FF14 『サンクレッドの見聞録 〜全力ツッコミ、時々本音〜』 作:蒼樹透夜
とある日の拠点の厨房で、ちょっとした騒動が起きていた。
「――あれ、砂糖がない?ストックも切れてる」
お茶を淹れようとしていた同志の一人が、困った顔で棚を見回している。
倉庫も見たが砂糖のストックが切れていた。
市場への食材の買い出しは明日の予定、今夜の夕食に合わせるのは難しそうだった。
明日はバザーで町の子たちにお菓子を配る予定で夕食のついでに作るつもりであった。
「どうしよう、明日、町の子たちに配る分のお菓子が作れない……」
困り顔の同志に、通りがかったサンクレッドが、にやりと笑いながら声をかけた。
「――砂糖がない? 大丈夫だ!あいつらがいれば甘くなる!」
「え?」
「あそこを見てみろ!」
サンクレッドが指さした先には、休憩室のソファーに、仲良く並んで座るヤ・シュトラとル・フィアの姿があった。
ヤ・シュトラがル・フィアの手元の書類を覗き込みながら、そっと肩に手を添えている、何気ない一幕だった。
「――は、はあ……?」
困惑する同志に、サンクレッドは大真面目な顔で続けた。
「あの二人を眺めているだけで、口の中がじんわり甘くなる。砂糖なんぞ要らんさ、天然の砂糖だ糖度が違う」
「サンクレッド殿、それは一体、どういう理屈で……」
「理屈じゃない、体感だ。試しに三十秒、あそこを見つめてみろ」
言われるがまま、同志が休憩室の方をじっと見つめる。
ちょうどその時、ヤ・シュトラがル・フィアの頬についた埃をそっと払い、ル・フィアがはにかむように微笑む場面が目に入った。
「――う、う、ぐ……」
「な? 効くだろう」
「な、なんだこれは……口の中が甘く胸が焼けるような、それでいて甘酸っぱいような……」
「それが糖度というものだ。慣れないうちは、少々胃にくるがな」
したり顔で語るサンクレッドの背後で、事の成り行きに気づいたヤ・シュトラが、片眉を上げてこちらを見た。
「――おまえは何を、勝手なことを吹き込んでいるんだ」
「おっと、砂糖製造機本人登場だ。いやなに、砂糖の代用品として、お前たちの存在を紹介していただけだよ」
「――誰が砂糖製造機だ!意味がわからないことを・・・」
「わからなくていい。ル・フィア嬢、彼はいつもこうなので、聞き流してやってくれ」
困惑する私とヤ・シュトラをよそに、サンクレッドと同志は、うんうんと訳知り顔で頷き合っている。
結局その夜、お菓子作りは翌日の朝に持ち越しとなったが、拠点にはいつもより一層、賑やかな笑い声が響いていた。