FF14 『サンクレッドの見聞録 〜全力ツッコミ、時々本音〜』 作:蒼樹透夜
拠点の休憩室、窓際の長椅子で、私はヤ・シュトラの肩にそっともたれかかっていた。
書類仕事の合間の、ほんの短い休憩時間。
彼の指先が、いつの間にか私の髪をそっと撫でている。
柔らかな午後の光が差し込み、埃がきらきらと舞う中、時間の流れがゆったりと感じられた。
「――ヤ・シュトラさん、お仕事の途中ですよ」
「少しくらい、構わないだろう」
「ふふ、そう言って、もう五分は経っていますよ」
「――君と過ごす五分は、あっという間だ」
さらりと紡がれる甘い言葉に、頬が緩む。そんな二人だけの穏やかな時間に、不意に扉が開いた。
「――やあ、報告書を届けに来たんが」
入ってきたのはサンクレッドだった。
書類を片手に、私たちの様子をまじまじと見つめると、大きくため息をついてみせる。
「甘い甘い甘すぎるメープルシロップか! おまえら!」
「――サンクレッド」
「いやいや、これは失礼。目の毒だと思ってね」
からからと笑いながら、サンクレッドは近くの椅子にどかりと腰を下ろした。
「拠点内でイチャつくのは構わないが、少しは節度というものを持ってくれよ。見ているこっちが、砂糖を吐きそうになる」
「見なければいいだろう」
「見なければいいと言われて見ないでいられるほど、私は人間ができていないんだ」
軽妙な口調でやり返すサンクレッドに、私は思わず笑ってしまう。
「ふふ、すみません。あまり見苦しかったでしょうか」
「見苦しいというか、眩しいんだよ。……その堅物のヤ・シュトラが、ここまで甘々になるとはね。全く、隠していたとは思えない砂糖の量だ」
「サンクレッド、それ以上言うと、次の任務は単独行動にするぞ」
「おっと、それは困る。――ル・フィア嬢、彼が本気で怒る前に、退散するとしよう」
立ち上がりながら肩をすくめるサンクレッドに、私は思わず声をかけた。
「サンクレッドさんにも、いつか素敵な出会いがあるといいですね」
「――これはこれは、手厳しい返しだ」
苦笑しながら扉へと向かうサンクレッドの背中を見送りながら、私はヤ・シュトラと顔を見合わせて、思わず笑い合った。
「――少し、砂糖が多すぎたか」
「ふふ、私は嫌いではありませんよ、その甘さ」
「――ならば、遠慮なく続けるとしよう」
そう言って再び肩を抱き寄せられ、私はまた彼の温もりに身を委ねた。
賑やかな仲間たちに囲まれながらの、こんな穏やかな幸せが、今の私にはたまらなく愛おしかった。
窓の外では、拠点の同志たちの賑やかな声が、遠く聞こえていた。