アーク製薬会社   作:ai試し2

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5話 造船所

 造船所へ向かうヘリの中。

 

 クリスは、向かいに座るジルとBSAAの隊員たちを見回した。

 

「テラグリジアのことは覚えているな?」

 

 隊員たちが頷く。

 

「ああいう相手と遭遇する可能性がある。もしウェスカーと遭遇したら、あのときの動きを思い出せ」

 

 クリスは続ける。

 

「相手は、もう人間の動きじゃない。常識にとらわれるな」

 

 そして、プラーガについても付け加えた。

 

「それと、プラーガの上位種を寄生された奴も同じだ。身体能力が向上している。普通の人間だと思って相手をするな」

 

「了解!」

 

 隊員たちが返事をする。

 

 やがて、前方に施設が見えてきた。

 

「……あれか」

 

 クリスが目を凝らす。

 

「確かに造船所のようだな」

 

 上空から見ると、船舶を扱うための施設が広がっている。

 

「対空砲があるらしい。降下準備!」

 

 クリスが指示を出す。

 

 ヘリが高度を下げていく。

 

「降下!」

 

 クリスが叫ぶ。

 

 隊員たちが次々とヘリから降りていく。

 

 BSAAの隊員たちが地上へ展開し、続いてバリーの部隊も近くへ降下した。

 

 全員が周囲を警戒しながら、造船所の中へ進んでいく。

 

 やがて、その先に一隻の大きな船が見えてきた。

 

「あれが船か」

 

 バリーが目を向ける。

 

 だが――

 

 次の瞬間。

 

 轟音が響き渡った。

 

 船が大きく爆発した。

 

「何が起こった!?」

 

 クリスが叫ぶ。

 

 黒煙が立ち上り、爆炎が船体を包み込む。

 

 そのときだった。

 

「BSAA」

 

 どこからか、声が響いた。

 

「ここにはサドラーはいないぞ」

 

 聞き覚えのある声。

 

 クリスたちは一斉に周囲を見回す。

 

「……ウェスカー」

 

 クリスが呟いた。

 

 そのときだった。

 

「あれは!?」

 

 BSAAの隊員の一人が叫んだ。

 

 視線の先では、複数の影が入り乱れている。

 

 ハンターとリッカーだった。

 

 それらはガナードたちと激しく争っていた。

 

「数は、それほど多くない!」

 

 別の隊員が報告する。

 

「落ち着いて対処しろ!」

 

 クリスが指示を飛ばす。

 

「周囲を確認しながら、確実に片づけるんだ!」

 

 隊員たちはそれぞれ武器を構え、ハンターやリッカー、そしてガナードたちの動きを見極めながら戦闘態勢を整えた。

 

 その一方で、クリスはジルへ視線を向ける。

 

 ウェスカーを引きつける必要がある。

 

 クリスはジルへ小さく合図を送った。

 

 ジルはすぐに意図を理解し、頷く。

 

「私たちはウェスカーを探す」

 

 クリスは周囲を見回し、特に腕の立つ三人を選んだ。

 

「お前たち三人は俺についてこい」

 

 三人が頷く。

 

 クリスたちは、ウェスカーのいる方向へ進んでいく。

 

「ウェスカー!」

 

 クリスが声を張り上げた。

 

「手下を連れてきたのか!」

 

「クリスか!」

 

 ウェスカーの声が返ってくる。

 

 すると、ジルもウェスカーを引きつけるように声を上げた。

 

「私もいるわよ、ウェスカー!」

 

「……ジル」

 

 ウェスカーが反応する。

 

 クリスはさらに問いかけた。

 

「アレックスはどこだ!」

 

「さあな」

 

 ウェスカーは淡々と答えた。

 

「お前の後ろかもしれんぞ」

 

 クリスは一瞬、背後を振り返る。

 

「……そう簡単には教えてくれないらしいな」

 

 クリスはそう呟いた。

 

 少し前から、無線が使えるようになっていた。

 

 クリスはすぐにレディハンクへ通信を入れる。

 

「レディハンク、こちらクリス」

 

