転生したら、自重!!・・・え!?いるの?   作:打出小槌

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プロローグ⑥

プロローグ⑥

 

「あぁ~~~。とまぁ~、こんな感じなんだけども・・・。って、・・・どしたの!?」

 

 語り終えた僕の前では、何故か憐憫(れんびん)の情を含んだ眼差しでマジマジとこちらを見つめておられるアテナさんがおりました。

 

 なんで?

 そう思い、小首を傾げる俺に彼女は言った。

 

「よりにもよって、あなたはあ奴の契約者であったか・・・」

 

 と同情の声で。

 

「それで、よく今まで壊れずにいられたものだ」

 

 とは、歓心の声色を。

 

 なにやらアテナさん的には重い言葉を吐いておられるようだ。

 なんか、ものすっごく同情されているみたいだけども・・・。

 ここはちゃんと訂正しておくべきだろうね~。

 そう思い。俺は言葉を返す。

 

「あのさ・・・。言っとくけどな、アテナさん。自分で決めて選んだことなんだから、俺は全く後悔していないからな」

 

 俺の言葉に更なる驚きと訝(いぶか)しげな表情を浮かべるアテナ。

 

 まったく。彼女もまた、かつての家族のごとくこう言うのだろうか。

 

『これは契約では無い。無限に続く永遠の呪縛である』と。

 

 確かに、傍からみればそういう面があるのかもしれない。

 なぜなら俺が相棒と交わした契約は、幾千万の物語を歩むことなのだから。

 それは人が紡ぎ出す物語だけの数があるということ。

 それは人が考えたもの。

 それ故に、今も新たに生み出される物語があるのだから。

 人が存在し続ける以上、それは無限に広がり続ける宇宙のようなものなのだから。

 故に、終わりもなければ果てもない。無限の旅路。

 

「確かに。普通の人間の精神状態のままなら間違いなく狂って壊れているだろうさ」

 

「今の俺には現時点で魂の劣化ってやつは全く起きてはいない。むしろ転生する度に磨きがかかってるぐらいだ。相棒が作り変えたらしいしけどな。今の所、とくに問題はないぞ・・・」

 

「相棒曰く。行った世界ごとに扉が生まれる。そして、その世界で得た思い出とか歩いた歴史なんかの記憶はさ、鍵を掛けて、全部まとめて扉の奥に納めておくんだと。それぞれの世界で培った知識や経験や技術などは、切り離して図書館の様に別に並べて管理してあるから何時でも何処でも意識するだけで好きな時に引き出せる状態だし」

 

「・・・だから、思い出に左右されて悩むなんてことは殆どない」

 

「そうでなきゃ、行く先々で時に女で時には男だったりするんだぞ。惑うだろ?・・・。ただ、初めて死んだ時。少なくとも俺は自分というものを捨てる気はなかったし。記憶が摩耗したり、自分でが自分で無くなるのだけは許せなかった」

 

「だから、転生する時はどこへ行くにしても自我の確立も兼て原典である最初の記憶。俺が俺であった時の記憶だけは常に持っていくようにしてるんだわ。だから正気は保ててる訳。あぁ、因みに―――。今の俺はさっきまで生きていた世界での記憶と諸元の記憶。その他の世界での経験を保持している。その他に関してのエピソード記憶は持ち合わせちゃいないけどな」

 

 そこまで答えつつ、アテナの言葉にふと気づく。

 

「っていうか、アテナさん。・・・あんた、うちの相棒と知り合いだったんだな?」

 

「当然であろう。・・・あなたが契約したあ奴は物語の神なのだから・・・。あなたは知っているはずだ。今の妾の姿が神殺しの魔王、カンピオーネの世界に顕現せし。まつろわぬ古きアテナなのだと・・・。あなたも先程、申していたではないか・・・。妾を、まつろわす女神と・・・。で、あるならば、あ奴しかおらぬ。――――物語の神『ジョウリ』しかの」

 

 当たりだし。

 相棒ってば、結構な有名神なんだね、驚きだよ。

 

「なら話は早いね。んで?一応聞いておくけどさ、アテナさんはなんで俺をここに呼んだんだ?別に、あんたがミスして殺しちゃった。とかではないんだろ?」

 

「無論。妾がミスなどするはずもなく。あなたは名無し神々の道楽に巻き込まれ、運命を捻じ曲げられ、そして死んだ。妾達、名を持つ神々がいち早くそれに気づいた。あなたと同じように巻き込まれた幾人かと共にの。―――更に、不本意ではあったが。そのうちの半数を妾がカバーすることとなった。故にここに居る」

