アーク製薬会社 作:ai試し2
造船所へ向かうヘリの中。
クリスは、向かいに座るジルとBSAAの隊員たちを見回した。
「テラグリジアのことは覚えているな?」
隊員たちが頷く。
「ああいう相手と遭遇する可能性がある。もしウェスカーと遭遇したら、あのときの動きを思い出せ」
クリスは続ける。
「相手は、もう人間の動きじゃない。常識にとらわれるな」
そして、プラーガについても付け加えた。
「それと、プラーガの上位種を寄生された奴も同じだ。身体能力が向上している。普通の人間だと思って相手をするな」
「了解!」
隊員たちが返事をする。
やがて、前方に施設が見えてきた。
「……あれか」
クリスが目を凝らす。
「確かに造船所のようだな」
上空から見ると、船舶を扱うための施設が広がっている。
「対空砲があるらしい。降下準備!」
クリスが指示を出す。
ヘリが高度を下げていく。
「降下!」
クリスが叫ぶ。
隊員たちが次々とヘリから降りていく。
BSAAの隊員たちが地上へ展開し、続いてバリーの部隊も近くへ降下した。
全員が周囲を警戒しながら、造船所の中へ進んでいく。
やがて、その先に一隻の大きな船が見えてきた。
「あれが船か」
バリーが目を向ける。
だが――
次の瞬間。
轟音が響き渡った。
船が大きく爆発した。
「何が起こった!?」
クリスが叫ぶ。
黒煙が立ち上り、爆炎が船体を包み込む。
そのときだった。
「BSAA」
どこからか、声が響いた。
「ここにはサドラーはいないぞ」
聞き覚えのある声。
クリスたちは一斉に周囲を見回す。
「……ウェスカー」
クリスが呟いた。
そのときだった。
「あれは!?」
BSAAの隊員の一人が叫んだ。
視線の先では、複数の影が入り乱れている。
ハンターとリッカーだった。
それらはガナードたちと激しく争っていた。
「数は、それほど多くない!」
別の隊員が報告する。
「落ち着いて対処しろ!」
クリスが指示を飛ばす。
「周囲を確認しながら、確実に片づけるんだ!」
隊員たちはそれぞれ武器を構え、ハンターやリッカー、そしてガナードたちの動きを見極めながら戦闘態勢を整えた。
その一方で、クリスはジルへ視線を向ける。
ウェスカーを引きつける必要がある。
クリスはジルへ小さく合図を送った。
ジルはすぐに意図を理解し、頷く。
「私たちはウェスカーを探す」
クリスは周囲を見回し、特に腕の立つ三人を選んだ。
「お前たち三人は俺についてこい」
三人が頷く。
クリスたちは、ウェスカーのいる方向へ進んでいく。
「ウェスカー!」
クリスが声を張り上げた。
「手下を連れてきたのか!」
「クリスか!」
ウェスカーの声が返ってくる。
すると、ジルもウェスカーを引きつけるように声を上げた。
「私もいるわよ、ウェスカー!」
「……ジル」
ウェスカーが反応する。
クリスはさらに問いかけた。
「アレックスはどこだ!」
「さあな」
ウェスカーは淡々と答えた。
「お前の後ろかもしれんぞ」
クリスは一瞬、背後を振り返る。
「……そう簡単には教えてくれないらしいな」
クリスはそう呟いた。
少し前から、無線が使えるようになっていた。
クリスはすぐにレディハンクへ通信を入れる。
「レディハンク、こちらクリス」
『どうぞ』
「ウェスカーを発見した。アレックスの所在は不明だ」
クリスは周囲を警戒しながら続けた。
「これからウェスカーと戦う」
◆
クリスが通信を終えると、三人の隊員がすぐに援護についた。
三人がウェスカーへ向けて銃を構え、射撃を開始する。
銃声が造船所に響き渡る。
その援護を受けながら、クリスとジルもウェスカーへ向かって動き出した。
二人の右手には、ナイフを装着した拳銃がある。
テラグリジアでウェスカーと共闘した際、二人はその異常な動きを間近で見ていた。
あのときの動きを分析し、訓練してきた。
二人はウェスカーの動きを見ながら、慎重に間合いを詰めていく。
クリスが拳銃を撃つ。
ウェスカーは身体をずらして銃弾をかわした。
ジルも続けて撃つ。
ウェスカーはさらに身体をひねり、銃弾をかわす。
三人の隊員が援護射撃を続ける中、クリスとジルは少しずつウェスカーとの距離を縮めていった。
だが、ウェスカーもただ避けているだけではなかった。
銃撃をかわした直後、拳銃を構える。
