「東方二次創作」レミフラのお姉ちゃんは幻想郷に帰って来たんだって 作:ゆっくり那由多豊苑
紅魔館へルミノアが帰ってきてから、一週間。
館には以前よりも笑顔が増えていた。
レミリアは書類仕事を終えると、真っ先にルミノアの部屋へ向かう。
「お姉ちゃーん!」
コンコン、と扉を叩く。
「入るわよー」
部屋の中では、ルミノアが静かに本を読んでいた。
「……どうした」
「暇!」
「……そう」
「その『そう』じゃないの!」
レミリアはベッドへ飛び込み、ごろごろと転がる。
「お姉ちゃん、構って!」
ルミノアは読んでいた本を閉じると、小さく息を吐いた。
「……五分だけ」
「やった!」
そこへフランドールも勢いよく部屋へ飛び込んでくる。
「お姉ちゃん、お散歩しよう!」
「……いいよ」
三人は紅魔館の庭へ出ることにした。
庭園には色とりどりの花が咲いている。
「綺麗ねぇ」
レミリアが花壇を眺める。
フランは蝶を追いかけながら笑っていた。
「待ってー!」
その様子を見つめるルミノアの表情は、どこか穏やかだった。
(……この時間が、続けばいい)
しかし──。
ピシッ。
突然、耳に小さな音が届く。
ルミノアだけが反応した。
「……」
空を見上げる。
何もない青空。
だが、彼女には見えていた。
空間に細い亀裂が一本だけ走っている。
「……おかしい」
その声にレミリアが振り返る。
「どうしたの?」
ルミノアは何も答えず、右手を空へ向ける。
空間を司る能力が静かに発動する。
「閉じて」
亀裂へ魔力が流れ込む。
しかし。
パキッ。
亀裂は閉じるどころか、少しだけ広がった。
「……!」
ルミノアの瞳が鋭くなる。
(私の能力で……閉じない?)
それは初めてのことだった。
その日の夜。
ルミノアは一人で紅魔館の屋上に立っていた。
夜風が髪を揺らす。
「……誰」
その時。
後ろから聞き慣れた声がした。
「眠れないの?」
振り返ると、そこには隠岐奈が立っていた。
「……隠岐奈」
「やっぱり気付いたかい」
ルミノアは静かに頷く。
「空間が壊れてる」
「……少しずつ」
隠岐奈は真剣な表情になる。
「幻想郷の結界が弱っている」
「原因はまだ分からない」
「だが、このまま放置すれば……」
「幻想郷そのものが裂ける」
その言葉にルミノアは黙り込む。
「……私が直す」
「そう言うと思ったよ」
隠岐奈は苦笑する。
「でも一人で抱え込むな」
「レミリアもフランドールも、お前の家族なんだ」
ルミノアは少しだけ目を伏せた。
「……巻き込みたくない」
「それでも、家族は力になりたいと思うものさ」
その言葉は、ルミノアの胸に静かに響いた。
翌朝。
朝食の席。
「お姉ちゃん!」
フランがパンを頬張りながら話しかける。
「今日も遊ぼ!」
「……」
返事がない。
レミリアが心配そうに覗き込む。
「お姉ちゃん?」
ルミノアはようやく顔を上げた。
「……ごめん」
「少し考え事」
「珍しいわね」
レミリアはじっと姉の表情を見る。
長い付き合いだからこそ分かる。
何かを隠している。
「ねぇ」
「何かあった?」
ルミノアは少しだけ迷ったあと、小さく首を横に振る。
「……まだ」
「言えない」
レミリアはそれ以上聞かなかった。
「分かった」
「話したくなったら聞くわ」
「一人で無理だけはしないで」
その優しい言葉に、ルミノアはほんの少し微笑む。
「……ありがとう」
その様子を窓の外から、一羽の黒い鴉が見つめていた。
赤く光る瞳。
鴉は低く鳴くと、空へ舞い上がる。
そして幻想郷の外れにある朽ち果てた神殿へ降り立った。
玉座に座る黒いローブの人物へ向かって、鴉は頭を下げる。
「ククク……」
「ついに見つけた」
「空間を司る吸血鬼……ルミノア・スカーレット」
「計画を始める時が来た」
神殿の奥から、不気味な笑い声が静かに響き渡るのだった。
──第五話へ続く。
不穏な空気が漂うが、果たしてルミノアは家族を守れるのか今後にご期待する