女になんて、なりたくないっ!~魔女になんてなるものか~ 作:生活みだらし団子
「…それで、私を件の魔女と勘違いしたと?」
「……すまん。」
「すみません…」
「いや、確かに紛らわしいタイミングで来ちゃったなーっとは思ってましたし、私自身気配がないので誤解するのもわかりますけどねー…」
先ほどまで言い合っていた東雲さんも俺と一緒に座らされて軽く説教されていた。
……雨宮を襲撃者だと誤解してしまったことに、俺含め二人とも罪悪感はある。
「それで? ホワイトボードを見る感じ、勉強してる途中で事件の連絡が来たって感じです?」
「!…雨宮さんもご存じでしたか。」
「まぁね~。でも本題はそっちじゃないんだよねー。どっちかと言うとこっちの方が重大かも。」
「……CAPsの建物がいくつか壊されたって聞いたぞ。構成員こそ年中足りてないけど、影響力だけは折り紙付きの組織の建物を何個も壊してる奴より重要な問題ってなんだ?」
「んー、でもその前に問題を出そうかな! 坂又先輩は異界化について聞いた?」
「あー、知ってるぞ。魔女化した際に一部の魔女が暴走したまま一定範囲内の空間を固有魔法で攻撃し続ける…だったか。」
「正解! じゃあ、異界化させた魔女で一番被害を出したのはだれか知ってる?」
「えーと、確かー…さっき聞いたような…」
「……リリス・ウィード。魔力こそ大きく劣るものの幹部に匹敵するほどの固有魔法を保持し、相当数の被害をだした魔女です。」
「うん! 東雲先輩はやっぱり、知ってるよねー。」
「で、それがどうしたんだ? そいつはもう捕まってCAPsの施設で昏倒と記憶消去を引き起こす固有魔法を持った少人数で管理してるって話だった気がするんだけど。」
「それが、どーやら脱走したっぽいんだよねー……」
雨宮は肩をすくめて言っているが、もしかししなくても大問題では?
「いや、しかし…北米支部から脱走の様な報告は来ていないと思います。もし本当に脱走しているならすぐに通知がくると思うのですが……」
「じゃあ、郡上の目的が他支部との連絡途絶が目的だとしたら…どう?」
「……なるほど。つまり北米支部で脱走させたのも日本で暴れたのも郡上の集団の仕業ってわけだ。」
しかし雨宮後輩はわざとらしい仕草でちっちっちっ、と指を振る……なんでどや顔?
「違うんだなー、これが。北米に郡上の味方はいるけど、そいつらじゃなくて……CAPsの構成員、その『優位派』が逃がしたみたい。」
「なっ!? …まさか、そんな…『優位派』とて彼女が出した被害をわきまえていないわけじゃないでしょう!? ……愚かすぎるっ!」
「……実際、どれくらいの被害が出たんですか? 相当数とは言いますけど…」
東雲さんは顔を少し伏せながら言った。
「……約、18000人の被害を出し…都市を一つ、ゴーストタウンへと変えました」
「18000人!? 小さい町か大き目の村の人口レベルですよ!?」
「まぁ、その魔女を捕えてたとこのお友達が親切に教えてくれたからさ。先輩たちにも教えとこーかと思って。」
「……雨宮後輩、お前ってもしかして思ったよりもすごい奴だったりする?」
「まぁ、坂又先輩よりは博識かもね~!」
「というかさ……もしかして今、結構物騒?」
「そーですね~。だから態々教えに来たんですよ。先輩も巻き込まれたくないでしょう? 私も本格的に隠れるのに専念した方がいい気がしてきましたし。」
「……ですね。私たちも外出は控えるべきでしょうか。」
「まぁ不用意に事件現場に行くのは控えるべきだとは思いますけど、ぶっちゃけ坂又先輩が狙われた場合どうあっても逃げられないと思いますよ? 今でこそ組織内外で始祖の先祖返りだってバレてないのに知ってた幹部を除いて二人も知ってたわけです。用心しても来るものは来ますよ。本当に、やめてほしくはありますけどねー…」
「あぁー……郡上と襲撃してきた奴か。たしかになー…」
もしかすると、雨宮後輩のように幹部の会話を盗み聞きできる伝手が郡上にもあるんじゃないだろうか……なんて、さすがに突拍子がなさすぎるか。
これなら幹部しか知らなかった情報を知っていてもおかしくはないんだが、CAPsの組織員でもない奴が雨宮後輩のように情報を聞き出すならそれなりの地位か雨宮後輩のように人気…というか一派閥の長として台頭しなければできない…とも、言い切れないのか?
