アーク製薬会社 作:ai試し2
テラグリジアは、炎に包まれていた。
レギア・ソリスから放たれた光が、街全体を容赦なく焼いている。
建物の外壁も、道路も、そこに残された車両も、すべてが灼熱にさらされていた。夕暮れの海へ向かって伸びる街並みは、赤く染まり、ところどころから黒煙が立ち上っている。
シェリーは、テラグリジアから離れていくヘリの窓越しに、その光景を見つめていた。
もう、あの街へ戻ることはできない。
その腕には、一人の子供が抱かれている。
小さな身体をしっかりと抱きしめながら、シェリーは静かに目を伏せた。
この子を託したのは、リサとアレクシアだった。
脱出ヘリは、予定通りの時間に二人を迎えに来た。
リサとアレクシアも、時間に遅れることなく現れた。
だが――二人だけではなかった。
その腕には、退避途中で見つけた四人の親子がいた。
リサとアレクシアは、迷うことなく親子をヘリに乗せようとした。
だが、機内にはすでに最後までテラグリジアに残った隊員たちが乗っている。
座席は埋まり、積載重量にも余裕がない。
四人を追加で乗せれば、ヘリは離陸できなかった。
誰かを残さなければならない。
そこで、リサとアレクシアは自分たちが降りた。
自分たちの席を親子へ譲り、その場に残ることを選んだ。
結果として、二人は滅菌されるテラグリジアに取り残された。
シェリーは腕の中で眠る子供へ目を落とす。
小さな寝息が聞こえた。
あの瞬間だけを見れば、リサとアレクシアがこの親子を救うために自分たちを犠牲にしたようにしか見えない。
だが――。
「シェリー」
隣からクリスの声がした。
「なに?」
「ウェスカーは、アレクシア・アシュフォードが生物兵器を拡散させていると言っていた」
クリスは燃え続ける街を見つめたまま、続ける。
「……本当なのか?」
シェリーはすぐには答えなかった。
クリスが疑問を抱くのも無理はない。
実際、今日一日だけでもアレクシアは多くの人間を助けている。
そしてついさっき、自分たちの座席を四人の親子に譲り、テラグリジアに残った。
ウェスカーの話とは、あまりにも印象が違うのだろう。
だが、シェリーはそれを額面通りには受け取れなかった。
あの時。
リサとアレクシアが戻ってきたとき、最初に親子を見つけたのはリサのようだった。
そして、アレクシアは状況を確認すると、すぐに親子を連れてヘリに向かった。
人を助けること自体は間違っていない。
けれど――アレクシアは、ただ救ったわけではない。
自分がどう見えるのかまで、計算していた。
「……クリス」
シェリーは静かに口を開いた。
「アレクシアを、絶対に信用しないで」
「……どうして?」
「さっきのことも、あの人なら利用するから」
クリスがシェリーを見る。
「利用する?」
「ええ」
シェリーは頷いた。
「この親子を助けたこと自体は本物だと思う。でも、それだけじゃない」
シェリーは腕の中の子供へ目を落とす。
「ちょうどよかったんだと思う」
「何がだ?」
「脱出する直前に、自分たちだけじゃなくて助けられる人間が見つかった」
シェリーは淡々と続けた。
「なら、自分たちの席をその人たちに譲ればどう見える?」
クリスの表情がわずかに曇る。
「……人を助けるために、自分たちが残ったように見える」
「そう」
シェリーは答えた。
「だから、アレクシアはその状況を利用したんだと思う」
クリスは再び窓の外を見る。
燃え上がるテラグリジア。
「それでも、本当に四人を救ったんだろう?」
「うん」
シェリーは否定しなかった。
「だから厄介なの」
「……厄介?」
「アレクシア様は、嘘をついているわけじゃないから」
クリスが黙る。
シェリーは続けた。
「助けるし。助けたことを利用する」
それが、シェリーの知っているアレクシアだった。
