アーク製薬会社   作:ai試し2

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8話 合流後

 翌日。

 

 EU部隊の臨時指揮所となっているホテルの会議室には、各部隊の責任者と現場を担当する隊員たちが集まっていた。壁一面のスクリーンにはテラグリジアと周辺海域の地図が映し出され、橋、港、病院、そしてこれまでにB.O.W.が確認された地点が表示されている。

 

 ハンクも隊員たちの後方に立ち、腕を組んでスクリーンを見ていた。昨日までに得られた情報が多いだけに、集まった者たちの表情には疲労だけでなく、これから何を知らされるのかという緊張が滲んでいる。

 

 EU側の責任者が壇上へ立った。

 

「まず、昨日実施されたFBCの港湾脱出作戦について報告します」

 

 画面が港の映像へ切り替わった。

 

「作戦は失敗しました」

 

 短い言葉が会議室へ落ちる。

 

 港には避難民を乗せるための船が並んでいた。しかし、その周囲には戦闘の痕跡が残っている。

 

「原因はB.O.W.――ハンターによる襲撃です」

 

 別の映像が表示された。

 

「これまで、ハンターが海から橋へ侵入することは確認されていました。しかし、今回の作戦では、低速で航行する船舶に対しても海中から接近し、そのまま船上へ上がってくる個体が確認されました」

 

 隊員たちの間にざわめきが走る。

 

「港では避難民とFBC隊員の双方に犠牲者が出ています。船による脱出は、現状では安全な手段とは判断できません」

 

 責任者が映像を消した。

 

「したがって、港湾部からの大規模な海上脱出は、一旦見直します」

 

 次に表示されたのは、一機のUAVだった。

 

「続いて、今回のテロで使用されたUAVについてです」

 

 画面には航空機の追跡記録が表示される。

 

「イギリス海軍が周辺海域で該当機を捕捉し、撃墜しました」

 

 隊員たちが安堵するように息を吐く。

 

 しかし、続く言葉で空気が変わった。

 

「ただし、それまでに四機のヘリが撃墜されています」

 

 画面に記録が並ぶ。

 

「病院が運用していたヘリが三機。そして、製薬会社のヘリが一機」

 

 ハンクの表情は変わらなかった。

 

 頭の中に、スティーブとシェリーの姿が浮かぶ。

 

 二人が遭遇したUAVも、同じものだった。

 

「UAVはすでに撃墜されましたが、同型機が他にも存在する可能性は否定できません。しばらくの間、航空機の運用には十分な警戒が必要です」

 

 責任者が次の資料を表示する。

 

「そして、もう一つ重要な報告があります」

 

 そこに映し出されたのは、ハンクが回収した青い外皮の異形だった。

 

「新種のハンターが確認されました」

 

 会議室の視線がスクリーンへ集まる。

 

「この個体は、周囲の景色に紛れるほど高い透明化能力を持っています。肉眼による発見が非常に困難です 」

 

 次に、偵察ヘリから撮影された映像が表示された。

 

「しかし、完全に検知できないわけではありません。偵察用ヘリによる確認では、サーモグラフィーで熱源として捉えることができました。赤外線による観測でも存在を確認できます」

 

 写真が拡大される。

 

 そこには、背景に溶け込むように薄く浮かび上がった異形の姿があった。

 

「画像を見てもらえば分かる通り、非常に見えにくい。しかし、肉眼でも判別できます」

 

 責任者は次の資料へ切り替えた。

 

「現在、これに対応する装備を調達中です。準備が整い次第、前線部隊へ配布します」

 

 ハンクは静かに聞いていた。

 

 透明化できるハンターが存在する以上、これまでのように目視だけを頼りにした警戒は危険だった。

 

「この新種の確認を受け、避難計画も変更します」

 

 橋の映像が表示される。

 

「本日は橋を封鎖します」

 

 何人かの隊員が顔を上げた。

 

「橋全域に、新種のハンターが飛び越えて侵入することのできないフェンスを設置します。海側からの侵入だけでなく、橋上へのB.O.W.の侵入経路そのものを制限するためです」

 

 橋の地図上に、封鎖区域が表示された。

 

「避難路としての使用は一時停止します。橋を安全に維持できる状態を作ってから、改めて避難計画を組み直します」

 

 責任者はそこで一度言葉を切った。

 

「ただし、問題はハンターだけではありません」

 

 画面が切り替わる。

 

 今度は巨大な肉塊のような異形が映し出された。

 

「新たなウーズ系変異体も確認されています」

 

 隊員たちが写真へ目を向ける。

 

「グロブスター」

 

 巨大な身体を持つ個体だった。

 

「これは感染者が変異したウーズ系の一種と考えられています。最大の特徴は遊泳能力です」

 

 映像が海上へ切り替わる。

 

 巨大な肉塊が水中を進んでいる。

 

