ようこそ双子のいる教室へ   作:シュンちゃん

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兄と妹と学校の真実

始業を告げるチャイムと共に茶柱先生が教室に入ってくる。何やら丸めたポスターのような物を持っている。そしてその表情は、4月中に見たことの無い程険しいものだった。

 

 

「佐枝ちゃんセンセー!生理でも止まったんですか?」

 

ここが法治国家で良かったよ。でなければ池寛治という男は既に骨となっていただろう。冗談でも許されないレベルのセクハラ発言だ。

 

「これより朝のSHRを始める。が、その前に何か聞きたいことがあるはずだ。始める前に受け付けよう。質問がある生徒は挙手しろ」

 

池のセクハラ発言を無視して話し始める。まるで質問や疑問がある事を知っているような口ぶりだ。

 

「あの、今朝確認したらポイントが振り込まれてなかったんですけど。毎月1日に支給されるんじゃないんですか? ジュースが買えなくて焦りましたよ」

 

「ほう、ポイントが振り込まれていなかったのか。それは大問題だ。本堂以外に振り込まれていない生徒はどれだけ居る?挙手してみろ」

 

茶柱先生に促されてクラスの殆どが手を挙げる。手を挙げ無かったのは俺と高円寺の2人だけだ。

 

「そうか、これだけの生徒がポイントを支給されていないのか。だが安心しろ、入学式の日に説明した通りポイントは毎月1日に振り込まれている。学校側も毎回確認しているが、問題なく振り込まれている。こちらの不備は一切ない。本堂、席に座れ」

「えっ? で、でも振り込まれてないし...」

 

命令を無視して立ったまま近くの席の山内と顔を見合わせている。ただその2人だけでは無い。殆どの生徒が近くの友人と首を傾げていた。

 

 

 

「お前らは本当に愚かだな」

 

不意を突くように茶柱先生は教師失格になり得ない罵声をオレたちに浴びせた。けれど誰もそれを指摘しない。

 

「座れ本堂。仏の顔は三度までだが、私の顔は二度までだ」

 

「さ、佐枝ちゃん先生...?」

 

聞いたことがない厳しい口調に呑み込まれた本堂はしばらく呆然としていたが、数秒後には腰を降ろした。

 

「もう一度だけ言おう。ポイントは確実に振り込まれた。それは間違いない。このクラスだけ忘れられた、などという幻想や可能性も皆無だ。分かったか?」

「わ、分かったかって言われましても...。な、なぁ?」

 

本堂は不満げな様子を見せ、クラスメイトに同意を求める。そのクラスメイト達も現状に困惑しているのが見て取れる。まさか0ポイント支給された、なんて夢にも思っていないのだろう。

 

「ハッハッハ、なるほどねティーチャー。私は理解出来たよ、この謎解きがね」

 

高円寺が声高に笑う。彼は授業は静かに受けている印象があったのだが...今は授業中ではないと認識しているようで、入学初日のように両足を机の上に乗せている。そして親切心なのか、本堂を指さして言った。

 

「簡単なことだよボーイ」

「はあ? っていうか、その『ボーイ』はやめろよ」

 

本堂の訴えなど『自由人』には意味を成さない。無視して続けた。

 

「つまりだ、私たちDクラスには0ポイント支給されたという事だ」

「おいおい、それはないだろ。だって毎月1日に1万ポイント振り込まれるって...」

「そんな言葉を私は一度も耳にしたことは無いがね。そうだろう?」

「態度に問題大ありだが...高円寺の言う通りだ。まったく、これだけヒントを与えたうえで更に他者に教えられてようやく気付くとは、嘆かわしいものだ。私の見立てでは、自分で気付いたのは...ほんの数名か」

 

あれだけ分かりやすく、しかもそこら中にヒントは存在していた。施設だけじゃない。上級生でさえもヒントの一部だったのに、何故気づけなかったのか。

「...先生、質問良いでしょうか? 腑に落ちないことがあります」

 

「平田か。自分のポイントを守るため...そういうわけではなさそうだな。あくまでもクラスメイトのため...か。良いだろう、質問を許可する」

 

「ありがとうございます。何故ポイントが振り込まれなかったんでしょうか? その情報が開示されなければ、僕たちは誰一人として納得できません」

 

「平田。賢いお前ならある程度は予想がついているはずだ。違うか?」

 

 

「...良いから教えてください。先生、これは僕たち生徒の権利ではないでしょうか」

 

平田が熱くなっている。生徒の問い詰めに嫌な顔せず、寧ろ唇を三日月型に歪ませる。そして「ククッ」と一度嗤ってから。

 

「権利か。確かにお前の言う通りだな、それでは答えよう。...98回。そして、391回。この回数がお前たちに分かるか?」

 

何の回数だ?しかも2つもある。というか391ってなんだよ。何したんだよ。そんなにやらかす事があったのかよ。

 