自身の評判のため告発の時に演出した、悲劇の少女という看板を守るためなら多少の手間は惜しまない。
兵隊アリとしてしか思っていなかった、兄アルフレッドに対しても月に一度は墓参りに行き、教会で奉仕活動をする演出をしている。
善意で動く人間ではない。
人を助けることさえ、徹頭徹尾、自分の目的のためだ。
だからこそ、全く信用できない。
「……つまり、親子を助けたことも計算のうちだったと」
「たぶんね」
シェリーは答えた。
「それに、自分たちが残ることまで含めて」
クリスはしばらく何も言わなかった。
窓の外へ目を向ける。
テラグリジアは、さらに遠ざかっていく。
炎の向こうに、もうリサとアレクシアはいないだろう、あの二人ならきっと騒ぎながら海を泳いでいるだろう。
◆
シェリーの言葉だけを聞けば、アレクシアは自分をよく見せるために親子を利用し、その結果として街に残ったことになる。
だが、クリスの記憶に残っているのは、ヘリに乗るよう親子を促していた二人の姿だった。
あれがすべて計算だったのか。
それとも――。
本当に助けたいという意思もあったのか。
まだ、判断できない。
シェリーの腕の中では、子供が静かに眠っている。
シェリーはその身体を抱き直している。
腕の中の子が今、生きていることだけは事実だった。
そして、その命を救った者たちは、まだ燃え続ける街の中にいる。
ヘリはテラグリジアを離れていく。
やがて街は遠ざかり、赤い光だけが海の向こうに残った。
ウェスカーが告げた警告。
今日、自分たちが目にしたアレクシアの行動。
その二つは、どちらも偽りには見えなかった。
だからこそ――クリスには、まだアレクシアという人物を判断することができなかった。
やはり、クレアと話しをしなければならない。
◆
テラグリジアへ続く橋。
その大陸側に立ち、ハンクは遠くの街を見つめていた。
レギア・ソリスによる滅菌作戦は、すでに始まっている。
強烈な光が、テラグリジア全体へ降り注いでいた。光にさらされた建物は赤く染まり、道路や車両までもが熱に呑まれていく。
街そのものが、ゆっくりと焼かれていた。
アークの部隊にも、死傷者は出た。
後遺症が残り、戦線から外れざるを得なくなった隊員まで含めれば、二十名近くに及ぶ。
決して小さな損失ではない。
それでも――ハンクにとっては、アンブレラ時代に比べれば随分とましだった。
あの頃なら、また自分だけが生き残っていた。
仲間が倒れていく中で、最後まで立っているのは自分。
任務を終え、死神の名を欲しいままにする。
それが、ハンクという男だった。
だが、今は違う。
自分一人が生き残るための戦いではない。
ハンクが黙って街を見つめていると、背後から足音が近づいてきた。
振り返る。
EU部隊の指揮官の一人だった。
男はハンクの隣まで歩いてくると、同じようにテラグリジアへ目を向けた。
「……一旦は、終わりましたね」
「ああ」
ハンクは短く答えた。
だが、二人ともすぐには動かなかった。
レギア・ソリスの光に照らされ、街が赤く燃えている。
やがてハンクが、低い声で呟いた。
「……終わったな」
指揮官が横目でハンクを見る。
代わりに、燃え続ける街へ視線を戻す。
「テラグリジアそのものを、助けることはできなかった」
指揮官も前方を見た。
「……ええ」
短い返事だった。
しばらくして、指揮官が口を開く。
「我々は、あなた達元アンブレラの人員を信用していませんでした」
ハンクは何も言わない。
「今回の作戦が始まった時もです」
男の声は静かだった。
「正直に言えば、あなた達に頼ることに抵抗がありました」
ハンクは視線を動かさない。
「ですが、結果が出ています」
指揮官が続ける。
「FBCと地元警察が大きな損害を受ける中、我々EU部隊の被害が抑えられたのは、あなた達が事前に行った対生物兵器研修と、現場での働きが大きかった」