「陸上では動きが鈍い。しかし、非常にしぶとく、簡単には排除できません」

 

 さらに別の映像が表示された。

 

「水上への攻撃能力そのものは高くありません。ただし、小型の船舶に対しては体当たりだけでも転覆させる危険があります」

 

 隊員の一人が眉を寄せる。

 

「しかも陸上でも活動できる?」

 

「その通りです」

 

 責任者が頷く。

 

「そのため、大陸側の海岸にも警護部隊を派遣します。泳いだ個体が、そのまま大陸側へ上陸する可能性を考慮します」

 

 次の写真へ切り替わる。

 

 水中から姿を現す別の異形。

 

「シークリーパー」

 

 人間に似た形状を残しながらも、水中活動に適した身体を持っている。

 

「現時点では、水中から陸上へ上がってきたという確実な記録はありません。しかし、水面から飛びかかり、人間を水中へ引きずり込もうとする行動が確認されています」

 

 海岸や港湾での活動には、これまで以上の注意が必要になる。

 

 責任者はさらに画面を切り替えた。

 

「次はチャンクです」

 

 そこには、動きの鈍い異形が映っていた。

 

「動作は遅い。しかし、非常に厄介な性質があります」

 

 映像の中で、個体が攻撃を受ける。

 

 次の瞬間、身体が爆発した。

 

 会議室の何人かが息を呑んだ。

 

「この個体は攻撃を受けると爆発します。接近戦は厳禁です」

 

 最後の写真が表示される。

 

 巨大な身体。

 

 片腕には盾のような器官。

 

 もう一方には、剣を思わせる巨大な器官が形成されている。

 

「スカルミリオーネ」

 

 責任者の声が低くなる。

 

「銃弾を弾く盾と、巨大な剣状の器官を持っています。確認された数は少なく、現在までの目撃情報も限られています」

 

 ハンクは腕を組んだまま、写真を見つめていた。

 

 透明化するハンター。

 

 水中を移動するグロブスター。

 

 人間を水へ引きずり込むシークリーパー。

 

 攻撃そのものが危険なチャンク。

 

 そして、防御力と近接攻撃力に特化したスカルミリオーネ。

 

 テラグリジアで確認されるB.O.W.は、急速に増えている。

 

 責任者が最後の資料を表示した。

 

「以上が、現在までに確認された主な新種です」

 

 スクリーンに複数の異形の姿が並ぶ。

 

「ただし、これで全てとは限りません」

 

 一瞬、会議室が静まり返る。

 

「なお、これとは別に、大型の頭部を二つ持つ個体も確認されています」

 

 ハンクの目がわずかに細くなった。

 

 スティーブとシェリーが見た個体、ほかに目撃情報は無いようだった。

 

「現在、詳細を調査中です」

 

 責任者が資料を閉じる。

 

「テラグリジアでは、感染者だけでなく、複数のB.O.W.が市街地、海上、そして避難経路にまで出現しています」

 

 誰も口を挟まなかった。

 

「我々の任務は変わりません。しかし、今までと同じやり方では通用しない」

 

 会議室に集まった隊員たちが、それぞれの装備と資料を確認し始める。

 

「今日は橋の封鎖と防御設備の構築を優先します。その間、各部隊は新種B.O.W.の情報を共有し、遭遇した場合は必ず記録してください」

 

 責任者が最後に告げた。

 

「我々が相手にしているものが何なのかを知ること。それが、生き残るために必要です」

 

 会議室のスクリーンには、封鎖予定の橋と、赤く表示されたテラグリジア全域の危険区域が残っていた。

 

     ◆

 

 病院の一室には、昨夜までの騒ぎが嘘のような静けさがあった。もちろん、建物全体が落ち着いているわけではない。廊下からは看護師や医師の足音が聞こえ、ときおり避難民を案内する声も響いている。

 

 スティーブはベッド脇の電話へ手を伸ばした。

 

 受話器を取り、クレアの携帯へ電話を掛ける。

 

 何度か呼び出し音が鳴った。

 

 やがて、受話器の向こうから声が返ってくる。

 

「……スティーブ?」

 

「よ、クレア」

 

 聞き慣れた声を聞いた瞬間、スティーブの表情がわずかに緩んだ。

 

 それだけで、張り詰めていた気持ちが少しほどける。

 

 だが、すぐに気づいた。

 

「……クレア、お前、疲れてるだろ」

 

「そう聞こえる?」

 

「ああ」

 

 スティーブはベッドへ腰掛けた。

 

「少し休んだほうがいい」

 

「まだやることが残ってるのよ」

 

「だからって無理するなよ。少しでも仮眠を取れ」

 

 受話器の向こうが静かになる。

 

 クレアはすぐには答えなかった。

 

 その沈黙だけで、スティーブには彼女がどれだけ疲れているのか分かった気がした。

 