 

「なら、この件についての事情は、アテナさんの方からあいつに伝えておいてくれるかな?」

 

「よかろう。彼のものを此処へ呼び出すには根源の向こう側に手を加える必要がある故、出来ぬが。言葉だけであれば確かに伝えおく。アテナの名に懸けて約束しよう」

 

 頷きながら確固たる意志を持ち答えるアテナ。

 その答えにほっとする俺。

 神が己の名に懸けるとき、それは己の存在に懸ける制約であり、それを否定する行為は己の存在を否定することに他ならない。

 即ち、彼女がアテナでいる限り、その約束は必ず履行される。

 例えばそれが、まつろわぬ神のアテナであったとしてもだ。

 まっ、今の彼女はあの世界に顕現している訳ではないし、本来の古きアテナなんだろうけどさ。

 ていうか、ナチュラルに傲岸不遜な最高位の女神様なのは変わらんのだ。

 己のプライドを自分からへし折ることなど絶対にするわけがない。

 

「む。あなたは今、妾を不遜(ふそん)に扱ったか」

 

「うんにゃ、アテナの名に懸けてくれたので安心した。それだけだ」

 

 ホントだぞ。とウインクする俺に、『そうか、ならばよい』と頷き満足するアテナ。

 鋭くこちらの思いを察した彼女にスルーする俺。

 うん。自分で言うのもなんだが付き過ぎじゃね。耐性・・・・。

 

「それで・・・。逝き先は、あんたが顕現する神殺しの居る世界でいいのか?」

 

「正確には異なる。確かに神殺しはいる。妾を含むまつろわぬ神として顕現した神々も。幽世(かくりよ)に住まうであろうまつろわす神々もな」

 

「他にも要素があると?」

 

「如何にも。あなたは聡く助かる。・・・その世界はいくつかの物語が重複している。また、気づいておろう?あなた以外にも巻き込まれた転生者が多数いると。それ以外にも異なる物語の世界から転生した者達がいる。所謂、クロスオーバーというものだ」

 

 そこまで話すと言葉を区切る。

 

「原点。基盤となりし世界はトライアングルハート」

 

「重複せし世界は《魔法少女リリカルなのは》《カンピオーネ》《ハイスクールD×D》《型月(TYPE・MOON)》これら四つの世界観が主に(・・)重複した並行世界なのだが」

 

「う~ん。《トラハ》と《D×D》と《カンピオーネ》に《型月》は解るが。《リリカルなのは》ってのは?《リリカルおもちゃ箱》に出てくるアレか?」

 

「否。それの云わば進化した派生版。再構成し作られたアニメの世界とでも言えばよいか」

 

「なるほどねぇ・・・。でもさ、D×Dの世界とカンピオーネの世界って世界的に矛盾してね?―――D×Dは聖書の神と四大魔王がかつての戦争でいなくなった後の世界。でも、ギリシャ神話や日本神話なんかの方々も未だ健在中。カンピオーネは善悪に限らず神話や逸話、伝説に語られる者が神々として顕現する世界だろ?同じ名を冠する神々が一度にいるのはおかしくね?」

 

「ほぅ。あなたは妾達をあのような半端な紛い物どもと一緒にするか?」

 

 ピキリッとアテナのこめかみに皺が寄る。

 放たれた言葉は殊のほか重く低く、鋭くて痛烈に冷たかった。

 どうやら俺の質問は、ことさら彼女の神経に触れたようだ。

 

「悪い。怒ったなら謝る。申し訳ない。―――全くの別物。名前が同じ者がいても異なる存在だと理解した」

 

 立て続けに言葉を発し、深く頭を下げる俺。

 背筋に走る危機感は半端ない。

 反論? 無理!! 今なら絶対死ねるっ!?・・・。

 あ、俺。もう死んでるんですけどね・・・。

 

 にょほほほほほほほ~~~!!

 

 ん?なんか骸骨な音楽屋が出てきた・・・。

 元気かな~、ブルック。

 相変わらず、『御嬢さん、パンツみせてください』とか言ってんのかね~。

 

 見せてあげたこともあったけど・・・・。

 

 脳内で鼻歌骸骨が演奏を始めたので、消しておく。

 うん。逃避は止めておこう。このアテナの前では致命的だ。

 

「ならば。その謝辞。受け入れよう」

 

 深く静かに放たれる尊大なお言葉。一瞬で緊迫した空気が再び弛緩した。

 次はないぞ。と言われている気がするが、気にしないでおこう。うん。そうしよう。

 その声にほっと息を一つ。

 俺は下げた頭を再び上げた。

 

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