「東方二次創作」レミフラのお姉ちゃんは幻想郷に帰って来たんだって 作:ゆっくり那由多豊苑
翌朝──。
紅魔館には珍しく穏やかな空気が流れていた。
窓から差し込む朝日が廊下を照らし、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「ん~……」
レミリアは大きく伸びをしながら目を覚ました。
「今日はお姉ちゃんがいるんだった!」
一気に目が覚めたレミリアは、急いで部屋を飛び出す。
一方、フランドールも同じように目を覚ましていた。
「あっ、お姉ちゃん!」
二人はほぼ同時にルミノアの部屋へ向かい、勢いよく扉を開けた。
「お姉ちゃん、おはよう!」
「おはよう!」
しかし、部屋の中には誰もいなかった。
「あれ?」
「どこ行ったの?」
二人が首を傾げていると、美鈴が廊下を歩いてくる。
「ああ、ルミノア様なら庭園ですよ」
「庭園?」
紅魔館の庭園。
そこには一本の木の下で本を読んでいるルミノアの姿があった。
朝日に照らされた薄青色の髪は、見る角度によって淡い緑色にも見える。
静かな時間。
風が髪を揺らす。
「お姉ちゃん!」
レミリアとフランが同時に飛びつく。
ルミノアは本を閉じると、自然な動きで二人を受け止めた。
「……おはよう」
「おはよう!」
「今日は何する?」
フランが目を輝かせる。
ルミノアは少し考えてから答えた。
「……遊ぶ」
「本当!?」
「……うん」
レミリアは驚いた。
「お姉ちゃんが自分から遊ぼうなんて言うなんて!」
「珍しい……」
ルミノアは少しだけ視線を逸らす。
「……たまには」
三人は紅魔館の広場へ移動した。
「何して遊ぶ?」
フランが聞く。
ルミノアは空を見上げた。
「……鬼ごっこ」
「やるー!」
レミリアも笑う。
「負けないわよ!」
最初の鬼はルミノア。
「……十数える」
そう言って木に手を当てる。
「一」
「二」
「三」
その静かな数え方とは対照的に、レミリアとフランは大慌てで逃げ回る。
「フラン! あっち!」
「うん!」
「……十」
ルミノアが振り向いた。
次の瞬間。
シュンッ。
その姿が消えた。
「え?」
レミリアが目を丸くする。
「どこ!?」
空間がわずかに揺れる。
ルミノアはレミリアのすぐ後ろに立っていた。
「……見つけた」
ぽん、と肩を叩く。
「きゃっ!」
「早っ!」
レミリアは思わず笑ってしまう。
「能力使うの反則よ!」
ルミノアは首を傾げる。
「……鬼だから」
「確かにそうだけど!」
今度はフランが木の上へ逃げる。
「ここなら見つからない!」
ルミノアは木を見上げる。
「……甘い」
指を軽く動かす。
空間が繋がる。
次の瞬間には木の上に立っていた。
「えぇぇ!?」
「タッチ」
「捕まったぁ!」
フランも大笑いする。
「お姉ちゃんずるーい!」
ルミノアは小さく笑った。
「……次」
「レミリア鬼」
「えぇぇ!?」
遊び終えた頃には、お昼になっていた。
レミリアとフランは芝生の上に寝転がる。
「疲れたぁ……」
「楽しかった!」
ルミノアも二人の隣に腰を下ろす。
「……そう」
その時だった。
フランのお腹が鳴る。
ぐぅ~。
一瞬の沈黙。
「……」
フランは真っ赤になる。
「き、聞かないで!」
レミリアは笑い転げる。
「フランらしいわ!」
ルミノアは少しだけ笑みを浮かべる。
「……食堂」
「行こう」
昼食の時間。
咲夜が料理を並べている。
「今日は皆さんのために腕を振るいました」
「わーい!」
フランが席へ座る。
ルミノアは自然と二人の皿へ料理を取り分ける。
「いっぱい食べて」
「……育つ」
レミリアは苦笑する。
「お姉ちゃん、お母さんみたい」
「……違う」
「姉」
「でも面倒見が良すぎる!」
フランも頷く。
「シスコンだもん!」
ルミノアは一瞬固まる。
「……」
「否定は?」
レミリアがニヤニヤする。
ルミノアは小さく息を吐き、照れくさそうに目を逸らした。
「……好きだから」
その一言に食堂が静まり返る。
レミリアもフランも顔を赤くする。
「そ、そんな真っすぐ言われると照れるじゃない!」
「えへへ……私もお姉ちゃん大好き!」
二人は勢いよくルミノアへ抱きついた。
ルミノアは少し驚きながらも、優しく二人を抱きしめ返す。
「……私も」
「二人とも、大切」
咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔は、その温かな光景を微笑ましく見守っていた。
しかしその頃、紅魔館から遠く離れたスキマの中では、八雲紫が静かに目を閉じていた。
「……平和な時間は長く続かない」
紫の視線の先には、幻想郷の結界に生じ始めた小さな亀裂が映っていた。
「その力を狙う者が、もう動き始めているわ」
誰にも聞こえないその呟きは、静かに風の中へ消えていった。
こうして、姉妹が再会した穏やかな日々の裏で、新たな異変の足音が少しずつ幻想郷へ近づいていた。
楽しい一時の裏に潜む者はルミノアの力を狙っている