「……あなたに言われるとは思わなかったわ」

 

 ようやく返ってきた声には、かすかな笑いが混じっていた。

 

「俺はいいんだよ」

 

「どこがよ」

 

「俺はもう救助されたからな」

 

 スティーブは軽く笑った。

 

「シェリーも無事だ。こっちは大丈夫だよ」

 

「そうね」

 

 クレアの声が少し柔らかくなる。

 

「無事で本当によかった」

 

「ああ。まあ、ヘリはなくなったけどな」

 

「それは聞いてるわ」

 

「だろ?」

 

 スティーブが苦笑する。

 

「だから今度はクレアの番だ。少しくらい休め」

 

 また短い沈黙があった。

 

「……分かった」

 

「本当か?」

 

「ええ。少しだけ休むわ」

 

「それでいい」

 

 スティーブは肩の力を抜いた。

 

 大した会話ではない。

 

 それでも、今はそれで十分だった。

 

「じゃあ、俺からはこれだけ」

 

「何?」

 

 スティーブは少しだけ間を置いた。

 

「声、聞けてよかった」

 

 向こうから返事がなくなる。

 

 スティーブは思わず笑った。

 

「クレア?」

 

「……私もよ」

 

 短い言葉だった。

 

 それでも、その一言を聞いたスティーブの表情は自然に明るくなった。

 

「なんか元気出てきたわ」

 

「単純ね」

 

「そういうのが一番大事だろ」

 

「ふふ……そうかもしれないわね」

 

 二人の間に、ほんのわずかな静かな時間が流れた。

 

 昨夜までスティーブ自身も、死ぬかもしれない状況の中にいた。

 

 ヘリを撃墜され、街へ放り出され、見知らぬ建物の中を抜け、ようやく仲間と合流した。

 

 身体にはまだ疲労が残っている。

 

 腕の傷も消えてはいない。

 

 それでも、今こうしてクレアと話せている。

 

 シェリーも無事だった。

 

 それだけで、十分だった。

 

「じゃあ、ちゃんと休めよ」

 

「あなたもね」

 

「分かってる」

 

「本当に?」

 

「……たぶん」

 

「もう」

 

 クレアの小さな笑い声が聞こえた。

 

 スティーブも笑う。

 

 そして、しばらくしてから受話器を置いた。

 

 病室の外では、また誰かが走っている。

 

 テラグリジアの状況は、まだ何も終わっていない。

 

 それでもスティーブは、さっきまでより少しだけ穏やかな気持ちで、窓の外へ目を向けた。

 

     ◆

 

 第一病院を出ると、スティーブとシェリーはEU部隊が用意した装甲車へ向かった。

 

 車両の周囲では、出発準備を進める隊員たちが忙しく動いている。弾薬箱を積み込む者もいれば、車体の状態を確認している者もいる。二人の姿に気づいた隊員の一人が軽く手を上げた。

 

 スティーブも手を上げて応じる。

 

「世話になったな」

 

「気をつけて」

 

 短いやり取りを交わし、二人は装甲車へ乗り込んだ。

 

 車内ではすでに運転席に隊員が座っていた。スティーブとシェリーが乗り込むのを確認すると、運転手が振り返って笑う。

 

「お二人さん、記念すべき初めてのお客さんですよ」

 

「初めて?」

 

 シェリーが首を傾げた。

 

「ああ。今まで地上からここを出るには、徒歩しかなかったんだ」

 

 運転手はエンジンを始動させる。

 

 低い振動が車内へ伝わってきた。

 

「車両の撤去がある程度終わって、周辺の掃討も進んだ。ようやく装甲車を走らせられるようになったってわけです」

 

 シェリーは窓の外へ目を向けた。

 

 以前なら、道路を塞いでいた車両が幾重にも重なっていたはずだ。

 

 今は違う。

 

 放置された車は道路脇へ寄せられ、横転したトラックも移動されている。その結果、車両がすれ違える程度の通路が一本、ようやく確保されていた。

 

「じゃあ、この道を使ってホテルまで?」

 

「そういうことです」

 

 運転手がハンドルを切る。

 

「これなら避難民も車で運べます」

 

 装甲車がゆっくりと前進した。

 

 タイヤが路面の小さな瓦礫を踏み、振動が車内へ伝わってくる。

 

 シェリーは窓の外を見ながら、これまで何度も歩いた道路を思い返していた。

 

 同じ道なのに、車の中から見ると少し違って見える。

 

 ようやく、人を運ぶための道として使えるようになったのだ。

 

「まあ、完全に安全になったわけじゃないけどな」

 

 スティーブがシートへ背を預けながら口を挟んだ。

 

「まだ何かいるの?」

 

「建物は完全に掃討していないからな、トライコーンが残ってる可能性があるらしい」

 

 スティーブが窓の外へ目を向ける。

 

