アーク製薬会社 作:ai試し2
はい。前の版では隊員たちの反応を地の文に置いてはいますが、「囃し立てる」というニュアンスが弱く、単に様子を見ている描写になっていました。
隊員たちが面白がって二人をからかう空気を、台詞ではなく仕草や反応の連続として明確にしました。ルイスやレディハンクの台詞はそのままです。
しばらく歩いていると、前方からルイスが戻ってきた。
「おーい!」
片手を上げながら、こちらへ歩いてくる。
「施設の制圧は終わった。もう安全だ」
「そう」
レディハンクが頷く。
シェリーたちも足を止め、ルイスを迎えた。
「それじゃあ、次はアシュリーとレオンのプラーガを取り除かないとね」
「ああ。二人とも、早めに処置した方がいい」
「どうやって取り除くの?」
シェリーが尋ねると、ルイスは施設の方へ顎を向けた。
「中の医療設備を使う。ある装置でプラーガを除去するんだ。設備自体はちゃんとしているから、ちょっと手を加えれば問題なく殺せる」
「よかった……」
シェリーの肩から、わずかに力が抜けた。
しかし、ルイスは続ける。
「ただし――相当痛いぞ」
「……え?」
シェリーの表情が固まった。
「痛いの?」
アシュリーも不安そうに尋ねる。
「ああ。かなりな」
ルイスは妙に落ち着いた様子で答えた。
「とはいえ、寄生されたままにもできない。二人には我慢してもらうしかないな」
「そうだな」
レオンが頷く。
「やるしかない」
「うん……」
アシュリーも覚悟を決めるように小さく頷いた。
その後、シェリーはレディハンクへ顔を向けた。
「レディちゃん。さっき聞いた話なんだけど……」
歩きながら、シェリーは教団について説明した。
アシュリーを利用してアメリカ政府へプラーガを広げ、その内部から支配しようとしていること。
そのために大統領の娘であるアシュリーが誘拐されたこと。
「世界征服!」
レディハンクが目を丸くした。
「アンブレラじゃないんだから……」
呆れたような呟きが漏れる。
「本当に、そんなこと考えてるんだね」
「うん、みたいだよ」
シェリーが頷いた。
続いて、ルイスについても話す。
「それと、ルイスのことなんだけど」
「元々、教団の研究員だったらしいよ」
「ああ」
レディハンクは前を歩くルイスへ目を向ける。
「それなら本人から聞いたよ」
「そうなの?」
「うん。隠す気はないみたい」
ルイスは自分の過去について聞こえているはずなのに、振り返ろうともしなかった。
淡々と歩きながら、施設の入口へ向かっている。
その態度が、かえって妙に潔く見えた。
◆
やがて、装置の準備が整った。
「よし。これでいける」
ルイスが各部を確認する。
レオンは装置まで歩いていき、そのまま横になった。
「じゃあ、始めるか」
ルイスが準備を進める途中、ふと思い出したようにレオンへ声をかける。
「レオン。手でも握ってやろうか?」
レオンは思わず苦笑した。
「いらん」
「そうかい」
ルイスが肩をすくめる。
それを聞いていたシェリーは、隣にいるアシュリーへ顔を向けた。
「アシュリー」
「なに?」
「レオンの手、握ってあげて」
「えっ?」
アシュリーが驚いたように目を丸くする。
「ほら。痛いらしいから」
シェリー自身、半分は冗談だった。
ところがアシュリーは少し考えたあと、意外にも素直に頷いた。
「……分かった」
レオンのそばへ歩いていく。
「……なんだ?」
レオンが怪訝そうに見上げる。
「手、握るから」
アシュリーはそう言って、その手を取った。
シェリーはその様子を見守りながら、心の中で少し笑う。
冗談のつもりだったのに、思ったよりずっと素直に応じた。
それに気づいた周囲のアーク隊員たちの間で、空気が変わった。
誰かが隣の隊員の肩を軽く叩く。
別の隊員は口元を押さえながら、面白そうに二人を眺めている。
視線を交わしては、にやりと笑う者もいた。
中にはわざとらしく咳払いをして、二人へ視線を向ける者までいる。
直接口に出す者はいない。
それでも、その場にいる全員が何を面白がっているのかは明らかだった。
