高町家から少し歩いたところで、ふと慣れた気配を感じ、俺と蓬寿は先の
「ようっ!おっはよ~さん!!」
周囲に響く元気な声。
そこにはニカッっと笑い。
垢抜けた様子のどことなくふてぶてしさを感じさせる少年がいた。
群青色の長い髪を後ろで無造作に紐で縛った野生感あふれる姿。
小学生ながら鍛えられたしなやかなバランスの良い体型。
ギラついた元気のいい光を放つ赤い瞳が印象的ないたずら小僧的な雰囲気なのだが。
まとう空気が小学生ではまずありえん。
そんな奴。
名を、
こいつも前世持ち。
姓と名の最後の文字を消して逆に読む。すると、とある英雄になるという。
空牙 風鈴寺⇒空 風鈴⇒クー・フーリン。
アイルランドの光の神子。
生まれ変わったら幸運値EからD+になったとは、本人談。
見えるらしいぞ、自分のステータス。
犬と呼ばれると不機嫌になる。
これが、前世なら殺し合いに発展するそうな。
将来的には、全盛期の制限なしの己になるらしい。
宝具も全部、使用可能。魔術も同様に。
プラス、今生で得た技能や経験も上乗せされるという。
因みに今世でのゲッシュは無い。
気には障るらしいが、制約でどうにかなることは無いらしい。
そういやぁ~、それを聞いた時。
マジもんのチートじゃねェェーかぁーーーーーーーーー!!!!!
イケメンか!?イケメンだからか!?
ワシがネタキャラやの組み合わせやのに!なんでや!!
なんでなんやーーーーーーーーーーー!!!!!
って、忠雄が盛大に叫んでいたなぁ~
「おはよう。空牙くん」
「空牙、おはよ」
「おっす、空牙!おはようさん。今日も朝から鍛錬してきたんか?」
三人+一匹が合流して、四人+一匹に・・・・。
歩きながら話をする。
「まぁ~な、朝からじじいが容赦なくてよ。全く、小学生にどこまで求めんだよって感じだな。まぁ~、あっちの師匠よかマシだがよ」
後頭部で腕を組み、歩きながら答えてくる空牙。
あっちの師匠とは今の家にいる師匠達ではなく、生前の死の国の女王のことだろなァ。
初めて会った時、痴女か?って思ったら槍投げられたし。
ケルトってのは、防御力薄いんだなァ~ってシミジミしたもんだ。
「隼人爺ちゃん。まだまだ現役だもんな~。砕牙父ちゃんは、海外だったか?」
鋼のようなゴツイ、無敵超人な空牙の爺ちゃんと父ちゃんの姿を思い浮かべる。
・・・・まんま、あの二人だしな~~~。
無敵超人、風鈴寺
超絶不倒、風鈴寺
まんまだぞ。まんま。
見た目も強さも中身も性格も・・・・。
「おう。親父は今、護衛の仕事でフランスだな。早く帰って美羽のやつを抱きてぇーってぼやいてたぜ。うちのじじいも師匠達も全員それぞれ規格外だからよ~。まぁー、今日はまだ爺だけだったからよかったけどよ。――――さすがに、朝から全員はキッツイからなぁ~」
「梁山泊は歩く非常識。人間の不思議、盛り沢山」
(ですよね~~。あの方々、本当に人間かと疑う方々ばかりですし。世が世なら英霊化しても可笑しくありませんよ)
クラス:ファイターってか?
2人程、アサシンでもいけそーだがなぁ・・・・・。
(もしくはバーサーカークラスですね。あの筋肉喧嘩空手家やおバカキックボクサーなんてモロでバーサークしますよ!間違いなく!)