『どうぞ』

 

「ウェスカーを発見した。アレックスの所在は不明だ」

 

 クリスは周囲を警戒しながら続けた。

 

「これからウェスカーと戦う」

 

     ◆

 

 クリスが通信を終えると、三人の隊員がすぐに援護についた。

 

 三人がウェスカーへ向けて銃を構え、射撃を開始する。

 

 銃声が造船所に響き渡る。

 

 その援護を受けながら、クリスとジルもウェスカーへ向かって動き出した。

 

 二人の右手には、ナイフを装着した拳銃がある。

 

 テラグリジアでウェスカーと共闘した際、二人はその異常な動きを間近で見ていた。

 

 あのときの動きを分析し、訓練してきた。

 

 二人はウェスカーの動きを見ながら、慎重に間合いを詰めていく。

 

 クリスが拳銃を撃つ。

 

 ウェスカーは身体をずらして銃弾をかわした。

 

 ジルも続けて撃つ。

 

 ウェスカーはさらに身体をひねり、銃弾をかわす。

 

 三人の隊員が援護射撃を続ける中、クリスとジルは少しずつウェスカーとの距離を縮めていった。

 

 だが、ウェスカーもただ避けているだけではなかった。

 

 銃撃をかわした直後、拳銃を構える。

 

 銃声が響いた。

 

 クリスとジルは身を沈め、銃弾をかわす。

 

 ウェスカーはそのまま二人へ向かって踏み込んだ。

 

 その動きに、クリスとジルも反応する。

 

 クリスが拳銃を撃ちながら前へ出る。

 

 ウェスカーは銃弾をかわしながら、さらに距離を詰める。

 

 互いの間合いが一気に縮まっていく。

 

 クリスが右手を突き出す。

 

 銃口の下に装着された銃剣が、ウェスカーへ迫った。

 

 ウェスカーは身体をわずかにずらして銃剣をかわす。

 

 その瞬間、ジルが横から踏み込んだ。

 

 右手の拳銃を撃ちながら、ナイフを振り込む。

 

 ウェスカーは上体を反らし、刃をかわした。

 

 クリスはさらに拳銃を撃つ。

 

 ウェスカーは銃弾をかわすと、そのままクリスへ踏み込んだ。

 

 拳銃を撃ちながら距離を詰め、近距離から三人の援護射撃をかわす。

 

 後方の三人が銃撃を続ける。

 

 ウェスカーはクリスとジルを相手にしながら、後方から飛んでくる銃弾まで避けていた。

 

 その動きは、二人がテラグリジアで見たものと変わらない。

 

 だが、二人もそれを知っている。

 

 クリスは拳銃を撃ちながら銃剣を突き出し、ジルもナイフを振り込む。

 

 ウェスカーは身体をひねって二つの攻撃をかわした。

 

 そのままクリスとの距離を詰める。

 

 拳が迫る。

 

「!」

 

 クリスは咄嗟に腕を上げ、その一撃を受け流した。

 

 腕に凄まじい衝撃が走る。

 

「ぐっ……!」

 

 骨まで響くような衝撃とともに、嫌な音がした。

 

 それでもクリスは踏みとどまる。

 

 だが、ウェスカーはさらに踏み込んだ。

 

 掌底がクリスを襲う。

 

「ぐあっ!」

 

 クリスの身体が大きく吹き飛ばされる。

 

 だが、ウェスカーはその瞬間に気づいた。

 

 掌底が完全には入っていない。

 

 クリスは掌底が当たる瞬間、後ろへ飛んでいた。

 

 攻撃の勢いを利用して後方へ跳び、直撃を避けたのだ。

 

 致命傷は免れている。

 

 ウェスカーは、そのまま吹き飛んだクリスへ追撃を仕掛ける。

 

 一気に距離を詰める。

 

 だが――

 

 ジルはどこだ?

