服装でありながら、どこか騎士のような格好良さも感じさせる。
小柄な体。
それでも放たれる妖気は、幻想郷中を震わせるほどだった。
少女は静かに地面へ降り立つ。
「……久しぶり」
その一言だけだった。
「誰だお前!」
魔理沙が前へ出る。
霊夢も札を構えた。
「幻想郷へ何しに来たの?」
少女は二人を見る。
少しだけ眉をひそめた。
「……相変わらず」
「?」
「うるさい」
「はぁ!?」
魔理沙が怒る。
「なんだその言い方!」
少女はため息をつく。
「喧嘩する気はない」
「でも」
「あなた達とは」
「相性が悪い」
その一言で空気が凍る。
霊夢も苦笑する。
「初対面でそこまで言う?」
少女は首を横に振った。
「……初対面じゃない」
その瞬間。
どこからともなくスキマが開いた。
「ふふ……帰ってきたのね」
現れたのは八雲紫だった。
少女は紫を見るなり表情を変える。
優しかった目が、一瞬だけ鋭くなる。
「……紫」
「久しぶり」
「全然」
「嬉しくない」
紫も苦笑した。
「相変わらず嫌われてるわね」
「当然」
たった二文字。
しかし十分だった。
二人が犬猿の仲だということを誰もが理解する。
その時。
幻想郷の別の場所から大きな声が響く。
「えっ!?」
「お、お姉ちゃんが帰ってきた!?」
紅魔館。
レミリア・スカーレットが窓から飛び出した。
「本当に!?」
フランドールも羽を広げる。
「お姉ちゃーん!!」
二人は全速力で飛び出す。
霊夢達のいる博麗神社へ一直線だった。
数分後。
「お姉ちゃん!!」
レミリアが勢いよく飛びつく。
普段なら避けられるほどの速度。
しかし少女──ルミノア・スカーレットは避けなかった。
ふわりと受け止める。
「……ただいま」
レミリアの目から涙がこぼれる。
「遅いわよ……!」
「何百年待ったと思ってるの!」
ルミノアは少し困ったように笑った。
それは滅多に見せない、小さな笑顔だった。
「……ごめん」
そこへフランドールも飛び込んでくる。
「お姉ちゃんだぁ!」
「会いたかった!」
ルミノアはもう片方の腕でフランも抱きしめる。
「……フラン」
「大きくなった」
「えへへ!」
「でも、お姉ちゃんより少しだけ大きいよ!」
「……知ってる」
「ずるい」
その一言にレミリアが吹き出す。
「お姉ちゃん、そこ気にしてたの?」
ルミノアは視線を逸らした。
「……少し」
「かわいい!」
レミリアが笑いながら抱きつく。
フランも笑う。
「お姉ちゃん、シスコンなんだから!」
ルミノアは黙る。
数秒後。
「……否定しない」
「「やっぱり!」」
姉妹三人の笑い声が神社へ響いた。
霊夢はその様子を見て肩をすくめる。
「なんだ、悪い人じゃなさそうね」
「いや」
魔理沙は苦笑する。
「私達とは相性悪そうだけどな」
「その通り」
ルミノアが即答する。
魔理沙は思わずずっこけた。
「そこは否定しろ!」
「……無理」
「性格が合わない」
「以上」
霊夢と魔理沙は顔を見合わせる。
「やっぱり合わないわね」
「だな」
その時だった。
後ろから一人の賢者が歩いてくる。
「ふふ、帰ってきたようだね」
現れたのは摩多羅隠岐奈だった。
ルミノアの表情が少しだけ柔らかくなる。
「……隠岐奈」
「久しぶり」
「元気そうで何よりだ」
ルミノアは小さく頷く。
「……うん」
レミリアが驚く。
「え、お姉ちゃんが普通に話してる!」
フランも目を丸くした。
「隠岐奈さんとは仲良しなんだ!」
隠岐奈は笑う。
「この子は昔から素直じゃないだけさ」
ルミノアは少し照れたように視線を逸らす。
「……別に」
「ただ」
「信頼してる」
その一言に隠岐奈は満足そうに笑った。
夕焼けに染まる幻想郷。
長い時を経て、紅魔館の長女・ルミノア・スカーレットは故郷へ帰ってきた。
姉妹との再会。
相変わらずの犬猿の仲である紫。
喧嘩ばかりの霊夢と魔理沙。
そして、変わらず迎えてくれた隠岐奈。
新たな日常が、静かに幕を開けようとしていた。