いーえっくす!ウルトラ怪獣擬人化計画(最終報告書)   作:エーブリス

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そもそも妨害工作自体、地味な嫌がらせだったんですけどね(バドの話)。



あ、今回は独自解釈や独自設定がこの上なく吹き荒れます。
その割に…なんか、バド星人の名誉挽回は…うん。



流石に宇宙メリケン(笑)に苦戦は論外

「ぐっ!く、こ、殺せ!

虜囚の屈辱を受けるつもりはない!」

 

るっせーな尻頭。

揃いも揃ってカズに力負けする体たらくで文句言うんじゃねー」

「ゴバッ…!」「中隊長ォォォ!」

 

5分前…いきなりバド星人の集団が突撃してきた。

そして1分も経たずに制圧された――――バド達が。

 

 

俺達はノックアウトした狼藉者を簀巻きにして、ピラミッド状に重ねた。

そして今、ラン子が蹴ったのが…ナンバー2のバドだったらしい。

 

ぶっちゃけ未だにバド星人は見分けがつかない。

中隊長とやらは、下から二段目の左端という中途半端な場所に積まれてしまった。

 

キュラソ星人なら見分け付くんだけどね。

 

 

「くっ…誇り高きバド帝国軍人になんたる仕打ちを!

未開惑星の野蛮人は捕虜の規定すら知らんようだなッ…!」

「アタシら今民間人なんだけどなぁ」「民家への闖入者が何を偉そうに」

 

「…カズ兄、そういえばバド帝国ってよく聞くけどさ。

ホントにあったの?」

 

バド帝国といえば“頭の茹で上がった”バド星人が()る、最も有名な与太話だ。

他の宇宙的先進種族はおろか、宇宙進出が未熟も良い所の地球人にさえ本気にされていない。

 

けれども俺は、この与太話のある真実を知っている。

 

「…実の所、存在した」

 

「マジで!?」

 

「ただどさくさ紛れの建国らしくてな。

多民族、他国家の反発運動を制御できず、妥協に妥協を重ねて…。

結果爆誕したのが脅威の7重帝国らしい」

「オーストリア=ハンガリー二重帝国?」「アレよりカオスだったっぽい」

 

「その内3か国が同族国家だったってマジ?

しょーもねー理由で戦争してる種族はちがうねェ!」

 

「貴様ぁ!

我らが誇り“バド慈愛法”を愚弄するかァ!」

 

人様の星の歴史を笑うのは、正直あまり気乗りはしない。

地球外の友達の方が多いので、そういった話題は正直モヤモヤしがちである。

というか統一国家すらない地球人が笑える方面の話でもない気がする。

 

けれども…それを差し引いても、バド七重帝国は笑い所しかない。

大帝国という面子を保つためだけの妥協政策等、良くて失笑だけを誘う。

 

 

…だが、そんなバド帝国も良いトコ無し、とはならない。

 

銀河有数のネタ国家は同時に、銀河有数のご長寿国家でもあるのだ。

バド星人が宇宙人の中でも、大して寿命の長い種族では無いのにも関わらず。

 

今しがたバド星人が言った「バド慈愛法」が、その秘訣だ。

只々御大層なだけに見える名前の法律が、なかなか笑えないのだ。

 

一部ではあるが、現在の銀河連邦法の原案の原案の原案だったりする。

 

…7種など比較にならない、数百数千を超える種族の統括。

大昔のバドの賢人たちの苦悩は、その礎を築いたと言えるだろう。

 

 

しかし眼前のバド星人は、どう取り繕ったって狡い手口の侵略者。

それ以上でも以下でも無い。

 

いや…今時こんな程度じゃ“侵略”という言葉も使えん。

コソ泥レベルの計犯罪者、か。

 

そんな輩を、付け上がらせる趣味は無い。

そもバド慈愛法にしたって、基本的には条文の重複が目立ちまくるカオスなクソ法律だし。

 

「ぐぬぬぬぬぬぅ!

地獄のディレクターズカットベルトを潜り抜けてまでッ…!

その結末が、これというのかッ…!」

「ディレクターズ…何ソレ?」「惑星ギレルモ、コジマ、アンノーが連なってる辺り」

 

いい加減にEDU*1に処理させるべきだろう。

何時までも、一民家に侵略者擬きを置いては居られない。

 

というかこんな煩い連中、自宅に放置したくない。

 

 

くそ、かくなる上は…ッ!