 

 ウェスカーの視界にジルがいない。

 

 次の瞬間、吹き飛ばされたクリスの身体の下を、ジルが滑るように通り抜けた。

 

 そのままウェスカーへ、銃身を切りつめたショットガンを構える。

 

「!」

 

 ウェスカーがわずかに驚愕する。

 

 目の前には、ショットガンの銃口。

 

「くっ!」

 

 ウェスカーは咄嗟に腕で頭を庇い、大きく飛びのいた。

 

 轟音が響く。

 

 散弾がウェスカーを襲った。

 

 一瞬遅ければ危なかった。

 

 ウェスカーのサングラスが破壊される。

 

 着地したウェスカーは、懐から予備のサングラスを取り出した。

 

 それを掛け直す。

 

 後の予備は一つだ。

 

 物陰に身を隠す。

 

 そして再び、クリスとジルへ視線を向けた。

 

     ◆

 

 ウェスカーは、掛け直したサングラス越しにクリスとジルを見た。

 

「テラグリジアでの戦い……無駄にはしなかったようだな」

 

 クリスが構えを崩さずに返す。

 

「余裕か、ウェスカー」

 

 ウェスカーは小さく笑った。

 

 だが、答えない。

 

 その代わり、クリスへ声をかける。

 

「いつまで、その身体がもつかな。クリス」

 

 クリスはウェスカーを睨みつけた。

 

「お前を倒すために、これまで鍛えてきた」

 

 その隣で、ジルも銃を構え直す。

 

「今度は顔面にぶち込んでやるわよ!」

 

 ウェスカーは二人を見つめる。

 

 以前、S.T.A.R.S.にいたころとは違う。

 

 クリスもジルも、あの頃とは明らかに変わっていた。

 

「……S.T.A.R.S.の頃とは違うな」

 

 ウェスカーが呟く。

 

 そして、クリスへ向き直る。

 

「クリス。お前との因縁は、今日で終わらせてやろう」

 

 クリスは拳を握りしめた。

 

「俺が終わらせる」

 

 クリスは一歩踏み出す。

 

「S.T.A.R.S.の頃から続いている因縁を――俺が終わらせる!」

 

 そして、クリスは後方の三人へ素早く合図を送った。

 

 三人が構える。

 

 クリスは雄叫びを上げた。

 

「うおおおおおっ!」

 

 そのまま、ウェスカーへ向かって飛び出した。

 

 ジルも続く。

 

 再び、二人とウェスカーの距離が一気に縮まっていく。

 

     ◆

 

 その戦いを、少し離れた場所からそれとなく注意を払っている男がいた。

 

 バリーだった。

 

 先ほどクリスから送られた合図。

 

 その言葉は――「S.T.A.R.S.」。

 

 それは、事前に決めていたものだった。

 

 もし、ウェスカーと遭遇したときのための合図。

 

 バリーはライフルを構えた。

 

 スコープを覗き込み、ウェスカーへ狙いを定める。

 

 自分ならできるはずだ。

 

 ウェスカーの癖は、S.T.A.R.S.時代から知っている。

 

 クリスが飛び出した。

 

 ジルも続いている。

 

 BSAAの三人も援護射撃を続けていた。

 

 クリスとジルがウェスカーへ攻撃を仕掛け、その隙を三人の隊員が銃撃で牽制する。

 

 ウェスカーはそれらすべてに意識を向けながら、攻撃をかわし反撃している。

 

 それでも、クリスたちは怯まない。

 

 ウェスカーの注意を引きつけるように、次々と攻撃を仕掛けていく。

 

 だが、ウェスカーの反撃も激しかった。

 

 クリスの肩を拳が掠める。

 

 ジルも咄嗟に身を引くが、腕を打たれる。

 

 二人の動きがわずかに鈍る。

 

 それでも、ウェスカーの注意を引き続ける。

 

 バリーはその様子を見ながら、じっと引き金に指をかけた。

 

 そして――

 

 引き金を引いた。

 

 銃声が響く。

 

 弾丸がウェスカーへ迫る。

 

 ――躱された。

 

 弾丸が身体を掠め、ウェスカーの体勢が大きく崩れる。

 

 その一瞬を、クリスとジルが逃さなかった。

 

 二人が一気に踏み込む。

 

