翌日の放課後、早速ケヤキモールに出向く事となった。佐倉には一旦部屋に戻って手紙()があるか確認して貰ったが、相変わらず似た文言の手紙があったので、こちらで預かることにした。こんなキモイ手紙、無い方が落ち着くはずだ。処分しないのはストーカーの証拠にするため。これ以前に来た手紙も回収した。
「さて今日の目的は、ストーカーに『佐倉には俺という男がいる』と思わせることとソイツが何処にいるかを探すこと。多分家電屋にいるんだろうけど」
「その為に行く場所ごとにアクションを変えると。手を繋いだり頭撫でたり、腕組んだり胸揉んだり」
「揉むか。そのいずれかに関する記述をされればストーカーが何処にいるかわかるわけだが...」
「昨日愛衣さんにされたことを思えば...大丈夫、だと思う」
俺の居ない間に一体ナニしたんだこいつ。揉んだだけじゃ飽き足らずそれ以上のことをしたのか。
「大丈夫宣言が出たので頑張ってもらおうか。んじゃまずは...」
1ヶ所目、本屋。手を繋ぐ。そういえば愛衣以外と手を繋ぐなんていつ以来だろうか?ちょっと不思議な感覚だ。
2ヶ所目、フードコート。腕を組む。胸の大きい女性は腕を組むと相手に胸が当たるわけだが、気にならないんだろうか?愛衣?あいつは気にするようなタイプじゃない。
3ヶ所目、眼鏡屋。頭を撫でる。愛衣以外だと近所の子供が転んだ時に慰めるために撫でた事はあるが、同級生とかは流石にない。だからめっちゃ緊張する。しかしストーカーが見ているかもしれないので、不自然に見えないようにしなければ。
4ヶ所目、本命の家電屋。腕組みに恋人繋ぎ。ここが今回の本命なので分かりやすく見えやすいように長めに居座る。店内を満遍なく周り印象に残りやすくした。
俺達が恋人ごっこをしている間、愛衣には俺達を見ている変なやつがいないか見て貰っていた。
「やっぱ家電屋かなー。2人の事ずっと見てる人がいたよ」
「どこであろうと答えは明日の放課後にわかる。佐倉もお疲れさん」
「はい、お疲れ様です」
翌日の放課後も佐倉の部屋に手紙が来ていた。
「これ、もう読んだ?」
「いえ、なんか怖くて...」
「じゃあ今読むか...開封っと」
数分後...
「あれだな。読まない方がいいな、これ」
「そんなにヤバいの?」
「ああ、なんというか...こう...なんだ...やっぱり男の嫉妬って醜いなって」
「ああ...そういう」
「なんて書いてあったんですか?」
「佐倉は知らない方がいい。その方が幸せだ」
佐倉に送られてくる手紙は毎回1人よがりの妄想を列挙しているだけだが、今回に限り、嫉妬や恨みつらみと暴言だけが並んでる。やれ股の緩い女だの、裏切り者だの、売春婦だの書きたい放題だ。証拠のひとつも無い妄想に囚われた哀れな人間の最早文章としてすら成り立っていない単語の羅列。だがここまで書くくらいならストーカーも辞めるのでは?とも思う。まあ誹謗中傷で訴えさせるから逃がさないけど。
「この手紙は預かっとくよ。あと佐倉はしばらく家電屋に近づかないように。わざわざ自分から危険に突っ込む意味はないし、絶対危険だ」
「そもそもポイントが無いので」
「それはそうだけど、もうすぐ支給日だし、増えるかもしれないし」
「増えると...いいんだけどな...」
「...ですね」
普通の高校生としての生活が出来てクラスポイントは減らないって認識だから増えるとは思えない。中間テストでも赤点を取った奴もいるし望み薄だ。プライベートポイントならいくらでも方法はありそうなんだけど。
月が明けて6月。
「今日はお前達に報告がある。先日学校でちょっとしたトラブルが起きた。そこに座っている須藤とCクラスの生徒との間でトラブルがあったようだ。端的に言えば喧嘩だな」
面倒事は次から次にやってくる。