入学2日目。初めての授業は主に科目毎のガイダンスだった。それと放課後に部活説明会があるそうで、入部希望者は必ず行くようにと言われた。
「茶柱先生、相談があるんですけど」
「火神か、どうかしたか?」
「寮の部屋を引越したいんですけど」
「何だ?何処か不備でもあったか?」
「いえ、不備とかではなくて、2人で住むには少し狭く感じまして」
「...なんだと?」
「だからポイント使ってもう少し広い部屋に移れないかなーと、思った、んです...けど...?」
茶柱先生は急に頭を抱えて聞いてきた。
「...昨日は誰と部屋に居たんだ?だいたい予想は付くが」
「妹以外にいますか?まだ皆初対面ですよ」
初対面の人間と寝泊まりなんて避難所でもない限りなかなか難しいと思う。
「...寮の部屋自体はポイントを払えばもう少し大きい部屋に移る事は出来る。...が、まさか貴様、引っ越したい理由というのは...」
「1人ならあの広さで問題ないんですけどね、2人だと窮屈なんですよ」
「妹の許可はあるのか?」
「むしろ言い出したのは愛衣の方です」
「そうか...」
しばらく考えるような素振りを見せ、
「分かった、しかし部屋を引っ越す前にお前達2人と話がしたい。今日の放課後は部活説明会があるが、構わんか?」
「部活に入る予定は無いので大丈夫です」
「では妹の方にも伝えておけ」
ポイントを使えば引越しも出来る。この学校ではこのポイントは予想以上に使い勝手がいいのかもしれない。物品の購入ばかりに使いすぎないようにしよう。しかし、何故引越すのに話をする必要があるのだろうか?まあいいか、愛衣にも放課後残るよう言っておこう。...うえ、気持ち悪い...
授業のガイダンスは問題なく進められた。ただ昼休みに入った直後に大欠伸をする例の不良が目に入った。まさか朝からずっと居眠りしてた、訳じゃないよな?だとしたらバレた時点で先生に叩き起されるハズだ。きっと寝ていない。そう思うようにしよう。
Aクラスに寄り愛衣を拾った足でそのまま食堂に向かう。ここでの昼食はこの食堂か、コンビニか、はたまた弁当を作って来るかになる。節約なら弁当が1番だろう。
「お兄ちゃん、ここにもあったよ。無料の定食だって」
「山菜定食か。物足りないだろうな」
「味気ないだろうけど、2個頼めばいいんじゃない?」
「それはそれで変な目で見られそうだ」
結局俺はカレー、愛衣は唐揚げ定食を選んだ。券売機にスマホをあてて食券を購入する。それをお渡し口のおばあちゃんに渡し、カレーと唐揚げ定食を受け取る。ちょうど空いている2人席があったのでそこに座る。
「「いただきます」」
「んー、甘口?」
「辛いの苦手な人でもカレーは食べるでしょ」
「そりゃそうか...そうだ、放課後、うちの担任が俺たちと話がしたいって。教室に残っててくれ」
「...担任って女だよね?」
「...ああ」
「大丈夫だったの?」
きっと俺のトラウマを心配してくれているんだろう。話すくらいなら1人でも問題ないと思ったんだが、
「話したあとめっちゃ気持ち悪くなった」
「無理しないでね?それでなんの話?」
「さあ?引越しに関する事じゃないか?」
「まあいいや、終わったら私が迎えに行くよ」
教室で待ってろ、というのは簡単だが、迎えに来るのも愛衣なりに気を使っての事だろう。この気遣いを無下には出来ない。
「じゃあ、待ってるから」
「うん、待っててね」
食べ終わると、横に座れないって事で食堂から移動する。引越しが終わった後は2人でゆっくり出来る場所も探さないと。食堂や教室は騒がしすぎる。屋上とか図書室とかいいかもしれない。まだ時間はあるし、屋上に行ってみるか。
屋上に出ると人は居らず、日差しも心地いい。夏は暑くなりそうだが、今の時期には丁度いい暖かさだ。
「んー気持ちいー♪」
「日向ぼっこには丁度いいな」
ここでこうしていられるのも春と秋くらいだろうから、この暖かさをしっかり堪能して、リフレッシュしよう。
午後の授業もまだガイダンスが続く。ただ午前とは様子が変わり、クラスの多くが集中力を欠いてしまっている。俺の席からでも居眠りや隠れてスマホを弄っているのが分かる。バレても知らねぇぞ。
全てのガイダンスを終え、放課後を迎えた。昨日と変わらず何処で遊ぶか、買いに行くかなど呑気な話が聞こえてくる。部活説明会に行く者もいる為昨日よりは少ないが、日用品とかどうしているのだろうか?
「おにーちゃーん、来たよー」
「おー、じゃー行くか」
「あっ、あの...!」
愛衣が来た途端、教室に残っていた殆どが声の方を向く。可愛いだろう?俺の妹は。教室に入って来て俺の手を取りさっさと職員室に向かう。誰かが声を掛けようとしたが、止まることなく廊下に出る。
「無視していいのか?」
「私じゃないでしょ」
「いやどう見てもお前だよ」
「どうでもいいよ。こっちの方が大事なんだから」
もっと交友は広げてもいいと思うんだけどな...お兄ちゃんは心配だよ。
「茶柱先生いますか?」
職員室に着いて早速茶柱先生を呼ぶ。中にいた大人達がこちらを見るが、直ぐに自分の作業に戻った。
「サエちゃんに何かご用かしら?」
来たのはおよそ教師とは思えない程ふわふわした印象を受ける見知らぬ女教師だった。
「...っ、話がしたいって事で来たのですが。1-Dの火神黎です」
「はじめまして、1-Aの火神愛衣です」
「あ、噂の兄妹さんね!私は1年Bクラス担任の星之宮知恵って言うの。保険医で基本的に保健室に居るわ、宜しくね」
保険医、女、か...気持ち悪くなりそう...
「兄妹で一緒に入学出来たのは開校以来初めてのケースなの。直接会った事は無くても、既に教師陣ではちょっとした有名人なのよ、貴方たち」
「そうだったんですか。ところで、茶柱先生はどこに?」
「そろそろ戻ってくると思うけど...あっ来たみたい」
「星之宮先生、何をしている」
「何って、この子達の相手よ。今回の話ってこの子達の事でしょ?」
「そうだ。もう少し待て、真嶋先生も連れてくる」
...真嶋先生、確か1年Aクラスの担任だったハズ。
「真嶋先生もなの?」
「妹の方はAクラスだからな。関係無くはないだろ」
少しして茶柱先生と真嶋先生がが出てきた。
「待たせたな、では行くぞ」
なんでこんな大事みたいになってるの?生徒2人に先生が3人、何を話せと言うのか。着いたのは指導室とプレートが付いた一室。
「ここなら会話の内容が漏れることはない。安心していいぞ」
「聞かれて困る事は無いと思いますけど」
「まあそうかもしれんな」
「こんな部屋に連れてきて、何を話すんですか?」
「お前達についてと、寮の部屋の引越しについてだな。まあ座れ」
私たちについて。なにか変な事したかな?
兄妹の秘密2
2人は基本一緒に行動するので、年上の女と会話する時は大体愛衣が喋ってくれる。黎は年上の女と喋りすぎるか、意識がある時に体を触られるとトラウマがフラッシュバックする。服の上からでもアウト。少し喋っただけでも気持ち悪くなる。