そこで一度、言葉を切る。
「……認めざるを得ません」
ハンクはようやく男を見る。
「今回、我々はあなた達に助けられました」
指揮官が手を差し出した。
ハンクは差し出された手を見た。
少しの間を置いてから、その手を握り返す。
二人は握手を終える。
しかし、指揮官はすぐには離れなかった。
「ただし」
ハンクが顔を上げる。
「今回の働きだけで、過去が消えるわけではありません」
「ああ」
ハンクは即答した。
指揮官は頷いた。
「それでも、今回の実績まで無かったことにはできません」
男はハンクを見る。
「個人的にも上に掛け合ってみます。司法取引の件、少しでも融通が利くように」
ハンクは一瞬だけ黙った。
そして、街から視線を外さずに答える。
「なら、若い連中を頼む」
「若い連中?」
「ああ」
ハンクの視線の先には、少し離れた場所で作業をしているアークの隊員たちがいた。
「俺たちのことは後でいい」
ハンクは短く言葉を切った。
「だが、あいつらまで過去のことで縛られる必要はない」
指揮官は黙って隊員たちを見る。
やがて、小さく頷いた。
「……分かりました」
その返事を聞くと、ハンクはそれ以上何も言わなかった。
指揮官も、しばらく街を見つめていた。
そして、ふと口を開く。
「今回の件で、EU各国も考えざるを得なくなったでしょう」
ハンクが見る。
「何をだ?」
「対バイオテロです」
指揮官はテラグリジアを見たまま続けた。
「各国が個別に対応するだけでは、今回のような事態には追いつけない」
ハンクは黙って聞いている。
その言葉が、橋の上に落ちる。
「……そうか」
ハンクは短く答えた。
今回の戦いで、多くのものが失われた。
街も。
人命も。
仲間も。
それでも、この戦いをきっかけに何かが変わるのなら、すべてが無意味だったわけではないのかもしれない。
指揮官がハンクへ向き直る。
「恐らく、またあなた達と会うでしょう」
ハンクは男を見る。
「その時も、よろしくお願いします」
「ああ」
それだけ答えると、指揮官はその場を離れていった。
一人残ったハンクは、再びテラグリジアへ目を向けた。
レギア・ソリスの光は、なおも街を焼き続けている。
ハンクは何も言わない。
ただ、燃え続ける街を静かに見つめていた。
――EU加盟国による対バイオテロ組織。
今回の一件をきっかけに、その話も進みそうだ。
だが、それはまだ先の話だろう。
今はただ、目の前で消えていく街を見届けるしかない。
◆
三か月後。
アーク本社地下にある、通称「玉座の間」。
クレアが扉を開けて中へ入ると、いつものように数段高くなった場所に置かれた玉座へ目が向いた。
そこには、三人がいた。
仲良く座っている――と言っていいのかは、少し悩む光景だった。
リサが玉座に座っている。
その横ではアレクシアが玉座へ寝転がり、仰向けになった頭をリサの膝へ乗せていた。
もう一方の隣にはシェリーが座り、本を開いている。
勉強でもしているのだろう。
リサはアレクシアの頭を撫でている。
一方のアレクシアは、リサの頬を指先でぷにぷにと弄っていた。
互いに好き勝手しているようにも見える。
だが、クレアにとっては、もうすっかり見慣れた光景だった。
「……お疲れさま」
クレアは三人へ声を掛けながら、玉座へ続く段差を上っていく。
そして玉座の前まで来ると、アレクシアを見る。
「アレクシア」
「何かしら?」
「テラグリジアでは、何をしていたの?」
クレアが尋ねる。
アレクシアはリサの膝に頭を乗せたまま、あっさりと答えた。
「前にも言った通り、MI6に頼まれた仕事よ」
「MI6に?」
「ええ。ウーズだらけのテラグリジアを調べるのは大変でしょう? だから、代わりに私たちが調べていたの」
