魔法都市シャリーアに居を構える一人の魔術師。
魔導王ルーデウス・グレイラットには六人の子供達がいる。
その中に魔導王の再来とも呼ばれる神童がいるらしい。
──
僕の名はジークハルト・サラディン・グレイラット。
グレイラット家の次男だ。
僕には一つの秘密がある。
僕は無職転生原作既読民転生者だ。
原作キャラクター憑依転生者とも言う。
もう少し詳しく紹介しよう。
僕には令和の日本で生活していた記憶を持つ15歳の男の子だった。
漫画を読んだりアニメを観たりWEB小説を読んだりすることが趣味の普通の子だった。
皆んなと違うのは多臓器不全系の難病を患っていて、学校にも行けずベットが自分の生活圏だったこと。
ま、わかる通り、それが原因で死んでしまって、次に目覚めたら『無職転生』という創作の世界に入り込んだという訳さ。
無職転生 - 異世界行ったら本気だす -
それは2012年11月から『小説家になろう』サイトに投稿された異世界転生小説である。
34歳職歴無し住所不定無職童貞のニートが、トラックに轢かれて死んでしまい、気付けば異世界に赤ん坊として転生していたという謂わばなろう系と呼ばれる作品だ。
無職転生は投稿開始から一年も経たずに『小説家になろう』サイトに置いて累計一位を獲得した異世界転生のパイオニアとも呼ばれた大作だ。
僕はこの作品のことが大好きだった。
ルーデウス・グレイラットという人間に転生した34歳無職童貞の屑ニートが、環境を変えたことで前に進むことが出来る。
上手くいく事もあれば、上手くいかない事もある。いい事もあれば悪い事も起こる。
そうやって歪んでいた主人公が、少しづつ変わったり変わらなかったりしながら生きていくのだ。
僕は入院期間中合間があれば無職転生を読んでいた。
感情移入しながら読んでいたといってもいい。
主人公は生まれ変わる事で変わることができた。
僕も生まれ変わってやり直したい。そんな事も思ってたりもした。
でもまさか本当に生まれ変われるとは。変わった先が主人公の息子で原作キャラクターなのが複雑な気持ちなのだけど。
そういう悩みは実は吐き出してしまっている。
僕が、令和という時代の日本からやってきて、無職転生という物語を読んでいて、その物語の世界に入り込んでしまったという秘密は、既に主人公ルーデウス・グレイラットに教えてしまっているのだ。
六面世界の主人公と呼ぶべき龍神オルステッド、また異世界転移者ナナホシ・シズカの二人にはこの秘密を共有している。
覚えているだけの原作知識は既に提供した。
つまりこの世界は僕という歪みによって生まれたIFの世界だ。
僕はこの世界でどう生きるかはわからない。
無職転生の外伝作品の主人公、ジークハルト・サラディン・グレイラットのように友情に生きるか。
別の道を選ぶのか。まだ考える気にもなれない。
ただやりたいことは無限にある。
好きなキャラクターのザノバやクリフと交流を持ちたい。
リニアやプルセナは見た目がドタイプだから逆に近寄りがたい。
エリナリーゼやタルハンドとパウロの話に花咲かせたい。
可愛すぎる五人の兄妹達と早く仲良くなりたい。
ナナホシやペルギウスと一緒に美味しいものが食べたい。
アイシャやノルンと農作業や釣りもしてみたい。
ゼニスやリーリャと一緒にお茶したい。
ロキシーから魔術やこの世界のことを教わりたい。
シルフィから母親の愛情を受け取ってみたい。
エリスのように覚悟を持って誰かを守ってみたい。
オルステッドに信頼されてみたい。
ギースが観たように、世界中の絶景を観てまわりたい。
ルーデウスのように本気で生きてみたい。