いーえっくす!ウルトラ怪獣擬人化計画(最終報告書) 作:エーブリス
…頭の中で。
それを発作で、だらだら書き進めようと見切り発車して、な!
基本的にこの話は、日常モノです。
マジモンの怪獣が出て来て、そして光の戦士が出て…みたいなウルトラスケールなアクションはほぼありません。
あ、この作品はウルトラシリーズに対する独自解釈及びそこから派生するような独自設定がケミカルバーガー級にてんこ盛りなので、そこんとこ注意。
なんならウルトラ知識もUFERとメビウスあたりので書いてるし、本家怪獣擬人化計画はほぼほぼ概念だけ持って来たに等しい状態です。
どくんっどくんっ…と、心の臓物が波打つ音。
かーんっかーんっ…と、鐘が吼える音。
それに混じり、じりじりじりっ…と、身を襲う橙の電流。
絶え間なく、容赦も無く。
最後、数多の雷が…一度に襲い――――。
どんっ…と、何かを強く打ち付ける音で、目が覚める。
相も変わらず夢とは、朧気で要領を得ないものだ。
そして間違いない、確実なのは…叩く音が、現実のものである事。
下手人は大体想像が付くし、今更に怒る気も無い。
立場としては説教…いや、折檻の一つキッチリやるべき。
だが…今や
握りこぶしで「ばかもん」「ぶったるんどる」と一喝、そして拳骨一発?
…止してくれ。
確かに適度な体罰を、個人的には肯定する。
だが、それで消費されるエネルギーはバカにならんのだ。
今更、日常の一部を無理くり取っ払う意味もない。
そして意味のない事に、莫大なエネルギーを使える程俺は疲れ知らずじゃない。
とどのつまり…丁度いい目覚ましなのだ、
何せほぼ決まった時間帯に、この音が響き渡る。
それに騒音問題なら、もっと酷い環境を経験している。
…貴重な休日だ、夢幻に住まう魔人どもにくれてやるのも癪である。
俺はゆっくり――コーヒー豆の在庫を憂いながら――立ち上がった。
「…とは言え、そろそろキツく言うか」
落ちていた掛け布団を拾い、ベッドに投げ捨てつつ…隣部屋のある壁を睨む。
大半の場合、騒音はソコから来ている。
眠気に任せ、暫く重い耽った後…やっぱいいや、とドアを開けた。
「!。
わっ…」
「…おっす」
――――目が合う。
知った目だ、その目をよく知っている。
何せ、十年以上を同じ屋根の下で過ごしている女達の一人だ。
「うん、おはよ…カズヤ。
――――ふぁあ…」
【カズヤ】というのは俺の名前だ。
ドアを開き切り、その濁った眼の持ち主の全体像を確認する。
寝起きで乱れる、灰色を多分に含んだ栗色の毛髪が目立つ。
そしてサイズの合っていない、俺のTシャツをだらりと着ていた。
おかげで、下半身に何も履いていない様に見える。
…因みに言えば、彼女は騒音の元ではない。
寧ろ被害者、なのかもしれない。
「…寝れなかったか」
「うん、ね…音がどうって訳じゃないよ。
また、どこかに連れ去られちゃう気がして、さ」
「何処にも行かれねぇよ」
手櫛でボサついた彼女の髪を梳かし、整える。
毛質が柔らかいので、簡単に普段通りだ。
「第一、お前を連れ去れる様な奴って…フッ」
「あっ…言ったなー。
か弱い乙女に対してー、なんて言い草だー、このっこのっ」
彼女は手に持つ
我が家の日常では、最も平和なじゃれ合いだ。
彼女が望むのだから、応えてやらねば。
――――さて、と。
バカップル紛いの行為もそこそこに、俺達は問題に向き合わねばならない。
面倒順で、上から二番目の問題に向かわねば。
「…ねぇカズっち。
レツの事どうする?いい加減直さないとゲーム壊す?」
【レツ】それが扉の向こうにいる彼女の名前だ。
――――まあ面と向かって“彼女”って言い表したら、この上なくキレる訳だが。
「いくらなんでも、それ予後悪すぎでしょ。
こう言うのはな…地道に話し合うんだよ、逆立ちでもして」
「逆立ち?…。
話したら話したで、余計に拗れそう」
「拗れる程話せれば、もう大したもんだ」
扉の先の彼は、何かと多感な精神状態だ。
話すら出来ないなんてのは前からずっと、よくある事である。
だが――――問題の方が先に、自ら歩み寄って来た。
「…おはよう」
「っ!、レツ…おう」
此方は寝起き由来でない…イラつきで頭を掻いたのだろう?