「たまに、あの骨みたいな棘が飛んでくるかもしれないってさ」

 

 シェリーの顔が少しだけ引きつった。

 

「装甲車なら大丈夫なの?」

 

「そのための装甲車だろ」

 

「それもそうだね」

 

 スティーブが笑う。

 

「だから、窓から身を乗り出したりするなよ」

 

「そんなことしないよ」

 

 シェリーが呆れたように返す。

 

「私、子供じゃないんだから」

 

「知ってるって」

 

 スティーブが肩をすくめた。

 

 運転手が二人の会話を聞きながら、前方へ目を向けたまま小さく笑う。

 

 装甲車は、そのまま新しく確保された道路を進んでいく。

 

 これまで徒歩でしか移動できなかった区間を、今は車両が走っている。

 

 道路脇では、撤去作業を続ける隊員たちの姿も見えた。

 

 まだ完全に復旧したわけではない。

 

 それでも、確実に変化は始まっている。

 

 避難民を一人ずつ歩かせるのではなく、車両に乗せて安全な場所へ運ぶ。

 

 そのための道が、ようやく一つ開いたのだ。

 

 シェリーは窓の外を眺めながら、静かに息を吐いた。

 

「少しずつだけど、戻ってきてるね」

 

 スティーブが頷く。

 

「ああ」

 

 装甲車はそのままホテルを目指して走り続けた。

 

     ◆

 

 ホテルの一室を利用した臨時指揮所では、EU側の指揮官とハンクが向かい合っていた。

 

 壁にはテラグリジアの地図が大きく掲げられ、机の上にも同じ地図が広げられている。これまでに確認されたB.O.W.の出現地点には赤い印が重なり、病院や避難経路を結ぶ道路にはいくつもの線が引かれていた。

 

 指揮官が地図へ手を伸ばす。

 

「新しい任務だ」

 

 ハンクは黙って視線を落とした。

 

 指揮官の指が、第1病院から第3病院へ延びる道路をなぞっていく。

 

「ここを掃討してもらいたい」

 

 ハンクの目が地図上のルートを追う。

 

 途中には、これまでの偵察で多数のB.O.W.が確認されている区域が含まれていた。病院を結ぶ重要な道路でありながら、現状では安全に通行できる状態ではない。

 

「難しいのでは?」

 

 ハンクが尋ねる。

 

 指揮官は否定しなかった。

 

「その通りだ」

 

 指で示した区域をさらに囲む。

 

「この周辺にはウーズが大量に確認されている。ピンサーやトライコーンもいる。これまでの局地的な掃討とは規模が違う」

 

 ハンクはしばらく地図を見つめた。

 

 敵の数。

 

 道路の長さ。

 

 そして病院同士を結ぶという重要性。

 

「……テストか」

 

 指揮官が頷く。

 

「ああ」

 

 ハンクが顔を上げる。

 

「単なる掃討任務ではない」

 

 指揮官の声が少し低くなる。

 

「大量のウーズが残る区域へ、どこまで部隊を進められるのかを確認したい。道路をどの範囲まで確保できるのか、実際にやってもらう」

 

 ハンクは黙って聞いていた。

 

「君たちは、この状況でも前線へ投入できる精鋭だ。これまでの戦闘でも結果を出している。だからこそ、今後の作戦を決めるための基準を作りたい」

 

 地図上の第1病院と第3病院を結ぶ線が強調された。

 

「ここが使えるようになれば、今後の移動が大きく変わる」

 

「避難民の輸送か」

 

「それだけではない。ワクチンや医療物資、弾薬の輸送にも使える」

 

 ハンクは再び地図へ目を落とした。

 

 現在、病院間の移動には徒歩か航空機しか使えない。地上の輸送路を一つ確保できれば、それだけで作戦全体の自由度が上がる。

 

「戦力は?」

 

 ハンクが尋ねる。

 

「追加する」

 

 指揮官は即答した。

 

「アークから出向している他の部隊も割り当てる。君たちだけで無理をさせるつもりはない」

 

「なるほど」

 

「先に言っておくが、無理に全区間を押さえる必要はない。進めるところまで進み、危険が大きいなら一度戻れ」

 

 ハンクは地図上の道路をもう一度確認した。

 

 敵は多い。

 

 だが、目的は明確だった。

 

 道路を確保する。

 

 そのために必要なだけ前へ進む。

 

 ハンクは短く頷いた。

 

「了解した」

 

「準備が整い次第、出発してくれ」

 

「ああ」

 

 ハンクは椅子から立ち上がった。

 

 地図には、これから掃討する区域が赤く囲まれている。

 

 ウーズの群れ。

 

 ピンサー。

 

 トライコーン。

 

 そして、まだ資料に載っていない未知のB.O.W.までいる可能性がある。

 

 それでも、ハンクの表情に迷いはなかった。

 