やはり郡上について俺たちは知っていることが少なすぎる。予想もすべて仮説にすぎず、何が起ころうとも力の差からどう仕様もない。
せめて、目的が分かればなぁ……。
「あ、雨宮後輩。連絡先交換しとこう。これから行くのは控えるけど、遊ぶのを控えるつもりはないし。」
「ふふっ…坂又先輩ならそう言ってくれると思ってましたっ!」
「…遊ぶのはほどほどにしてくださいね?」
俺は雨宮と連絡先を交換した。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「すみません、坂又さん。どうしても出向かなくてはならなくて……」
「まぁ、しょうがないですよ。幹部からもそれでいいって連絡受けてるんですよね?」
「それは、そうなのですが……」
雨宮が帰り、まだ間もない時間。
東雲さんは幹部からの招集によって人命救助に赴かなくてはならないようだった。
東雲さん曰く、固有魔法に五感強化と肉体強化があると人命救助で重宝されるらしい。
魔女の魔法という事で認識はできないが、実際にいきなり建物の崩落に巻き込まれた民間人もいるらしく、どうしても人手が欲しかったようだ。
……にしてもまさか、授業中断の理由がこういう物だったとは。てっきり俺もなにかしらしなくちゃいけないかと思っていた。
まぁ、冷静に考えたら俺が動き出すのは意味が分からんのだが。
「約束通り、東雲さんがいない間はずっと変身…魔女化してますから。それに、魔法を使わなければ居場所もばれないんでしょう?」
「……はい。坂又さんの魔力は魔女化していても気配自体は変わりませんので、気づけるのは一握りだけだとは思います。ですが、質は変わっているので魔法を使えばその異質さからすぐにばれるかもしれませんが…使わなければ気配を探られたとしても、ばれないと思います。」
「質がどうのこうのは初耳ですけど…とりあえず、了解です。死にそうにならない限り使いませんよ。」
「……できれば身の危険を感じたら使って欲しいんですが、そうもいきませんし…だからこそ雨宮さんのところへ行ってほしかったのですが…」
「まぁ、しょうがないですよ。雨宮もあれで子供を守る母親みたいになってるんですから。俺をないがしろにしてるというわけじゃなくて、子供を危険にさらしたくないだけでしょう。」
「……納得は、できますが…」
東雲さんは不服そうだ。多分だが、東雲さんは自分のできることをやり切っているタイプだと思う。まぁ初めに素で接するとはいっておきながら直ぐに元に戻ったのには突っ込みたいところもあるが、正直今のほうが関わりやすいのも事実。確信を得た訳じゃないが、それでも幹部の指示にはちゃんと従っているように見えるし、同い年ながら非常に几帳面というか生真面目というか……同じ17歳だというのは今でも半信半疑だが。
「どんなに早くても今日の…いや、恐らく明日の午前までは戻れないと思います。それまで、警戒を怠らないようにしてください。それでは」
「はい、いってらっしゃい。」
と東雲さんを見送ったところで、ぼちぼち魔女化する。
良い変化なのか悪い変化なのかは謎だが、最近魔女化して雨宮家と遊ぶこともあり比較的に魔女化する回数が増えている。
そのおかげか、はたまたそのせいか
……なんか、本当に微妙だな。
身を守るためには
だがプライドなんてあっても損するだけなのは定石だし、
「まぁでも、一人になったら試したいこともあったんだよな……」
何気に同棲しているので生活しているとどこかのタイミングでいつも東雲さんの目が気になってできなかったことがあるのだ。
……ちなみに、東雲さんと同棲こそしているがおじいちゃんの持っていたラブコメ本のような