銃声が響いた。
クリスとジルは身を沈め、銃弾をかわす。
ウェスカーはそのまま二人へ向かって踏み込んだ。
その動きに、クリスとジルも反応する。
クリスが拳銃を撃ちながら前へ出る。
ウェスカーは銃弾をかわしながら、さらに距離を詰める。
互いの間合いが一気に縮まっていく。
クリスが右手を突き出す。
銃口の下に装着された銃剣が、ウェスカーへ迫った。
ウェスカーは身体をわずかにずらして銃剣をかわす。
その瞬間、ジルが横から踏み込んだ。
右手の拳銃を撃ちながら、ナイフを振り込む。
ウェスカーは上体を反らし、刃をかわした。
クリスはさらに拳銃を撃つ。
ウェスカーは銃弾をかわすと、そのままクリスへ踏み込んだ。
拳銃を撃ちながら距離を詰め、近距離から三人の援護射撃をかわす。
後方の三人が銃撃を続ける。
ウェスカーはクリスとジルを相手にしながら、後方から飛んでくる銃弾まで避けていた。
その動きは、二人がテラグリジアで見たものと変わらない。
だが、二人もそれを知っている。
クリスは拳銃を撃ちながら銃剣を突き出し、ジルもナイフを振り込む。
ウェスカーは身体をひねって二つの攻撃をかわした。
そのままクリスとの距離を詰める。
拳が迫る。
「!」
クリスは咄嗟に腕を上げ、その一撃を受け流した。
腕に凄まじい衝撃が走る。
「ぐっ……!」
骨まで響くような衝撃とともに、嫌な音がした。
それでもクリスは踏みとどまる。
だが、ウェスカーはさらに踏み込んだ。
掌底がクリスを襲う。
「ぐあっ!」
クリスの身体が大きく吹き飛ばされる。
だが、ウェスカーはその瞬間に気づいた。
掌底が完全には入っていない。
クリスは掌底が当たる瞬間、後ろへ飛んでいた。
攻撃の勢いを利用して後方へ跳び、直撃を避けたのだ。
致命傷は免れている。
ウェスカーは、そのまま吹き飛んだクリスへ追撃を仕掛ける。
一気に距離を詰める。
だが――
ジルはどこだ?
ウェスカーの視界にジルがいない。
次の瞬間、吹き飛ばされたクリスの身体の下を、ジルが滑るように通り抜けた。
そのままウェスカーへ、銃身を切りつめたショットガンを構える。
「!」
ウェスカーがわずかに驚愕する。
目の前には、ショットガンの銃口。
「くっ!」
ウェスカーは咄嗟に腕で頭を庇い、大きく飛びのいた。
轟音が響く。
散弾がウェスカーを襲った。
一瞬遅ければ危なかった。
ウェスカーのサングラスが破壊される。
着地したウェスカーは、懐から予備のサングラスを取り出した。
それを掛け直す。
後の予備は一つだ。
物陰に身を隠す。
そして再び、クリスとジルへ視線を向けた。
◆
ウェスカーは、掛け直したサングラス越しにクリスとジルを見た。
「テラグリジアでの戦い……無駄にはしなかったようだな」
クリスが構えを崩さずに返す。
「余裕か、ウェスカー」
ウェスカーは小さく笑った。
だが、答えない。
その代わり、クリスへ声をかける。
「いつまで、その身体がもつかな。クリス」
クリスはウェスカーを睨みつけた。
「お前を倒すために、これまで鍛えてきた」
その隣で、ジルも銃を構え直す。
「今度は顔面にぶち込んでやるわよ!」
ウェスカーは二人を見つめる。
以前、S.T.A.R.S.にいたころとは違う。
クリスもジルも、あの頃とは明らかに変わっていた。
「……S.T.A.R.S.の頃とは違うな」
ウェスカーが呟く。
そして、クリスへ向き直る。
「クリス。お前との因縁は、今日で終わらせてやろう」
クリスは拳を握りしめた。
「俺が終わらせる」
クリスは一歩踏み出す。
「S.T.A.R.S.の頃から続いている因縁を――俺が終わらせる!」
そして、クリスは後方の三人へ素早く合図を送った。
三人が構える。
クリスは雄叫びを上げた。
「うおおおおおっ!」
そのまま、ウェスカーへ向かって飛び出した。
ジルも続く。
再び、二人とウェスカーの距離が一気に縮まっていく。
◆
その戦いを、少し離れた場所からそれとなく注意を払っている男がいた。
バリーだった。
先ほどクリスから送られた合図。
その言葉は――「S.T.A.R.S.」。
それは、事前に決めていたものだった。
もし、ウェスカーと遭遇したときのための合図。
バリーはライフルを構えた。
スコープを覗き込み、ウェスカーへ狙いを定める。
