転生したら、自重!!・・・え!?いるの?   作:打出小槌

1 / 12
転生前
プロローグ①


プロローグ①

 

 どうしてこうなった・・・・・・。

 

 俺は今、自分の現状。置かれた状況に図らずも頭を抱えている。

 傍から見れば俺の顔の表情も強張っているであろうと思う。

 

 周囲は真っ白な何もない空間である。

 まぁー、地面。というか・・・。

 足場らしきものと上下左右は解るわけで、惑うことは無いのだが・・・。

 

「あなたが最後のものか」

 

 って、言うか・・・。

 どうして、あんたが此処にいるんでしょーかねぇーっ!?

 

 内心の困惑を押し潰し、苦みをも咬み潰す。

 それから溜息を一つ。

 疑問はこの際、脇へと置いておく。

 そして俺は眼前の存在へと視線を向ける。

 

 

 俺の目の前には少女がいる。あくまでも見た目だけの姿だが・・・。

 

 ―――彼女は素晴らしく美しい少女だった。

 年のころは一三、四歳ぐらい。幼くも可憐な顔立ちをしている。

 少女は猫耳の様に双極が盛り上がった青いニット帽をかぶる。

 一見、どこかの制服姿に見えなくもない。

 

 白シャツに紺のネクタイの上から淡いピンク色の薄手のセーターを着ており、スカートの丈は短めで股下一〇センチ弱。

 黒の二―ソックスが太もも近くまで隠しているものの、僅かに見える雪の様に白い肌が、扇情的な危なさを醸し出す。

 

 肩のあたりまで伸びた銀色の髪は、月明かりを溶かし込むがごとく淡く輝き、その瞳は闇夜のごとく黒く深く澄み切っていた。

 

 こちらの存在などお構いなしに、路傍の石ころのごとく扱う彼女。

 それが当たり前なのは仕方がないことだ。

 

 彼女は俺に確認の意味を込めて語りかけた訳ではないのだから。

 

 右肩から左斜(ひだりなな)めへとかけたカバンを開けながら、言葉を紡ぐ彼女。

 

「さて、時間も限られている故。手短に済ますとしようか」

 

 カバンの中から、パッと見て十数枚ほどの紙束を取り出し、こちら側の意思の一切を考慮することなく話を進めようとする。

 

「あぁ~。悪いけど・・・。少し待ってくれませんかね?」

 

 とりあえず、俺は片手を上げるとダメもとで彼女の行動を制してみる。

 

「ん?何か?・・・妾(わらわ)は些(いささ)か多忙故、できれば疾(と)く去りたいのだが・・・」

 

 おぉ~、止まってくれたし。

 正直、コレ(・・)との会話がとまともに成立するか、それすらも危ういと思っていたのだが・・・。

 俺の内心に気付くことなく彼女は言葉を区切る。

 そして、首を(わず)かに傾かせると再び語りだす。

 

「あなたも状況を理解できぬと?・・・彼らのように(・・・・・・)

 

 夜を凝縮したような闇色の瞳が、じっとこちらを見据えてくる。

 訝しげに眼を細めながら、こちらの全てを見透かすかのように・・・。

 そこに、ただいるだけであるにも関わらず、彼女からは重圧にも似た魂への圧迫感が押し寄せてくる・・・。

 これまで出会った数々の強者達。彼らを全て超える神気を彼女は放つ。

 しかし・・・。

 

 うん。大丈夫だ。耐えらなくはない。

 

「いや。・・・状況は理解しているよ。あそこで俺が死んだってこともね」

 

 そこでもう一つ、大きく息を吐き出す俺。

 頭を振ってから、彼女と話しを開始するためのスイッチを入れる。

 

 なにせ、この相手に生半端な会話は通用しないのだから。

 彼女はこれまで接してきた者達の誰とも違う。

 

 彼女は―――最高位の女神の一柱(・・・・・・・・・)なのだから。

 

「ただね。どうして、貴女なのかな?と・・・。武力と勝利を常に下僕とする女神様」

 

 俺の言葉に目を細め。初めて感情らしい意思のある表情を浮かべる彼女。

 ようやく俺という存在に興味を持ってくれたようだ。

 先程までの淡々とした無表情が嘘の様に、今は、ほんの少し。―――好奇心に揺れている。

 

「ほう。一目で妾の神格を見抜くか、人の子よ・・・。ならば、妾が何で在るかも知っておろう?・・・妾の名と共に」

 

 そう呟きにも似た声色で問う彼女。

 声高でもなく。高らかに宣言した訳ではない。が、その言葉は確実に耳に残る。

 ごく当たり前の様に魂へと刻み込まれる言霊。

 叡智に長けた智神としての問いに、余計な言葉は必要ないだろう。

 そう考え、答える俺。

 

「闘争と叡智の女神にして、蛇と梟に連なる存在(もの)。大地の女神にして冥府の女神。そして死と再生を司る。三相一体(さんそういったい)まつろわす古き女神(・・・・・・・・・)『アテナ』」

 

 言葉少なに、理解したことを簡潔に集約し伝えてみる。

 

 って、言うか・・・。

 どっからどう見ても【カンピオーネ】に出て来たまつろわぬ神(・・・・・・)だろ~が、アンタっ!!