 扉へ向かう前に、もう一度だけ地図を振り返る。

 

 第1病院から第3病院へ。

 

 その道を人間が安全に通れるようにする。

 

 それが、次の任務だった。

 

     ◆

 

 病院の一角には、テラグリジアに派遣されたアークの隊員たちが顔を揃えていた。

 

 全員が一堂に会しているわけではない。別の任務へ出ている者もいれば、病院の警備や避難民の対応に残っている者もいる。それでも、こうして顔を合わせられた者たちは、互いの無事を確かめるように声を掛け合っていた。

 

「いやあ、まさかこんな形で再会するとはな」

 

 スティーブが苦笑すると、近くにいた隊員も肩を揺らして笑った。

 

「無事だっただけでも十分だろ」

 

「それもそうだ」

 

 ほんの少し前まで、誰が生き残っているのかさえ分からない状況だった。だからこそ、くだらない冗談を交わせることが、妙にありがたく感じられる。

 

 だが、話題がテラグリジアの現状へ移ると、自然とその表情から笑みが消えた。

 

「やっぱり厄介なのはハンターとトライコーンだな」

 

「ああ。警察とFBCの被害もかなり出てるらしい」

 

「ハンターは接近されると厄介だ。数がまとまると、一般の警察官じゃ対応しきれない」

 

「トライコーンも面倒だぞ。遠くから棘を飛ばしてくる」

 

 スティーブも頷いた。

 

「しかも、こっちが撃ち合おうとすると遮蔽物が邪魔になる、守ってもくれるが。あれが大量にいると厄介だ」

 

 その会話を、少し離れたところでハンクが聞いていた。

 

 やがて、ハンクが地図の前へ歩み出る。

 

「話はそこまでだ」

 

 声が響く。

 

 隊員たちが一斉に振り向いた。

 

 ハンクは机の上へ大きく広げられた地図へ手を置いた。

 

 病院同士を結ぶ道路が三本、赤い線で示されている。

 

「今回の作戦は掃討だ。三つの部隊に分かれる。全隊が同時に前進する」

 

 ハンクの指が、まず海側の道路へ移る。

 

「一つ目。レディハンクを隊長に、シェリーを加える」

 

「了解です!」

 

 レディハンクが元気よく返事をした。

 

 その声に、周囲の何人かが思わず笑う。

 

 ハンクは気にせず、次の道路を指した。

 

「二つ目は俺が率いる」

 

 そして最後の経路へ視線を移し、スティーブを見る。

 

「三つ目はスティーブ」

 

「了解」

 

 スティーブが頷いた。

 

 その足元には、シェリーの愛犬が静かに座っている。周囲で人が動き回っていても、騒ぐことなく主人の姿を追っていた。

 

 ハンクが犬へ目を向ける。

 

「それから、犬はスティーブに預ける」

 

 シェリーは少し身を屈め、愛犬の首元を撫でた。

 

「ちゃんとスティーブの言うことを聞いてね」

 

 愛犬が顔を上げる。

 

「任せろ」

 

 スティーブがリードを受け取った。

 

「俺と一緒なら大丈夫だ」

 

「……本当に?」

 

 シェリーの目がわずかに細くなる。

 

「なんだよ、その顔」

 

「別に」

 

 シェリーが小さく笑う。

 

 スティーブも苦笑した。

 

 そんな二人を横目に、ハンクは地図の中央を指で叩いた。

 

「俺の部隊は中央の道路を進む」

 

 そこは三本の中でもっとも幅が広い。

 

 同時に、これまでの偵察で大量のウーズが確認されている区域でもあった。

 

「両側はそれぞれ別の部隊が担当する。海側をレディハンク。もう一方をスティーブ」

 

 つまり、三部隊が横並びになって前へ進む。

 

 ハンクは三本の道路を順番に示した。

 

「互いの位置を意識しろ。無理に先へ進む必要はない。道路を確保しながら前進する」

 

「了解!」

 

 またレディハンクの明るい返事が響いた。

 

 スティーブは地図から目を離し、自分の担当する道路を確認する。

 

「三方向同時なら、敵も散るか」

 

「ああ」

 

 ハンクが答えた。

 

「だが、敵の数そのものが減るわけではない。油断するな」

 

 その言葉に、隊員たちの表情が引き締まった。

 

 ハンクが最後の資料を取り出す。

 

「それと、もう一つ」

 

 空気が変わる。

 

「透明化するハンターに注意しろ」

 

 スクリーンへ、背景に溶け込むような異形の写真が表示された。

 

「ファルファレルロ」

 

 昨日まで誰も知らなかった新種のB.O.W.だ。

 

「肉眼では発見が難しい。周囲に異常を感じたら、単独で動くな。サーモグラフィーや赤外線で確認できる場合もあるが、全員がその装備を持っているわけではない」

 