自分ならできるはずだ。
ウェスカーの癖は、S.T.A.R.S.時代から知っている。
クリスが飛び出した。
ジルも続いている。
BSAAの三人も援護射撃を続けていた。
クリスとジルがウェスカーへ攻撃を仕掛け、その隙を三人の隊員が銃撃で牽制する。
ウェスカーはそれらすべてに意識を向けながら、攻撃をかわし反撃している。
それでも、クリスたちは怯まない。
ウェスカーの注意を引きつけるように、次々と攻撃を仕掛けていく。
だが、ウェスカーの反撃も激しかった。
クリスの肩を拳が掠める。
ジルも咄嗟に身を引くが、腕を打たれる。
二人の動きがわずかに鈍る。
それでも、ウェスカーの注意を引き続ける。
バリーはその様子を見ながら、じっと引き金に指をかけた。
そして――
引き金を引いた。
銃声が響く。
弾丸がウェスカーへ迫る。
――躱された。
弾丸が身体を掠め、ウェスカーの体勢が大きく崩れる。
その一瞬を、クリスとジルが逃さなかった。
二人が一気に踏み込む。
クリスが銃剣を突き出す。ウェスカーは咄嗟に身を反らしてかわした。だが、体勢を立て直すより早く、ジルのナイフが横から迫る。
ウェスカーは身体を強引にひねる。刃が頬を掠める。
その瞬間、クリスが銃を撃つ。
ウェスカーは反射的に身をずらした。
そこへジルがさらに踏み込み、ナイフを振り込む。
ウェスカーは身を引く。
直後、背後からBSAAの銃弾が飛び込んでくる。
「くっ!」
ウェスカーは咄嗟に跳んだ。
着地した瞬間、クリスが目の前まで迫っていた。
銃剣が突き出される。
ウェスカーはとっさに身体をひねってかわす。
だが、体勢を戻す暇もない。
ジルがショットガンを構えていた。
「しまっ――」
銃声が轟く。
ウェスカーはさらに反射的に後ろへ跳んだ。
散弾をかわす。
だが、その先には何もなかった。
ウェスカーの身体が宙へ投げ出される。
そのまま、破壊されたサングラスと共に下へ落ちていった。
◆
ウェスカーは、とっさに近くにあったものを掴んだ。
そのまま身体を翻し、着地する。
そして、すぐに物陰へ身を隠した。
手にしていたものを放り捨てると、懐から予備のサングラスを取り出す。
それを掛け直した、そのときだった。
通信が入る。
『兄さん。時間よ』
アレックスからだった。
「……!」
ウェスカーは思わず舌打ちする。
だが、すぐに無線機から再び声が届いた。
『兄さん』
諫めるような声だった。
ウェスカーは目を閉じ、少し長く息を吐いた。
そして、クリスたちへ向かって声を張り上げる。
「S.T.A.R.S.! また会おう!」
それだけ告げると、ウェスカーはその場から撤退した。
◆
ウェスカーの姿が見えなくなると、クリスたちはようやく安堵の息を吐いた。
だが――あれだけの攻撃を仕掛けても、仕留めきれなかった。
「……あれだけやっても、倒せないのか」
BSAAの隊員の一人が呟く。
そして、念のためといった様子でクリスへ尋ねた。
「追撃は?」
「やめておけ」
クリスが答える。
「追えば、無駄に損害が出るだけだ」
そこへバリーがやってきた。
「それにしても……あれを躱されるとはな」
バリーが言う。
ジルがクリスを見る。
「完全に注意を引きつけていたはずだけど」
クリスは短く息を吐いた。
「それでも、あいつは気づいたらしい」
ジルは周囲を見回し、声を上げた。
「衛生兵!」
すぐに衛生兵が駆け寄ってくる。
クリスの治療をさせるためだろう。
ジルがクリスへ視線を向ける。
その目が、どうなのかと問いかけていた。
クリスは自分の腕を見た。
「おそらく、腕とあばらにひびが入っている」
そう答えると、衛生兵がクリスの状態を確認し始めた。
バリーはクリスたちの様子を確認すると、無線を取り出した。
「レディハンク、こちらバリー」
『どうぞ』
「ウェスカーが逃げた」
短く報告する。
『了解』
すぐに返事が返ってきた。
『こっちは砦は落とした、これから旧施設に向かう』
「援護は?」
バリーが尋ねる。
『今はいらない』
レディハンクは即答した。
「そうか。ウェスカーは大丈夫か?」
『もうすぐリサとアレクシアが到着するから、逃げたんだと思う』
「なるほど」
バリーが頷く。
「じゃあ、こっちはこっちで動く」
『了解』
そこで無線が切れた。