アシュリーは次第に居心地が悪そうになり、握った手を少し強くする。
「お熱いね、お二人さん」
ルイスが面白そうに言う。
「……」
レオンは答えない。
アシュリーは頬を赤くして、視線を逸らした。
その反応を見た隊員たちの間で、また小さな笑いが広がった。
誰かが肘で隣をつつき、別の隊員が肩をすくめる。
レオンがそれに気づき、呆れたように周囲を見回した。
「お前らな……」
だが、そんな空気も長くは続かなかった。
ルイスが装置へ向き直り、表情を引き締める。
「よし。そろそろ始めるぞ」
「ああ」
レオンも気持ちを切り替えた。
アシュリーの手に、わずかに力がこもる。
そして、ルイスが装置を作動させた。
機械が低い音を響かせる。
次の瞬間、レオンの身体が大きく強張った。
「……っ!」
歯を食いしばる。
痛みはかなりのものらしい。
それでもレオンは声を抑え、装置が終わるのをじっと耐えていた。
アシュリーは何も言わず、その手を握り続ける。
やがて装置の作動音が止まった。
「終わったぞ」
ルイスが確認する。
「問題なくプラーガを除去できた」
「……そうか」
レオンは荒くなった呼吸を整えながら、ゆっくりと身体を起こした。
「次はアシュリーだ」
「うん……」
アシュリーは緊張した面持ちで頷く。
レオンと入れ替わるように装置へ横になる。
そして、不安そうに手を伸ばした。
レオンがその手を見る。
「……」
小さく息を吐いた。
それから何も言わず、その手を握り返す。
「よろしく」
「うん」
シェリーは思わず口元を緩めた。
「今度はレオンが手を握ってあげるんだね」
「そういうことだな」
ルイスが笑う。
「お熱いね、お二人さん!」
その一言に、レディハンクが吹き出した。
それをきっかけに、周囲の隊員たちも一斉に反応した。
口笛が飛ぶ。
手を叩いて面白がる者まで現れた。
アシュリーはますます気まずそうに頬を赤くした。
それでも、レオンの手は離さない。
レオンは周囲を見回した。
「お前らな……」
呆れた声が漏れる。
しかし、厳しく止めるほどでもないと判断したのか、それ以上は何も言わなかった。
やがてルイスが咳払いする。
「じゃあ、そろそろ始めるぞ」
「分かった」
レオンが答える。
ルイスが装置を作動させた。
機械が再び唸る。
「……っ!」
アシュリーの身体が強張った。
「痛っ……!」
思わず声が漏れる。
握り締めた指が、レオンの手へ食い込んだ。
レオンは何も言わず、その手を支え続ける。
アシュリーも目を閉じ、必死に痛みに耐えた。
やがて、装置が停止する。
「終わったぞ」
ルイスが告げる。
「無事に除去できた」
アシュリーはすぐには起き上がれなかった。
肩で息をしながら、しばらく目を閉じている。
ようやく身体を起こすと、確かめるように呟いた。
「……終わった……?」
「ああ」
ルイスが頷く。
その瞬間、アシュリーはレオンへ抱きついた。
「レオン……!」
レオンが驚いたように目を見開く。
だが、振り払おうとはしなかった。
そっと腕を回し、アシュリーを受け止める。
さっきまで二人を面白がっていた隊員たちも、今度は黙っていた。
さっきまでの軽い空気が消え、誰も茶化そうとはしない。
痛みに耐えていた少女がようやく緊張から解放されたことを、全員が察していた。
シェリーも何も言わず、その姿を見守る。
レディハンクがほんの少しだけ微笑んでいた。
施設の中に、静かな安堵が広がった。
◆
治療を終えると、一行は施設の外へ出た。
外気に触れたところで、レオンがレディハンクへ声をかける。
「サドラーを追わないのか?」
「援軍が来てから追うよ」
レディハンクは空を見上げた。
「そろそろ、さっき乗ってきたヘリが戻ってきてもいいんだけど」
その言葉を聞いたシェリーが、ふいに遠くを指差した。
「あっ、あっち見て!」
「どこ?」
レディハンクが振り返る。
シェリーの指先を追うように目を凝らし、さらに手をかざして遠くを見渡した。レオンとルイスも同じ方向へ視線を向ける。
「……何も見えないぞ」
レオンが目を細める。
