私は今、病院の待合室にいる。外の病院とは違ってだいぶ狭い作りになっているのは1度の多く来ないからコストカットしたためだろう。連れてきたお兄ちゃんは今治療を受けている。と言っても手の怪我を診てもらってるだけだからすぐ戻って来ると思う。多分包帯を巻いてね。
「ありがとうございました」
なんて思ってると診察室からお兄ちゃんが出てくる。残念ながらそれぞれの指に絆創膏が巻かれているだけでぐるぐる巻きじゃなかった。そんなに軽い怪我なんだ。
「骨に異常なし、ただの擦り傷程度だと」
「そっか、じゃあすぐ治るね」
「晩飯、どうするか。今から作ったらだいぶ遅くなるけど」
「じゃファミレス行こ、お腹空いたし」
病院からファミレスへ向かう。普段は自炊で節約してるから外で食べるのは久しぶりだったりする。
部屋に戻ってお風呂を沸かす。その間に明日のお弁当のおかずだったりご飯だったりの準備も進める。準備が終わった頃にお風呂も沸く。
「お風呂沸いたし、先入っちゃいなよ」
「そうか?じゃあ遠慮なく」
お兄ちゃんは風呂場に消えていく。
あの一件の後からお兄ちゃんの様子がおかしい。受け答えはするし、普通に会話も出来る。体調が悪い訳でも無さそうだし、病院で何か言われた訳でも無さそうだし。...あるとすれば、あのキモいストーカーかな?変な事言われて気にしてる?私が1人で悩んでも答えなんて出ないし、お兄ちゃんに直接聞いてみよう!
「お兄ちゃん?入るよー」
「ん、ああ」
「おっ邪魔しまーす」
制服と下着を脱いで髪を纏めてお風呂場に入り、そのまま湯船に入ってお兄ちゃんの胸に背中を預ける。この部屋の湯船は二人で入れるくらいの大きさでよかった。
ふひぃ〜今日の疲れが溶けだしていくぅ〜。
「ねぇお兄ちゃん。今日様子変だよ?あのストーカーになんか言われたの?」
「いや、そういう訳じゃないが...というかよく気がついたな」
「伊達に10年妹やってないのよ。で何言われたの?」
「俺に直接なにか言った訳じゃないけど...あいつ、佐倉に向かって『愛してる』とかほざいたんだ」
『愛してる』ねぇ、愛って一方通行じゃ成り立たないと思う。自分がいて、相手がいて、お互いが想いあって『愛』になるんだと思う。独りよがりの愛なんて相手からすればただただ気持ち悪い妄言でしかない。
「それを聞いて頭が真っ白になったんだ。こんな気持ち悪い感情が愛であるはずが無いって。そこから愛衣に止められるまで、あいつを殴り続けてた」
「きっとお兄ちゃん許せなかったんだよ。その気持ち悪い感情を『愛』って表現したあのストーカーが。愛ってもっと素敵な感情のはずだもんね」
「...どうだろうな。もしかしたら『愛』ってのはあのストーカーみたいに醜く気持ち悪いものなのかもな...」
「そんなことない」
「愛衣?」
「愛が醜く気持ち悪いものだとしたらパパやお母さんからの愛も気持ち悪いものって事になっちゃうよ?お兄ちゃんは1回でもそう思ったことあるの?」
「そんなわけないだろ。心から愛されてるって思ったさ」
「そうでしょ?...今のお兄ちゃんはきっとあのストーカーの気持ち悪い感情に引っ張られてるだけ。落ち着いて思い直せば大丈夫だよ」
「そうだな...ありがとう愛衣。どうかしてた」
ギュッと強く抱き締められる。
「いいんだよ。支え合ってこその私たちなんだから」
お風呂から上がり髪を乾かしてたらいい時間になったのでベッドに入る。いつものようにお兄ちゃんに抱き締められる。ん〜あったかいなぁ〜。
「明日学校に行ったら先生からなにか聞かされるだろうね」
「そりゃ敷地内の従業員の不祥事だし。口止めでもされるんじゃないか?」
「じゃあ口止め料ってことでポイントをふんだくろう」
「くれるといいけどな...ふぁあ」
「そろそろ寝よっか...おやすみなさい、お兄ちゃん」
「ああ...おやすみ、愛衣」
翌日、朝のHR後に先生に呼び出された。
「火神、このHRの後に話がある。ついてこい」
「はい、わかりました」
HRが終わって真嶋先生に着いて行くと、生徒指導室にて、Dクラス担任の茶柱先生、佐倉さん、綾小路君、それとお兄ちゃんが揃っていた。昨日の事についてだろうとすぐにわかった。話の内容はやっぱり昨日のストーカーの件だった。男はあのまま逮捕になり、高育の敷地から追放された。そして被害者になった佐倉さんには50万ポイント、私たち3人にはそれぞれ20万ポイントが支給された。対応出来なかった学校側からの謝罪と、事を広げないように口止め料代わりらしい。私殆どなんもしてないんだけど、まあいいや。これでストーカー事件は一件落着って事で。後でお兄ちゃんにポイント送っとこ。
次回から無人島試験、船上試験です