転生上がりのストリートチルドレンが官吏登用試験を受けてみた結果   作:コロトック

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第7話 カジノと身の丈を超えた借金

 三日後、約束通りハトが顔を出した。開口一番、頼んだことを話し始める。

 

 「見つけたぞ、例の男」

 

 「早いな」

 

 「絵が良かったんだよ。あれだけ整った顔してりゃ、噂話拾うのも簡単だ」

 

 「見つけるの、そんなに簡単だったのか」

 

 「街の女どもが放っておかない顔だからな。どこの店に出入りしてるとか、聞き込むまでもなく向こうから情報が寄ってくるんだよ」

 

 「顔だけは無駄に良いからな、あいつ」

 

 「顔だけ、っていうのが的確だな。中身が伴ってりゃ、こんなところで油売ってねえよ」

 

 整った顔が皮肉にも役に立ったらしい。フィリア様の絵心に感謝だ。

 

 「それで、どこにいた」

 

 「裏通りのカジノだ。あそこは貴族の道楽者がよく出入りする店でな」

 

 「カジノ……」

 

 なるほど、仕事をサボっていたのはそういうことか。妙に納得がいく行き先だった。

 

 

 「例の秘書はカジノで負けに負けて、今は体で支払っているらしい。具体的には…」

 

 「あー、うん。わかった、もう聞かない」

 

 それ以上の詳細を聞くのは、精神衛生上よろしくない気がした。想像だけで十分すぎるほど嫌な絵が浮かぶ。

 

 「聞かないのかよ、せっかく調べたのに」

 

 「要点だけでいい。あいつが馬鹿だったってことは分かった」

 

 「まあ、そりゃそうだな」

 

 仕事をサボって遊び歩いた挙句、身の丈を超えた勝負に手を出して負け続ける。同情の余地がどこにも見当たらない、実に分かりやすい自業自得だった。

 

 「参考までに聞くが本人、どんな顔してた?」

 

 「地下でこき使われてる割に、意外と平然としてたな。自業自得って自覚もなさそうだった」

 

 「そこは反省してほしいところだけどな」

 

 「馬鹿は馬鹿なりに、めげない才能だけはあるらしい」

 

 妙な感心をしているハトに、俺も思わず苦笑した。反省しない才能というのも、なかなか珍しい特技だ。ゴミだけど

 

 

 ハトに報酬代わりのお金と食料を与えたあと、あいつはこんなこと言ってきた。

 

 「一応、証拠もあるぜ。いるか?」

 

 ハトが懐から小さな紙束を取り出した。借用書か何からしい。

 

 それをもらって脅すことも少し考えたが、脅して何をするんだという話にもなる。

 

 「まあ、もらいたい時にもらうわ」

 

 今すぐ必要というわけでもない。いざという時の切り札にしておこう。

 

 「証拠ってほどのもんでもねえけどな。ただの借金の証文だし」

 

 「そもそもあいつ、殿下の秘書としての仕事は元から何もしてなかったからな。今更カジノ通いが増えたところで、勤務態度としては横ばいだ」

 

 「横ばいって、最初からゼロだったってことか」

 

 「そういうことだ」

 

 仕事をしていない人間の遊び方が変わったところで、実害としては大きく変わらない。問題は、姿を消したこと自体だった、理由がわかっただけで十分だ。

 

 「じゃあ、いつでも取りに来られるようにしとくわ。うちの姉さんに預けとく」

 

 「ああ、頼む」

 

 「その代わり、しっかり使えよ。見つけるのに、それなりに手間かけたんだからな」

 

 「わかったよ。ありがとな」

 

 軽い調子で言うハトに、素直に礼を言っておいた。少し無理をさせた自覚はあるからな。

 

 

 王城に戻り、俺はその足でリーシャの元へ向かった。監査官の詰所は、思っていたより地味な小部屋だった。

 

 「見つかったのね、例の彼」

 

 「もう知ってるのか」

 

 「情報が入るのは早いのよ、私」

 

 「そうか、あいつはカジノで借金作って、体で払わされてるらしい」

 

 「まあ、そんなところだとは思ってた」

 

 「知ってたのかよ」

 

 「いや、これはただの勘よ?」

 

 「ほんとか?」

 

 「……」

 

 「……」

 

 また黙る。いい加減こいつの素顔を見たい。

 

 「まあいいや。一応聞くが、あいつがいなくなって、フィリア様に影響はあると思うか? 俺はないと思っている」

 

 「ないでしょ、あいつ全く仕事してなかったし」

 

 「それもそうか」

 

 「それより、あの秘書、当分は戻ってこられないってことよね」

 

 「そうなるな。しばらくは殿下の秘書職、実質俺一人か。仕事的には問題ないが」

 

 「仕事というよりもあれの親が少し心配ね」

 

 「何かあるのか?」

 

 「さあ、でもあいつを育てた親よ? それだけで察せられない?」

 

 「確かに」

 

 「大変ね」

 

 「他人事だな」

 

 「他人事だもの。私は監査官で、秘書じゃないし」

 

 悪びれもせずそう言い切るリーシャに、思わずため息が出た。頼りになるんだかならないんだか、わからん。

 

 とはいえ、あの馬鹿が戻ってこない今、フィリア様の顔は少し良くなるだろう。それを考えると、いい気分ではあった。




あとがき

なろうにも投稿始めました。話数はそのうち追いつくか追い抜くか、どっちかだと思います。
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