女になんて、なりたくないっ!~魔女になんてなるものか~ 作:生活みだらし団子
「あぁー! どーして勝てねーんだよおぉ……」
「も、もう運がない、としか言いようがないような…」
「弱い。だから負ける。」
「もうあんた天に見放されてんだって。あきらめな?」
「おかしいだろ! カードゲームは確率と統計の先にある駆け引きを楽しむもんだろ!? なんで確率も統計も仕事しねーんだよぉぉ!」
あれから坂又先輩が毎日のように通い始めて、今日で四日になるだろうか。
あのあと次の日に普通に来た時点で驚いたけど、みんな喜んでたしいいかなー…って思ってたらこれですか。
というかいつの間にけーちゃんと仲良くなったんだろう? 来た日には口もきいてなかったのに今じゃ…
「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!!!」
「まぁ、お疲れ様。にーさん。」
にーさん呼びになってるんだけど!? 一体何があったのさ…聞いても教えてくれないし。
しくしく、お母さんは子離れが来てしまって寂しいのです。ぐすん。
とは言うものの、みんないつも放課後とか休日は暇にしているから遊んでくれるのは大変ありがたいんだけど…
「ま゛た゛負゛け゛た゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「乙。私の勝ち。」
その叫び癖だけはどうにかなんないかなぁ……と思う雨宮後輩です。
まぁ賑やかになるし面白いのは認めるんだけど、さ……流石に悪影響というか、みんなが真似し始めたら鼓膜が大変なことになっちゃう。
いやでも、みんなの声が大音量で聞ける生活……アリか?
「あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」
「ど、どんまい、です。」
いや、ナシだな。
大きくなって叫び始めたら流石に心配になっちゃうもん。
というわけで。
「はーい、ちゅーもーく! 今日は新しいボードゲームを用意しましたー!」
「なんだよ」「な、なんですか」「何。」「新しいボドゲだと?(急変)」
みんな、変わり身はやいなー…坂又先輩に至っては急変しすぎでしょ…。
「じゃじゃーん! その名も『人狼』です!」
「名前だけは知ってる。」
「は、はじめて、です……」
「知らない。」
「あぁ、共食いするやつな。」
「はい、勘違いしてる先輩もいるので説明しまーす! 村人陣営と人狼陣営に分かれて、話し合いで人狼を見つけ出すゲーム! 嘘をついてもいいけど、とっても難しいよ~!」
坂又先輩の顔がにやり、と不敵に笑った。
「……つまり、推理と心理戦ってことか。」
うわぁ…坂又先輩めっちゃいい顔してる…。
カードゲームで負け続けた執念みたいなものを感じるね。
この人、大人げなさすぎるでしょ。ほんとに17歳?
「先輩。顔、顔。笑いすぎてどこぞの戦闘狂みたいな顔になってます。」
「……そんな顔してたか。ま、ようやく確率と統計以外で戦える場が来たと思ってな。」
「ふん、口だけかよ。」
けーちゃんも煽るなぁ……二人ともここ四日間で距離感縮まりすぎ……。
「よし、じゃあ役職カード配るよ~。ゲームマスターは私がするから、みんな目をつぶっててね…」
「あの、私、げーむますたー、やってみたい。」
「あれ、もしかしてみーちゃんこっちの方が興味ある?」
かわいくうなずいたみーちゃんは、カードを配ってみたいようだ。
「じゃあ一回だけやってみて、それでもやりたくなったら変わろう? 一回くらいやってもいいんじゃない?」
「う、うん。わかった……!」
よぉし、みんな目つぶって……配役配って、と。
……あ、これ坂又先輩…。ちゃんとシャッフルしたんだけどな…まぁいっか。
「はい、みんな目を開けてくださーい! それでは、話し合いスタート!」
「……よし、まず結論から言おう。俺は占い師だ。」
いきなりそれ言いますか…?
「な、なんで急に自己申告なんですか……?」
「基本、こういうゲームは怪しまれた奴が損するもんだろ? だったら先手を打って印象操作するのが正攻法だ。」
言っちゃってるじゃん。
「嘘。」
「なんで嘘だって?」
「出てる。顔に。」
「まじかよ……人生で初めて顔に出るって言われたんだけど……」
いやいや、先輩めちゃくちゃわかりやすいですって。目が泳いでるもん。
坂又先輩こんなに嘘下手だったっけ?
「けーちゃん凄いね、一発で見抜くとは……」
「別に。ただ、嘘つく時、目が右上いく。癖。」
「……お前、俺の事いつからそんな観察してたの?」
「来た日から。」
「早ぇよ!?」
みーちゃんはおろおろしながら二人のやり取りを見てる。可愛い。私はこのまま見守りモードに入りますか。
「じゃ、じゃあ……私も、発言、していい、ですか……?」
「もちろん!」
「あ、あの……木崎、さんの、様子が、ちょっと、怪しい、気が……」
「……。」
けーちゃんがみーちゃんと一緒にすずちゃんを見た。あ、これは。
「みーちゃん、勇気ある。褒めてあげる。」
「あ、あわわ……い、いいんですか……?」
「うん。正解。私、人狼。」
「はやっ!? 自白早すぎるだろ!」
「めんどい。隠すの。」
「ゲームの根幹否定してる!?」
いいぞいいぞー、みんな賑やかで。これでこそ、うちの子たち(先輩除く)だよね。
「お兄さん、大丈夫、ですか……? 顔、真っ赤、です……」
「悔しいのと楽しいのが同時に来て顔面が処理落ちしてんだよ!」
「あはは! じゃあ次のゲームいってみよっか!」
「まだやんの!?」
「まだやるぞ! 夜まで付き合ってもうからな、にーさん!」
「にーさん呼びやめろって言ったろ……?」
「「にーさん。」」
みーちゃんとすずちゃんまでハモった!? あ、坂又先輩崩れ落ちた。
……うん、今日もいい日だ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「……で、どこまで本気だったんですか?」
「ん? どこまでって?」
坂又先輩が帰る時間になり、一人で外まで見送りに来ていた。
「ゲームですよ。ここ最近いっつもしてるでしょ?」
「あぁ、いつも本気だよ。俺に運がないのはわかってたからな。」
「の割にはずいぶん余裕ですね?」
「……もしかしてばれてたか?」
「先輩、もしかして私が魔女だって忘れたんですか?」
まぁ、確信したのは人狼の時だけど。
「あー…悪かった。でも、あれが一番楽しそうにしてたし、いいコミュニケーションになると思ったんだよ。」
「はー…私にため息つかせるなんて、そーとーですからね? 坂又先輩。
「まぁ叫び声に関しては最近思いっきりあげられる事件があってな。そのおかげだ。」
本っ当にこの先輩は……
「というか、先輩人狼のときちょっと演技があからさますぎましたよ? おもしろくはありましたけど…」
「え、そうか…結構自信あったんだがなぁ…俺もまだまだだな。」
「ま、先輩もその芸が飽きられる前に別の芸でも仕込んでくださいよ。助かってるのは事実ですから。」
「そうするよ。俺もまだまだ魔女関連についても勉強中だからな、息抜きに寄らせてもらうよ。」
「はいはい……あ、次来た時にはどうやって仲良くなったのか聞きますからねー!」
「わかったわかった。またな、雨宮後輩。」
「えぇ、また。」
息抜きって楽しい。