佐倉のカメラ修理に行くだけで5人という大所帯になってしまった。所有者の佐倉、ぶつかった櫛田、事情を知ってる俺と愛衣、巻き添えに綾小路の5人。ただ修理に出しに行くだけで普通こんなにいらない。まあ普通じゃない状況だから多い訳だけど。
「全員集まったし、行くか」
「はーい」
「そういえば私、火神君達と出かけるの初めてかも」
「基本俺達は誰かと出掛けないからな。買い物だって日用品ばっかだし」
「じゃあ私たちが2人の初めてって事だね」
櫛田は何故かずっと俺にだけ話しかけている。まさか俺に気がある?なわけないか...殆ど喋ったことないし。
ギュッ
愛衣は愛衣で櫛田が気に入らないのか手を強く握ってくる。言葉や表情にしなくてもわかる。だいぶ機嫌が悪いようだ。
家電屋に着いてカウンターを覗く。どうやら店員は1人のようで、だいぶ暇しているようだった。休日なのにガラガラなのは悲しいものだ。これが外の量販店ならもっと多く客がいただろうに、この敷地内には1000人以下しか存在しない。家電だってしょっちゅう買い換えたりもしない訳だし、こうなるのは仕方ないだろう。店員に声をかけて修理を依頼する。...のだが。
店員の見立てでは2週間程で修理できるとの事。保証書もあるので無料で修理できると言う。でもこの店員、なんかキモいな...女子3人しか見てない気がする。愛衣、左手が痛いよ。
受付用紙をもらって名前や部屋番号を記入しようとして佐倉の手が止まる。よく考えたらここの店員の誰かがストーカーな訳だし、安易に個人情報を渡すのは危険だ。だから佐倉も手を止めたのだ。
「お客様、どうされました?」
「えっ、あ...」
「貸して」
佐倉からペンをひったくり、代わりに書く。
「あっ、ちょ?」
「綾小路、部屋何番?」
「なんで俺のを書こうとしてる?」
「いいじゃん。ほら番号」
「いいわけないでしょう!?カメラは彼女のなんでしょう!?」
「そうだけど、別に他の人の部屋でもいいですよね?持ち主のを書けなんてどこにも書いてないし。それとも、本人じゃなきゃいけない理由、他にあるんですか?」
用紙のどこを読んでも、『持ち主の』氏名と部屋番を書けとは書かれていない。このまま佐倉の情報を渡すと後でロクな事にならないと思ったから綾小路の部屋番を記入しようとした。櫛田も女子だし、俺の部屋は愛衣と相部屋だし、1番安全そうなのは綾小路しかいない。
「だったら自分で書く」
ペンを綾小路に渡し記入してもらい、店員に確認してもらう。
「...では修理が終わりましたら、こちらの部屋に輸送します」
明らかにテンションが下がってる、わかりやすい。
今日はもうケヤキモールに用はないので外に出る。櫛田はこの後も用事があるようで、特段用事があるわけでもないので俺達もモールの出入口付近で解散となった。
火曜日、ついに審議当日を迎えた。審議には弁護人として2人まで出てきていいらしく、頭の回る堀北と、何故か綾小路が出る事になった。あと結局佐倉も証人として出る事になった。結果がどうあろうと、さっさと終わらせてほしい。収入が無いからポイントは減る一方なんだ。
水曜日、審議の結果は、なんと再審議になった。よく分からないが泥沼化して収拾がつかなくなってしまい、同席していた生徒会長が翌日、つまり今日に持ち越す事になったそうだ。...どうやったらそうなる?それと生徒会長も堀北というので、もしかするとここの堀北の兄なのだろうか。それより再審議には同じ人間しか出れないが、証人となった佐倉にはその義務はなく、彼女だけはフリーとなった。
「審議、どうなるかな」
「革命か取り下げでもない限り須藤が停学は堅い」
先に手を出したのが須藤であれCクラスであれ、怪我をさせた以上、それが問題となり劣勢になる。Cクラスが仕掛けたって決定的な証拠でもあれば話は変わるだろうけど。
「なあお二人さん、なんでここで駄弁ってんだ?」
「審議の結末が知りたいから、まだ帰る訳にはいかないだろ」
「だったらすぐ聞けるよう、自分のクラスにいればいいだろ」
そう、声の主、橋本の言う通りここはAクラスの教室。わざわざこっちで待っているのにはちゃんと理由がある。
「以前、Dクラスの方に愛衣を呼んで勉強会したんだが」
「ああ、中間の時やってたな」
「そしたらDクラスのクソ女共が好き放題言いやがってな。それ以来愛衣はDクラスに来ていない。今だってそのクソ女共がいるからこっちに来てる」
当の本人達はとっくに忘れているだろう。Dクラスにいるような奴らだし。
「苦労してるんだな」
「そうでもない。妹を守るのが兄貴の役目だ」
「守られるのが妹の役目なんだよっ」
審議の結果は早く出た。何が起こったのか分からないが、Cクラスは訴えを取り下げる事を選んだ。ただそれだけ聞かされた。いやホントに何があった?
結果を教えてくれたのは綾小路で、それだけ話して佐倉を探しに行った。彼女は教室におらず、連絡も着かないという。
「綾小路、スマホのGPSで居場所がわかる。探してみたら?」
「そうなのか。...ケヤキモールの、どこだこれ」
「外っぽいな...1人で行くなと言ったんだけど。ストーカーの件がある、し...まさか」
「とりあえず探しに行こう」
すっごい嫌な予感がする。ストーカーの所に行ってくれるなよ...!