「俺にも見えないな」
ルイスも首を伸ばした。
「もう少し待って」
シェリーは視線を逸らさなかった。
しばらくすると、空の彼方に小さな影が浮かんだ。
「ほら!」
シェリーが声を上げる。
点にしか見えなかった影は、次第に輪郭を増していく。やがて複数のヘリが編隊を組み、こちらへ向かって飛んでくるのがはっきり見えた。
「援軍と合流したみたいだね」
「うん」
シェリーも頷いた。
さらに目を凝らし、先頭を飛ぶ機体を確認する。
「アークとBSAAの部隊みたい」
「分かるのか?」
レオンが尋ねる。
「うん。ヘリ機種とマーキングが見えるから」
編隊は速度を落としながら、こちらへ近づいてくる。
「じゃあ、こっちからも合図しよう」
レディハンクが両手を大きく振った。
「こっちー!」
シェリーたちもそれに続く。
一行はその場に立ったまま、大きく手を振り続けた。
やがて、先ほどまで空の彼方にあったヘリが、こちらの頭上まで迫ってきた。
◆
数機のヘリが施設の周囲へ次々と着陸する。
最初に機体から降りてきたのはバリーだった。
「お疲れさん」
「お疲れさまです!」
レディハンクたちが声を揃える。
続いて別のヘリから、クリスとジルが姿を現した。
「クリス!」
シェリーが声を上げる。
「それじゃあ、今までのことを――」
レディハンクが状況を説明しようとした、その時だった。
レオンの端末から着信音が鳴った。
一同の視線が集まる。
「……またサドラーか?」
レオンが端末を取り出した。
だが、画面を見た瞬間、その表情が変わった。
「……ウェスカー!?」
「ウェスカーだと?」
バリーが反応する。
クリスとジルもすぐにレオンの端末へ目を向けた。
「ウェスカー……?」
後ろにいたアークの隊員たちの間にも、緊張が走る。
画面には、アルバート・ウェスカーの姿が映っていた。
ウェスカーはレオンたちを一瞥し、それからバリーの姿へ視線を移した。
「……バリーもいるのか」
わずかに口元が歪む。
「久しぶりだな、バリー」
バリーの表情が険しくなった。
「二度と会いたくなかったぜ」
吐き捨てるような言葉だった。
だが、ウェスカーは気にした様子もない。
むしろ、予想通りの反応を楽しんでいるようだった。
「さて……いつまで、そこでのんびりしているつもりだ?」
「何だと?」
レオンが眉をひそめる。
「こちらは、すでに動いている」
ウェスカーの声は淡々としていた。
「このままお前たちが時間を無駄にしている間に、サドラーもプラーガの支配種も、我々が先に手に入れてしまうぞ」
「……ウェスカー!」
クリスが睨みつける。
それすら計算していたかのように、ウェスカーは薄く笑った。
「せっかくだ。おまえたちには、我々が支配種を手に入れる瞬間を見届けてもらおうか?」
「お前……!」
クリスの声が低くなる。
「ウェスカー、お前もこの島にいるのか?」
「もちろんだ、クリス。そしてBSAA」
ウェスカーは平然と答えた。
その時、レディハンクが通信へ割り込んだ。
「私たちも、これからサドラーを追いかけるところだったよ」
ウェスカーが画面越しにレディハンクを見る。
「ほう……」
興味深そうに目を細める。
「ならば、競争だな」
「待て、ウェスカー!」
クリスが呼び止める。
だが、ウェスカーは止まらなかった。
「せいぜい、私より先に辿り着いてみせろ」
それだけ言い残して、通信が切れた。
端末の画面が暗くなる。
レオンはしばらく無言でそれを見つめていた。
「……完全に俺たちを挑発してやがる」
クリスも険しい顔のまま、拳を握る。
だが、悔しさに浸っている時間はなかった。
レディハンクが周囲を見回す。
「よし! みんな、動くよ!」
一斉に隊員たちが反応した。
「まず、私たちの部隊はバリーとBSAAのみんなに、プラーガの特徴と対策を説明して」
「了解!」
隊員たちが動き始める。
「実際に見てもらったほうが早いよね」
レディハンクは施設へ目を向けた。
「それと、施設の中からリヘナラドールの死体を一体持ってきて」
「リヘナラドール?」
バリーが聞き返す。