やはり髪が乱れた、褐色肌のボーイッシュな面影。
そして何より目が付く――――赤く煌く、ひび割れのようなライン。
浮き出る、冷えた溶岩が如き外殻。
「…“出てる”ぞ。
また家燃やすなよ」
「わーってるって…」
「後…そろそろ静かにやれ。
キレるな、とは言わんから」
「ホントいいーって…」
俺に指摘されたのが不快そうに、ため息の後…人として正常な姿に戻った。
――――そうだ、ここの女達は皆…人間じゃない。
知る人々に【怪獣娘】と呼ばれた、怪獣の力を宿す女達。
若しくは…その力を人の女型に押し込めた存在。
もしかすると怪獣という、偉大なる脅威の模倣なのか。
既に彼女らが、そうであるというのに。
有り体に行えば、怪物。
或いは異形の女神。
そんなのがこの一軒家に集まり、人知れず暮らしている訳である。
「…今回は誰にやられた?」
「クソヘリにベースレイプされて、その上ガン待ちのアホSCWに煽られた。
あの垢絶対マグマ人のだ…」
「マグマ星人?マジかよ。
奴らもBFやるんだな…。ババルウのプレイヤーは知ってるけど」
しかし力はどうあれ、人は人。
感性などは常人にほど近い。
人並に喜んだり怒ったり、哀しんだり楽しんだりする。
底の抜けた聖人もいれば、カスのドクズだっている。
どんな星の人々とも変わらないように。
目の前にいるレツも、
けれども
だから彼はずっと苦しんでいる。
空調の下以外の空気には、アレルギーさえ見せる程に。
だから俺は、保護者である事を望まれている。
ずっと…ずっと、そう在り続けている。
「…まあいいや。
飯しようぜ、飯連勤明けで昨日の夕食抜いてんだ」
「そういえばカズ兄、足元気を付けて――――あっ」
ふと、足元がなにか柔らかい物体が触れる。
レツの忠告を理解したのは、その直後だった。
「…むぅうう」
「うぉおっ!?
――――あぁ、悪かった、悪かったってエレキ」
「やっ、やっ!
ぁず、やぁらっ、ぃぁい!」
「うわぁ珍し、カズっちがそんなヘマするなんて」
「ごもたんも昨日…それも思いっきり踏んでたよね」「お黙り」
本当にそうだ、こんなポカやらかすとは。
色々引退を考えるべきだろうか。
…このダダこねてる、ゆるふわロン毛もそう。
怪獣娘だ。
【エレキ】は改造エレキングの力を持つ。
元の怪獣がどうにも幼体をそのままデカくした様な姿だからか?
人語すら怪しい程、精神が幼い。
…幼稚園生未満だ。
そのくせ身体は成人女性の、それもかなりグラマラスなソレなので本当に困る。
基本四つん這いなのも、本当に勘弁してほしい。
今日にまで俺は、この色々危ない彼女の飼い主をやり続けている。
エレキもそれに納得、というかソレ以外は拒絶している。
…現状ヘソ曲げられてるので、一切説得力がないのだが。
「ごめん、ごめんて…ほら丸まらないで。
――――ごもたん、助けて」
「うーん、カズっちでも無理なら私じゃ猶更だね」
そう言えば今更になってしまった。
【ごもたん】も怪獣娘だ。
もう言うまでもなかろうが、改造ゴモラの…である。
正直、ここにいる怪獣娘の中で一番マトモだ。
最も普遍的な社交性を持つ彼女だから、俺もついつい色々と頼み込んでしまう。
だが彼女も少し普通じゃない所もあって、それに苦しんでいる。
しかし「一番カズヤが大変でしょ?」と言って、いつも俺を甘やかす。
…それに乗っかる俺自身も問題なんだが。
――――がしゃーん!という崩壊音。
次いで、どたどたと喧しい足音。
それだけで俺、いや俺達は、この家一番の問題がやって来たことを悟る。
「あーっ!カズがエレキちゃん泣かしたー!
いーけないんだーいけないんだー!せーんせーに言ってやるー!」
「うるせぇぞラン子ォ!
ったくコイツは朝からバカスカと」
乱暴の権化、暴虐の化身。
この家最大の問題児、こんなのでも最年長。
火炎のような赤毛の、クソたてがみトサカ女。
忌々しい【ラン子】はそんな罵倒ばかりが似合う、改造タイラントの怪獣娘。
正直コイツ嫌い。
阿保みたいに酒飲むし、酒癖も悪い。
飲み方だって下品極まりない。
元がベムスターを含む合成怪獣なので、コイツにも腹部の口腔が存在する。
吸引アトラクタースパウト…だったか。昔、親父から貰った怪獣図鑑でそういう名前の記載があった。
このアホは寝そべりながら、缶入りチューハイをソコへ垂れ流すのだ。
曰く「それが一番エクスタシー」らしい。
くたばれ、と思ってる。
その飲み方で回りめっちゃ汚れるし。
オマケにきったねぇ喘ぎ声もセットで出すので、周囲の汚染度が尋常ではない。
「もう朝からクッソ笑かすなよぉ~」
「ほんとコイツ」
「あっそうだ…カズぅ、また檸檬堂おねがぁい♥」
「断る自分で買え」
このバカヤローの願望とか要望とか、聞くのも嫌だ。
勝手にしててほしい。
「とか言っちゃってぇ?