俺は深夜にぽちぽちと通販で買い、まだ一度も開封していない数はこの段ボールを取り出した。
「まぁ、一回くらいはね…?」
そう、それは女ものの服である。
初めて女体化した時こそ精神衛生上よろしくない、と思い二度と探求しないことを心に誓ったのだが……今日ここにその誓いを一時的に破棄しようと思う。
ここまで、様々な葛藤があった。
何度目かの雨宮家で女体化した姿で遊んだ時に言われたのだ。
ちなみに当時は普通の無地の白Tシャツに黒い長ズボンである。
以下回想。
『にーさんがせっかく女体化してきたなら、姉さんとして振舞ってみて欲しいんだけど。』
『白沢、お前俺に女として振舞えと言うのか…? まぁいいけど、俺がやってもあんま面白くならないぞ?』
『わ、私も見てみたい、です…!』
『私も。』
『お前ら本当に図々しくなったな……まぁいいや。見てろよ?』
俺は足を肩幅に開き、左手を腰にあて、上体はあまり動かさないまま頭を数十度傾け、右手をピースの形にして二本の指の間から前が見えるように右目の近くにあて、左目を伏せた。
そう、おれのかんがえたさいきょーのおんなだ。これ程女っぽいポーズもないだろう。
『……なにそれ?』
『? 俺の考える最も女々しいポーズだが?』
『ださ。』
『木崎、ちょっと直球すぎ。俺も傷つくからね?』
『だいじょぶ。にーさんなら再生する。』
『化け物かな?』
『そ、その…すずちゃん、おにーさんもきっと、がんばったんだよ…それに、顔はいいよ…?』
『その一言が一番傷つくからね? あと顔以外フォローできないってことは俺のセンス終わってるってこと?』
『『『………。』』』
『フォロープリーズ、雨宮。』
『先輩、人は中身ですよ。』
『それはフォローなのか? それともトドメを刺しにきてらっしゃる?』
『ト・ド・メ♪』
……なんてことがあったのだ。
見返すため、とは言わないがもう少し女性っぽくなればみんなも喜んでくれるだろう。
と思い自分の体を調べようと思ったのだが…さすがに東雲さんの目があるところでするのは気恥ずかしいし、かと言って隠れてするのも難しい。
つまり、不謹慎だが
それに、女っぽくなるというのは身を守る手段にも使える。
魔法が見える男のような女なんて知ってるやつから見れば一発で始祖の先祖返りだと気づきかねない。
なら普通の女にしか見えなければ、あぁ魔女か魔法が見える女の人ね…と、なるはず。
と、いうわけで。
「うーむ、何から着てみるのがいいんだ…?」
最近のネット販売はすごいもので、ネット上でマネキン買いができるのだ。なんか有名なファッションデザイナーとコラボしてるから期間限定とも書いてあった。
ありがたいことに衣服代として父にメールで頼んでみたら返信はなかったが入金されていた。……まぁ、返信がないのはいつものことだが。
しかし、男物の服の多さにも困惑しているのに女ものの服にはもっと驚かされる。
なんていったって調べれば調べるほど新しい種類の服が出てくるのだ。
トップスだけでも三、いや四種類くらい…いやもっとあったっけか。わからんが上着だけでそんなにあったらもう訳が分からん。
女の服飾は
「まずはこの服にしてみるか……多分、ワイシャツとあんま変わんないよな。」
しかし、俺は最も大事なことに気づいた。
いや、ここまで何回か女体化してきてなんとなく気にはなってたんだが今着ている服を脱ごうとして気づいてしまった。
「
危うく痴女になるとこだった。
いや、もう既に痴女のようなものだったのだろうか。
でも、いままで誰にも突っ込まれてきていないが…いやまて、いままで見せたのって雨宮家と東雲さんだけだぞ? 遠慮してる可能性が…?
俺は急いで通販サイトを開いてまた絶句するのだった。
「
まだまだ女への道は遠い。