複眼が赤く輝く。
崩壊した未来の街。
かつて人類が暮らしていた場所で、一人の戦士が立っていた。
仮面ライダーゼロワン。
その力を得た少年――飛電来夢は、自分の両手を見つめる。
握る。
「……これが……俺なのか」
実感が湧かない。
だが。
考える暇はなかった。
「グオオオオオッ!!」
咆哮。
エーテリアスが巨大な腕を振り上げる。
「っ!」
迫る一撃。
避けられない。
そう思った瞬間――
身体が動いた。
ドンッ!!
大地を蹴る。
人間では不可能な跳躍。
来夢の身体は軽々と数メートル後方へ跳び、エーテリアスの攻撃を回避した。
「……え?」
自分でも驚く。
着地した瞬間。
頭の中へ情報が流れ込んでくる。
敵の動き。
攻撃パターン。
最適な行動。
「考える前に……身体が動く」
エーテリアスが再び突進する。
来夢は地面を蹴った。
「ハァッ!」
跳躍。
ビルの二階ほどの高さまで飛び上がる。
「高っ!?」
思わず声が出る。
だが、身体は止まらない。
空中で体勢を変える。
右拳を構える。
そのまま急降下。
「うおおおおっ!」
ドゴォォン!!
拳がエーテリアスへ叩き込まれる。
衝撃で怪物の巨体が数メートル吹き飛ぶ。
「やった……!」
しかし。
煙の中から、エーテリアスは立ち上がった。
「嘘だろ……」
傷はある。
だが、まだ動ける。
「グガァァァッ!!」
怪物が怒りの咆哮を上げる。
そして。
その背後。
ホロウの闇から、新たな影が現れる。
一体。
二体。
三体。
次々と現れるエーテリアス。
「……数が増えた」
来夢は構える。
「さすがにこれは……」
その時だった。
空間が歪む。
巨大なホロウの裂け目が輝く。
そこから何かが落下してきた。
ズガァァン!!
地面を砕き、土煙が舞う。
落ちてきたもの。
それは――
黒いアタッシュケースだった。
「……あれは」
来夢の脳裏に、ラーニングで見た映像が蘇る。
仮面ライダーゼロワンが使用していた武器。
「アタッシュカリバー……」
来夢は走る。
エーテリアスの攻撃を紙一重で避けながら、ケースを掴み取る。
その瞬間。
手にした武器の情報が流れ込んできた。
持ち方。
重心。
操作方法。
変形手順。
まるで以前から使っていたかのように理解できる。
「……分かる」
来夢はケース中央のロック部分へ手を伸ばす。
「こうだな……!」
ガコンッ!!
アタッシュケースの外装が展開する。
内部から一振りの刀身が姿を現す。
携行用のアタッシュモード。
そこから戦闘用のブレードモードへ。
「これが……アタッシュカリバー!」
エーテリアスが襲い掛かる。
来夢は剣を構えた。
「いくぞ!」
振り抜く。
ザンッ!!
一閃。
エーテリアスの腕が切り裂かれる。
その切れ味は凄まじく、硬い皮膚すら存在しないかのように怪物の身体を両断した。
「……すごい」
自分でも驚く。
だが。
敵はまだいる。
残ったエーテリアスたちが一斉に迫る。
来夢はアタッシュカリバーを握り直す。
「来るなら……!」
複眼が赤く輝く。
「全部止める!」
来夢は駆け出した。
黄色い光の軌跡が、崩壊した街を走る。
一体。
また一体。
エーテリアスが斬り伏せられていく。
そして。
最後の一体が距離を取る。
来夢はアタッシュカリバーを一度折り畳む。
『チャージライズ!』
アタッシュモードへ戻す。
エネルギーが蓄積される。
「……これで終わらせる」
再び展開。
ブレードモード。
『フルチャージ』
刀身へ大量のエネルギーが集まる。
「はああああっ!!」
アタックトリガーを引く。
振り抜く。
『カバンストラッシュ!!』
巨大な黄色い斬撃が放たれる。
ホロウ内部を照らす光。
それは最後のエーテリアスを飲み込み――
爆発と共に消滅させた。
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静寂。
来夢は剣を下ろす。
「……俺が……倒した」
しかし。
彼はまだ知らない。
この世界には。
まだ数え切れないほどの脅威が存在していることを。