「M78星雲。光の国。僕らの知らない次元にはタイガみたいな巨人がたくさんいる世界もあるんだね」
半透明なタイガから光の国の話やエゴルギアに封印された経緯を聞いたヒロユキ。まだ見ぬ次元、広い世界を再認識させられた。
『ヒロユキも宇宙警備隊みたく、この宇宙の平和を守る組織の一員なんだよな』
「うん。銀河連邦警察に所属しているよ」
『その中でも1つの宇宙にただ1人の戦士の称号を持ってるなんて凄いじゃんか』
タイガはこの宇宙唯一の宇宙刑事ギャバンであるヒロユキを褒めるも、ヒロユキはギャバリオントリガーを見つめる。
「だけど昨日の怪獣との戦いの時は何故か蒸着が出来なかったんだ」
『それであんな大怪我をしちまったってことか』
デマーガとの戦闘の際、蒸着出来なかった事をヒロユキは気にしているとジョーネッツエモルギアが肩に乗っきた。
『エモッ』
ジョーネッツエモルギアは自らギャバリオントリガーに収まる。
【ジョーネッツ!】【チャージ】
「蒸着しろってことか?分かった。蒸着!」
【ジョーネッツ!】【アクティベート】
「蒸着できた」
怪獣との戦闘中は高次元によりギャバンシステムが凍結されていたが、α宇宙のギャバン、ギャバンインフィニティの対話によって考えを改めたため蒸着が認可されていたのだ。
とはいえ対話したギャバンインフィニティがまだその事実を広めてはいないので、ヒロユキは蒸着出来なかったのはギャバリオントリガーの故障と考えてしまっていた。
『それが宇宙刑事ギャバンイージスか。カッコいいじゃん』
「ありがとう。ところでタイガはこれからどうするの?」
蒸着を解除したヒロユキはタイガに今後の事を尋ねる。
『Dr.アビスを捕まえて、エゴルギアの封印を解除させるまではヒロユキの世話になりたいんだけど』
「分かった。どうやらこの世界に怪獣が封印されているエゴルギアが流通しだしたのはDr.アビスが原因みたいだし、一緒にDr.アビスを逮捕しよう」
『あぁ!よろしく頼む!』
共にDr.アビスを逮捕するという目標を掲げたヒロユキとタイガ。そんな最中、生活安全課の上司であるカナから報告が入ってきた。
『ヒロユキ。エモルギア犯罪事案で出動要請が出たわ。いけるかしら?』
「ハイ!工藤ヒロユキ、出動します!」
カナの命令で現場へと急行したヒロユキ。ヒロユキは生活安全課なため通常勤務なら現場の最前線に出ることはないのだが、1つの宇宙にたった1人の宇宙刑事ギャバンであるが故にエモルギア犯罪事案または他の銀河連邦警察が対処不能な事案と判断された際にはヒロユキが現場に向かわなければならない取り決めになっている。
「混沌の神はカオスを望んでいる!」
『ヒロユキ、アイツらの手にあるのはエモルギアか?』
タイガは宇宙犯罪組織グリムドの構成員の手にあるネガエモルギアを指差す。
「うん。ネガエモルギアを利用した犯罪組織が最近より活発化して銀河連邦警察は手を焼いているんだ」
「出でよ!エモンズ!」
ネガエモルギアを持つ構成員はエモンズを召喚したので、ヒロユキも動き出す。
「行くよジョーネッツ!」
『エモッ!』
ジョーネッツエモルギアを手にとったヒロユキはギャバリオントリガーにそれをセットする。
【ジョーネッツ!】【チャージ】
「蒸着!」
【ジョーネッツ!】【アクティベート】
ギャバンイージスに蒸着したヒロユキは構成員とエモンズの前に立ち塞がるとギャバリオントリガーの銃口をエモンズに向ける。
「ギャバンイージス!現場しました!」
「ギャバンか。お前の相手は俺だけではない!姐さん!お願いします!」
構成員の後ろから歩いてきたのは変身怪人の異名を持つ外星人、ピット星人だった。
「さっそくアタイに頼るだなんてと言いたいところだが、相手はギャバン。ならアタイに頼るのもしょうがないね」
ピット星人は角醒器オメガホーン・レプリカを手にすると名乗りを上げる。
「深い湖に痺れて沈め!アタイはピット星人エウレ!」
ピット星人エウレと名乗った外星人はさらにエゴルギアまで取り出すと角醒器にそれをセットして力を解き放つ。
「角醒憑依しろ!宇宙怪獣!エレキング!」