 ハンクの視線がスティーブへ移る。

 

「犬が反応したら、周囲を警戒しろ」

 

 スティーブは足元の愛犬へ目を落とした。

 

「こいつが頼りってわけか」

 

 犬が何かを察したように顔を上げる。

 

「そういうことだ」

 

 ハンクは地図を畳んだ。

 

「準備しろ」

 

 隊員たちが一斉に動き始める。

 

 マガジンを確認する者。

 

 無線の電源を入れる者。

 

 医療キットを装備へ収める者。

 

 それぞれが、自分の担当する道路へ向けて準備を整えていく。

 

 これから向かう先には、大量のウーズがいる。

 

 ピンサーもいる。

 

 トライコーンも確認されている。

 

 さらに、透明化するファルファレルロのような未知のB.O.W.が潜んでいる可能性もある。

 

 それでも今回は、一つの部隊だけで押し通すわけではない。

 

 三つの部隊が、それぞれの道路を同時に進む。

 

 第一病院から第三病院へ続く道路を確保するため、アークの隊員たちはそれぞれの装備を整え、三つの進路へ向かって歩き始めた。

 

     ◆

 

 掃討作戦はいったん区切りを迎えていた。

 

 第一病院へ戻ったハンクたちは、装備の点検と弾薬の補給を済ませると、ようやく椅子へ身体を預けた。長時間にわたって張り詰めていた空気も、今だけは幾分か緩んでいる。水を飲む者、弾倉を数え直す者、壁へ背を預けて目を閉じる者。それぞれが、短い休息を取っていた。

 

「それにしても、今回も生存者は上の階にいる奴が多かったな」

 

 隊員の一人が椅子へ腰を下ろしながら言った。

 

「ああ。下の階はB.O.W.が入り込んでるからな。上へ逃げた人間が多いんだろう」

 

「助けられた連中がいたのはよかった」

 

 別の隊員が水の入ったボトルを傾ける。

 

「見つけた時、かなり怯えてたけどな。無事に外へ出せたなら、それだけでも意味はある」

 

「こういう時に限って、エレベーターも止まってるしな」

 

「階段を何往復したと思ってるんだよ」

 

 疲労の混じった笑いが起こる。

 

 ほんのわずかな雑談だった。

 

 だが、しばらくすると話題は自然と、今回の掃討で遭遇したB.O.W.へ移っていった。

 

「そういや、今回はハンターをあまり見なかったな」

 

「確かに」

 

「中央付近にはよく出るって話だぞ」

 

「誰から聞いた?」

 

「警察の連中だ。あっちは何度も遭遇してるらしい」

 

 ハンクは少し離れた場所で、ライフルの状態を確認しながらその会話を聞いていた。マガジンを外し、残弾を確認する。問題がないことを確かめてから、静かに戻す。

 

 その時、別の隊員がふと思い出したように口を開いた。

 

「そういえば、あのおっかない元S.T.A.R.S.の連中はどうしてるんだ?」

 

「元S.T.A.R.S.?」

 

「ああ。FBCにくっついてるんじゃないのか?」

 

 その言葉が出た瞬間、元U.S.S.の隊員たちは互いに顔を見合わせた。

 

 S.T.A.R.S.

 

 ラクーンシティで実戦を経験し、アークレイ研究所の事件を生き延びた精鋭たち。その名前を、ここにいる者たちは普通の隊員とは違った意味で知っている。

 

 敵として対峙したことがある者もいる。

 

 そして、あの事件から生還した人間がどれほどの戦闘能力を持っているのかも、元U.S.S.の隊員なら知らないはずがなかった。

 

「……来てないらしいぞ」

 

 誰かが答えた。

 

「テラグリジアに?」

 

「ああ。どうも、まだ入ってきてないらしい」

 

「じゃあ、FBCと一緒にいるって話は?」

 

「違うんじゃないか?」

 

 隊員は腕を組み、記憶を辿るように少し考えた。

 

「BSAAの連中がFBCに邪険に扱われてるって話は聞いた」

 

「なるほどな」

 

 スティーブが腕を組む。

 

「実力があるからって、FBCが素直に頼るとは限らないってことか」

 

「むしろ、邪魔扱いされてるんじゃないか?」

 

 別の隊員が苦笑する。

 

「こんな状況なのにな」

 

 その言葉を最後に、周囲が少し静かになった。

 

 テラグリジアでは、今もウーズたちやB.O.W.が徘徊している。

 

 病院等には避難民が残され、道路にはまだ障害物が多い。人手はいくらあっても足りない。

 

 それでも、組織同士の思惑は別のところで動いているらしい。

 

 スティーブがボトルの水を飲み、ゆっくりと息を吐いた。

 

「まあ、俺たちが気にすることじゃないか」

 

「そうだな」

 

 隊員の一人が答える。

 

