FF14 『サンクレッドの見聞録 〜全力ツッコミ、時々本音〜』 作:蒼樹透夜
任務での浄化を終え、拠点への帰り道。
夕暮れの荒野を歩きながら、無事に任務を終えられた安堵からか、私は思わずヤ・シュトラの腕に寄りかかっていた。
「――お疲れ様でした、ヤ・シュトラさん」
「ああ、君もよくやってくれた」
労うように頭を撫でられ、じんわりとした温かさが胸に広がる。
ヤ・シュトラは足を止めると、私の頬にそっと手を添え、静かに顔を近づけてきた。
「――少し、褒美をやろうか」
「え……」
夕日に染まる荒野の中、そっと重ねられた唇の感触に、疲れも忘れて胸が高鳴った。
柔らかく、けれど確かな熱を帯びたその口づけに、周囲の音がすべて遠のいていくような感覚に包まれる。
「――こんなとこで砂糖作るんじゃない!」
背後から響いた鋭い声に、私たちは弾かれたように飛び退いた。振り向くと、呆れ顔のサンクレッドが両手を腰に当てて立っている。
「ま、待ってろとは言ったが、まさかその隙にいちゃつくとはね。しかも敵地の真っただ中でだぞ」
「――もう安全は確保されている」
「安全云々の話じゃない! 私の目の前で堂々とやるんじゃない、こっちの心臓に悪い!」
顔を赤くしたまま慌てる私と、平然としているヤ・シュトラの対比に、サンクレッドは深いため息をついた。
「――ったく、ル・シェル嬢は初々しくて可愛いもんだが、もうおまえは開き直りすぎだろう」
「文句があるなら、先に行っていろと言ったはずだが」
「言われた通りにしたら、全然来ないから心配で戻ってきてこの有様だ! どこに文句を言うなというんだ!」
珍しく声を荒らげるサンクレッドに、私は思わず噴き出してしまった。
荒野に響く賑やかなやり取りに、緊張していた任務の余韻も、いつの間にか和やかなものに変わっていく。
「ふふ、サンクレッドさん、すみません。取り乱してしまって」
「――いや、いいさ。無事に終わったんだ、少しくらいは大目に見てやる。……ただし」
サンクレッドは私たちを交互に見やりながら、にやりと笑った。
「拠点に戻ったら、この件は拠点の全員にしっかり報告させてもらうからな。皆に、良い土産話ができた」
「――おいサンクレッド」
「はいはい、冗談だとも。……とはいえ、今日のところは、良い任務だった。二人とも、お疲れ様」
軽い足取りで先を歩き出すサンクレッドの背中を見送りながら、私はヤ・シュトラと顔を見合わせ、また小さく笑い合った。
空にはうっすらと星が瞬き始め、荒野を渡る風が、火照った頬に心地よかった。