カズちんちんが一番好きなのアタシだもんねぇ~!
なんせアタシは数千年に一度の――――ッ!?」
…え?何投げた、って?
いやスリッパだよ、スリッパ。
大分本気めに投げたし、顔スレスレに投げたけど。
こんな穀潰しに、女の命もクソも有るものか。
「…ガワだけで、よう調子乗れんなお前相変わらず」
ピリ付いた――――様に見えて、正味何てこと無い空気感。
無限にやったやり取りなので、今更怖気る道理も無い。
残るのは「やらなきゃよかった」と、頭を抱える後悔だけだ。
「――――あーもう!!喧嘩しない!朝からぁ!
ほらご飯!いくよ二人共!」
「お、おう…ごもたんゴメンな?な?」「悪い…俺もやり過ぎた」
ごもたんの陽気にリセットされ、また日常だけが動き出す。
エレキもいつの間にか機嫌を…直しては無い。とぐろ撒いていじけてる。
が、レツに持ち上げられて同行する。
…可笑しな事は言ってないだろ?
レッドキングのパワーあるんだぜ、そんなもんだろ。
5人同時に辿り着いたリビングにしたって、別段代わり映えは無いものだ。
そも、3日目までの新居以外で代わり映えがあったら、それは逆に怖い。
俺は時刻を確認する為、壁に掛かった時計を見る。
――――それが既に動かない物と、知って尚。
「…つーかよ、いい加減直そうぜ時計ェ」
「要らないでしょ。
皆スマホか腕時計じゃん」
「俺の腕時計に含めていいのか」
「ぅにゃぁ」
「いいん…じゃない?」
時計について話したのは、凡そ3年ぶりだ。
買って数か月で壊れた時は、不良品を掴まされた…と騒いだのに。
実際生活してみて、態々掛け時計を使わない事実に気が付いたのはその直ぐ後だった。
次はきっと5年ほどは話さない。
「…お!プリンはっけーん!もーらい」
「あ!ラン子それオレの!返せって!」
喧嘩するなと、怒られた傍からまた一悶着起こすラン子。
それを尻目に窓のその先を見る。
庭があり、フェンスがある。
だから敷地外を目視するのは大分難しい。
「お、メトロンさんだ」
「この時期の散歩にしては時間ギリギリだね」
しかし、ご近所のメトロン星人が歩いている事は分かった。
あの極彩色ノッポだ、地球人類コミュニティーの中じゃよく目立つ。
同族が、タバコに毒を仕込んで世間を騒がせたことで有名な種族だ。
――――尤もそれは、半世紀くらいは昔の話。
地球人の殆どは覚えちゃいないだろう。
そも、タバコ自体が毒…みたいな概念が広まってる世の中なわけで。
俺は別にどうこうと言わないが。
あのテレワークメトロンの無害性は、今や周辺住民の誰もが認知している。
犬好きの宇宙人一人がやって来た所で、誰もどうとも言わない。
そして、彼のマドロゥクという本名も気に留めない。
これもまた、日常の一部である。
もしこれを続けるのであれば、俺は…。
「あ、そう言えば――――」
「…時は来た。
遂に来た、我らが栄華…バド帝国再興の時が」
「将軍、我らは数百年待ちました。
忍耐の義務は、十分果たしておりましょう」
「十二分だ、そうだとも」
「しかし将軍…水を差す用で誠に申し訳ありませんが。
その――――目標は、どう見ても民家そのものであります」
「ふっ…重要拠点の表層を民家に偽装する。
地球人らしい、涙ぐましくも卑しい浅知恵だ」
「成程、そうでありましたか。
将軍の意図を汲み取れず、お恥ずかしい限り」
「問題無いさ。
未来の帝国を担うエリートに、低次元な思考をさせる訳には行かない。
――――時間だ。総員戦闘配置!」
「承知!
…行くぞ帝国の精兵達!今こそ栄光を!」
「「「「栄光を!」」」」
唐突に迫りくる敵性バド星人の魔の手!
次回、果たして怪獣娘たちの運命やいかに…!
…流石にバド星人の下げが酷い気がするので、次回あたりでちょいっとフォローでも入れたいと思います。
次回が何時になるか分かりませんけどね。