ち、地球人よ!

君達に文明種族としての矜持があるのなら!我らが、ね、願いを聞き給え!」

 

「…将軍?」

 

お、なんか始まった…多分コイツが総指揮官なのだろう。

命乞いか?それも自分だけ助かるみたいな。

 

「はい、二段目右側のバド星人さん。

ご用件をどうぞ」

 

「わ…私は、バド憂星跳翔士団…頂跳将軍エル・ロアズ…!

此度の作戦に際し、此処にいる兵士9名。

全員、我が独断による、強制徴兵によるものッ…!」

 

「なッ!?

将軍!気は確かですか!?」「黙っていろ中隊長!発言は許可していない!

 

…ん?なんか、違う流れ来てる?

正直身分開示あたりから部下切り捨てるのかと思ったんだが。

 

「彼らに自由意志は無く、全責任はこのエル・ロアズのみにあるッ…!

故に、どうかっ――――兵士達の助命、及び恩赦を願いたい!!」

 

「将軍!!」

 

この悲痛な降伏宣言に、他のバド星人がわぁわぁと泣き叫び始めた。

あの、ええと、まぁ…バド星人なのにガッツあるな、とは思った。

 

「将軍ッ…将軍!!」

 

「生き延びるのだっ…バドの未来を背負う、エリートたちよっ…!

我が役目は、もはやここまでっ…!」

 

後は頼んだぞ、中隊長――――。

やり切ったような、朗らかな表情で将軍エル・ロアズはそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

「え、カズ兄、あの人ら本気なの?あれで」

 

「あのバド星人たちはそういう文化圏なのよ。

――――多分」

 

尚、後に全員漏れなく顔なじみのEDU職員に引き渡した。

助命はソッチにするべきだったね、俺達では無く。

 

そもバド憂星跳翔士団は、地球で言うネオナチみたいな奴らだ。

志高いカルトとか、あんま生かして置く意味もないので。

知り合いの“正常な”バド星人がめっちゃ迷惑がってたよ。

曰く「あいつ等のせいで、俺達は何処行っても白い眼で見られる」って。

 

 

バド星人自体、ちょっと地球人とは相容れない部分多い(オブラート)のだが

 

 

 

 

 

 



~数時間後~



 

「つかれた」

 

「お疲れ様。

ほんと災難――――でも、ないか」

 

「バドだったからね」

 

どうぞ、と…ごもたんから差し出された麦茶が、なんだか染みる。

こんな美味い飲み物だったのか、麦茶。

 

…結局、EDUへの手続きは一瞬で終わった。

あの北欧女とグローザ星系人相手にそう長々と話してられるか。

 

さっさと仕事しろ。

どうせ対処すべき案件山積みになってんだろ。

 

 

「ま、何であれ…だけど。

ぶっちゃけ、弱小カルト資本の貧乏ゲリラ相手で良かったなァ、カズ」

 

ガチ精鋭が来てたらどうだったんだか…と、ラン子が独り言つ。

 

「バドー・ラッツの事か?

アザドー共々、来る訳無いでしょ。後ラン子お前ラッパ…

「いいだろ、この量だし」

 

ラン子は麦茶のボトルを――ごもたんの手から強奪して――ラッパし始める。

いくら中身が少ないからと言っても、レツに分けるだけの量はあったのに。

オレンジジュースもある状況で、子供舌のレツが麦茶飲むとも思えないが。

 

しかしこちらも、ひと暴れしたばっかりだ。

今朝怒られたのもあるし、また喧嘩しようとは考えなかった。

 

…仕掛けたとて、こっちが一方的に消耗するだけ。

チグリスの花の様に貴重な休日を、有意義に使う事にした。

 

 

――――だがここで思い出す。

 

「あ、後片付け…」

 

「そうじゃん、大人数が格闘したんだから――――あれ?」

 

ごもたんの言う事が全てだ。

 

色々あって譲り受けたこの一軒家。

たった5人とは言え、その大半が常人を凌駕する身体能力を持つ。

 

それに合わせ、より広く堅牢なものが用意されたのだ。

 

 