「ふむ、まあ流石に分からないか。なにせ、本人たちに自覚が無いのだから当たり前と言われればそれまでだが。...遅刻欠席、98回。私語や携帯を触った回数391回。ひと月。たったひと月だぞ? 随分とまあ好き勝手にやらかしたもんだな。この学校では、クラスの成績がそのままポイントに反映される。それだけのことだ。入学式の日、私はお前たちに言ったはずだぞ、この学校は実力で生徒を測るとな。そしてお前たちは先月、評価ゼロという評価を受けた」

 

つまり、つまりだ。俺達はこの1ヶ月、好き放題に過ごして、今月入るハズだったポイントを全て吐き出したという事だ。10万ポイントという大金を、全て。仮にこのポイントを増やそうと思ってもどうすれば増えるのかが分からない。学生として当たり前の事をしてもポイントは増えない。出来て当たり前なのだから。ここでHRの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

 

「どうやら、少し無駄話をしすぎたようだ。本題に移るぞ」

 

持っていた紙を広げ黒板に貼り付ける。紙にはA~Dクラスと、横にはそれぞれ数字が描かれていた。

 

Aクラス 920

Bクラス 680

Cクラス 490

Dクラス 0

 

愛衣が貰ったのは92000ポイント、つまりこの数字の100倍が個人に支払われるポイントとなるのだろう。

 

「この学校では、優秀な生徒たちとそうでない生徒たちのクラスを順に分けて編成することになっている。より優秀な人間はAに、ダメな人間はDに、とな。つまりお前らはこの学校では最下位。しかし私は逆に感心しているんだ。歴代Dクラスでも、1ヶ月で全てのポイントを吐き出したのはお前たちが初めてだ。これがどういうことか分かるか?お前たちは『歴代最低の不良品』という事だ」

 

教室中から悲鳴や怒号や、まさに絶望と言うべき空気が生まれる。天国から地獄に叩き落とされたのだから仕方ない。...いや、自分から堕ちて行ったのだ。今までの全てが自己責任となるこの学校で、何も疑問に思わず、ただ無為に時間とポイントを浪費した。この評価はその罰とも言えるだろう。

 

そして更に話は続く。このポイント、クラスポイントというが、他クラスより多く保有していれば、クラスが入れ替わる。Dなら490以上でCに、Bなら920以上でAに、と言った具合でクラスポイントがそのままランクのようなものになるらしい。そして、卒業時にAクラスにいた者のみが、進学、就職を学校が保証するという。それ以外が知ったことでは無いと。この話を聞かされた瞬間がまさに阿鼻叫喚と言える有様だった。

 

そして最後、テストについてだった。なんと赤点を取った時点で即退学となる。茶柱先生が持っていた紙には以前受けた小テストの点数が載せられていたが、60~70程度に集中していた。最低は14点という脅威の点数。赤点ラインを下回る7人が早くも退学の危機となってしまった。因みに最高点は90点。俺は87点だった。

 

「浮かれた気分は払拭されたようだな。中間テストまで残り3週間。精々頑張って退学を回避してくれ。私はお前たち全員が赤点を回避して、退学を免れる方法があると確信している。それまでじっくり考えて、出来ることなら、実力者にふさわしい振る舞いを持って挑むことを期待している」

とりあえず今分かっているのは、学力だけでクラス分けされた訳ではないという事くらいだ。

 

昼休み、今日も愛衣と合流して情報を擦り合わせる。それぞれの担任が話した内容はほぼ一緒で、違うところは精々優秀か愚かかくらいだ。

 

「つまりクラス間で優劣を決めるって事だよね」

「3年も使ってな...」

 

これから俺たちはAクラスを目指す、もしくは守る敵同士となるだろう。誰かと競い合う、なんていかにも青春らしいイベントだが...まさか将来をかけて争うとは思わなかった。この学校に来た大半の生徒は高い就職進学率を見てきたハズ。実力を示す為に、苛烈な争いになるだろう。

 

「まあ今はまだこれといった勝負とか無いし、しばらくは今のままでいいよね」

「じゃあとりあえず、中間に向けてテスト勉強だな。見るか?」

「おねがーい」

 

別に愛衣は勉強が出来ない訳じゃない。ただ1人だと集中力が続かないらしいので、普段から一緒に勉強している。俺も分からないとこは愛衣に聞いたりするのでなんだかんだウィンウィンの関係だったりする。

 

「じゃあ今日の放課後から早速始めるか」

「その前にご飯の買い出しね」

 

環境が変わっても、俺たちは変わらない。これからも仲良し兄妹のままだ。




火神兄妹の秘密6

予習復習はしっかりするタイプなので成績はどちらもいい方。ノートの取り方は黎の方が見やすいと、同級生たちから評判が良かった。愛衣のノートも見やすいが、黎の取り方を参考にしている。
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