「この施設の中で、特に厄介だった相手だよ」
レディハンクが答える。
「死体を見せながら説明したほうが分かりやすいでしょ」
隊員三人が施設へ向かって駆け出した。
その背中を見送ってから、レディハンクはレオンへ視線を向けた。
「レオンはどうする?」
「俺もサドラーを追う」
レオンの答えに迷いはなかった。
「ヘリは貸せないけど、アシュリーも確保したし。ここら辺は、もう敵もあまりいなさそうだよ?」
「ここで待つより、大人数で行動したほうが安全だ」
レオンは周囲を見回した。
「それに、そろそろアメリカのヘリも来るころだ」
レディハンクは少し考えてから頷く。
「じゃあ、一緒に行こう」
続いてルイスへ向き直った。
「ルイス。サドラーがどこにいるか、分からない?」
「いや……正確な場所までは分からない」
ルイスは首を横に振った。
「ただ、もしかしたら……」
少し考えたあと、彼は地面へ視線を落とした。
「簡単な地図を描こう」
しゃがみ込み、足元の棒を拾う。
地面へ線を引き、島の形を大まかに描いていく。
「この島はな……」
ルイスは描いた地図を指しながら、島の構造を説明し始めた。
「恐らく、サドラーは逃げようとしている」
「逃げる?」
レディハンクが聞き返す。
「ああ」
ルイスは地図から目を離さない。
「アシュリーを奪還された。それに、今の時点でこれだけの戦力が集まっている。おまけに、自分たちが何をしていたのか政府にも知られた」
棒の先が地図の上を移動する。
「ここまで状況が悪くなれば、サドラーもこの島に留まり続ける理由はない」
「じゃあ、逃げるとしたら?」
レオンが尋ねる。
「埠頭か、造船所だ」
ルイスが二か所に印をつける。
「それから、砦の近くにある旧施設。あそこにも洞窟から湖に抜けられる逃げ道がある」
「埠頭は俺とルイスが通ってきた」
レオンが地図を見る。
「ああ。だから、そこはまずない」
ルイスも頷いた。
「となると……」
レオンが地図へ身を寄せる。
「候補は造船所か、旧施設の二つか」
「そうなる」
ルイスは二つの場所を指した。
「サドラーが逃げるなら、このどちらかだろうな」
「それぞれ、どんな場所?」
レディハンクが訊く。
ルイスは造船所へ棒を向けた。
「造船所には、武装した大きな船がある。機銃や機関砲まで備え付けられている」
続いて砦へ棒を移す。
「砦にも機関銃陣地が構築されている。歩兵用だが、対空用のロケットランチャーも備蓄されている」
「どっちも厄介そうだね」
レディハンクが眉を寄せる。
「ただ、どちらも動かすのは通常のガナードだ」
ルイスが続ける。
「だから、攻略するのは難しくない」
レディハンクは地図をしばらく見つめた。
そして、すぐに顔を上げる。
「じゃあ、決めた!」
周囲へ向き直る。
「バリーは部隊の半分を率いて、BSAAと一緒に造船所をお願い」
「了解」
バリーが頷く。
「私とシェリーは、レオンと一緒に砦と旧施設へ行く」
「異存はない」
クリスが答える。
ジルも頷いた。
「私も問題ないわ」
「よし!」
レディハンクが勢いよく頷く。
「じゃあ、これで決まりだね」
周囲を見回した。
「何か質問は?」
誰も口を開かない。
「何か言い忘れたことは?」
その問いに、バリーがふと思い出したように声を上げた。
「そういえば、クレアから伝言があった」
「クレアから?」
シェリーが振り向く。
「ああ」
バリーは続けた。
「リサとアレクシアが、こっちへ向かっているそうだ」
「リサとアレクシアが?」
レディハンクが目を丸くする。
「移動はヘリじゃなくて飛行機らしい。日の出前には到着するそうだ」
「そっか」
レディハンクは頷いた。
「じゃあ、それまでにサドラーを追い詰めよう!」
その声に、周囲の隊員たちの表情が引き締まった。
島の上空では、すでに夜明けの気配が滲み始めている。
サドラーを追う者たちと、それを利用しようとするウェスカー。
そして、ほどなくこの島へ到着するリサとアレクシア。
それぞれの思惑が交差する中、一行は次の目的地へ向けて動き始めた。