FF14 『サンクレッドの見聞録 〜全力ツッコミ、時々本音〜』   作:蒼樹透夜

1 / 4
サンクレッド「甘い甘い甘すぎるメープルシロップか! おまえら!」

 

 

 

 

 

 

拠点の休憩室、窓際の長椅子で、私はヤ・シュトラの肩にそっともたれかかっていた。

 

書類仕事の合間の、ほんの短い休憩時間。

 

彼の指先が、いつの間にか私の髪をそっと撫でている。

 

柔らかな午後の光が差し込み、埃がきらきらと舞う中、時間の流れがゆったりと感じられた。

 

「――ヤ・シュトラさん、お仕事の途中ですよ」

 

「少しくらい、構わないだろう」

 

「ふふ、そう言って、もう五分は経っていますよ」

 

「――君と過ごす五分は、あっという間だ」

 

 

 さらりと紡がれる甘い言葉に、頬が緩む。そんな二人だけの穏やかな時間に、不意に扉が開いた。

 

 

「――やあ、報告書を届けに来たんが」

 

 

 入ってきたのはサンクレッドだった。

 

書類を片手に、私たちの様子をまじまじと見つめると、大きくため息をついてみせる。

 

 

「甘い甘い甘すぎるメープルシロップか! おまえら!」

 

「――サンクレッド」

 

「いやいや、これは失礼。目の毒だと思ってね」

 

 

 からからと笑いながら、サンクレッドは近くの椅子にどかりと腰を下ろした。

 

 

「拠点内でイチャつくのは構わないが、少しは節度というものを持ってくれよ。見ているこっちが、砂糖を吐きそうになる」

 

「見なければいいだろう」

 

「見なければいいと言われて見ないでいられるほど、私は人間ができていないんだ」

 

 

 軽妙な口調でやり返すサンクレッドに、私は思わず笑ってしまう。

 

 

「ふふ、すみません。あまり見苦しかったでしょうか」

 

「見苦しいというか、眩しいんだよ。……その堅物のヤ・シュトラが、ここまで甘々になるとはね。全く、隠していたとは思えない砂糖の量だ」

 

「サンクレッド、それ以上言うと、次の任務は単独行動にするぞ」

 

「おっと、それは困る。――ル・フィア嬢、彼が本気で怒る前に、退散するとしよう」

 

 

立ち上がりながら肩をすくめるサンクレッドに、私は思わず声をかけた。

 

 

「サンクレッドさんにも、いつか素敵な出会いがあるといいですね」

 

「――これはこれは、手厳しい返しだ」

 

 苦笑しながら扉へと向かうサンクレッドの背中を見送りながら、私はヤ・シュトラと顔を見合わせて、思わず笑い合った。

 

 

「――少し、砂糖が多すぎたか」

 

「ふふ、私は嫌いではありませんよ、その甘さ」

 

「――ならば、遠慮なく続けるとしよう」

 

 

 そう言って再び肩を抱き寄せられ、私はまた彼の温もりに身を委ねた。

 

賑やかな仲間たちに囲まれながらの、こんな穏やかな幸せが、今の私にはたまらなく愛おしかった。

 

窓の外では、拠点の同志たちの賑やかな声が、遠く聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。