アレクシアはリサの頬を指先でぷにぷにと弄びながら、淡々と続ける。
「調べる場所は色々あったわ。まず、生物兵器の製造に使えそうなスペース。それから、怪しいと目された会社の端末も渡した。特に輸出入関連は結構な数だったから、大変だったわ」
「怪しいところは見つかったの?」
「さあ?」
あっさりとした返事だった。
「それを調べるのはMI6の仕事よ。私たちは情報を集めて渡しただけ」
アレクシアはそこで少しだけ言葉を区切る。
「ただ、私たちが調べた範囲では、テラグリジア内に生物兵器の製造施設はなかったわ」
クレアは、その答えを聞いて黙り込んだ。
話題を変える。
「本題よ。あなたの案、採用されたわ」
アレクシアは当然のことのように頷いた。
まだほっぺをふにふにしている。確かにリサのほっぺは柔らかくて触りたくなるのはわかる。
まるでこの前、孤児院でお世話をした子供のようなもちもちとしたほっぺだった。実際見た目はまだ子供ではある。
「当然でしょう?」
アレクシアが示したテラグリジアの後始末は、単純なものだった。
海にワクチンをばらまく。
やること自体は、ベロニカワクチンを使う場合と変わらない。
ただし、実際に使用するものはベロニカワクチンではなかった。
アレクシアが専用に開発した、アーク製のアビスワクチン。
安価で、量産も容易。
テラグリジア周辺の海へ大量に散布するという用途には、十分な性能を持っていた。
EU各国でもその性能が確認され、採用が決まった。
クレアは、その経緯を思い返す。
この短い期間で新しいワクチンを作り、それを海へばらまけるほどの量まで量産可能な段階へ落とし込んでしまった。
やはり、恐ろしい頭脳だった。
「……また胃が痛くなってきた」
クレアは腹部を押さえた。
アークの地下には、TウイルスやGウイルスだけでなく、それらを発展させたアレクシア作製の新種ウイルスと、それに対応するワクチンが保管されている。
その研究の最終的な目標は、エルピスでも不可能だったリサのウイルスを、体内から完全に消去することだった。
だが、これまでの試みはことごとく失敗している。
それでも研究を続けているおかげで、ベロニカワクチンは進化し続けていた。
今回、アビスウイルスに対応できたのも、その研究の積み重ねがあったからこそだろう。
アレクシアによれば、始祖ウイルスから進化したウイルスであれば、その多くに対応できるという。
時には効力が落ちることもあるらしいが、価格を考えれば仕方がないらしい。
現在は価格を抑えながら、さらに強力なウイルスにも対応できるワクチンを開発している。
だが、価格を下げることには、かなり苦戦しているようだった。
考えれば考えるほど、クレアの胃は痛くなる。
そこでクレアは、さらに話題を変えた。
「EUの対バイオテロ部隊が統合されるでしょう?」
「ええ」
「それに合わせて、アークからもかなりの人数が出向することになりそうよ」
クレアは続ける。
「特にベテランの割合が多いから、しばらくは警備部門で隊長格が足りなくなる」
「ハンクとスティーブも出向するのね」
「ええ」
クレアは頷いた。
「レディハンクも隊長だけど、まだ若いし、経験が浅いでしょう。それに、補佐についていた人もテラグリジアで亡くなった」
「代わりは?」
クレアは、そこで少しだけ表情を緩めた。
「バリー・バートン。元S.T.A.R.S.の隊員よ。ようやく頷いてもらえたわ」
「説得、成功したのね」
「ええ。危険な仕事から離れていた人だから、どうなるかと思ったけど」
バリーがラクーンシティの事件以降、幼い娘のこともあって、生物兵器が関わるような危険な仕事から距離を置いていたことをクレアは知っている。
それでも、テラグリジア・パニックをきっかけに、考え直してくれたのだろう。
以前から続けていた説得を、ついに受け入れてくれた。
