話が遅々として進まない・・・・。
こっから、学校まではかなりの距離がある。
普通ならバスか車で行かなきゃなんねェ―距離だったりする。
バスは一時間に二本しか走ってねぇーかんな、いちいち待ってる暇はねぇーし。
とりあえず、お山を降りなきゃなんねェーっかんなァ~。
なんせ、ここ
寝過ごしたら普通にどうにもならん事態に発展する。
まぁ~、俺と蓬寿にゃ、本気だしゃーかんけーねーけどよ。
飛んでけばいんだしな。
驚くことに山持ちなんだぞ、うちの家。
家の私有地の中にはバスも国道も走ってるし、このあたりの畑や田んぼの水源にもなる泉。
春になれば満開の桜が咲き誇る散策地。
さらには自然保護区域まであったりして・・・。
さざなみ荘だけで、なんで食っていけるんだ?って思っていたんだがよ。
それ以外にも国からの補助や、借地料が降りているんだと。
あと、下の方に一般立ち入り許可区域ってとこもあってな。
そこには
木々の中を重心を安定させ頭を上下にぶれない様に、また、背中の弁当箱を揺らさぬように気を配りながらのフリーランニング。
道なき道をひたすら駆ける俺ら。
神社まで駆け降りて、そのまんま高町家まで駆けて、美由紀を迎えに行くってのがいつもの行程。
付かず離れず蓬寿が続く。
本来ならこいつにはこんなこと必要ねぇ~はずなんだが、いっつも楽しそうに走ってる。
未だ表情薄いから、分かりにくいけどな♪
「颯介。どうする?」
走りながら蓬寿が聞いてくる。走ってるまっ最中なのに声にブレがねェー。
「そだな。いつも通り、美由紀んとこ行って、一緒にガッコ―行くぞ。たぶん途中で
「
「ん?・・・・でぇーじょーぶだろ、あいつなら・・・・。」
「
「ん。・・・玉藻。よろしく」
サラッと玉藻にふる蓬寿。
「え?わたしがですか?蓬さんがすれば良いじゃないですか!?・・・にわたしが?」
「ん?玉藻は忠雄の事、きれーだったか?」
「いえいえ、嫌いではありませんよ。むしろ好きな方かと・・・・。人の子の中でも誇って良いほどのイケ魂☆ですし、まぁ~ご主人様には及びませんが、どのような相手でも分け隔てなく表裏もなく接する度量の広さには感服に値します。良い子ですよね~彼・・・・人外に好かれるというのも頷けますね~♪」
「ほほう」
「ほうほう」
「んまッ!?―――何ですかお二人様!!その意味深げな相槌はー!」
「ん?気にすんなっ♪」
「そう。気にしない」
ペシペシと尻尾で俺の後頭部を叩きながら抗議の声を上げる玉藻。
そんなこんなで、いつも通りの他愛無いおしゃべりをしながら駆けてゆく俺たち。
たどり着いた神社にの境内で、一息入れる。
鈴を鳴らし、二拍一礼。
両手を合わせて。
「今日も一日、元気に面白おかしく過ごせますように!」
「はい、賜りました」
頭の上で、真面目モードの玉藻が一言発する。
頭上から神気が降りて、俺や蓬寿を優しく包む。
そして八束神社全体に広がる神域。
分体とはいえ、一応こんなんでも神さんだしな。
本体はこの国にある全ての神社、御社の頂点に位置するのだから。
こいつと共にいる場合。社を通じて、本体に届いているらしい。
因みに、社でない場所だと、向こう次第なんだそうな。
閑話休題。
拍手をもう一度打ち、礼を行い、挨拶を済ませると再び駆ける。
高町家までは、あとわずか。
小学生の子供が歩いて無理なく通える距離。って言えば、分かるか?
