FF14 『サンクレッドの見聞録 〜全力ツッコミ、時々本音〜』 作:蒼樹透夜
とある日の拠点の休憩室で、私はヤ・シュトラと共にお茶を飲みながら、報告書の整理を手伝っていた。
何気ない仕草で肩に寄りかかると、ヤ・シュトラが自然にカップを支えてくれる。
そんな些細なやり取りにも、いつしか慣れた温かさが宿っていた。
「――ようおふたりさん」
入ってきたサンクレッドは、私たちの様子を一瞥するなり、手にしていたブラックコーヒーを一口飲んで、大袈裟に顔をしかめてみせた。
「――なんだ、このコーヒー今日はやけに甘いな」
「砂糖など入れていないはずだが?」
「いや、コーヒーの話じゃないんだよ、ヤ・シュトラ」
サンクレッドはカップを片手に、じっとりとした目でこちらを見やる。
「おまえらを見るだけで、ブラックコーヒーも甘くなるぜ。全く、恐ろしい代物だ」
「――何を言っているんだ、お前は」
「わからないなら、それでいい。とにかく、私の胃と味覚はもう限界だ」
やれやれと肩を落とすサンクレッドに、私は思わず噴き出してしまった。
「ふふ、サンクレッドさんの表現、いつも面白いですね」
「笑い事じゃないんだよ、これでも。……とはいえ、まあ」
そこでサンクレッドはふっと表情を和らげ、いつもの飄々とした調子とは少し違う声色で続けた。
「おまえらの幸せそうな顔を見るのは、悪い気はしないさ。ヤ・シュトラも、こんな柔らかい顔をするようになったんだからな、感慨深いものだよ」
「――サンクレッド」
「なんだよ、素直に褒めてやったのに」
珍しく殊勝なことを言うサンクレッドに、ヤ・シュトラは一瞬言葉を詰まらせたあと、小さく息を吐いた。
「――お前にそう言われると、少し気恥ずかしいものがあるな」
「はは、それは奇遇だ。私も、慣れないことを言うと調子が狂う」
二人のやり取りに、私は温かい気持ちで微笑んだ。憎まれ口の裏に、確かな友情と気遣いが滲んでいるのが伝わってくる。
「――さて、邪魔者はこの辺で退散するとしよう。あまり甘さに当てられすぎると、胸やけで明日の任務に支障が出るんでね・・・」
ひらひらと手を振りながら去っていくサンクレッドの背中を見送りながら、ヤ・シュトラは小さく笑みをこぼした。
「――ああ見えて、あいつは存外、良いやつなんだ」
「はい。……こんなふうに、賑やかで温かい仲間たちに囲まれて、私は本当に幸せ者ですね」
「それを言うなら、私もだ」
そっと肩を抱き寄せられ、私は再び彼の温もりに身を寄せた。
窓の外の夕暮れが、部屋を橙色に染めていた。