「もう一人の、レベッカ・チェンバースは?」
アレクシアが尋ねた。
「駄目。相変わらず、製薬会社には所属したくないって断られてるわ」
クレアは残念そうに答えた。
レベッカは、クレアが求めている人材の条件にぴったりだった。
ウイルスについてアレクシアと話せるだけの知識があり、それでいてアレクシアの息がかかっていない。
元アンブレラ関係者でもない。
アークの研究を支えるうえで、そういう人間が一人いることには大きな意味がある。
けれど、本人が製薬会社に所属することを嫌がっている。
「……条件だけなら、本当にうってつけなんだけどね」
クレアはそう呟いた。
ふと、クレアはシェリーへ顔を向けた。
「シェリー、ごめんね。大学への入学、再来年ごろになりそう」
シェリーは少し驚いたように目を瞬かせた。
だが、すぐに笑う。
「仕方ないよ。あんなことがあったんだから」
責める様子は、まるでない。
「みんなには、私から伝えておくよ」
「ありがとう、シェリー」
やはり、シェリーはいい子だ。
そう思う。
だからこそ、クレアは彼女の優しさに甘えているだけではいけないと思った。
シェリーには、自分と同じように楽しいキャンパスライフを過ごしてほしい。
ラクーンシティ事件以来、シェリーは何かと不自由な生活が続いている。
それは、レディハンクや若い元U.S.S.隊員たちも同じだった。
少しずつでも普通の生活を体験してほしい。
そう思う一方で、クレアはすぐに気を引き締めた。
自分がやるべきことは、まだいくらでも残っている。
「……よし」
クレアは気合を入れ直す。
玉座の間を後にし、社長室へ向かう。
だが、その前に――。
「……胃薬」
クレアはポケットへ手を入れた。
その背後では、何事もなかったかのようにアレクシアがリサに頭を撫でられている。
そしてリサの頬は、相変わらずアレクシアの指先でぷにぷにと弄ばれていた。
◆
スティーブは走っていた。
時は2005年。
テラグリジア・パニックから一年が経ち、欧州では対バイオテロ体制の大幅な再編が進められていた。
EU各国がそれぞれ抱えていた対バイオテロの人員は統合され、新たな組織として編成された。
その組織へ新たに出向することになったのが、スティーブ・バーンサイドとハンク達だった。
そして今、二人がいるのは海上を漂う一隻の船の中だった。
前方をハンクが走る。
その船内には、ウーズが大量に潜んでいた。
テラグリジア・パニック以降、海岸へわずかに漂着する個体を除けば、ほとんど確認されなくなっていたはずの生物兵器の残滓。
それが、この船には群がるように存在していた。
スティーブは、そのウーズに襲われていた女性を担いでいる。
「くそっ……!」
女性の身体を支え直しながら、スティーブはハンクの後を追った。
背後からは、ウーズの蠢く音が迫ってくる。
ハンクが先導し、暗い船内を駆け抜けていく。
やがて前方に、外へ通じる扉が見えた。
「もう少しだ!」
ハンクが扉を開ける。
二人は一気に甲板へ飛び出した。
スティーブは女性を甲板へ横たえる。
彼女の顔は赤く、呼吸も荒い。
明らかに普通の状態ではなかった。
「……ウイルスに侵されてるな」
スティーブはすぐにワクチンを取り出した。
迷っている時間はない。
女性へワクチンを投与する。
しばらくすると、荒かった呼吸が少しずつ落ち着いていった。
そして――。
「……ん……」
ゆっくりと瞼が開いた。
女性はぼんやりとスティーブを見つめる。
まだ意識ははっきりしていないようだった。
それでも、やがてスティーブの呼びかけを認識すると、かすかに口を開いた。
「……あなた……誰?」
「俺か? スティーブだ」
女性はその名前を聞いて、わずかに頷いた。
「……美人のお姉さま、お名前は?」
「……レイチェル」