それは、何の変哲もない日常だった。
青い空。
行き交う人々の声。
学校帰りの学生たちの笑い声。
世界はいつも通りに動いていた。
少年――**飛電来夢**も、その中の一人だった。
どこにでもいる普通の高校生。
特別な才能があるわけでもない。
誰もが羨むような能力があるわけでもない。
ただ友人と話し、授業を受け、家へ帰る。
そんな当たり前の日常を過ごしていた。
しかし――
「……俺って、将来何したいんだろうな」
夕暮れの帰り道。
来夢は空を見上げながら、小さく呟く。
周囲では同級生たちが未来を語っていた。
医者になりたい。
会社を作りたい。
世界を変える仕事がしたい。
誰もが自分だけの夢を持っていた。
だが。
来夢にはまだ、それがなかった。
夢。
自分が本当に望む未来。
それが何なのか分からない。
だからこそ彼は、今ある普通の日常を大切にしていた。
――その日までは。
---
帰宅途中。
突然。
世界が歪んだ。
「……え?」
目の前の空間に亀裂が走る。
まるでガラスを砕いたように。
空そのものが割れていく。
黒い揺らぎが広がる。
「何……なんだよ……これ……」
逃げる暇などなかった。
次の瞬間。
身体が引きずり込まれる。
世界が反転する。
声を上げる間もなく。
来夢の意識は闇へ落ちた。
---
目を覚ました時。
そこに広がっていたのは、知っている世界ではなかった。
崩壊したビル。
瓦礫の山。
ひび割れた道路。
文明の残骸。
「……ここ……どこだよ……」
スマートフォンを見る。
しかし電波はない。
周囲に人の姿もない。
あるのは、死んだ街の静寂だけ。
だが来夢は知らなかった。
ここがかつて人類が暮らした場所。
そして――
現在から100年以上未来の世界であることを。
超自然災害。
**ホロウ**
によって文明が崩壊した後の世界であることを。
---
どれほど歩いただろう。
気が付けば、来夢は奇妙な空間へ入り込んでいた。
崩壊した街並み。
異常なエネルギー。
空間そのものが狂っている。
ここが普通の場所ではないことだけは理解できた。
その時。
「……グ……ギギ……」
背後から響く異様な音。
来夢はゆっくり振り返る。
そこにいたのは――
人間ではなかった。
エーテルによって侵食された異形。
**エーテリアス。**
巨大な身体。
歪んだ姿。
人間を襲うためだけに存在する怪物。
「……嘘だろ……」
足が動かない。
恐怖が身体を支配する。
逃げろ。
そう思っているのに。
動けない。
エーテリアスが腕を振り上げる。
終わる。
そう思った瞬間――
---
「これを使え」
声が響いた。
エーテリアスの背後。
崩れた瓦礫の上に、一人の男が立っていた。
顔は影に隠れている。
しかし、その手には一つのベルトがあった。
男はそれを来夢へ投げる。
そしてベルトは――
来夢の目の前へ落ちた。
「これは……?」
不思議な感覚が走った。
初めて見るはずなのに。
なぜか知っている。
「それは……」
男が言う。
「飛電ゼロワンドライバー」
「かつて、別世界で人間とAIの未来を守った仮面ライダーの力だ」
「そして……」
一瞬、男は来夢を見る。
「お前の血に繋がる者が使った力だ」
「俺の……?」
来夢は目を見開く。
男は空を見上げる。
そこには巨大なホロウの裂け目。
「だが、この世界には衛星ゼアは存在しない」
「だから、その力は別の方法でここへ来た」
「世界を越えて……お前を選んだ」
その瞬間。
男の身体が光に包まれる。
「待て! あなたは――!」
しかし。
答えは返らない。
男は消えた。
残されたのは。
ゼロワンドライバー。
そして迫るエーテリアス。
---
「……俺に……戦えっていうのか」
来夢は震える手を見る。
怖い。
逃げたい。
死にたくない。
だが。
目の前には、自分を襲おうとしている怪物がいる。
もしここで逃げれば。
誰かが同じ目に遭う。
来夢はゼロワンドライバーを握りしめた。
「……分かったよ」
「俺がやる」
その瞬間。
声が響く。
『認証確認』
『飛電来夢』
光が来夢を包む。
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そこは白い電子空間だった。
無数のデータが流れる世界。
そして一体のライダモデル。
『Learning Start』
映像が流れる。
一人の青年。
人間とAIの未来のために戦った仮面ライダー。
その名は――
仮面ライダーゼロワン。
戦い。
苦悩。
そして未来への希望。
最後に残された言葉。
『人間もAIも、夢を見ることができる』
来夢は拳を握る。
夢なんてまだ分からない。
自分が何者なのかも分からない。
それでも。
今だけは。
守りたいものがある。
「俺は……」
「まだ何者でもない」
「でも……!」
「誰かの未来を奪わせない!」
『Learning Complete』
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現実世界。
時間にして――
わずか5秒。
来夢の意識が戻る。
エーテリアスの攻撃が迫る。
来夢はゼロワンドライバーを腰に装着する。
そして地面に落ちていた一つのプログライズキーを拾う。
**ライジングホッパープログライズキー。**
ボタンを押す。
「Jump!」
オーソライザーへ近づける。
「Authorize」
待機音が響く。
エーテリアスが警戒する。
しかし。
構わず襲い掛かる。
その瞬間――
ズガァン!!
上空のホロウの裂け目から何かが落下した。
それは。
ライダモデル。
巨大なバッタのデータ生命体。
ライダモデルは周囲を飛び跳ねながら、エーテリアスを攻撃する。
そして。
プログライズキーのロックが解除された。
来夢はキーを展開する。
ライズスロットへ装填。
「Progrise!」
黒いベーススーツが形成される。
「飛び上がライズ!」
「ライジングホッパー!」
巨大なバッタ型ライダモデルが光の粒子へ変わる。
それは来夢の身体へ重なり。
ネオンイエローの装甲となる。
マスクの複眼が赤く輝く。
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崩壊した未来の街。
そこに一人の戦士が立つ。
夢を失いかけた世界で。
新たな夢を掲げる存在。
その名は――
仮面ライダーゼロワン
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こうして。
異世界の英雄の力を受け継いだ少年。
飛電来夢の物語が始まった。
**夢を見る未来へ向かうために。**