 

 大地の豊穣と輪廻する蛇を担うメドゥーサ、無限の叡智と不死を担うメティス、そして戦争と常勝を担うアテナ。

 天と地、そして現世と冥府を統べる、最強の女神の一柱にして三相一体の女神。

 

 それが今、俺の目の前にいる。

 

「そこまで知るか、人の子よ。重畳(ちょうじょう)である」

 

 ほんの少しの興味と好奇心の入り混じった顔は、喜びの表情へと変化する。

 その微笑みは大地母神としての慈愛と慧眼を併せ持つ。

 それ故か、解放された神力とその微笑みによって、一瞬にして周囲の空気が変化する。

 おかげで先程まで感じていた重圧が鳴りを潜め、弛緩した空気が流れ出した。

 

 柔らかく暖かな笑みを浮かべたまま、次の言葉を紡ぐ古き始まりのアテナ。

 

「それにしては、あなたは奇妙な人の子だ。・・・まず、妾にはあなたの思考を読むことが出来ない。これは本来ならばありえないことだ。なぜなら、妾はアテナなのだからな」

 

 一度瞬きをしたのち、こちらの視線を真っ直ぐに捉えながら言葉を続けるアテナ。

 

「次に。妾をアテナと理解してなお、あなたは動じてはおらぬ。困惑はしておろうが、それは、己が眼前に妾がいるという。その事象にのみ向けられておる。そのうえ、神格を理解して尚、妾に呑まれることもなく言葉を紡げる。・・・問おう。これは如何(いか)に?」

 

「まぁ、俺にも神さんの知り合いがいるもので・・・少しは耐性があるのかもな。それに、普通の人間でもないしね。・・・でもさ、正直、貴女の言葉通り、この場で貴女が出てくるとは思わなかったから、驚いたってのも確かだぞ。―――ついでに言うと、今回もその知り合いが出てくるものだと思っていたからな・・・」

 

 俺がそう返すと、彼女は(おもむろ)に紙束に目をやり、一枚一枚、めくってゆく。

 

「ふむ。―――しかし、そのような報は記されてはおらぬようだが」

 

 最後まで目を通し終えると紙束から視線を外し、再度こちらへと投げかける問い。

 

「あぁ~・・・。まず、それには。何を、どこまで記されているのかな?」

 

 やけに薄いな~と感じながら、聞いてみる。

 

「先程まであなたが彼の世界において生きた証。十五年の歳月、その事象のみ」

 

 なるほど。どうりで・・・。

 さしあたり、一枚一年分の記録ってところか・・・。

 ていうか・・・薄!それだけって悲し過ぎないか俺。

 ええい、考えるな、俺。望んで手にした平凡な人生だっただろうが。

 

 落ち込みそうになった精神を立て直し、切り替える。

 

「なら仕方がない。それに。そこに書いてあるのは、たぶんさっきまでいた世界の記録だけだから」

 

「ほう。・・・なるほど。それはまた・・・・、やはりあなたは興味深い人の子だ」

 

 そう言うと、より一層、目を細め、全てを話せと催促してくるアテナ。

 その眼差しと言外には、『戯れや嘘を混ぜるなよ』という意思がアリアリとこもっていた。

 

「わかった。話すよ。少し長くなるけどいいかな?」

 

「かまわぬ」

 

 彼女がおもむろに視線を動かすと、アテナの視線の先には丸いテーブルと対面した椅子が二脚、現れた。

 そして、何も言わずにその一つに座る彼女。

 

 

「何をしている。あなたも座りなさい」

 

 さっきまで疾く去りたいとか言っていませんでしたっけ?

 

「何か?」

 

「いや、なんでもない」

 

 まぁ、いいけど・・・。

 そう内心でツッコミを入れつつも、大人しくアテナの対面へと座る俺なのであった。

 

 アテナとテーブルを挟んで向かい合わせになりながら説明を開始する。

 

 これまでの経緯を全て。包み隠すこともなく、率直に・・・。

 かつてある世界に生まれ、一九年の歳月にてその生涯を閉じたことを。

 それから物語の神との出会いの話を。

 その神に語られた内容を。

 ツリーダイヤグラム。

 運命の系譜の道標。

 そして与えられた選択肢。

 決めた覚悟と一つの決断。

 彼のものと交わした契約。

 そして、それから始まった数度に及ぶ転生人生を。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。