エレキングのエゴルギアからその力を自身に宿したピット星人エウレは手に持っていた鞭に電撃を纏わせた。
『怪獣を召喚する以外にも、エゴルギアにはあんな使い方があるのか』
怪獣を召喚するだけでなく憑依させられる事を知らなかったタイガが驚いた反応をしていると、ピット星人エウレとエモンズはギャバンイージスに襲いかかってくる。
「さぁ、アタイの鞭で痺れて沈みな!」
電撃の鞭を回避したギャバンイージスだったが、即座にその軌道を変えてきたピット星人エウレはそれをギャバンイージスの左腕に巻き付けた。
「ほら、痺れな!」
「ぐあっ!?」
エレキングは宇宙怪獣でありながら生息地が湖という珍しい生態系の怪獣だ。水中での活動を得意としながらもメインの攻撃手段が電撃という特殊なもので長く伸びる尻尾で相手をからめ取り、対象を痺れさせることを得意技としている。
ピット星人エウレもその戦術を参考にした鞭からの電撃でギャバンイージスを痺れさせようとしてきたのだが、ギャバリオン粒子で構成されているコンバットスーツにはその電撃の効き目は半減されたようで、一撃でギャバンイージスが沈むことはなかった。
「流石ギャバン。タフだねぇ。沈めがいがありそうだ」
「そう安々とは沈まないよ」
「なら電圧を上げるよ!」
コンバットスーツの防御を越えるため、より電撃を強力なものにしてきたピット星人エウレはその鞭をギャバンイージスに再び振るう。
「ぐぅぅぅっ!?ダァっ!」
強烈な電撃の鞭を受けてしまったギャバンイージスだったが、本人の気合いで堪えつつも鞭を振り払い、ギャバリオン短剣型の武器であるギャバリオンセイバーを手に握る。
「ギャバリオンセイバー!」
ギャバリオンセイバーから放った紫の斬撃。それに対してピット星人エウレも角醒器でエゴを篭めた必殺技を叫ぶ。
「出電子(ででんね)!」
強く地面に鞭を叩きつけたピット星人エウレは電気の衝撃波でギャバリオンセイバーの斬撃を相殺すると、次の一撃の必殺技を叫ぶ。
「羽裳(パモ)!」
右手に鞭を巻き付けて拳を振るうピット星人エウレ。その電撃の拳をギャバンイージスはブロワー型武装のギャバリオンドルネードの先端のEMOドルネードヘッドで噛みつかせる形で拳を受け止め、その電撃はギャバリオンドルネードに吸収される。
「くぅ!放せ!」
「あぁ。放すさ。ついでに、今の電撃も返すよ」
吸収した電撃をEMOドルネードヘッドから放射する形で返したギャバンイージス。自分の電撃で大ダメージを受けたピット星人エウレは角醒憑依が解除されて、角醒器からエレキングのエゴルギアが弾かれるように飛び出た。
「っと。エゴルギア押収」
「そん、な・・」
「姐さん!?」
ギャバンイージスはエレキングのエゴルギアをキャッチすると、ピット星人エウレはその場に倒れ込む。残る敵戦力はエモンズだけだ。
「ギャバリオンブレード!」
ギャバリオンドルネードを解除してギャバリオンブレードを手にしたギャバンイージスは両腕から火球を連続で飛ばしてくるエモンズの攻撃を切り裂く形で防ぎながら距離を詰める。
「イージス!ブルースラッシュ!!」
必殺の蒼い一閃で切り裂かれたエモンズが爆発し、その爆発でネガエモルギアを手放した構成員。ネガエモルギアも回収したギャバンイージスは構成員やピット星人エウレに手錠をはめて安全確認をした後に蒸着を解除した。
「午前11時13分。犯人確保。事案終了」
『お疲れヒロユキ!中々に痺れる相手だったな』
「言葉通りに痺れさせられたよ。それにしてもエモルギア犯罪だけじゃなく、エゴルギアによる事案の2件目だなんて。今後エゴルギア事案の犯罪が増える気がして心配になるよ」
『元々どれぐらいの数がいたのか分からないけれど、こことは違う地球にいた怪獣達がエゴルギアにされているのは確実だ。気を引き締めた方がいい』
「あれ?だけどこの押収したエゴルギアの怪獣。宇宙怪獣エレキングって呼ばれていなかった?」
『エゴルギアにされたのは地球怪獣だけじゃないってことだ。地球に来ていた怪獣ももちろん巻き込まれてるし、俺が把握してないだけで地球以外の星々の怪獣もエゴルギアに封印されていたかもしれない』