 ハンクはそこで初めて、手元の装備から顔を上げた。

 

 S.T.A.R.S.がこの街にいない。

 

 BSAAがFBCと協力できていない。

 

FBCとEUの部隊もそれほど連携しているわけではない。

 

 その事実を頭の隅に留めながら、ハンクは使い終えた布で銃身を拭った。

 

 だが、考えたところで今の任務が変わるわけではない。

 

 やがて休憩は終わる。

 

 また部隊は前線へ向かい、B.O.W.を排除しなければならない。

 

 ハンクは最後に銃の状態を確認すると、静かに立ち上がった。

 

「そろそろ準備しておけ」

 

 隊員たちが顔を上げる。

 

 短い休息は、もう終わりに近づいていた。

 

     ◆

 

 休憩を終えると、三つの部隊は再び第一病院を出た。それぞれが担当する道路へ分かれ、先ほどまで掃討を続けていた区域へ戻っていく。

 

 すでにかなりの数を排除したはずだった。

 

 だが、時間を置いたことで状況は変わっていた。建物の陰から姿を現し、路地の奥から這い出し、道路脇に残された車両の隙間からウーズが次々と現れていた。

 

「やはり、まだ出てくるか」

 

 ハンクが前方を見ながら呟いた。

 

 最初に進んだ時ほどの数ではない。それでも、完全に途切れる気配はなかった。

 

 隊員の一人が周囲を見回した。

 

「この辺り、まだ潜んでるみたいですね」

 

「建物の中まで全部確認する余裕はない」

 

 ハンクは歩みを止めずに答えた。

 

「道路を確保できる範囲で進め」

 

「了解」

 

 中央の道路では、再び銃声が響き始めた。

 

 一体のウーズが路地から飛び出してくる。隊員たちが散開し、進路を塞がれないよう距離を取る。数発の銃声が重なり、異形が路面へ倒れた。

 

 一方、別の道路でもレディハンクの部隊が交戦していた。

 

 さらにスティーブの部隊からも短い通信が入る。

 

『こちらスティーブ。前方のウーズを排除。道路の通行に問題なし』

 

「了解。無理に先へ出るな」

 

『分かってる』

 

 ハンクは無線を切った。

 

 三つの部隊は互いの位置を意識しながら進んでいる。

 

 少しずつ道路は開けてきた。

 

 だが、その分だけ時間も過ぎていた。

 

 空を見上げれば、光の加減が変わり始めている。今の速度でさらに進めば、戻る頃には周囲の確認が難しくなる。

 

 ハンクは時計を確認した。

 

「……ここまでだな」

 

 無線を取り出す。

 

「全員、ここまでだ」

 

 各部隊へ通信を送る。

 

「今日の掃討は切り上げる。第一病院へ戻るぞ」

 

『了解』

 

『了解です!』

 

『分かった』

 

 三方向から返事が返ってくる。

 

 ハンクは周囲を見渡した。

 

 今日、確保できたのは道路の一部だ。

 

 目標にはまだまだ遠い。

 

 それでも、無理に夜まで進み続ける理由はなかった。

 

「戻るぞ」

 

 隊員たちが頷く。

 

 三つの部隊はそれぞれ確保した範囲を維持しながら、来た道を引き返した。

 

     ◆

 

 第一病院へ戻ると、隊員たちは次々と装備を下ろした。

 

 長時間の緊張から解放され、椅子に腰を下ろす者もいれば、水を求めて補給所へ向かう者もいる。

 

 レディハンクもヘルメットを外し、乱れた髪を手で整えながら大きく息を吐いた。

 

「ふー……今日もいっぱい出てきたね」

 

「まだ減った感じがしませんでした」

 

 近くの隊員が苦笑する。

 

「でも、朝よりは進めたよ」

 

「そうですね」

 

 そのやり取りを聞きながら、ハンクは集まった隊員たちを見渡した。

 

「今日はここまでだ」

 

 疲れた顔が一斉にハンクへ向く。

 

「だが、この任務は終わりじゃない」

 

 視線を受け止めながら、ハンクは続けた。

 

「橋の避難路にフェンスを設置するまで、作戦は続く」

 

「今日は休め」

 

 ハンクは短く付け加えた。

 

「俺はEUの指揮官に報告してくる」

 

 そう言うと、必要な装備を整え、病院を出ていった。

 

 残されたレディハンクは、しばらくその背中を見送っていた。

 

 やがて、近くにいたシェリーを見つける。

 

「シェリー!」

 

「なに?」

 

「今日は一緒に寝よ!」

 

 突然の誘いに、シェリーが目を丸くする。

 

「一緒に?」

 

「うん! 久しぶりだし!」

 

 レディハンクは楽しそうに笑った。

 

 シェリーもつられるように表情を緩める。

 

「……いいけど」

 

 そこへ、近くで装備を片付けていたスティーブが口を挟んだ。

 

