アーク製薬会社 作:ai試し2
プロローグ テラグリジア編
1日目
2004年。地中海に浮かぶテラグリジアでは、街がいつもの賑わいを見せていた。
海沿いの遊歩道を観光客が歩き、商業地区では買い物袋を抱えた人々が行き交う。高層建築の間を車が流れ、港には大型船が停泊している。空はよく晴れていた。
その光景に、ひとつだけ場違いなものが混じった。
上空を横切る無人航空機だった。
「軍用機か?」
歩道にいた男が足を緩める。
隣の女もつられて空を見た。
UAVは高度を落としながら市街地へ進入していた。機体の下部が開く。
次の瞬間、赤黒い液体のようなものが放たれた。
「……何あれ?」
誰かが呟いた。
細かな飛沫が陽光を受けてきらめく。遠目には血を薄めて撒いているようにも見えた。
人々が次々に立ち止まる。
携帯電話を取り出す者もいる。子供の手を引いて建物の中へ入ろうとする者もいた。
だが、何が起きているのか判断できる人間はいなかった。
UAVはそのまま街の奥へ消えていく。
数分後、最初の異常が現れた。
「……暑い」
広場のベンチに座っていた男性が、シャツの胸元を引っ張った。
隣にいた友人が顔を覗き込む。
「顔色悪いぞ」
「ちょっと待て。なんか……変だ」
男は立ち上がろうとしたものの、膝に力が入らない。手をついて身体を支える。
少し離れた場所でも、同じように体調を崩す人間が出始めていた。
咳。
嘔吐。
突然の発熱。
救急要請が相次ぐ。
警察が現場へ駆けつけた時には、街の一部がすでに騒然としていた。
「通路を空けてください!」
「倒れている人をこちらへ!」
「救急車はまだか!」
警察官たちは負傷者を安全な場所へ移そうとする。
ところが、救助していた男が突然警察官の腕へ噛みついた。
「こいつ!」
警察官が腕を振りほどく。
男は何かを叫んでいる。しかし言葉になっていない。
別の警察官が近づいた。
「落ち着け。怪我してるのか?」
返事はなかった。
男が再び飛びかかる。
今度は二人がかりで押さえ込む。
「拘束具を!」
「何なんだ、こいつ……」
警察官の無線に新たな連絡が入った。
『別地区でも暴行事件です』
『こちらも同様の症状を確認』
『救急搬送先が足りません』
『道路で事故が多発しています』
一つの事件ではない。
しかし、警察にはまだそれを一つの原因へ結びつける材料がなかった。
市民の一部は、テロだと騒ぎ始めている。
別の者は化学物質の流出だと言う。
誰かが「毒ガスだ」と叫び、それを聞いた人間が一斉に逃げ出した。
車が急停車する。
後続車が追突する。
クラクションが重なり、歩行者の悲鳴が道路へ広がった。
警察官の一人が空を見上げた。
先ほどのUAVは、もう見えない。
「……散布されたものを調べろ」
隣の警察官が振り返る。
「何を?」
「何でもいい。あれが原因かもしれない」
その判断が正しいかどうか、この時点では誰にも分からなかった。
ただ、事態が通常の救急事案ではないことだけは、少しずつ明らかになっていた。
◆
市街地の異常は、FBC(連邦対バイオテロ委員会)にも伝わった。
最初の報告だけなら、珍しいものではなかった。
集団的な体調不良。
暴行事件。
交通事故。
原因不明の混乱。
だが、報告が増えるにつれて、それぞれが同じ場所から発生していることが判明する。
「散布物の分析は?」
「サンプルを回収しています」
「症状は?」
「まだ断定できません」
担当者が資料をめくる。
「ただ、通常の化学物質による中毒とは合わない症例が出ています」
室内の空気が変わった。
「……生物兵器か?」
誰も即答しなかった。
ラクーンシティの惨劇は、まだ生々しい記憶として残っている。
しかし、あれほど大規模な生物兵器事件が再び都市で起きるとは、誰も簡単には考えたくなかった。
FBCは警察から情報を引き継ぎ、事態の調査を進める。
市街地ではまだ警察が住民の誘導に追われていた。
何が感染者で、何がただの負傷者なのか。
どこまで被害が広がっているのか。
現場にいる人間ですら把握できていない。
そして、FBCの部隊が最初の異形を目撃する。
「……あれは何だ?」
路地の奥。
人影に似た何かが動いた。
だが、人間の歩き方ではない。
隊員が銃を構える。
「近づくな」
影が振り向いた。
その瞬間、隊員の顔から血の気が引いた。
「撃て!」
銃声が街に響いた。
ここで初めて、FBCは事件の性質を確信する。
テラグリジアは、単なる暴動ではない。
生物兵器が投入されている。
◆
EUにも事態が伝えられた。
テラグリジアで大規模な生物兵器テロが発生。
FBCが現地に展開している。
だが、EUは自分たちの管轄地域をアメリカの組織だけに任せるつもりはなかった。
独自の救援体制が動き始める。
そして、その命令はアークにも届いた。
◆
「召集だ」
