連載中の作品が二つもあるのにまた新しい小説を書いてしまってすまない。
アイデアが出てきてしまったんだ。
ヤヌス区、六分街。
今日も変わらず、人々の活気で賑わう街。
その一角に店を構える古びたビデオ屋『Random Play』では、一人の青年が棚に並ぶビデオテープを手際よく整理していた。
「よし、これで全部……っと。」
黒髪を軽くかき上げ、最後の一本を棚へ戻す。
青年の名は――**ムサシ**。
Random Playでアルバイトをしながら、店主であるリンとアキラのもとに居候している青年だ。
明るく、陽気で、人懐っこい。
困っている人を放っておけない熱血漢として、六分街でもすっかり顔馴染みになっていた。
「ふぅ……終わった終わった。」
大きく伸びをした、その時だった。
**バァン!!**
勢いよく店の扉が開く。
「リン! アキラ! 緊急事態よ!!」
飛び込んできたのは、邪兎屋のリーダー・ニコ。
息を切らせながらカウンターへ駆け寄る。
「プロキシの助けが必要なの! 一生のお願い!」
その言葉を聞いたムサシは、棚の陰で小さく苦笑した。
(……あの人の『一生のお願い』、今月だけでも三回目な気がするんだけど。)
思わず笑みがこぼれる。
するとリンはすぐに真剣な表情へ切り替えた。
「詳しい話は工房で聞こう。」
「急ぐよ。」
アキラも頷き、ニコと共に工房へ入っていく。
扉が閉まる。
ムサシは少しだけ周囲を見回すと、そっと工房の扉へ近付いた。
「……悪い。」
そう呟き、聞き耳を立てる。
中から聞こえてきたのはニコの焦った声だった。
「赤牙組とやり合ってる最中に、ビリーとアンビーがホロウへ落ちちゃって!」
「依頼人から預かった荷物まで一緒に!」
「二人を助けて、荷物も回収しなきゃいけないの!」
リンとアキラは状況を整理し、ホロウへ突入する準備を進めていく。
話を聞き終えたムサシは静かに目を閉じた。
ビデオ屋の兄妹。
邪兎屋の面々。
ホロウで倒れていた自分を、家族のように受け入れてくれた人たち。
その恩は、決して忘れていない。
「……じっとしてなんか、いられるか。」
熱い瞳に決意が宿る。
「恩がある人たちが危ないって聞いて、待ってるだけなんて性に合わねぇ。」
ムサシは誰にも気付かれぬよう、静かに店を飛び出した。
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数分後。
巨大なクリティホロウの入口。
ニコはイアスを抱えていた。
「お願い、イアス!」
アキラは感覚同期を開始する。
意識はイアスへと移り、そのままクリティホロウの中へと足を踏み入れた。
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一方、ホロウ内部。
「は!? 戻ってきたぞ!?」
ビリーが驚きの声を上げる。
景色は変わらない。
崩れたビル。
瓦礫の山。
そして迫り来るエーテリアス。
「クソっ! キリがねぇ!」
「これじゃ弾代だけで大赤字だぜ!」
アンビーが銃を構える。
「来る。」
「構えて。」
エーテリアスが飛び掛かる。
その時だった。
コロン。
足元へ丸い物体が転がる。
「……?」
直後。
**ボンッ!!**
煙幕が一気に周囲を包み込んだ。
「いや! 俺じゃねぇって!」
ビリーが慌てて叫ぶ。
「おーい! こっちだ! 急いで!」
物陰から声が響く。
そこには赤いスカーフを巻いたボンプ――イアス。
そして同期したアキラがいた。
「やあ、お疲れ様。」
アンビーが僅かに首を傾げる。
「スカーフの……喋るボンプ。」
ビリーは目を輝かせた。
「おおっ! もしや!」
二人は同時に叫ぶ。
「「パエトーン!」」
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その頃、六分街。
店番をしていたリンは店内を見回した。
「あれ?」
「ムサシ?」
さっきまでいたはずの青年の姿がない。
「珍しくサボりかな……。」
首を傾げるリン。
だが、その時にはもう――。
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ホロウ内。
煙幕はゆっくりと晴れていく。
「……まずい。」
アンビーが呟く。
エーテリアスは煙に惑わされていなかった。
獲物を正確に見据えている。
狙いはイアス。
「しまっ!」
アキラが息を呑む。
アンビーも。
ビリーも。
誰一人間に合わない。
その瞬間。
**ドゴォォン!!**
強烈な衝撃音。
エーテリアスの巨体が横へ吹き飛び、瓦礫へ叩き付けられる。
「え……?」
煙の中から現れたのは、一人の青年。
「間に合ったみたいだな。」
ムサシだった。
「ムサシ!?」
通信越しのリンが叫ぶ。
「なんでホロウにいるの!?」
「お、お前、生身で来たのか!?」
ビリーも驚愕する。
アンビーは静かに分析する。
「武器なし。」
「極めて危険。」
ムサシは笑って肩をすくめた。
「心配してくれてありがとな。」
「でもさ。」
「仲間が危ないって聞いて、黙って待ってられるほど大人じゃないんだ。」
二体のエーテリアスが咆哮を上げる。
一直線に襲い掛かった。
ムサシは静かに拳を握る。
「――では、お見せしよう。」
眩い閃光。
全身が光に包まれる。
「なっ……!」
灰色の鋼の肉体。
無機質な装甲。
だが次の瞬間。
赤。
青。
白。
黄色。
全身を鮮やかな色彩が駆け抜ける。
**フェイズシフト装甲、起動。**
機械音がホロウへ響き渡る。
眠っていた鋼の巨人が、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳に光が宿った。
さらに上空から光をまとった巨大なユニットが降下する。
**ソードストライカー。**
背部へ接続。
全身のロックが一斉に噛み合う。
右肩へ対艦刀《シュベルトゲベール》。
左腕へロケットアンカー付きシールド《パンツァーアイゼン》。
装備が次々と展開される。
重厚な駆動音が鳴り響く。
鋼の巨人はゆっくりと対艦刀を抜き放った。
その姿は、戦場を駆ける白き剣士。
**ソードストライクガンダム。**
ビリーは言葉を失う。
「す……すげぇ……。」
アキラも息を呑み、リンは通信越しに目を見開く。
ソードストライクガンダムは対艦刀を構えた。
「さあ――。」
「仲間を傷つける奴は、この俺が倒す!」
轟音とともに地面を蹴る。
巨大な対艦刀がホロウの空気を切り裂く。
白き剣は一直線にエーテリアスへと突撃した。
**――剣は、今、新たな運命を切り開く。**