精々、一kmちょっとてぇーところか・・・・・。
「うしっ、とうちゃ~く!?」
「到着!」
高町家前で急停止した俺。そして何故か片腕上げて万歳している蓬寿。
二階建て庭に鯉のいる池とそれなりの広さの道場がある。
敷地や間取りのでけぇー家だ。
「颯ちゃん。蓬寿ちゃん。おはよー」
ちょうどいい具合に引き戸の扉をガラガラッと開け、玄関から出て来た美由紀。
眼鏡をかけ、ランドセルを背負った、可愛らしい少女だ。
性格は、どちらかというと引っ込み思案で大人しいタイプ。
黒髪、黒目の日本人らしい女の子。ふわっとした空気を出している。
「うすっ!美由紀、おはよ~」
「美由紀・・・おはよ」
「ク~」
頭の上で普通の狐のふりをした玉藻が、声を上げる。
流石に、思念以外で話すことは無い。一応、気を付けているみてぇーだ。
「玉ちゃんも、おはよ~」
因みに俺たち、槙原家とさざなみ荘の人間以外の人前では、玉藻の事を玉と呼ぶようにしている。
本当の名を口にすると、俺は全然、気にしねぇーんだけど。
玉藻曰く、いろいろと厄介ごとを引き込みやすくなるらしい。
特に、人外連中や
両腕を差し出した美由紀の下へ、俺の頭上から移動する玉藻。
「もふもふ~」
満面の笑みでもふり始める美由紀。
両腕で抱きながら頬ずりして、何とも幸せそうな満たされた表情だ。
まぁ~、これは、こいつらの朝の挨拶みてぇーなもんだ。
「美由紀~。忘れものよ」
「あっ、お母さん」
家の中から桃子が出てきた。
「おはよ~!桃子母(かぁ)ちゃん!」
「おはよ、桃子母(はは)」
「はぁ~い、おはよ~。颯介くん、いつも元気ねぇ~、蓬寿ちゃんも、相変わらず可愛いわね~。ふふふ。はい、美由紀。体育館シューズ。今日使うんでしょ?(苦笑)」
「あっ、そうだった。ごめんなさい。ありがとう」
そう言いつつ、シューズ袋を受け取る美由紀。
えらいえらい。ちゃんと中身を確認してんな。
そんな美由紀から離れ、俺の頭の上に戻ってきた玉藻。
「桃子母。なのはとななせは?」
「ごめんなさいね、蓬寿ちゃん。今、二人ともお眠(ねむ)なのよ。」
「ん。なら、仕方がない」
桃子母ちゃんと話す蓬寿。
因みに、どうして、俺と蓬寿が、[桃子母ちゃん・桃子母]と呼ぶのかと言うと、以前。
[美由紀のおばちゃん]って呼んだらよ。
「おばちゃんは止めてぇ~、桃子さんって呼んでくれなきゃ」
「でも、桃子お母さんって呼んでもいいのよ」って言われたからだ。
んで、俺が桃子母ちゃん、蓬寿が桃子母。
槙原の
玉藻がお養母様。桃子様。アルが、愛。桃子。ってな感じだな。
玉藻は普段。穏行で隠れている。もしくは、子狐か、耳なし尻尾なしの人間モード。
時たま割烹着姿で街へ繰り出し、堂々と買い出しに行ったりしてる。
だからなのか。世間様には【さざなみ荘】のお手伝いさんとして認知されていたりする。
本人曰く、
「んじゃ、美由紀も準備できたし、ぼちぼち行くか」
「じゃあ、大丈夫だとは思うけどれども、気を付けてね」
「うん。行ってきます」
「はい、いってらっしゃい♪」
桃子の声を背中に浴びて、一つ手を振ると歩き出す俺たち。
「そうして、美由紀をお供に加えた、三人と一匹の一行は、
普段と変わらぬ姿にて、学校への道のりを行くのであった」
「むぅ~~。颯ちゃん、お供って何?美由紀、お猿さんや犬さんじゃないよ~」
歩きながら冗談めかして語り口調で述べる俺。
ちょいと膨れながら、抗議する美由紀。
そんな他愛のない会話をしながら、進んで行く。俺たち。
ん。いつも通り・・・・。
こういうのが一日でも長く続けばいいんだけどなぁ~。
「無理だと思う。我も颯介も・・・・。今の時間を甘受すべき」
ですよね~・・・・。
美由紀には聞こえない声で、呟く蓬寿。
全くこやつは、人の心の声を拾うなし。
三人揃っておしゃべりをしつつ、学校へと向かう。
未だ絶賛、登校中。