お兄ちゃんがDクラスに向かって行き、何故か静かになった教室で男性教師が話し始める。
「...おはよう。今日からこのクラスの担任を務める、真嶋智也だ。この学校では進級時にクラス替えはない為、3年間俺が君達の担任という事になる」
思考が止まる。えっ?なんて言った?クラス替えが無い?という事は私とお兄ちゃんは3年間同じクラスに慣れないって事!?
その後に敷地内のシステムや10万円分のポイントと学生証の支給、毎月のポイントの支給日等の説明を受けた。しかしそんな事はどうでもいい。どうにかお兄ちゃんと同じクラスになる方法は無いか。
「敷地内でポイントで買えないものは無い」
ん?『ポイントで買えないものは無い』?じゃあ所属するクラスを移動する『権利』とかも買えるって事?もしそうなら多分それがお兄ちゃんと同じクラスになる唯一の方法かもしれない。後で真嶋先生に聞いてみよう。もしかしたら、このポイントは現金以上に強力な武器になるかも。
...でも私、金使いが荒いからお兄ちゃんにお小遣い管理して貰ってるんだよね。とりあえず半分以上はお兄ちゃんに預けると思うし、要相談って感じかな。
「皆、聞いてほしい。俺は葛城康平という。皆との親睦を深めるため、今から簡単な自己紹介を行いたいと思うのだが、どうだろうか」
急に真嶋先生とは違う声が室内に広がる。
「そうですね。ここにいるのは共に生活する、いわば仲間のようなもの。まずは自己紹介を通して、皆さんの事を知りたいですね」
葛城君に便乗する形で、今度は可愛らしい女の子の声が聞こえる。えまって、めっちゃ可愛い!お人形さんみたい!とか思ってたら早速葛城君から自己紹介をする事になった。
「俺は葛城康平。中学時代では生徒会に所属していた。高校でも生徒会に所属するつもりでいる。よろしく頼む」
「私は坂柳有栖と申します。杖を持っているのは先天性疾患で足が不自由な為です。皆さんにはご迷惑をお掛けする事もあると思いますが、どうぞよろしくお願いします」
なんというか、皆模範的な自己紹介で個性的な自己紹介をする人はいなかった。言ってしまえば印象に残らない人の方が多い。さっきの可愛いお人形さんみたいな子は坂柳有栖ちゃんというみたい。ここの理事長も坂柳って名前だった気がする。親戚かな。
「どうかしましたか?次は貴方ですよ?」
いつの間にか私の番が回ってきていた。私も皆にならって模範的な自己紹介をしようかな。
「はじめまして、火神愛衣です。火の神と書いてかがみと読みます。好きな物はお兄ちゃんです。あと水が苦手で泳げません。どうぞよろしく」
「お兄さんというのは先程の男子でしょうか」
「うん、兄は火神黎っていいます。兄妹共々よろしくね」
「珍しい事もあるものだな。この学校は日本全国から生徒を募集している。にも関わらず兄妹で入学出来るとは、余程運が良いようだ」
運の良さも実力って事なのかな?『運も実力のうち』とは言うけど。
私の後にも自己紹介は続いて、滞りなく全員の自己紹介が終わった。今は近くの人同士で親交を深めて、いるんだけど...なんか、ハブられてない?私。ていうかこっち見てヒソヒソ話してるような?
「...」
「ヒソヒソ」
待った。ほんとにヒソヒソ言ってる人いない?
「ふふっ、入学して初めて教室に来て、最初に見るのが兄に抱きついて眠っているクラスメイトなのですから、こんな反応になると思いますよ」
「そんなに変かな?ただお兄ちゃんに抱きついて眠ってただけだよ?」
別にエッチな事をしてた訳じゃないのに、変なの。
「坂柳さん、そろそろ体育館に行こっか?杖付いてだと移動するのも大変そうだけど」
「お気遣いありがとうございます。では火神さんも一緒に行きませんか?移動中の話相手になって下さい」
「ん、いいよー」
という事で坂柳さんに合わせて、少し早めに体育館に向かう事になった。でもお兄ちゃんの事根掘り葉掘り聞くのは辞めて欲しいな。
火神愛衣の秘密
中学時代のある事件の被害者で、その時のトラウマでプールや海に入れなくなった。所謂水恐怖症。風呂や温水プール等冷たい水でなければ何とか入ることは出来る。幼少の頃(再婚前)から黎が好きだったが子供過ぎたためそれが好意と気付けず、本人は『兄として好き』という感情になっているが、知らない人間からすれば明らかに『恋人』のように見える。小、中学の同級生曰く、「あれは兄妹の距離感ではない」との事。