だが…中の小物や家具類全てが、そうだとは限らない。

想定されたキャパシティー以上の人数が暴れた後片付けが、容易に済むはずがない。

 

 

――――そう思っていた、の、だが。

 

「…あれ?」

 

「なんか、こう、思ったより…綺麗、です、ね?」

 

想像を遥かに絶する、整い具合が其処にあった。

せいぜい花瓶の位置がズレている程度。

 

倒れ、地面に落ちた物品は一つとして無かった。

 

「い、いや…確かにちょっと気は使ったけどさ…」

 

「…もう救い様ねーな、バド星」

 

数的有利で、非武装の地球人相手にノされるカルトゲリラとは。

…我々が被害者なのに、あの侵略者ごっこ集団が不憫に思えてすら来た。

 

 

「――――いやぁ、すごいわ。

流石、自称宇宙の帝王達は一味違うぜ…な?」

 

ラン子が俺に視線を向けつつ言い放つ。

…無言を返答とし、そのまま麦茶を飲み切った。

 

 

 

「…だぁぁぅ」「哀しいね…エレキ」

 

 

 

 

 



~また数時間後~



 

「――――で、ベンさん的には新人どうです?

…はい、うん…ええ…まあそうですけど。

でも未経験で、しかも未成年でしょ――――だからですよ」

 

仕事の電話をしている傍ら、怪獣娘達は思うが儘に活動していた。

 

「ありゃ、卵切れてる。

カズっち――――あ、まだ電話中でした

 

どうやら作りたい料理があったらしく、夕餉の準備を一任されたごもたん。

電話中なのでよく分からなかったが、何か伝えたい事があったらしい。

 

俺が未だ、上司と連絡中なのに直ぐ気付く。

彼女は「てへぺろり」と軽く謝って、また調理に戻った。

 

「――――そうですね、確かに俺が用意したテストは…及第点以上だったらしい。

情報に関しては完璧に近かったとも聞いてますよ…はい、はい…ええ。

しかし……いや別にアラスターの腕を疑ってる訳じゃないっす。

でも、ついこの間くらいまで普通の大学生だった子に……はい」

 

仕事のナイーブな話をする傍ら…レツはスマホで動画を見ている。

精神年齢とは裏腹に、彼は倍速視聴にはかなり否定的なのだ。

 

そしてエレキは俺の足元で、とぐろすら巻かず、お腹を晒して寝転んでいる。

朝方俺に蹴飛ばされた事など、大して覚えてないか気にしていないらしい。

 

 

そしてラン子は、もう一缶開けてる。

ペース考えろよ。

 

――――じゃ、アラスターにはまだ付きっ切りで居る様にお願いします。

それでは…。

…おいラン子、まだ飲む気か!?」

 

「仕方ねぇだろ、空けちまったんだから…あっやっべ」

 

夕食前に潰れる気なのか、ラン子が冷蔵庫を探っていた。

ついでに肴を漁ろうとして…バキッ!という音が響く。

 

この野郎、何か壊しやがったな。

 

「あぁもう、またやってる…」

 

「わり、ごもたん」

 

丁度調理の切れ目だったのか、ごもたんが冷蔵庫の修繕に乗り出す。

どうやら修復が容易な部分だったようで、軽くガサゴソした程度で終わらせていた。

 

「ラン子お前、いい加減力関係覚えたらどうだレツだって壊さんぞ

 

「だってよぉ、前の感覚があるから上手く行かないんだよぉ…。

――――つーか新しいの買おうぜ?冷蔵庫」

 

彼女の言う通り、この冷蔵庫もそろそろ10年目だ。

頑丈なタイプだが…所詮地球人社会での運用を前提としたモデルである。

 

怪力揃いのウチでは、そろそろ限界が来ている頃だろう。

 

「まぁ最近、家電も宇宙技術で安く買える様になってますからねー」

 

「だろぉ?

…アレ買わね?ええと…ほら。2、3年前に話題になった…ペダニウム冷蔵庫!