ハンクは短い報告を聞き終えると、椅子から立ち上がった。
周囲では既に隊員たちが装備を集めている。
彼らにとって、EUからのこの種の連絡は想定外ではなかった。
司法取引。
その言葉だけなら、彼らの過去を知る人間には重い響きを持つ。
アンブレラ時代の行為が完全に消えたわけではない。
その代わり、EU域内で生物兵器テロが起きた時には最前線へ出る。
ハンクは自分の銃を確認した。
「情報は?」
「まだ少ない。現地警察も混乱しています」
「なら、最初に見るのは敵じゃない」
ハンクが顔を上げる。
「状況だ」
隊員の一人が頷いた。
「警察本部へ向かいます」
「そこで現地の情報を集める。勝手に戦場を広げるな」
ハンクは最後に弾倉を確認した。
「それから、見つけた民間人は可能な限り連れて帰る」
誰も余計な返事をしなかった。
出発の準備だけが、黙々と進んでいく。
◆
アーク本社では別の問題が持ち上がっていた。
「病院から救援要請です」
クレアは画面に表示された情報へ目を走らせる。
「感染者への対応は?」
「現地の医療スタッフだけでは厳しいようです。それと、感染者へのワクチン投与を始めていますが、効果が確認できないものが多いそうです」
クレアの視線が止まった。
「多い?」
「はい。現時点で効果が確認できているのは、エルピスとベロニカワクチンだけです」
その二つだけ。
それ以外のワクチンでは、症状の進行を抑えられない。
クレアは短く息を吐いた。
「ベロニカワクチンを出して」
「エルピスは?」
「在庫を確認して。使える分は現地へ回す」
「分かりました」
エルピスはアークが開発したものではない。製法も公開されているとはいえ、簡単に大量生産できるものではない。
それでも今は、価格を考えている場合ではなかった。
「あと、医療スタッフだけじゃ足りないなら元U.S.S以外の警備部門から人を出して」
「救助もですか?」
「ええ」
クレアは画面の向こうにあるテラグリジアを見つめた。
「ワクチンを届けるだけじゃ、助けたことにはならないでしょう」
担当者が頷く。
「スティーブとシェリーを向かわせます」
「お願い」
クレアは通信を切った。
机の上には、テラグリジアの地図が残された。
まだ被害範囲すら正確には分からない。
それでも、使えるワクチンが分かっているなら、届ける理由は十分だった。
◆
格納庫。
スティーブはヘリの横でケースを受け取った。
「ワクチン?」
「そう。病院へ届ける」
シェリーが確認する。
「その後は?」
「現地の指示に従う」
スティーブはケースを固定した。
「たぶん、届けて終わりじゃないな」
シェリーは答えず、ヘリの機内を確認した。
その横顔には、ラクーンシティで見たものを思い出しているような硬さがあった。
「行こう」
「了解」
ヘリが格納庫を離れ、テラグリジアへ向かった。
◆
その頃、日本。
アレクシアは端末を閉じた。
「まだ帰れないのね」
「はい。手続きに時間がかかっています」
「随分と運が悪いわ」
口調には苛立ちが混じっていた。
アークの本拠地ではクレアたちが動いている。
テラグリジアではハンクたちが戦場へ向かっている。
それなのに、自分たちは日本にいる。
アレクシアにとって、それは気分のいい状況ではなかった。
「リサお姉さま」
呼ばれて、少女が振り向く。
「帰るのが遅くなるわ」
「……アンブレラ」
リサが呟いた。
「まだアンブレラと決まったわけではないでしょう」
アレクシアはそう言いながら、ほんの少しだけ口元を緩めた。
リサは納得した様子を見せない。
彼女の視線は窓の外に向いたままだった。
「シェリー」
今度はその名が漏れる。
「ええ。シェリーのところへ戻りましょう」
リサは小さく頷いた。
◆
テラグリジアでは、昼の街が少しずつ別の姿へ変わっていた。
警察は住民の避難に追われ、FBCは正体不明の生物兵器への対応を始めている。
EUも独自の部隊を動かした。
その中には、司法取引によって戦場へ送り出されたアークの人間たちがいる。
病院へ向かうヘリも、すでに海上へ出ていた。
沖合では豪華客船が静かに浮かんでいる。
街から見れば、ただ停泊しているだけの船にしか見えない。
しかし、その内部では事件の首謀者達が次の段階へ進もうとしていた。
そして、テラグリジアの人々はまだ知らない。
今日だけを乗り切れば終わる事件ではないことを。
これは、数週間に及ぶ戦いの始まりだった。
エルピス、この小説の設定では値段がものすごく高い
ベロニカワクチン、アレクシアが開発したワクチン、エルピスよりかは値段が安いが十分高い、エルピスの劣化版のようなもの
効力
RE3のネメシスの触手で刺されたら
もう1度打つ必要あり、エルピス、ベロニカワクチン
毒強い系等のB.O.Wの連続攻撃
もう1度つ必要あり、ベロニカワクチン
なし、エルピス