問1、人間は平等であるか。
日本のみならず世界中で人間は平等であると宣っている。肌の色、国籍、性別。挙げればキリがない程に人間は多様な生き物である。それをわかった上で『平等』などとほざいている。真に平等を謳うなら、生きている環境も育つ環境も食べるものも、思想も思考も学びも、人間を構成するありとあらゆる何もかも全てが『平等』で無くてはならないハズだ。そうでなければ決して『人間は平等』と言うことは出来ない。
問2、愛とは何か。
ならば全ての人間に唯一与えられた平等とは心である。形は無く、存在を証明出来ない、しかし確かに人間の中にある、人間を構成する最も重要な部品。誰かを、何かを愛おしく思う心が愛だ。しかし愛もまた、人によって在り方は異なる。家族に対する愛もあれば友人に対する愛もあり、恋人に対する愛もあれば世界さえ狂わせてしまう程の愛もある。人間の行動原理にさえなり得る愛とは素晴らしくもあり、しかし『諸刃の剣』と呼べてしまうほど危険な感情でもある。
「...」
「んふー♡」
乗客は運転手を除けば俺たち2人だけ。その運転手も後ろは向けないのをいい事に妹の愛衣(めい)は席に座ってからずっとスリスリ頬擦りをしてくる。
「いい加減飽きないか?」
「んー?ぜーんぜん?」
家を出る直前まで同じく頬擦りしていたのに人目が無いと知るやいなや家の中と同じように頬擦りをし始めたのだ。
「別にお兄ちゃんも嫌じゃないでしょ?」
「嫌だったら引き離してる」
「だよね、お兄ちゃんハッキリ言うタイプだもんね」
「ああ。...にしても、全寮制の学校か」
「3年間基本的に敷地から出られないってすごいよねー」
高度育成高校。俺たちが向かっている学校の名前だ。日本の未来を背負う優秀な若者を育成する政府お抱えの高等学校で、授業料や学生寮も税金から賄われる為、実質タダで通える何とも太っ腹な学校である。日本全国からの募集のために倍率はとんでもなく高く、俺たち兄妹が受かったのも奇跡みたいなものだろう。
「でもそのおかげで母さん達も二人きりの時間が3年は過ごせるんじゃないか」
「そうだねー、パパとお母さんには二人きりを満喫して貰わないとね」
実は俺たちの父母は訳ありで、二人きりで生活するのは今回が初めてになる。
「ありがとうございましたー」
俺たちを降ろしたバスは道路を突き進んでいく。降りた俺たちは校門の前に立っていた。
「ここを潜ったら卒業か退学するまで、こっち側に戻れない訳か」
「なんかワクワクするね!」
「そうだな。俺もちょっと興奮してるよ」
校門を潜り中を進んで行く。だだっ広い敷地を校舎方面に歩いていると看板を見つけた。どうやらクラス分けが載っているようだ。
「クラスは全部で4クラスで、1クラスに40人、新入生は160人か」
「じゃあ3学年で480人、教員や従業員を入れても1000人は届かないよね。やっぱ広すぎないここ?税金の無駄使いじゃない?」
「その税金でここに通うんだよ俺たちは、っとDクラスか」
「えっ嘘、私Aクラスなんだけど...」
「なんだよ、中学も小学校も殆どクラス別だったろ」
「うう...来年に期待...」
「なんか変なのー、天井に監視カメラがいっぱいある」
流石国が力を入れている国立の学校。普通じゃない、税金の使い方が。
「俺たち学生の何を見ようってんだか」
「普段の生活態度とか?」
「それを知ってどうするって話だな」
「さて、ここがDクラスか、んじゃ」
「えーまだ時間あるよ?」
「別に付いて行かなくてもいいだろ」
「1人はさーみーしーいーのー」
「すぐに誰か来るだろ」
「なら来るまで一緒にいよーよ」
「...はぁ」
ここで断れない当たり、甘やかしてるって自覚がある。でも断る理由もないし、我儘に付き合ってやろうか。
「3クラス向こうは遠いなー...」
「すぐ慣れるだろ」
「慣れるまでが大変だよ」
Aクラスに到着。こっちもまだ誰も来ていないようだ。
「ここが私の席だって」
「良かったな、廊下が近くて」
愛衣の席は廊下側の最後尾、出入りが楽な位置だ。
「じゃあ、はい」
「ん」
椅子を引くと、俺に座るよう促す。俺も抵抗せずにその椅子に腰を下ろす。そこから俺の腿の上に乗っかり、俺に身体を預ける。これは甘えたい時の体勢だ。
「まだ足りないか?」
「ん...春休み中は殆ど一緒にいたから」
「じゃあ充分だろ」
「むしろ逆だよ、ずっと一緒だったからもっとこうしてたいの」
「そーいうもんか」
「そーゆーもんだよ」
「...すぅ...すぅ...」
「...」
『...』
いつの間にか眠ってしまった愛衣を乗せたまま時間が過ぎていった。Aクラスの教室にはちらほら学生が入ってきており、その多くがこっちを見ている。めっちゃ居心地が悪い...。
「大丈夫か?」
「ん?」
こんな空気の中で声をかけて来た勇者がい...た...。こいつも新入生か?頭ハゲてますよ!?
「ああ、これのこと?ほっといてもそのうち起きるよ」
「だがそろそろホームルームが始まるハズだ。起こした方が...」
「無理に起こすと面倒なんだ。ギリギリまでこうしてるよ」
「そうか。すまない、俺は葛城康平という」
「俺は火神黎(かがみれい)だ。こっちは妹の愛衣。よろしく」
「双子か?しかし似ていないな...」
「再婚した親の連れ子同士なんだ。似てなくて当たり前さ」
「そうなのか...なんというか、すまない」
「どうして謝る?こっちが勝手に喋ったことだ。気にしなくていい」
「新入生諸君、揃っているな」
教壇の方に恐らく教師である男性が入ってきた。
「ん?お前は確かDクラス配属だったはずだが?」
「ちょっと待ってください...ほら愛衣、時間だ起きろ」
「んー...?んぅー...」
「ホームルームだ起きろ」
「んん...チュー...」
「はいはい、チューね」
「はっ?」
チュッ
「いい加減起きろ」
「もっとぉ...」
「時間無いんだよ、我慢しろ」
「うー、はぁーい」
やっと覚醒したのか、俺の上から降りる。ようやく俺も立ち上がれるようになった。
「すいません、お待たせしました」
「あ、ああ。早く自分の教室に行きなさい」
「はい、失礼しました」
俺が去った後もしばらくAクラスは静かだった。
兄妹の秘密1
誕生日が一緒で、黎の方が先に生まれた為、兄となる。