 クリスが銃剣を突き出す。ウェスカーは咄嗟に身を反らしてかわした。だが、体勢を立て直すより早く、ジルのナイフが横から迫る。

 

 ウェスカーは身体を強引にひねる。刃が頬を掠める。

 

 その瞬間、クリスが銃を撃つ。

 

 ウェスカーは反射的に身をずらした。

 

 そこへジルがさらに踏み込み、ナイフを振り込む。

 

 ウェスカーは身を引く。

 

 直後、背後からBSAAの銃弾が飛び込んでくる。

 

「くっ!」

 

 ウェスカーは咄嗟に跳んだ。

 

 着地した瞬間、クリスが目の前まで迫っていた。

 

 銃剣が突き出される。

 

 ウェスカーはとっさに身体をひねってかわす。

 

 だが、体勢を戻す暇もない。

 

 ジルがショットガンを構えていた。

 

「しまっ――」

 

 銃声が轟く。

 

 ウェスカーはさらに反射的に後ろへ跳んだ。

 

 散弾をかわす。

 

 だが、その先には何もなかった。

 

 ウェスカーの身体が宙へ投げ出される。

 

 そのまま、破壊されたサングラスと共に下へ落ちていった。

 

     ◆

 

 ウェスカーは、とっさに近くにあったものを掴んだ。

 

 そのまま身体を翻し、着地する。

 

 そして、すぐに物陰へ身を隠した。

 

 手にしていたものを放り捨てると、懐から予備のサングラスを取り出す。

 

 それを掛け直した、そのときだった。

 

 通信が入る。

 

『兄さん。時間よ』

 

 アレックスからだった。

 

「……!」

 

 ウェスカーは思わず舌打ちする。

 

 だが、すぐに無線機から再び声が届いた。

 

『兄さん』

 

 諫めるような声だった。

 

 ウェスカーは目を閉じ、少し長く息を吐いた。

 

 そして、クリスたちへ向かって声を張り上げる。

 

「S.T.A.R.S.! また会おう!」

 

 それだけ告げると、ウェスカーはその場から撤退した。

 

     ◆

 

 ウェスカーの姿が見えなくなると、クリスたちはようやく安堵の息を吐いた。

 

 だが――あれだけの攻撃を仕掛けても、仕留めきれなかった。

 

「……あれだけやっても、倒せないのか」

 

 BSAAの隊員の一人が呟く。

 

 そして、念のためといった様子でクリスへ尋ねた。

 

「追撃は?」

 

「やめておけ」

 

 クリスが答える。

 

「追えば、無駄に損害が出るだけだ」

 

 そこへバリーがやってきた。

 

「それにしても……あれを躱されるとはな」

 

 バリーが言う。

 

 ジルがクリスを見る。

 

「完全に注意を引きつけていたはずだけど」

 

 クリスは短く息を吐いた。

 

「それでも、あいつは気づいたらしい」

 

 ジルは周囲を見回し、声を上げた。

 

「衛生兵!」

 

 すぐに衛生兵が駆け寄ってくる。

 

 クリスの治療をさせるためだろう。

 

 ジルがクリスへ視線を向ける。

 

 その目が、どうなのかと問いかけていた。

 

 クリスは自分の腕を見た。

 

「おそらく、腕とあばらにひびが入っている」

 

 そう答えると、衛生兵がクリスの状態を確認し始めた。

 

 バリーはクリスたちの様子を確認すると、無線を取り出した。

 

「レディハンク、こちらバリー」

 

『どうぞ』

 

「ウェスカーが逃げた」

 

 短く報告する。

 

『了解』

 

 すぐに返事が返ってきた。

 

『こっちは砦は落とした、これから旧施設に向かう』

 

「援護は?」

 

 バリーが尋ねる。

 

『今はいらない』

 

 レディハンクは即答した。

 

「そうか。ウェスカーは大丈夫か?」

 

『もうすぐリサとアレクシアが到着するから、逃げたんだと思う』

 

「なるほど」

 

 バリーが頷く。

 

「じゃあ、こっちはこっちで動く」

 

『了解』

 

 そこで無線が切れた。

 

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