「お前ら、夜更かしするなよ」

 

「はーい!」

 

「分かってるよ!」

 

 二人の返事が重なる。

 

 スティーブは呆れたように首を振った。

 

「本当に分かってるのか……」

 

 それを聞いたシェリーとレディハンクが顔を見合わせる。

 

 そして、二人とも小さく笑った。

 

 戦闘と緊張の続いた一日だった。

 

 それでも、第一病院の一角には穏やかな空気が戻っていた。

 

     ◆

 

 消灯後。

 

 第一病院の病室は照明を落とされ、窓の外から漏れる街の明かりだけが、室内を淡く照らしていた。廊下から聞こえていた足音も少なくなり、昼間の慌ただしさが嘘のように遠のいている。

 

 レディハンクとシェリーは、一つの狭いベッドに並んで横になっていた。

 

 肩が触れそうな距離で身を寄せながら、二人は眠る気配もなく、小さな声で話を続けている。

 

「ねえ、シェリー」

 

「なに?」

 

「クレアとスティーブってさ……どこまで行ったと思う?」

 

 唐突な質問に、シェリーは天井を見上げた。

 

「うーん……たまにデートするくらいじゃない?」

 

「それ、出張でしょ」

 

「……あ」

 

 シェリーが小さく吹き出した。

 

「そうだった」

 

「だって二人でどこかへ行く時って、だいたい仕事絡みじゃん」

 

「確かに……」

 

 シェリーは少し考える。

 

「そういえば、この前イタリアに出張した時なんて、スティーブが現地の女の人をナンパしてたよ」

 

「えっ」

 

 レディハンクが声を上げかけ、慌てて口元を押さえる。

 

「静かに」

 

「ごめん、ごめん」

 

 それでも笑いは止まらない。

 

「クレア、呆れてた」

 

「ふーん……」

 

 レディハンクはしばらく天井を眺めた。

 

「じゃあ、スティーブが真面目にならないと無理かな?」

 

「何が?」

 

「クレアとスティーブ」

 

 シェリーは返事を考えるように少し黙った。

 

「でも、真面目なスティーブって……」

 

 そこまで言って、ふっと笑う。

 

「そんなのスティーブじゃなくない?」

 

「……あはは!」

 

 レディハンクが堪えきれず、布団へ顔を伏せて笑った。

 

 シェリーもつられて肩を震わせる。

 

「しーっ!」

 

「分かってるって」

 

 二人は慌てて声を抑えた。

 

 しばらくして、ようやく笑いが落ち着く。

 

「でもさ」

 

 レディハンクが、今度は少し真面目な声で言った。

 

「スティーブって、クレアのこと結構大事にしてるよね」

 

「……うん」

 

 シェリーも否定しなかった。

 

「この前だって、テラグリジアに来てからずっとクレアのこと気にしてたし。今日だって、自分が疲れてるのにクレアへ休めって電話してたよ」

 

「じゃあ、やっぱり好きなんじゃない?」

 

「どうだろうね」

 

 シェリーは困ったように笑う。

 

「スティーブ、そういうところ分かりにくいから」

 

「クレアも?」

 

「クレアも」

 

 二人はまた顔を見合わせた。

 

 その時、病室の外を誰かが通り過ぎる気配がした。

 

 足音が止まる。

 

 二人は同時に口を閉じた。

 

 廊下から、低い声が聞こえてくる。

 

「……あいつら、まだ起きてるのか?」

 

 スティーブだった。

 

 シェリーとレディハンクは目を見合わせる。

 

 レディハンクが必死に笑いを堪える。

 

 シェリーが布団を引き上げ、二人そろって目を閉じた。

 

 しばらくして、扉の向こうから小さな溜め息が聞こえる。

 

「まあ、今日はいいか」

 

 足音が遠ざかっていった。

 

 数秒の沈黙。

 

「……聞いてたかな?」

 

 レディハンクが囁く。

 

「たぶん、気づいてたと思う」

 

「まずい?」

 

「どうかな」

 

 二人は再び笑いそうになる。

 

 その頃、廊下を歩いていたスティーブは、少しだけ困った顔で頭を掻いていた。

 

「……まったく」

 

 それでも、口元にはわずかな笑みが浮かんでいた。

 

 病院の中では、まだ多くの人間が眠っている。

 

 テラグリジアの状況が改善したわけではない。

 

 明日になれば、またB.O.W.との戦いが待っている。

 

 それでも今夜だけは、こうして誰かの無事を笑いながら話せる時間がある。

 

 スティーブは病室の前を通り過ぎると、自分の休憩場所へ向かった。

 

「……クレアにも、少しは休んでもらわないとな」

 

 誰に聞かせるでもなく呟く。

 

 その声には、普段の軽さとは少し違う、静かな気遣いが滲んでいた。

 

 

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