まぁ~確かに・・・。あの人達なら、通用するな~~~。
それらの念話を受け取りながら、うんうんと二、三度、頷く蓬寿。
「あはは、お爺ちゃん達、元気だもんねェー。・・・・お父さんと恭ちゃんも負けていらないって言ってたよ」
念話を受け取らないまでも、苦笑しながら話す美由紀。
「うん。戦闘民族TAKAMATI も伊達ではない」
「えぇ~~~、そんなに酷くないよ~。ただ、ちょっと恭ちゃんもお父さんも、ちょっと修業馬鹿なだけだよぉ~」
蓬寿の一言に、声を上げる美由紀。
「安心しな、美由紀もいづれこっち側だからよ」
ニヤリと笑う空牙。
「だな」
ニカッと笑みを浮かべる俺。
「美由紀?いづれそうなる?」
不思議そうに、首を傾げて美由紀を見詰める蓬寿。
「ならないよ!?ならないったら、美由紀、違うもんっ!!あそこまでの変人じゃないよッ!?」
両腕を力いっぱいふりながら、必死に否定する美由紀。
しかし、あそこまでって。一応、自覚あんだな。
ってか、何気にヒドイこと言ってるって自覚あんのか?
ねぇーだろうな~、天然だし、無自覚発言だかんな。アレ―――。
徐々にヒートアップしてゆく美由紀に楽しそうに煽る空牙。
なにが、「あん?オメェーも一緒に修練してんだろ?一緒じゃねェーか、遅いか早いかの違いだけだろ」だ、そんなこと言うから美由紀が更にヒートアップすんだろが。
「ん、冗談。美由紀は大丈夫」
さすがにこれ以上はまずいとでも思ったのか、蓬寿のフォローが入る。
よし!よくやったっ!―――偉いぞ蓬寿。
むーっと、むくれてはいるが顔を赤くしだした美由紀。
「そうだな。美由紀は大丈夫だぞ。オメェーの才能は二人以上だけどよ、強さへの憧れっちゅーやつが、二人ほどじゃねェーかんな。そこまで酷くなんねェーぞ」
俺も、追加で抑えに入る。
「まっ、・・・・お前さんの場合。普通に流されるか自然と巻き込まれることになるだろうがな」
をぃ。 人のフォローを崩してくんじゃねェー。
「ううぅ。そっ、それはそうかもしれないけど・・・・・」
「大丈夫。美由紀より。士郎や恭也、空牙や雷太。ネリィにリリィより。・・・・・颯介の方がもっと上、ぶっちぎり」
「「それは言えてる」」
なんで、そんなところで二人そろって頷いてんだ。
玉藻も頭の上でこくこくって、こっそり頷いてんじゃねー。
「そんなにひどかねェーだろ?無理はしても無茶はしてねぇーぞ~」
反論する俺。当然だ。
「俺ぁー、限界の一歩先をいつも意識して修行してんだけだぞ」
でねぇーと修行になんねェーだろ。
「あのなぁ~・・・。それが、可笑しい事だってなんで気付かねェーんだ、まったく。はぁ、いい加減。誰かこいつに教えて聞かせてやる奴はいねぇーのかよ。・・・んで、そのへんのところどうなんだ?―――なぁ、美由紀よ?」
「無理だよ~。分かってるでしょ
「おう、まぁーな」
今までの中で、一番いい笑顔を浮かべる空牙。
頷き、即答で同意しやがったよこいつ。
まっ、そうだろうよ。
生前は数十万の敵とたった一人で戦い、いろんな強ぇー奴らとも戦ってきた奴だ。
自分の息子と気付かずに戦って殺しちまうなんてこともあったぐれぇーの逸話持ちだしなぁー。
死んだ後も戦闘狂まではとはいかなくても、強い奴と全力で戦いたいってだけで座から召喚に応じて聖杯戦争に参加するような奴だもんな。
「おはよー、皆。相変わらず、朝から賑やかだね~」
そんな俺たちの前に、更なる仲間が顔を出す。
「おう、雷太。おはようさん。ってか。相変わらずってなんだ、相変わらずって。お前さんも似たようなもんじゃねぇーか」