 

アホか。ペダニウムはまだ高ぇよ」

 

確かに、そういう軍用クラスの頑強さを持つ家電が、ウチに合ってるとは思う。

それでもペダニウム合金はやり過ぎだ。

 

1世代前の製法なら、冶金技術ハードルも下がっており、大分お求めやすい。

だが、そも地球に入って来るペダニウムが少ないのだ。

 

後古い方だと、無駄にビカビカしてて目に悪い。

旧式キングジョー(セブンが倒した奴)がそのまんま冷蔵庫になった感じ…と言えば、想像も容易いか。

 

 

「そういえば…カズ兄俺も、ダダデバイスのグラボ欲しい」

 

小遣い貯めなさいよ。

課金ばっかしてないで」

 

「だ、だって…パックス援護兵のボムブラストスーツとか欲しかったし…

 

若干どさくさに紛れる様に、レツもおねだりを仕掛けた。

だが、無暗に何でも買い与えるのは教育上よろしく無いだろう。

 

まだまだ、その辺のバランス感覚が掴めない。

…少なくとも個人用PCの面倒は、組み立てを手伝う程度でいいだろう。

 

変にパーツ弄らせて、癇癪起こされるのも困るし。

 

 

因みにダダデバイスとは、文字通りダダ産のソフトウェアデバイスの総称だ。

あの種族は機械開発…特にソフトウェア方面に強い傾向にある。

 

性能面も地球産のより高い。

無論、お値段も相当だ…プレミアとか付いてたりするし。

 

ただ、どうにも耐久が低い。

同僚のメフィラス星人によれば、あれらはダダ星の徹底管理された環境内での運用が前提となっている代物であり、地球のカオスな大気では長持ち出来ないらしい。

 

部品として、あまりにもデリケート過ぎる。

パーツ交換は意外と簡単にできる点も合わせて、ダダ側もわざとやってるとしか思えない。

 

阿漕な商売をするものだ。

地球が無礼()め腐られるのは、今に始まった訳じゃないが。

 

 

なのでダダデバイスは、専ら個人所有のゲーミングPCご用達のブランドだ。

それも大体情弱の学生ゲーマー、或いは管理ができるやり手の技術持ち。

正直…レツが扱えるとは思えないので、諦めてくれるとありがたい。

 

 

「そもそもあなた達ね、道具のメンテナンスもいいけど…。

もうすぐユラ先生のトコで定期健診やるの忘れてないでしょうね?」

 

「あ、そっか…もうそんな時期かぁ」

 

「言うて、大した事ねーだろ。

アタシらそんな身体が急変するような生き物じゃないしさ」

 

一番今度の診断が心配なラン子が宣う。

あの飲酒量は、流石に何かしらのガタが心配になってくる。

 

乱雑に使ってほしい身体じゃないんだが。

 

 

「…んぁ」

 

「お前は大丈夫だよエレキ。

あのバカ呑兵衛だけだよ引っかかるの

 

非常に心配そうな顔で、こちらを覗くエレキ。

動物病院に怯えるペットのような彼女の頭を、そっと撫でた。

 

基本的に電池が主食みたいな女だし…生活習慣病も何もあったもんじゃない、筈。

おやつとかもあげ過ぎて無いし。

 

 

 

 

――――因みに夕食は【ベビーツインテールのムニエル】だった。

始めて食べたが、無茶苦茶味の濃い海老みたいな味がした。

 

俺のガキの頃から、食べれるとは言われてたが…本当に海老の味だとは。

 

 

 

 

 

 



~定期健診、当日~



 

 

「それじゃ、先生宜しく」

 

「うむ。

…所でカズ君は大丈夫かね?」

 

目の前にいる、両手が機械化したバルタン星人。

フォッフォ…と声を漏らす彼こそが、ウチの怪獣娘の主治医ユラ先生だ。

 

…俺の主治医でもある。

 

「いや俺、前にやったばっかりじゃんか」

 

「君の事だ、頻繁に見て置かなければ…私は心配だよ」

 

「まあ、ねぇ。

…ならこいつ等終わった後に頼むよ。丁度話したかった事もあるし」

 

「いいとも。

それでは――――まずはゴモラ君から」

 

俺と入れ替わる形で、ごもたんが部屋に入って行った。

部屋の前では、今更ラン子がそわそわしているのが目立つ。

 

…自業自得だ。

果たして、何を言われる事やら。

 

 

*1
Earth Defense Union




技術屋系のウルトラ宇宙人達が創るアーマードコアのパーツとか見てみたい、と思うこの頃。
ペダン製重量二脚とか、サロメ製精密射撃型パーツとか。


次回は健康診断から始まります。
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