「その地球から怪獣がいなくなって平和になったかもしれないことを喜ぶべきなのか。その怪獣が売買されてこっちの宇宙で事件を起こしているのを嘆くべきなのか」
ため息をついたヒロユキは支部に帰還しようとコスモギャバリオンに乗り込もうとすると、コスモギャバリオンのすぐ下に見知った女性がいることに気づく。
「君は、芦川さん」
ギルスに覚醒した長野県警G3ユニット部隊の女性、芦川イチカだ。
「イチカでいいっスよ。さん付けもいらないっス」
「わかったよ。イチカ。ところでここは長野じゃないのにどうしてわざわざ?」
「銀河連邦警察へ推薦状を書いてもらうにあたって私の必要書類を送ることとなりまして、関東ではここでしか銀河連邦警察に書類を送れないので、ここに来たんです」
「そうか。宇宙に紙や荷物とかの郵便物を送れる場所はこの辺りだったね」
「そうしたらここにコスモギャバリオンがあって、もしかしたら会えるかもって思ってきちゃった次第です」
「なるほど。ちょうどエゴルギア事件も解決したところだし、少し話そうか」
緊急の事案もないヒロユキは少しだけイチカと話をしようと近くのベンチに2人して腰を掛ける。
「その、さっき言っていたエゴルギア事件って何なんスか?エモルギア犯罪とは違うんですか?」
「僕もつい昨日出くわしたばかりの事案だったからあまり詳しくは知らないし、銀河連邦警察全体にもまだ通達されてはいないんだけれど。エゴルギアっていう別時空の怪獣が封印されているアイテムを使った犯罪者が現れ出したんだ。昨日、僕もコスモギャバリオンで戦って負けていただろ?その後巨人のおかげで何とかなっていたけどさ」
「巨人。凄かったっスよね!・・・ってそうじゃないですよ!コスモギャバリオンが大破したほどなのに、ヒロユキさんは怪我しなかったんスか!?」
今はきっとやせ我慢をしていると考えたイチカはヒロユキに心配するような視線を向けるが、ヒロユキはタイガのおかげで全快している。とはいえ怪我をしていないと誤魔化すには無理があった。それほどまでにあの時のコスモギャバリオンは激しくやられていたのだ。
「まぁ、幸い回復を促進させるエモルギアのおかげで全快とはいかないけど、何とかなってるよ」
タイガのエゴルギアのおかげで回復したのだからあながち嘘ではない。
「な、ならいいですけど。いくら宇宙や地球の治安維持のためとはいえ、あまり無理はしないでくださいね」
「うん。平和を守るためにはまずは自分も守らないといけないからね」
「平和。・・・そうっスね」
イチカは公園で遊んでいる子供達やそれを見守る親御さん達の姿を見つめる。
「この平凡な日常を守るのが警察の使命っスからね」
「ひとつひとつの積み重ねが、小さな一歩が平和に繋がっていくと僕は信じてる」
ヒロユキがそう告げると、少し離れた場所から拍手が聞こえてきた。
「いい言葉だギャバンイージス。心に響いたよ」
「あなたは?」
『気をつけろヒロユキ!アイツは!』
「始めまして。私はDr.アビス。いずれこの地球の王となるものだ」
「・・・あなたには聞きたい事がありました。何故タイガや怪獣達をエゴルギアに封印してこの宇宙にばら撒いたのですか?」
「新たな時代を作るためだ。濁り淀んだ水槽の水は新しく入れ替えるだろう。古い建物は1度破壊して、更地にしてから新たな建物を建築するだろう。それらと同じ事だ。1度今の世を怪獣という巨体な力で壊す事で新時代を作る」
「そんな破壊行為。銀河連邦警察が、ギャバンである僕が許すと思うか?」
対話では止める事はできない。そう判断したヒロユキはギャバリオントリガーを構える。
「だが誰かがやらねば世界は争いに満ちたままだ。愛する母星から争いをなくせるのなら、私は喜んで悪となり、地球を傷つけよう」
「これ以上の問答は無駄か。エゴルギア密売容疑であなたを連行する!」
Dr.アビスを逮捕しようとヒロユキが駆け出すと、Dr.アビスはオメガホーン・ドゥームにエゴルギアをセットしてエゴを叫んだ。
次回 目覚め『アギト』