「ふふ。まぁ、確かに、それはそうですが・・・・。それより、――――おはよう、空牙、颯介。蓬寿ちゃん、美由紀ちゃんも、おはよう」
「おはよう、雷太くん」
「おはよう雷太」
「ういっす。っはよ、雷太。賑やかなんはいーことだろ?」
燃えるような赤毛の、健康的でさわやかな空気を醸し出す少年に向かい、挨拶を繰り出す俺たち。
こいつの名前は
荒木⇒アレキ、雷太⇒サンダー。
生前、アレキサンダーと呼ばれ、後に、征服王イスカンダルと呼ばれた男。
今の雷太の記憶には、平行世界の第四次聖杯戦争に召喚され、ギルガメッシュと戦い敗れた記憶。
さらには、今から4年ほどめぇーに九州の長崎県冬木市で行われた第四次聖杯戦争。
俺や蓬寿と出会った時の記憶と含めりゃ、二種類の聖杯戦争の記憶があるそうな。
消滅して座に帰るはずが、気が付けば今生。
望みの受肉を果たし人間としての、新しい生を得ていたということらしい。
しっかし・・・・・・・。
「なにかな?」とこっちを見る雷太に、「いやぁ、なんでもねェーぞ、なんでもぉ」と切り返す俺。
何食ったら、あんな体格のいい、二メートル以上の髭モジャ豪快オヤジになんだ?
不思議だわ。
そんなこんなでたどり着いたのは海鳴市立中央小学校。
普通の公立小学校である。誰が何と言おうと普通である。
そう、例え、個性的な連中ばっかりだったとしても(力説!)
校門前には登校してくる子供達。
そこへ高級車が一台。
子供たちの邪魔にならないよう、安全を配慮しゆっくりと滑るように静かに停車した。
先に運転席から降りてくるのは燕尾服の壮年男性。
バニングス家の執事、鮫島さんである。
「おはようございます、皆様方」
一言挨拶。その後、後部扉を開ける彼。
そして降り立つ、一際目立つ、金髪の双子姉妹。
「ういっすっ、おはよ」
「おはよ。リリィ・ネリィ」
「おはようなのじゃ!颯介、蓬寿、美由紀!」
「おはようございます」
車から降りてきたのは、クラスメイトの双子。バニングス姉妹。
姉、リリィ・バニングス。妹、ネリィ・バニングス。
左右非対称のアホ毛が特徴的な青赤セイバーズである。
元気よく挨拶をしてきたのが、ネリィ。丁寧な挨拶なのがリリィ。
これだけでも性格が窺えるというものだ。
さて。ここまで言えばもうお分かりのことだろう。
この二人。
リリィ→騎士王、アルトリア・ペンドラゴン。
ネリィ→ローマ皇帝、ネロアウグストス・アプロリウス。
なんだってよ~!
ここまで来ると、もう驚かねぇーぞ、イヤ、マジで・・・・。
ご本人様達。前世の能力持ち。宝具持ち。最盛期、完全バージョン。
リリィ。エクスカリバー・アヴァロン・カリヴァーン・ロンドゴミアド保持。
士郎ルートの第五次聖杯戦争、平行世界記憶あり。
今世の冬木で行われた第四次聖杯戦争記憶あり。
ネリィ。偏頭痛なし。宝具保持。月の聖杯戦争の記憶あり。人理修復の記憶あり。
現在、この世界の岸波白野ちゃんと藤丸立花くんって子をさがしているそうな。
「ついでに空牙に雷太もおはようなのじゃ!」
「おいおい、俺たちゃついでかよ」
「ははは。おはよう。ネリィちゃん、リリィちゃん」
「むぅ。雷太よ。そなた、我にちゃんずけなどするでない。そなたに言われると、こうむず痒くなるではないか」
「ははは、ゴメンね。でも、いいじゃないか。そう呼べるのも今だけなんだし」
「むぅ・・・・」
そんな彼ら会話を横目に。
「ありがとう、鮫島」
「お気を付けて行ってらっしゃいませ」
鮫島さんが一礼して、去ってゆく。ザ・仕事人って感じだな。
妙なところで歓心する俺であった。
次話で次に移りたい。